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東京パラ 学校観戦 千葉県熊谷知事「授業とリスク変わらず」

東京パラ 学校観戦 千葉県熊谷知事「授業とリスク変わらず」

2021年8月17日 【NHK】

東京パラリンピックが原則として、すべての会場で観客を入れずに開催することが決まったことについて、競技会場のある千葉県の熊谷知事は17日朝、記者団に対して「やむをえないと思う。残念だが、いたしかたない」と述べました。

東京パラリンピックで千葉市の幕張メッセでは4つの競技が開催される予定です。
原則、無観客での開催が決まったことについて熊谷知事は17日朝、記者団に対し「やむをえないと思う。会場を満員にしようと何年もかけて取り組んできた身とすれば大変残念だが、いたしかたない」と述べました。

また、安全対策を講じたうえで実施することになった、学校観戦チケットによる子どもたちの観戦については「しっかり評価する。世界中のパラアスリートのプレーを通して、パラリンピックの意義を子どもたちが受け取り、共生社会を実現してくれると信じている」としたうえで「各学校の実情を踏まえて各自治体が判断していくが、県としてもできるかぎりサポートしていきたい」と述べました。

また、感染対策の徹底呼びかけと矛盾しないかという質問に対しては「私たちは家から出るな、学校に来るなとは言っていないので、矛盾していない。バスで教員の引率で移動するので、学校で授業を受けることと基本的にリスクは変わらず、科学的根拠にもとづいて判断していくことが必要だ」と述べました。

千葉県では約230校が観戦を希望
東京パラリンピックで4つの競技が開催される千葉県では17日、現在で公立と私立の小・中・高校など合わせておよそ230校が観戦を希望していて、およそ3万5000枚のチケットが配布される予定です。
配布される枚数は教職員のものも含めて、千葉市で2万8409枚、我孫子市で1389枚、成田市で513枚など8つの市と町の207校で3万1436枚となっています。
このほか、私立が12校で2097枚、県立が12校で1867枚となっています。

観戦の対象は今月25日から幕張メッセで行われる4つの競技で、大声を出さない、座席を消毒するなどの感染防止対策を徹底するとしていますが、県によりますと、学校によっては改めて保護者の意向を確認することにしていて、今後希望者は減る可能性があるとしています。
このうち県内のチケットの8割が配布される予定の千葉市では、167のすべての市立学校で今月20日までに改めて意向調査を行い、希望者が観戦する予定です。

記者団の取材に応じた神谷俊一市長は「高い教育効果が期待でき、一生の財産として心に残る機会にしてもらうため実施を決めた。批判はあると思うが学校から市内の会場まで貸し切りバスで直行直帰するため、通常の学校での教育活動と感染リスクは変わらない。無観客で行われることで、会場内での密も避けることができる」と前向きな考えを示しました。

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パラの学校観戦現場の判断任せでは困る

2021/8/18【毎日新聞】

24日に開幕する東京パラリンピックについて、政府や大会組織委員会などが原則無観客にすると決めた。「学校連携観戦プログラム」は予定通り実施する。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、競技会場のある東京など4都県すべてに緊急事態宣言が発令される中での開催となる。無観客にしたのは妥当だ。

学校単位で子どもたちを会場に招くプログラムを維持するのは、パラ競技の観戦に教育的意義があるからだという。選手が自らの限界に挑む姿は、多くの子どもに感動や勇気を与えるだろう。

各校は5年前から、障害者への理解を深める教育に取り組んできた。観戦はその集大成ともなる。ただし、感染防止にも配慮し、対象は会場の近隣の学校にとどめ、参加するかどうかは自治体や学校の判断に任せた。

これに対し、学校などからは戸惑いの声が聞かれる。
参加の是非を決めるには、教育効果だけでなく、感染リスクがどの程度あるのか、どのような対策が有効なのかの評価が欠かせないからだ。だが、学校側にそうした知見は乏しい。

集団感染が発生した場合の責任の所在もあいまいだ。保護者の間には不安が根強く、同じ地域で参加と不参加に分かれることになれば子どもたちに不公平感が生じる可能性もある。

組織委の立場について、武藤敏郎事務総長は「学校観戦は希望に基づいて実施するもの。希望があればサポートする用意がある」と述べた。だが、本来は組織委が専門家の意見を踏まえ、宣言下でも安全に実施するための対策を早めに示すべきだった。

開幕まで1週間を切った。責任をもって早急に詳しい対策をまとめる必要がある。感染状況が大きく変われば対応を検討するというが、どういう状況になれば中止するかの基準も公表すべきだ。

五輪では、茨城県が会場を原則無観客とし、学校観戦だけを認めた。各校は貸し切りバスで移動し、会場では十分な間隔を取って座るなど感染防止策を講じた。こうした経験も参考になるだろう。学校観戦を実施するのなら、子どもたちを守る対策を徹底しなければならない。

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「家から出るな、学校に来るなとは言っていない。バスで教員の引率で移動するので、学校で授業を受けることと基本的にリスクは変わらず、科学的根拠にもとづいて判断していくことが必要だ」熊谷知事のコメントは明快でした。「感染対策の徹底呼びかけと矛盾しないか」と質問している記者こそ自分の質問の矛盾に気づいてほしいものです。

知事も言うように、どこにいても感染のリスクはあるのです。その証拠に、感染経路別では家庭や職場が最も感染割合が高く、さらには感染経路不明の事例の方が多くなってきているのですから学校観戦だけをやり玉に挙げているのはおかしな話です。メディアの収入源である甲子園大会やプロ野球観戦には物言わず、批判しても自分に火の粉がかからないオリパラだけをスケープゴートにして観戦中止を煽る報道には、信憑性がなく付き合う必要はないと思います。

「現場に丸投げするな」というだけで、メディアの無責任な煽り報道には何一つ注文を付けないのでは、建設的な批判とは言えません。保護者の不安は、メディアの煽り報道に原因があり、オリパラ委員会や行政の責任ではありません。あえて批判をするならば、熊谷知事のように事実に基づいて沈着冷静に決断する姿勢がトップに足りないと思います。世間の風評に現場が惑わされずに学校観戦を実現してほしいと思います。

 

敬老の日

今日は、敬老の日。 毎年9月15日を敬老の日としていたものを、2003年(平成15年)から9月の第3月曜日にしました。兵庫県多可郡野間谷村の村長と助役が、お年寄りを大切にし、昔から伝わる知恵を借りて村作りをしようと、昭和22年(1947年)「としよりの日」が決められました。農作業も一段落して敬老会を開くには丁度よい日取りだったようです。これが全国的に広まって、「としより」という言葉の響きが良くないということで、「老人の日」となり、昭和39年(1964年)国民の休日として「敬老の日」が制定されました。

高齢者とは、日本の統計調査では65歳以上と定めています。家族に高齢者がいる世帯は全世帯の4割を超え、その中で高齢者の一人暮らしと夫婦のみの世帯をあわせた数が半分です。病気やけがをしている高齢者は半数、生活に支障をきたすほどの重症の人は2割程です。高齢者の世帯支出は、勤労世帯で月36万、無職世帯は26万ほどが平均支出です。全世代世帯の平均支出月額は29万ですから、若年世帯と同じくらいから経済的に余裕がある範囲に入リます。

65歳から74歳までの人を「前期高齢者」といいます。前期高齢者は、64歳までと変わらず国民健康保険や被用者保険の給付を受けることができます。高年齢者雇用安定法で、本人が希望すれば65歳まで働けるようになったため、定年後も同じ職場で働き続ける人が増えています。これからはさらに現役で活躍する高齢者が増えていきます。また労働人口が減る一方で、前期高齢者に含まれる65歳から69歳までの男性の約半数が働いています。

定年後も自分の居場所を見つけ、自立した生活を送ることが大切だと言われますが、大きなお世話です。高齢者ですらない宙ぶらりんの60歳以降はそう思っています。もう少しで、ゴールだと走り続けてきたら、勝手にゴールテープを後ろに移動された感が強いのです。だったら走る(就労する)前からそう説明してほしいと思ったのは筆者だけでしょうか。昭和30年代生まれの方は、60歳で定年だと言われつつ安い賃金で65歳まで雇用されることになり、寿命が延びているのだからその後も働いて当然だと言われるのは、どうもすっきりしないという人は少なくありません。

文明の進化とともに寿命が伸びることは周知のことです。年金掛け金が収入の2割で、年金月額が生涯平均賃金の5割を支払える釣り合いの取れる答え(年数)はひとつしかありません。「(平均寿命-20)÷1.4=掛け金年数」「掛け金年数+20=支給開始時期」という小学生の算数です。最初からわかっているのこの単純な関係が説明され、「平均寿命が延びたら、掛け金期間と年金支給開始時期がのびる」「年金は長生き保険」とさえ学んでいればこんなに違和感(損した感)はなかったと思います。

国民の8人に1人が後期高齢者といわれています。そして75歳の誕生日から後期高齢者医療制度への加入が義務付けられました。75歳を過ぎると入院や長期療養が多くなり、後期高齢者の約4分の1が要介護認定を受けています。また80歳以上の約8割が経済的な不安を感じず暮らしていて、後期高齢者の半数以上が趣味やレジャーを楽しんでいるそうですが、この人たちは2004年の厚生年金保険料の引き上げ開始前に定年を迎えた方たちです。前と後ではえらい違いだと思うのは筆者だけでしょうか。敬老の日に、敬老されてるのかなぁ。高齢者ではないしなぁ。なんだかなぁという複雑な思いで一日が過ぎていきました。

エッセンシャル・ワーカー

放課後等デイサービスでクラスター発生 神戸市

2020/8/8 19:01【神戸新聞NEXT】

神戸市は8日、障害のある児童の放課後等デイサービス施設「ガリレオ東灘」(同市東灘区)で、小学生5人や職員の計10人が新型コロナウイルスに感染したと発表し、クラスター(感染者集団)が発生したとの認識を示した。

小学生の男児5人、40代の男性職員1人、20代の女性職員4人。同市によると、10人はいずれも軽症か無症状という。

男性職員は2日に発熱があり5日にPCR検査を実施し、陽性が判明。30日と翌31日にマスクを着けず室内で勤務していた時間があったため、濃厚接触者として利用者14人と職員5人を7日に検査した。

男性職員は31日に系列の「ガリレオ六甲道」(同市灘区)でも3時間ほど勤務しており、濃厚接触者にあたる利用者6人と職員3人にも検査を実施。利用者6人は陰性で、職員3人は結果待ちという。2施設は当面休業する。(小谷千穂)
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〈新型コロナ〉児童分野で働く職員に慰労金自治体に独自の動き

8/4(火) 10:07【福祉新聞】配信

新型コロナウイルス感染症の対応に追われる子ども分野で働く職員を対象に、独自に慰労金を創設する自治体が出てきた。愛知では児童養護施設や保育所を対象にした「応援金」を創設。政府は福祉分野で働く慰労金を支給する方針を示しているが、子ども分野は対象外となっており、現場からは「コロナ第2波の足音が聞こえる中、こうした取り組みが全国に広がれば」という声も出ている。

政府は5月、新型コロナに関する「緊急包括支援交付金」を拡充し、福祉分野で働く職員全員に1人当たり5万円の慰労金を支給すると発表した。施設で新型コロナが発生していれば20万円に増額する。

ただ対象は特別養護老人ホームや障害者施設、救護施設など高齢や障害分野に限定。児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設、保育所など子ども分野の施設については重症化リスクが低いことから慰労金の対象外としている。

そうした中、愛知県は独自に「民間児童福祉施設職員応援金」を創設した。県内の児童養護施設、乳児院、保育所、婦人保護施設など1500カ所以上を対象に、1施設10万円を交付する。

応援金の目的について、愛知県は「職員の労苦に報いてモチベーションを維持するため」と説明。宴会や旅行は禁止しているが、慰労金としての支払いを想定する。「シンプルな申請方法にすることで、8月中に支給できれば」と話す。こうした姿勢に対して、現場からは喜びの声が上がる。

愛知県内で児童養護施設や特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人和敬会の太田一平理事長は「政府による慰労金の対象から外された児童福祉関係者の落胆は大きかった。金額の問題ではなく、自治体が子ども分野の現場に目を向けてくれたことがありがたい」と評価する。

「全国の児童養護施設でクラスターが発生していないのは職員の努力の結果だ。新型コロナ第2波の足音が聞こえる中、自治体独自の慰労金がほかの地域でも広がれば」と話す。

また、山形県は子ども分野の施設職員を対象に1人当たり5万円の慰労金を支給する。保育所など約350カ所、児童養護施設5カ所、乳児院1カ所を含む計約900カ所で働く約1万3000人が対象。常勤・非常勤は問わず、調理員や事務員も対象になる見通しで、政府の慰労金で対象外となった部分を補完する位置付けとなっている。

同様に茨城県ひたちなか市も認可保育所や学童保育の職員に3万円を支給する方針。岡山県倉敷市は、市内の保育士を対象に1人最大5万円の慰労金を独自に給付する。

一方、東京都練馬区では、高齢・障害・保育分野の福祉施設・事業所で働く職員を対象に慰労金を支給する。約1600施設で働く約2万4200人を対象に、1人当たり2万円の支給を想定する。現場の実情に応じて、職員ごとに支給金額を変えることも可能だという。

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最初の記事は、感染させた放デイはけしからんというバッシング記事です。記事に非難こそ書かれてはいませんが、こんな小さな事業所名をさらしてスタッフまでも特定できる内容で報道しています。注意喚起だけなら他に報道の仕方があったはずです。学童保育も保育所も学校も障害者施設も老人施設も感染者を出しただけで、名前をさらされバッシング対象になるのだなと関係者は思うでしょう。二つ目の記事は、感染リスクが高いけどエッセンシャルワーカーとして貢献している職員に報奨金を出しましょうという記事です。この二つの記事の内容が同居しているのが今の日本社会です。感染症のゼロリスクは科学的に考えてあり得ません。無理なゼロリスクをエッセンシャルワーカーに押し付けても意味のないことです。むしろ、慰労金だけでなく5/29のブルーインパルス飛行のように、リスク承知で頑張っている人たちを励ますのが筋ではないかと思います。

閑話休題。武漢ウイルス感染症(COVID-19)は、仕事に関するいくつかの観点を変えつつあります。そのうちの一つが仕事に対する物理的な関わり方です。長らく仕事というものは、毎日会社に出かけ、決まった時間に職場でするものと思われてきました。しかし、COVID-19による自粛要請の結果、「決まった時間に職場に行かなければできない仕事」と「そうでない仕事」の2種類あることがわかってきました。

工業化の進展によって、ホワイトカラーとブルーカラーという区分けができたように、デジタル化とCOVID-19によって、「エッセンシャルワーカー」と「リモートワーカー」というような新しい仕事の区分けが生まれつつあります(下図参照)。

国土の広い北米やオーストラリア、あるいは距離はそんなに離れていなくとも冬季の移動が難しい北欧諸国では、リモートワークは以前から活発に行われています。欧米では、医療従事者、警察・消防関係者、公共団体関係者、銀行やスーパーマーケット勤務者というようなライフラインに関係する労働者をエッセンシャルワーカーと呼び始めています。エッセンシャルという単語が示すように、そこには一定の敬意が込められています。デジタル化が進み、様々な仕事がリモートで可能になっても尚、どうしても物理的に対応しなくてはならないことは残り、社会活動をしていく上で不可欠な仕事があります。それを担う職業の労働市場におけるステータスは、需給バランスを踏まえれば、今後、上がっていくことは間違いありません。

エッセンシャルワーカーの場合
(1)「出勤手当/現場手当」が一般的に支給されるようになる
ロックダウン時の英国では、その時も出勤しなければならない職務に就く人(スーパーマーケットや銀行など)には、特別ボーナスが支給されました。感染リスクがあり、身体的な負荷や家族の負担も大きいというのがその理由でした。これがリモートワーカーとの対比の中で、有事だけのものではなく、平時から支給されるようになる可能性が高いです。現在でも、高温手当、危険手当といったものはありますが、その基準が下がり、出勤すること自体が負荷である、という見方です。

(2)時間管理と職務内容管理はより厳格になる
物理的に拘束されるため、時間管理はより厳格になります。場合によっては、成果よりも物理的拘束の方が重視される評価報酬に変わります。また、手間や時間をかけて出勤していることから、敢えて職場で自分の役割とは関係のない仕事をやるよりも自分に求められる仕事だけ終えて帰宅することが当たり前となり、職務内容(ジョブディスクリプション)に基づく業務遂行の確度が報酬と結びつきます。

(3)同一労働・同一賃金の適用が進む
物理的に拘束される仕事は、広い意味での社会インフラに関わる仕事に多いです(それが「エッセンシャル」のネーミングの所以)。インフラならば、そこに必要なのは、一定のサービス品質であって必要以上の付加価値は期待されません。このような業務は、同一労働・同一賃金の考え方と相性良く、中長期的には社会レベルでの適用が加速します。米国では同一労働・同一賃金を担保するためにO-NETという国が定めた職務定義があります。さらにフランスでは、それに国が賃金水準まで定めています。エッセンシャルな職務については、日本版O-NETが整備され、賃金水準のガイドラインが策定される必要性もでてきます。

リモートワーカーの場合
(1)時間管理が難しく、裁量労働が一般化する
現在の裁量労働制には、一定の制限が設けられていますが、その基準が緩やかになります。自由な働き方が従業員にとってのリモートワークのメリットであるので、個人の裁量(自由さ)を促進するようになります。そうすると、報酬制度は年俸制に近いものになり、報酬の対価が明確に定められる必要性が高まります。欧米のように個人単位で雇用契約が結ばれ、個々人の報酬の対価が契約として定められるようになります。

(2)「通勤手当」が無くなり、逆に通信費・事務設備に関する手当が支給される
リモートワーカーは、そもそも出勤するかどうかがはっきりしないため、出勤した時のみ交通費を精算するようになります。既にリモートワークが普及している欧州の保険会社ではこのやり方が運用されています。一方で、職場で提供されているインフラに関わるコスト(例えばネット環境を整えるための施設や通信コスト等)は、個人に対して支給されます

(3)基本給に地域水準が適用される
必ずしも通勤しなくて良いのであれば、どこに住んでも良いだろうと多くの人が考え、地方居住者が増えます。これにより、Cost of Livingの考えに基づいた報酬決定が行われます。いわゆる居住地域によって、報酬格差をつけようという考え方です。基本給に、どの地域に居住しているかによって係数をかけて報酬を決めるのです。

タリバンは女性の権利守るのか、アフガンに渦巻く疑心暗鬼

タリバンは女性の権利守るのか、アフガンに渦巻く疑心暗鬼

8月17日【ロイター】

アフガニスタンでイスラム主義組織・タリバンの支配が終わった20年前、同国の女性と少女らは夢のまた夢だった自由を得た。タリバンが再び政権を掌握した今、彼女らはその自由を失わないため懸命に闘おうとしている。

タリバン指導者らは権力掌握の過程と今も、女性と少女は労働と教育の権利を維持するだろう、と強調してきた。しかし、それは「ただし書き」付きだ。

ここ数日、タリバンが国内を進攻して行く混乱の中、既に離職を命じられた女性たちもいる。戦闘員らが何を言おうと現実は異なるかもしれない、とおびえている女性もいる。

しかし、「時代は変わった」と話すのは、アフガンで少女向けの宗教学校を運営するカーディジャさんだ。

「タリバンは、私たちを黙らせることができないことに気付いている。彼らがインターネットを閉鎖すれば、世界は5分もしないうちに、それを知るだろう。彼らは私たちが何者なのか、どんな存在になったのかを受け入れるしかない」と話す。

こうした毅然とした態度が映し出すのは、学校や大学に通えて就職もできる環境で育った、特に都市中心部の新たな世代の女性像だ。

タリバンが最初にアフガンを支配した1996年から2001年にかけて、イスラム法の厳格な解釈によって女性は就労できず、少女は通学を認められていなかった。時として残酷な方法で法が執行されることもあった。

女性は顔を覆わなければならず、あえて外出したいなら男性の親族が付きそうことが義務付けられていた。規則を破った者は辱めを受け、タリバンの宗教警察によって公衆の面前で、むち打ちをされることもあった。

外国の部隊がアフガンからの撤退を計画していることが次第に明らかになった過去2年間、タリバン指導者らは西側諸国に対し、女性はイスラム法に則り、雇用や教育へのアクセスなどで男性と平等な権利を得ると約束してきた。

タリバンは17日、カブール制圧後初めて記者会見を開いた。ザビウラ・ムジャヒド報道担当者は、女性は教育、医療、雇用に関する権利を維持し、イスラム法の枠内で「幸せ」に暮らすだろうと述べた。

メディアで働く女性の権利に関しては、カブールの新政権が導入する法律によって決まると説明した。

アフガンの民間テレビ局・トロでは17日、女性アンカーが生放送でタリバンの報道担当者にインタビューした。

<女性に離職を命令>
アフガンの少女教育を推進する活動家、パシュタナ・デュラニさん(23)は、タリバンの約束に警戒の目を向けている。

デュラニさんは、タリバンが少女の通学を認めると請け合っていることに触れ「有言実行でなければならない。現時点では言ったことを実行していない」と、ロイターの取材に答えた。

「彼らが学校のカリキュラムを制限するなら、私はオンライン図書館にアップロードする本を増やす。インターネットを制限するなら、家庭に本を送る。先生を制限するなら、地下学校を始める。つまり私は、彼らの問題を解決する答えを持っている」とも述べた。

タリバンが女性に政治や政策立案の仕事を許すかどうかが、彼らが約束する権利の平等の真価を問う試金石になる、と言う女性もいる。

2012年にパキスタンの武装勢力に銃撃されて重傷を負い、その後、女子が教育を受ける権利を求める活動を行ってノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、アフガンの情勢を深く憂慮していると述べた。

マララさんは、BBCの番組で「女性の権利を訴える活動家を含め、アフガニスタンにいる活動家数人と話す機会があった。この人たちも今後、生活がどうなっていくか分からなくて不安だと話している」と語った。

国連児童基金(ユニセフ)は、タリバン当局者らとの協力について、慎重ながらも楽観的な見方を示した。タリバンが今のところ、女子の教育を支援すると表明していることが一因だ。

ユニセフは今もアフガンの大半の地域に支援を行っており、カンダハルやヘラート、ジャララバードなどタリバンが最近制圧した都市で、新たなタリバン代表者らと最初の会談を持った。

ユニセフのアフガニスタン現地活動責任者、ムスタファ・ベン・メサウド氏は、国連の記者説明会で「われわれは協議を続けている。こうした協議に基づき、かなり楽観的な見解を抱いている」と述べた。

しかし、国連のグテレス事務総長は16日、タリバン支配下での「冷酷な」人権侵害と、女性と少女に対する暴行の増加に警鐘を鳴らした。

タリバンの戦闘員は7月初め、カンダハルにある商業銀行の支店に入って従業員の女性9人に対し、不適切な仕事をしているので立ち去れと命じた。ロイターが先週報じた。戦闘員らは、男性の親族が彼女らと交代することは認めた。(Rupam Jain記者 Lucy Marks記者)

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世界大戦中は中立国として群雄割拠の荒波を乗り越えてきたアフガニスタン王国。ようやく立憲君主制を自国の力で成し遂げようとした矢先に、冷戦中のソ連が手引きした共産主義者のクーデターによって民主国家を流産してしまいます。

それ以降は、大国の利益のために振り回され、暗殺やクーデターの繰り返しで国力は衰弱していくばかりでした。貧困に浸透していくのは宗教と相場が決まっています。ムスリムのジハードは異教者への戦い、つまり「聖戦」の名のもとに、異民族や異国家への武力行使とテロリズムを正当化し、内戦が30年も続きます。

この内戦の中で一時的にタリバーンがカーブルを占領し、アフガニスタン・イスラム首長国を設立します。イスラムの教えに女子の差別や教育の否定はありませんが、追い詰められた原理主義者は、宗教者であろうが共産主義者であろうが過激な差別選別等の反知性主義を統治に利用します。

中国の文化大革命しかりカンボジアのポルポト派の大虐殺しかり、同じ現象です。そして、そんな無茶苦茶が通用するのは国民全体が貧困のために教養が極めて低く文盲率が高い中で生じやすいと言われます。

919NY貿易センタービルを破壊したアルカイーダを匿ったタリバーンは、多国籍軍の報復で一夜にしてカブールを放棄します。西側諸国は民主国家を樹立させようと、米軍によるテロリストの撲滅と経済復興の資本投入を20年間続けました。しかし、米軍が撤退した途端にタリバーンがあっという間に全土を武力制圧してしまいました。民主主義やその国の統治は自国民が自力で困難を乗り越えてしか育たないという証です。

ただ20年前のアフガンと違うのは、SNSの普及とSNSで発信できる国民の教養の向上もありますし、人権弾圧の蛮行は世界中の人々の監視下にあり、隠すことができないことです。ミャンマーも軍部のクーデターに民主主義が流産させられそうですが、一度獲得した教育権や男女同権は暴力で再び奪うことはできません。軍政や宗教独裁、共産党一党支配による全体主義の壁は厚いですが、教育権保障や男女同権の確かな土台の上で、思想信条・表現の自由は少しづつ広がり熟成して、やがて権力交代の臨界点を必ず迎えることを信じています。

自粛はご遠慮下さい

熊谷俊人(千葉市長)が以下のツイートをしました。
『養護学校の生徒が水遊びしていることについて「災害の中、不謹慎」との苦情が入りました(その方は停電は発生していない地域にお住い)。 確かに千葉市内を始め、県内が停電・断水な中、不謹慎と思う方もいるかもしれませんが、自粛しても意味がありません。心を寄せて頂いた上で、自粛はご遠慮下さい。13:40 - 2019年9月11日』

風台風の影響を受けて、千葉県は未だに電力や水道が復旧していない地域が少なくありません。みんなで助け合おうという声掛けは大事ですが、災害時の被害が大きければ大きいほど、「みんな」を強調するあまり全体主義の危うさを感じさせる発信が時折見受けられるのも事実です。ただ、正面からその発言を批判するのは「返り討ち」に合う恐怖感があり足踏みをしてしまうのも本音です。市長の勇気ある発言に対して多くの人が共感を寄せました。災害時は社会的弱者への偏見が顕在化します。だからこそ、「みんな」で非常事態の言動には危機管理の観点からも敏感になる必要があります。

みんなを応援する甲子園に

前例のない「夏の甲子園」始まる 2校による選手宣誓「明日への勇気と活力を」

8/10(月) 9:26配信【デイリースポーツ】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった今春のセンバツに選出された32校を招待して開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」が開幕。午前10時から開幕試合を戦う大分商、花咲徳栄(埼玉)の2校が参加し、開会式が行われた。

前例のない「夏の甲子園」。開会式前にグラウンドでキャッチボールを行って開会式に臨んだ両校は二列に分かれ、互いの距離を保ってマウンド横に整列。無観客のスタンドでは、ベンチ外の選手や一部の関係者などが間隔を取ってスタンドで見守った。 異例となった2校のみの開会式では今大会に招待された32校の集合写真が大型スクリーンに映し出され、1校ずつ紹介されるなど過去にない形で進行された。  

この後、大分商の川瀬主将、花咲徳栄の井上主将が選手宣誓した。選手宣誓は以下の通り。  (川瀬堅斗主将)「宣誓、私たち高校球児は夢の舞台、甲子園を目指すことを目指し、仲間たちと励まし合いながら、心技体を鍛えてきました。新型コロナウイルスとの戦い、度重なる大規模な豪雨災害からの復旧、復興など、厳しく不安な状況下で生活している方もたくさんおられます。このような社会不安があるなか、都道府県の独自大会、そしてこの2020年甲子園高校野球交流試合を、開催していただけることによって再び希望を見いだし、あきらめずにここまでくることができました」  

(井上朋也主将)「ひとりひとりの努力がみんなを救い、地域を救い、新しい日本を作ります。想像、挑戦、感動、いま、私たちにできることは一球をひたむきに追いかける全力プレーです。交流試合の開催や、日々懸命に命、生活を支えて下さっている皆様への感謝の気持ちを持ち、被災された方々をはじめ、多くの皆様に明日への勇気と活力を与えられるように、選ばれたチームとしての責任を胸に…」  

(二人で)「最後まで戦い抜くことはここに誓います」。

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たった6日間だけの夏の(春の)甲子園。勝ち負け関係なくたった1試合だけの甲子園。あれだけ改革が言われた炎天下の中での試合は変わらないけど、宣誓メッセージは確実に進化しています。「苦しんでいる人、頑張っている人を励ましたい」と言います。ただただ応援されていた高校生プレーヤーが、災害大国ニッポンの応援をしようと、いつの間にか成長していることに感動します。甲子園を頂点にした高校野球はベタで好きではなかったけれど、今年は応援しています。

出場校32校がオーロラビジョンで開会式に写真参加

デルタ株で子供の感染状況は? 静岡市の小児科医に聞く

デルタ株で子供の感染状況は? 静岡市の小児科医に聞く

2021.08.19【日テレNEWS24

静岡県内では第5波になって学校などでのクラスターが増えていて、夏休み後の学校再開に不安の声も上がっている。

子どもたちのコロナ感染の現状について小児科の医師に聞いた。
新型コロナの感染が急拡大する中、県内では7月から学校や幼稚園でのクラスターが7件確認されるなど子どもたちが感染するケースが増えている。緊急事態宣言を受けた対処方針として、県は学校に対して「部活動の制限」や「オンライン授業」「時差通学などの工夫」を求めているが、学校再開を前に親たちは。
(小学生の母親)
「ちょっと行かせづらい。休ませた方がいいとは思いつつ、そうすると学習面が不安になってくるので上手にやってくしかないと思う」

デルタ株の拡大で子供たちの感染の現状は?
これまで子供のコロナ患者の診療を続けてきた静岡厚生病院の田中敏博医師に聞いた。
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「8月に入ってから僕の立場で対応する子どもの陽性者は着実に増えている。ただ、それに伴って重症者が増えているかというとそうではないので、子供が感染したけれど順調に良くなったケースがほとんど」
全体の感染者の増加に伴い10代の感染も増えているものの、他の年代と比べて少なく、8月10日までの一週間の全国の感染状況でも20代以下の重症者はいない。

子供の陽性者の症状については?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「熱が出る、頭痛を訴えるケースやせき、鼻水。デルタ株だからといってすごく強い症状とは感じていない」
一方、7月までは静岡市内の子供の患者は無症状が6割だったものの8月に入ると軽い症状が出ている子どもが増えている印象という。

また、最近は家族内で子ども一人だけ陽性で、どこからうつったのかわからないケースが増えてきているという。
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「例えば子どもと大人が一緒に療養していても、家庭内でお父さん、お母さんが子どもから感染したことはあまりないので、子どもから(大人に)感染しにくいという原則は保たれていると思う」
親の世代である30代から50代の感染や重症者が増えている中、まずは大人が感染対策とワクチン接種をすることが重要だと指摘する。

県内で学校関係のクラスターが起きていることについては?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「仮にクラスターが発生しても、子どもに関しては重症になる確率が非常に低いこともあって、ただちに心配を深める必要はないし、園や学校を責め立てるような雰囲気は社会としてつくってはいけないと思う」

学校再開を前に一番、注意すべきことは?
(静岡厚生病院 田中敏博医師)
「朝調子が悪そうだったけれど何かの活動に出てしまった。部活動に行ってしまったケースはある。熱があるとか調子が悪いということがあるなら、その日は大事をとってお休みをしていただくのが一番大事かなと思う」
症状がある時やいつもと調子が違うと思った時は、お子さんのためにも周りのためにも休ませることが大切だという。

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米で子どものコロナ感染入院が最多に、デルタ株拡大で

2021.08.14【ロイター】

米国で14日、新型コロナウイルス感染症で入院した子どもの数が過去最多の1902人となった。南部では感染力の強いデルタ型変異株による感染拡大で、医療体制が逼迫している。

デルタ型は主にワクチン未接種者の人口の間で急速に拡大しており、ここ数週間で入院者が急増。厚生省によると12歳未満の子どもの入院が急増して過去最多に達した。

現在、小児の感染者は全米の入院者の2.4%程度。12歳未満の子どもはワクチン接種対象となっておらず、感染力の強い変異型に対して脆弱な状態だ。

米疾病対策センター(CDC)によると、今週には18─29歳、30─39歳、40─49歳の新規入院者も過去最多の水準に達している。
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最近、オリパラで学校観戦を認める向きで行政が動き出すと、メディアが一斉にデルタ株が広がって医療崩壊しかけているのにけしからんと集中砲火を浴びせています。また、メディアはNHKまで政府と専門家の意見の食い違いを報道しますが、医療業界の代表のような専門家と政治家の意見は違って当たり前です。

そもそも、医療関係者を一番先にワクチン接種した理由は、全ての医療が感染対応できるようにと優先接種したはずですが、いつまでたっても治療対応する医療施設が増えないことについては誰も報道しません。

時折、最も過酷な医療現場の映像と関係者を登場させて全体が危機に瀕しているようにも見せます。BSニュースでも米国の小児感染者の入院が相次いでいると報じ次は日本だとばかりに報道し、教員のワクチンやマスク装着の義務が米国全土で社会問題になっているかのように描きます。

しかし、最近はNHK以外の局によっては、今回の日テレのようにまともな現場医師の意見を取材して報道している様子もちらほら見かけるようになり始めました。日本小児学会デルタ株感染の子どもの症状はこれまでと大きな変化はないと公式に発表しています。

それにしても、ロイターが報じている子どもの感染入院増加(米国人口は3億3千万人)日本の現状とあまりにもかけ離れていますが、原因は二つ考えられます。一つは欧米人に比べて日本人の感染しにくさ重症化しにくさの「ファクターX」です。もう一つは、子どもの肥満やそれに付随する基礎疾患の違いだと思われます(米国児童肥満率42%、日本児童肥満率12% 世界子供白書2019)。

最近のメディアの流す情報の偏向ぶりは日米ともあまり変わらなくなってきました。疑問を感じたら実際のデータをネットで調べるしかないという人もいます。いつの間にか社会の公器が、視聴率さえ上げればいいという煽り報道に汚染されてきている現状を残念に思います。

「障がい」

熊谷俊人(千葉市長)について昨日コメントしました。支援学校の子どもが水遊びを自粛しても、台風で止まっている電力や水道は復旧しない。意味のない自粛の呼びかけは控えてほしいというものでした。この考えと同じようなツイートが4年前にもありました。


熊谷俊人(千葉市長)
▼「障害者」とは「社会の障害」でも「身体に障害を持つ者」でも無く、「社会との関わりの中で障害に直面している者」という意味であり、私たちはその障害を一つひとつ解消していくことが求められている、と理解しています 。
▼その考えから、私は「障害」を「障がい」と置き換えることには反対です。「障害」という言葉が引っかかるからこそ、それを社会的に解消しなければならないわけで、表現をソフトにすることは決してバリアフリー社会の実現に資するものではありません。2015年5月20日
▼表記を変えるべきとよく言われて、それに対応する時間を本来の障害者行政に割きたいので、表現を変えても意味が無いと申し上げただけです。2015年5月25日

2011年に提出された障害者基本法改正案に「障がい」を盛り込むために、かつての鳩山由紀夫内閣が設けた「障がい者制度改革推進本部」は、差別解消のために表記を「障がい者」とすることを議論しましたが、有識者らからは「『障害』が広く普及している」などの意見が出され、合意には至らず、改正案には盛り込まれませんでした。しかし、この流れからあちこちの自治体で「障がい」表記が増えました。

この流れに一石を投じたのが、先述した熊谷市長のツイートなのです。ポリティカルコレクトネス( political correctness)とは、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語をさします。看護婦ではなく看護師、保母ではなく保育士、スチュワーデスではなくキャビンアテンダント等です。障害ではなく「障がい」表記の流れもポリコレ運動の一つと言えます。

市長の意見は、今回の自粛発言と同じく、その議論に差別・偏見をなくす効果があるのか?というものでした。ポリコレがどうこうと言う前に、政府として決着を得た話に、ふたたび市役所が時間と税金をかけて「害」か「がい」かと議論していること自体に役所の仕事として意味があるのかと疑問を投げかけています。

 

 

帰省先知事の意見

吉村知事 帰省先知事の意見参考に…全国知事会の考え方の一覧表を投稿

8/11(火) 14:57配信【デイリースポーツ】

吉村洋文大阪府知事が11日、ツイッターに新規投稿。全国知事会の帰省についての考え方を一覧表にし、「参考にして頂ければ」と判断材料にしてほしいと記した。

吉村知事は「先日の全国知事会で、帰省に関して47都道府県の知事の考え方を一覧表にすべきと提案し、一覧表になりました。既に帰省済の方、これからの方、検討中の方、様々と思いますが、帰省先の知事の意見も参考にして頂ければと思います」と一覧表にした意図を示し、「いずれにしても感染防止策の徹底お願いします」と求めた。

吉村知事は一覧表において「帰省自体を自粛いただくことは求めていません。帰省にあっては、体調管理・感染症対策を十分に行っていただくようにお願いします。帰省した際は、宴会等で大騒ぎするような環境はつくらず、静かに親族と会ってお盆をお過ごしください」としている。

帰省先知事の意見

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帰省についての各知事の意見はバラバラです。帰省は慎重にと構えるのは東高西低です。テレビの東京キー局と在阪準キー局の主張の違いがそのまま出てきた感じです。煽りにあおる東京キー局・在名準キー局の放送圏域の知事の意見と、吉村大阪知事らがリードする意見を報道する在阪準キー局の関西圏では、知事の意見が異なるという事です。

人が移動すれば、感染が広がるのはある程度は仕方のないことです。ただ、お年寄りを除いてその症状は軽症か無症状がほとんどです。福島県では帰省する学生にPCR検査代を県が負担するとのことです。検査で陰性判定でも帰省するまでに感染する可能性はあるし、症状もないのにわざわざ検査しに行って感染リスクを高めることもないというのも一理あります。

メディアに惑わされず、家族全員健康が確認できるなら、故郷への帰省はそれほどリスキーな事ではないこと。そして、帰省先で感染リスクの高いところに行かなければ感染予防はできると在阪知事達は述べています。

ただ、どんなに正論であっても、マスクやトイレットペーパー、うがい薬の買占めが止まらないように、見えない事に恐怖する集団心理を鎮めることは難しいのものです。感染への恐怖感があるのにGO TO トラベルなど焼け石に水のような経済施策を打つよりも、感染禍が収束するまでは経済は確実に落ち込むのですから、経営困難で生活苦の方が出ないように会社にも個人にも資金援助をして感染恐怖が収まるのを待ったほうが現実的なのかもしれません。

 

「児相で抱え込まず、多機関で子どもを守って」 大津・女児暴行死

「児相で抱え込まず、多機関で子どもを守って」 大津・女児暴行死でNPOが要望書

2021年8月18日 【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとされる事件を受け、子どもの虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」(東京都)は18日、虐待が疑われる事案について、児童相談所(児相)や市、警察などの関係機関が情報を共有し連携体制を整えることを求める要望書を、滋賀県や県教育委員会などに提出した。

兄妹は7月21日未明、自宅近くのコンビニにおり、警察が保護。連絡を受けた大津・高島子ども家庭相談センター(県の児相)は「ネグレクト(育児放棄)の疑いがある」として、母親と8月4日に面談予定だったが、妹は同1日に死亡。兄は7月下旬~8月1日ごろ、妹に暴行し死亡させたとして、傷害致死容疑で逮捕された。

要望書では、今回の事件で、児相は兄妹の保護後、直ちに警察に家族の情報を提供し、早急に合同で家庭訪問して妹への暴行の有無を確認するべきだったと指摘。事件を教訓に、疑いを含む全ての虐待案件の情報を、児相と警察、市町、学校などの関係機関が共有し、子どもの安全確保を図る体制を、県に構築するよう求めた。

同法人代表理事の後藤啓二弁護士(62)は「児相だけで案件を抱え込んでは虐待は防げない。常に多機関と情報を共有し、ベストな体制で子どもを守ってほしい」と話した。

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「全て私が悪い。ネグレクトというならそう。私の責任」大津女児暴行死、母親が取材に

8/14(土) 【京都新聞】

大津市の自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとして、兄の無職少年(17)が傷害致死容疑で逮捕された事件で、兄妹の母親が13日、同市内で京都新聞社の取材に応じた。事件について「全て私が悪い。兄に妹の面倒をみさせてしまった。私の責任だと思っている」などと述べ、親としての責任を初めて口にした。

捜査関係者らによると、兄妹と母親は4月から同居していたが、母親は家を留守がちにしていたといい、滋賀県警は、ネグレクト(育児放棄)も背景にあるとみて、3人の生活状況の解明を進めている。少年の逮捕から同日で10日が過ぎた。

母親は、娘(妹)の名前の書かれた植木鉢などが並ぶ自宅前で、兄妹の名前を挙げながら、「全部、私が悪い。兄に妹(の面倒)をみさせてしまった」と話し、「それをネグレクトというならそう。私の責任やと思っている」と、途切れ途切れに話した。

捜査関係者らによると、母親は事件当時、家を留守がちで、事件が発覚した今月1日までの数日間は一度も家に帰らず、その間は兄妹は事実上2人だけで暮らし、一日に千円ほどで生活することもあったという。

兄妹は京都と大阪の別々の児童養護施設で育ち、妹が小学校に入学した4月以降、3人は同居を開始。当時の生活状況について、母親は、仕事で大阪に行くことがあったと言い、外出時には兄妹からは「早く帰ってきて」とせがまれたと明かした。幼い妹は「いかんといて」「一緒に行く」とすがることがあったといい、「(2人とも)一日(自宅を)離れても言うてたし、一日以上離れたらやっぱり…」とうつむいた。

そして、少年に対しては「申し訳なかった。まだ子どもやったんやな。妹をちょっとかわいがり過ぎた」と、自責の念を吐露した。

少年の逮捕容疑は、7月下旬~8月1日ごろ、自宅で、妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、死亡させた疑い。県警のこれまでの調べに対し、少年は容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」「妹からちょっかいを出され、かっとなった」との趣旨の供述をしているという。少年は1日、市内の公園で「妹がジャングルジムから転落した」と救助を求め、事件が発覚した。

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大津女児暴行死、母子3人同居は適切だったのか児童相談所の対応検証へ

2021年8月14日【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させた事件で、滋賀県子ども・青少年局は13日、大学教授や弁護士、医師など専門家7人による「児童虐待事例検証部会」を今月内にも立ち上げる方針を明らかにした。

大津・高島子ども家庭相談センター(県の児童相談所)の説明では、3人の同居後、センターは月に1回程度、家庭や学校を訪問。その中で、虐待など家庭内トラブルの話は出ず、母親は兄妹について「関係は悪くなく、兄は面倒見が良くて頼りになる」と話していたという。

しかし、結果として事件が起きたため、同部会は原因を究明し、再発防止策を検討する。委員7人が児童相談所や大津市など関係機関の家庭への関わりが適切だったかなど課題を抽出し、再発防止策をまとめる。母子3人の同時期の同居を決定した判断が適切だったかも、議題となる可能性があるという。

少年の逮捕容疑は、7月下旬~8月1日ごろ、自宅で、妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、死亡させた疑い。県警のこれまでの調べに対し、少年は容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」「妹からちょっかいを出され、かっとなった」との趣旨の供述をしているという。少年は1日、市内の公園で「妹がジャングルジムで転落した」と救助を求め、事件が発覚した。

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死亡女児の兄「妹の世話がつらかった」暴行認める供述滋賀・大津

2021年8月7日 【京都新聞】

大津市の無職少年(17)が自宅で小学1年の妹(6)を暴行し死亡させたとされる事件で、傷害致死の疑いで逮捕された少年が、滋賀県警の調べに対し、容疑を認め、「妹の世話をするのがつらかった」との趣旨の供述をしていることが6日、関係者への取材で分かった。母親は留守がちだったといい、県警は家庭状況や暴行の動機などを詳しく調べている。

大津・高島子ども家庭相談センター(児童相談所)の説明では、兄妹は家庭の経済的な理由などで県外の別々の児童養護施設で育ち、妹が小学校に入学した4月から母親と3人暮らしの生活となった。

少年は母親の代わりに妹の面倒をみて、近所の住民は妹とボールなどで仲良く遊ぶ姿をたびたび目にしていた。一方、暴行があったとされる時期に近い7月21日未明、兄妹が自宅近くのコンビニを訪れたため、同センターは「ネグレクト(育児放棄)の疑いがある」などとして、今月4日に母親と面談する予定だった。

少年は7月下旬~8月1日ごろ、大津市内の自宅で妹を殴ったり蹴ったりし、右副腎破裂やろっ骨骨折などを負わせ、外傷性ショックで死亡させた疑いで、4日に逮捕された。関係者によると、少年は、だだをこねるなどした妹にかっとなった、との趣旨の供述もしているという。県警は当時の詳しい状況を調べている。

事件が発覚したのは1日。少年はこの日午前、妹が同市内の公園のジャングルジムで転落した、と近隣住民に助けを求め、意識不明だった妹は搬送先の病院で死亡が確認された。県警は司法解剖の結果などから転落した事実はないと判断している。

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無職少年は、高校も行けずに家で暮らし、その少年が二人で一日1000円の食費で妹を見ています。この少年は広義ではヤングケアラーです。未明とは午前0時から午前3時頃、小1の妹を連れ出す時間ではないことくらい兄は分かっていたはずです。

それでも連れ出しているのは、尋常ではない事がこの子たちの家庭に起きており、保護すべきだと素人でも判断できます。或いは、兄が非常識が分かっていないと担当者が判断した場合も、そんな兄と一緒に家に帰してはまずいと考えるはずです。どちらにしても家に帰してはいけないと判断できたはずです。

「母子3人の同時期の同居を決定した判断が適切だったかも、議題となる可能性がある」から、「児童虐待事例検証部会」を今月内にも立ち上げるとのことですが、そんな会議を持たなくても不適切な判断であったのは自明の理です。

いったい誰のために会議を持つのでしょうか。役人の言い訳の場を作っているようにしか見えません。会議を持つことを発表するより、所長や市長が担当者の判断の非を認めて謝罪し、速やかに担当者や責任者の更迭措置を発表する事が第一に必要です(これは世間の常識です)。大津はいじめ事件でも第3者会議で担当者が責任を免罪されているとの批判がありました。行政が絡む深刻な事故の場合は、行政自らが招集する第3者会議で公平性が担保できているとは、とても思えません。行政の未必の故意※は、違法行為だと自らを厳しく律する姿勢がないと、いくら第3者会議をしても役人を守るだけで、担当者の脇の甘さから起こる重大事件がなくなるとは思えないからです。

※未必の故意
未必の故意は法律用語であり、「行為者が自らの行為から罪となる結果が発生することを望んいるわけではないが、もしそのような結果が発生した場合それならそれで構わないとする心理状態」を意味する概念である。「未必的故意」ともいう。

効果のでないスケジュール

放課後等デイサービスでは、絵カードを用いたスケジューリングが行われている事が少なくありません。しかし、これが多くの場合あまり機能していないのではないかと感じています。大人はある程度1日のスケジュールを頭にイメージして行動しています。ASD児にとってのスケジュールの必要性は大人のそれとは違います。ASD児の多くは『突然』だったり『変化』だったりに対処することが苦手です。そして、その不安に押しつぶされそうになりパニックを起こしたり、易刺激性(些細なことですぐに不機嫌になる)を発揮させてしまいます。予めスケジュールを立て、見通しを持ちやすくすることで『突然』や『変化』という『不安』を極力減らしていこうというものがスケジュールです。大切なのは『個別性』。見通しが持てず不安になる子どもへの支援としての『スケジューリング』は必要なのです。

しかし、折角作ったそのスケジュールが機能的に使えていない場合が多いように思います。ただ貼ってあるだけのスケジュール、子どもは毎回同じ繰り返しなので見向きもしていないスケジュールはよく見かけます。スケジュールの目的は、忘れたり漏れを無くす為に用い、円滑に生活を送っていくために必要なものです。放課後等デイや自宅・学校で行うスケジューリングが将来、社会人としてスケジュールを確認し仕事や友人関係を円滑に行っていくことに繋がっていくように取り組むのです。子どもの予定を支配するために、おとなしくしてもらうためにあるのではないのです。スケジュールを機能的に用いるというのは、将来役立つ形で用いるということです。

支援とは日々の工夫があって生きてきます。もちろん、支援作業をルーティン化して効率化することは仕事には欠かせません。だけど、意味のない支援になってしまっては元も子もありません。だから、子ども達への支援は常に、将来にも役立つことをイメージしておく必要があります。自閉症支援では『予防』という考え方を一番重要視する必要があります。かつて「言葉がわからなくても言葉をかけてあげてください」「少し様子を見ましょう」という鉄板のフレーズで地域で暮らせない行動障害の山を作った歴史を忘れてはいけません。子どもたちにとっての予防とは、大人になった時に生活しやすいスキルを身につけておくことであり、保護者の方の心配を極力減らすことです。全ての支援は子どもたちの発達に繋がり、適切な習慣づくりに役立って意味を成します。スケジュールの使い方については間違った使い方があちこちで散見されるので機会を見てまた書きます。

「障害」は当事者と周囲との間にある

前回、大阪市の自治会役員に関わる自死事件での親族の訴訟について、「人権を守る方法 07/31」 という視点で掲載しました。今回の産経の主張は合理的配慮の考え方をスロープや点字のように民間に広げる努力が必要だということでした。ただ、目に見えない障害への配慮については、障害があるから免除できるというだけで、本当の障害の理解にはつながりません。つまり、GOMESSが「GOMESSが託した思い 08/03 」で言うように、想像する側の理解力が必要になるのです。障害は当事者と周囲の人の間にあるものという考え方が必要だと思います。
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「おかねのけいさんはできません」障害ある男性の自殺が与えた衝撃
障害者への合理的配慮とは

8/15(土) 20:00配信【産経新聞】

精神障害などがある大阪市の男性=当時(36)=が昨年11月に自殺した。遺族は、居住する市営住宅の自治会の次期班長選びをめぐり、男性に障害の有無などを記した文書作成の強要があったとして、当時の自治会長らを提訴。《しょうがいかあります(原文ママ)》《おかねのけいさんはできません》。社会福祉協議会の担当者も同席していた場で男性が書かされた誤字交じりの文章は、社会に大きな衝撃を与えた。男性はなぜ死を選んだのか。経緯と主張を振り返る。(杉侑里香)

■手帳も見せた
訴状によると、問題の発端は昨年11月18日、1人暮らしをしていた男性宅に入っていた一通の“お知らせ”。「来年度の自治会の班長決めを12月1日に行う」「くじで班長が当たっても変更はできない」との内容だった。

身の回りの簡単なことはできるが、人と接することを苦手としていた男性は、当時の自治会会長に障害者手帳などを見せ、班長ができない旨を伝えた。だがその後、当時の班長から「特別扱いはできない」と告げられ、12月の集まりに来るよう求められた。困った男性は区役所やケースワーカーに相談。地域の社会福祉協議会の担当者が「12月の集まりには私が参加し、あなたが班長をできないことを説明する」という話で落ち着いた。

だが11月24日、事態は急転する。男性は市営住宅の集会所へ呼ばれ、社協担当者と会長、班長の4人で話をすることになったのだ。そこで約2時間後に完成したのが、《しょうがいかあります》の一文から始まる文書だった。男性は自治会側から「当面は班長をしなくていい」との旨の説明を受けた一方、12月の集まりには参加するよう求められた上、文書を他の住民に見せることも告げられたという。男性は翌日、自宅で自殺した。

■自治会側は「男性も了承」
男性の両親は会長と班長、自治会に計2500万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴。今年7月31日、第1回口頭弁論が開かれ、被告側はいずれも争う方針を示した。被告側は答弁書で、男性が班長をできない事情を理解していたが、「公平な自治会運営のためには、くじから外すことを他の住民にも理解してもらう必要があった」と主張。ただ、住民に事情を直接説明することを男性が嫌がったため、「ストレスの少ない方法」として文書作成を依頼し、「男性は特に嫌がることもなく了承した」との認識を示した。また文書は4人で確認を進めながら完成させたものであり、強要や自殺との因果関係はないとも強調した。

■自殺前夜「さらし者」
こうした被告側の主張に、遺族は強く反論する。自殺前日の夜に食事をともにした兄(41)は「『根掘り葉掘り書かされた』『さらし者にされる』と弟は落ち込んでいた」と明かす。男性は障害があることを周囲に知られるのを嫌がっていた。兄は「そんな弟が、自ら進んでこんなことを書くはずがない」と憤る。

文書には《おかねのけいさんはできません》《1たい1ではおはなしできます》《ひとがたくさんいるとこわくてにげたくなります》といった個人の特性だけでなく、《自てんしゃにはのれます》《せんたくはできます》など、自治会業務との関係性が不明な記述もあった。遺族は、こうした内容を無理に書かされたり、他の住民の前での公開を告げられたりしたことが過度な心理的負担となり、自殺に追い込まれたと考えている。

■合理的配慮とは
裁判や男性直筆の文書が報道されると、ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で反響が広がった。《自治体に共生の理念はないのか》《気の毒すぎる》。男性に同情したり、自治会側を批判したりする声が大半を占めた。

平成28年に施行された障害者差別解消法。健常者を基準とした社会環境の中にある、障害者にとっての社会的障壁を取り除くことに努める(合理的配慮を行う)よう求めるものだ。具体的には段差などの物理的なものに限らず、精神障害の人に落ち着ける環境を提供したり、優先順位をつけて物事を伝えたりするなどの工夫や配慮も含まれる。ただ、こうした障害者への合理的配慮は、今も十分な理解が得られていないとの見方もある。

「(合理的配慮を)『特別扱い』と混同し、つるし上げるような風潮は今も根強い」。精神障害者の家族でつくる全国精神保健福祉会連合会(東京)の小幡恭弘事務局長が指摘する。小幡氏によると、背景にあるとみられるのは、新型コロナウイルス禍で浮上した「自粛警察」に代表されるような同調圧力。「みんな嫌なことを我慢しているのに」という一方的な気持ちだ。その上で小幡氏は「『できない』と『やりたくない』は全く違う。できない理由を並べるのではなく、それぞれが他の人の立場に立って助け合えるようになれば」と求めた。

旭川中2死亡 尾木直樹氏「市長の立ち位置が重要」

旭川中2死亡尾木直樹氏「市長の立ち位置が重要」

2021/8/22 【毎日新聞】

北海道旭川市で今年3月、中学2年だった女子生徒(当時14歳)が遺体で見つかった問題で、生徒の母親の手記が報道機関に公表された。学校を訪れ、いじめを訴える母親に対し学校側は「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか」と迫っていたことが明かされるなど、その内容に批判が広がっている。「1人の被害者」はないがしろにされていいのか。長年いじめ問題に取り組んできた教育評論家の尾木直樹さんに聞いた。【山下智恵/デジタル報道センター】

概要は次のようなものだった。北海道旭川市で今年3月、中学2年の広瀬爽彩さん(当時14歳)の遺体が見つかった。死因は低体温症だった。


広瀬さんは2019年6月には旭川市を流れる川に飛び込み教師らに保護されていた。母親は、いじめがあったとして学校側に度々相談していたが、学校や旭川市教委は19年9月に「いじめと認知するまでに至らなかった」と結論づけていた。

今年4月、「文春オンライン」が一連の経緯を報道。全国から学校などへの批判が殺到し、市教委は学校からの報告と報道内容が大きく食い違っていたとして、いじめ防止対策推進法の「重大事態」にあたると認定。5月に第三者委員会を設置し、いじめの有無などについて調査している。


――いじめを訴える母親に学校側は、いじめを否定したうえで「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか。どっちが将来の日本のためになりますか。もう一度、冷静に考えてみてください」(手記引用)と言ったとされ、批判が広がりました。

◆手記の内容がそのままだとすると、学校側は勘違いをしています。加害者か被害者かではありません。もちろん、一番不幸なのは亡くなった被害者です。一方で、加害者も価値観がゆがんでしまい、人の気持ちに共感する能力を持たないまま大人になってしまう。そのまま成長して通用するほど社会は甘くはありません。

加害者を、人の心に共感できないまま大人にしてはいけない。また、大勢いる傍観者にも苦しんでいる子を救えなかったという思いを抱かせたまま大人にしてはいけない。それが加害者側の学び、成長する権利を学校が保障することになるんです。自ら行ったことから目をそらさせ、触らないことが加害者を守ることではありません。

いじめ問題で得をする人はいません。そこの学びに責任を持っていることを教育関係者には自覚してほしいです。

手記によると学校側は、いじめを訴えて何度も助けを求めた被害生徒や母親に対し、いじめを否定し続けた。なぜそんなことをと思います。教員の多忙化や学校現場の閉鎖性、さまざまな要因が推測されるが、発言者個人を責めるより、なぜ学校社会がそういうことを言ってしまうかを考える必要がある。

――手記には母親がいじめを訴え、それが否定されたことが明かされています。対応の問題点はどこにあるのでしょうか。

◆いじめとは何かという出発点の定義がおかしいのです。この学校では定義がかつての古いままで更新されていないように見えます。

国が定めるいじめの定義ですが、1986年度からは「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているもの」としています。主語は加害者で、学校が認知したものがいじめです。

06年度から「いじめとは、当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」として、主語が被害者になりました。被害者が訴えたらいじめと認定しましょうと180度変わり、その後の定義にも引き継がれています。本人がいじめられたと認知し訴えたら、そのまま受け止めて、学校は動きましょうと、こういう定義に変わりました。

ですが、手記によれば学校側の対応は86年度のままですね。学校が「いじめはない」と言うのですから。特に今回は生徒が川に飛び込むという異常事態の直後です。加害生徒について、あの子がそんなことをするはずがないと思うのは自由ですが、加害生徒にも被害生徒にも、話をしっかり聞かなければならない。第三者委員会を設置して真相を究明していかなければいけない。

定義の変化だけでなく、13年度に成立・施行した「いじめ防止対策推進法」や文部科学省が17年に定めた「いじめ防止ガイドライン」の把握ができていないと思います。

――手記からは、旭川市が5月に設置した調査のための第三者委員会への不信感も読み取れます。

◆11年10月に大津市で中学2年の男子生徒がいじめによる自殺をした件の第三者調査委員会に、遺族側推薦の委員として参加しました。調査報告書の中に、第三者委員会のあり方も盛り込みました。公正・中立・独立の観点から自治体と関係の無い団体に推薦を依頼する必要があることなどです。

ですが、旭川市が公表した第三者委員会のメンバーは、地元の旭川や北海道に関わりのある方ばかりです。地元に影響があるとバイアスが掛かってしまうのは人間の必然です。最低限、地元の旭川の人は除外しないといけない。大津市の第三者委員会は滋賀県の出身者は一人もいませんでした。地元の人がいれば必ず被害者や加害者とどこかでつながりが出てきますから、客観的な調査になりません。

また、母親の手記で「第三者調査委員会は、だれが、どこで、どんな調査をしているのか、全く公にしていません。貴重な情報を持っている人がいても、これでは、情報を提供する先がないに等しいと懸念しています」との不信感が出るのも、遺族に寄り添うことに立脚できていない深刻な問題です。

――今後の調査のあり方はどうあるべきでしょう。

◆大津市の教訓から言うと、実は市長の立ち位置はすごく重要です。市長が遺族に寄り添って真相を解明するぞという姿勢に立てるか立てないか。いま、遺族には第三者委員会への不信感がある。だったら、例えば遺族側から担当弁護士など2人でも3人でも推薦してくださいと、市長が提案するだけでも建設的に前進していくと思います。

そして、生徒への調査について、私の経験では、2時間3時間でも向き合えば生徒には話が通じると思いました。加害者の親にはなかなか話が通じない場合が多いですが。大津市の調査では多くの生徒たちがすごく協力的で、勇気を出して次々と教えてくれた。この協力に応えなくてはという強い思いが第三者委員会のメンバー全員の出発点でした。そういった気持ちで、旭川市の調査も進んでくれたらと思います。

(※インタビュー直後の8月20日に旭川市の西川将人市長は市教育委員会に、調査の進捗=しんちょく=状況を遺族に伝えるよう要請しました)

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多大なコストと時間を投入しながら、結果として、不祥事からの脱却や社会正義を回復できなかった第三者委員会の事例は、枚挙にいとまがありません。それは、第三者委員会の委員選任の不透明性や委員自体の不適格性、的外れの調査目的の設定、さらには、真因にたどり着けない調査手法の不当性等、課題が山積みされたままだからです。

不祥事を起こした行政が委員を指名する場合、直接間接に利害関係のない人を指名する事こそ、そもそも無理があります。不透明な委員選出や会議をするくらいなら、民事で裁判を行う方が批判と擁護の関係がはっきりして、内容もすべて公開されるので誰にも理解しやすいです。

執行権限のない第3者委員会の意見があっても、強制力のない意見に、従うも従わないも行政の長の胸一つであるなら、最初から行政の長が決断すればいいのです。首長の判断の社会的責任は、投票と言う形で問われると言う帰結がありこのほうが明快です。

大津の女児死亡事件で担当者と責任者の更迭発表が先だと書きましたが、直接にせよ間接にせよ損害を起こした関係者を最高責任者の指示で更迭人事を行うのは社会では当たり前です。民間がそうするのは、放置すれば自社の信頼が失われ企業の存続にかかわるからです。

行政機関の責任の不感症はこの違いから生じます。だからこそ、部署全体の人事を入れ替えるほどの厳しい人事更迭を行う規律をもつべきだと思います。尾木直樹氏の意見は、個人を責めても解決しないと言いますが、尾木氏も関係した第3者委員会を開いた大津市で部署こそ違うとはいえ、同じ自治体管轄内で女児が死亡しているのは、個々の役人の姿勢とは関係のない不可抗力でしょうか。少なくともいじめ事件での第3者委員会の「予防的な対処」という提言が児童福祉の現場で生かされていないから事件が起こったのだと思います。

そもそも地方自治体には行政と議会という場所があるのに、この行政と議会が癒着し議会が機能しないから、民間を真似して第三者委員会が重宝されているとも考えられます。しかし、第三者委員会はこれまでに述べたように課題が多すぎます。尾木氏のいう市長次第というのはその通りですが、第3者委員会への市長の関与を言うなら筋違いです。市長は速やかに組織責任を果たすのが第一です。個別の事実関係は司法で明らかにしたほうが良いです。議会は再発防止を行政に正せばよいと思います。

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocess...

名大、睡眠中に記憶消す神経発見 起床直前の夢、忘却に関与か?
共同通信社 2019/09/20
レム睡眠と呼ばれる浅い眠りの間に、記憶を消す働きを持つ神経細胞を発見したと、名古屋大の山中章弘教授(神経科学)らのチームが19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。起きる直前に夢を見ても、すぐに忘れてしまうのは、この神経が働くためかもしれないという。夢には記憶を整理する機能があるとされるが、とっぴなストーリーのような副産物も生じる。山中教授は「脳は睡眠中に重要でない記憶を消し、次の記憶に使える容量を増やしているのではないか」と話した。

この記事をみて、「やっぱりそうだったかー!!」と驚く人は、トラウマ治療に深い関心がある人です。EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、科学的に根拠のある心理療法と言われています。また、他の精神科疾患、精神衛生の問題、身体的症状の治療にも、学術雑誌などに成功例が詳細に記述されています。とはいうものの、この山中教授のような実験結果ははじめてなのです。記憶を消すメカニズムがやっとわかりそうだという事です。

例えば、震災でトラウマを負った方は。不安なことがあると地面が揺れているように感じたり、自分の意志と関係なく当時の凄惨なシーンが蘇ったりするPTSDで苦しみます。そこでEMDRを使って治療を行います。対象者は一つのトラウマ(悩まされている恐怖体験)のエピソードを頭に思い浮かべます。治療者は対象者の顔の前に指を立て、腕を左右に振り、対象者はその指先を目だけを動かして見続けてもらいます。これで目の眼球は左右に動きます。基本的にはそれだけです。そうすることにより、トラウマ記憶がどんどんと変化していきます。そして、それにともなって、トラウマ記憶にともなう認知や感情、身体感覚も変化していきます。

1990年に発表されたEMDR。嘘だろうと最初はだれもが思いました。フランシーン・シャピロという人物はとんでもないエセ心理士だという人もいました。ただ、浅い睡眠時のレム(REM:Rapid eye movement:急速眼球運動)睡眠は記憶の整理をしているという仮説は広く知られていました。「眼球運動と記憶の理屈は合っている」と考えた精神科医や心理士がやってみるとうまく治療できたケースが多かったのですが、それがどうして有効なのか物質的な証拠が見つからなかったというわけです。そして今回、その証拠かもしれない神経細胞が見つかったというのですから、30年前のシャピロの仮説が証明できるということです。

科学は根拠から出発しますが、根拠が見つからないものもあります。むしろその方が多いのかもしれません。それでも人は直感と経験を頼りに実践を切り拓きます。そして、誰でも同じ効果が得られて長く持続できたものが生き残ります。これを一枚一枚はがすように説明するのが科学の面白さでもあります。

インチュニブ

最近インチュニブを服薬されている利用者が増えています。そもそも、どういう子どもに使われどういう効果があるのか調べてみました。

インチュニブは、グアンファシン塩酸塩という薬の商品名のADHD治療薬です。グアンファシンという成分が脳の情報伝達機能を助け、ADHDの多動性、不注意、衝動性の症状を改善する効果があります。日本で製造販売が承認され、販売が開始されたのは2017年5月ですが、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは以前からADHDの治療薬として、コンサータ、ストラテラと共に使用されてきました。インチュニブは、患者の体重、症状、薬の効き方を踏まえて飲む量を決めるので、医師の処方が必要です。また、処方される年齢は6歳~と決められています。従来の薬とは違う作用で働くため、ストラテラやコンサータでは効果を感じられなかったり、副作用などにより継続できなかった人への効果が期待されています。

インチュニブが働く仕組み
ADHDの原因は解明されていませんが、脳の前頭前皮質という部分での情報伝達に問題があるとされています。中でも、シナプスという情報の送受信をする部位がうまく働かないことが原因の一つではないかと言われています。そのため、外から入ってきた情報をうまく取り込んだり処理をしたりするのが難しく、自分の注意や行動をコントロールできなくなると考えられています。そして「落ち着きがない」「注意が長続きしない」「衝動的に行動してしまう」といった”多動、不注意、衝動性”の症状としてあらわれます。

ADHDのある人の中には、図のように後シナプス(情報を受け取る側)に伝達された情報が漏れ出てしまい、神経伝達量が減少してしまっている場合があると考えられています。インチュニブの役割は、後シナプスの情報の取りこぼしを減らすことです。インチュニブの主成分であるグアンファシンが、後シナプス中のアドレナリン受容体という物質を活性化させることで、シナプス内のHCNチャネルという穴を塞ぎ、入ってきた情報を漏れにくくさせます。その結果、より多くの情報を伝達できるようになり、覚えられる情報の量や、その持続力も高まります。その結果、多動、不注意、衝動性といった症状の改善に繋がるのです。

コンサータやストラテラとの違い
コンサータやストラテラの方がインチュニブより早くADHDのお薬として使われていました。インチュニブが後シナプス=受け手側の問題を治療するのに対して、この二つのお薬の仕組みは前シナプス=送り手側の問題を治療します。コンサータはドーパミンという伝達物質を前シナプスが再取込する穴を塞ぎます。ストラテラはノルアドレナリン(ドーパミンの化合物)という伝達物質を前シナプスが再取込する穴を塞ぐのです。

簡単に言えばこの二つは前シナプスの伝達物質の再取込穴を塞いで後シナプスへ伝達物質を多く送る働きをし、インチュニブは後シナプスで情報が漏れないようにする働きと言えます。つまり、狙いは情報が伝達するように伝達物質を一定量に確保することですが、働きかけているところが違うのです。また、インチュニブは「攻撃性」を抑えるための働きが良いと言われています。体重減少など小児には厄介な副作用がインチュニブには少ないという理由で、まずはインチュニブから試す医師が多いようです。

インチュニブの用法・用量
インチュニブは1日1回服用する薬です。飲む量は、医師が体質、症状、薬のきき方などをもとに決めます。飲む時間帯はなるべく決まっていたほうが良いでしょう。最初は副作用などを確認するために子どもなら1mgから開始し1週間をおいて1mgずつ増減せせます。体重によって服薬量は決まりますが、例えば体重34kg以上42kg未満は4mg、75kg以上は6mgが最大量です。他薬とインチュニブと併用すると、効果が変わったり、副作用が出たりする薬や食品があります。もともと服用している薬がある場合や、インチュニブを服用しながら他の薬を服用することになった場合は、主治医に相談しましょう。

以下がインチュニブとの併用に注意すべき薬の一例ですので、確認してみてください。
・中枢神経抑制剤
・インチュニブの血中濃度を通常よりも上げる可能性のある薬(イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン など)
・インチュニブの血中濃度を通常よりも下げる可能性のある薬(リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン など)
・血圧を低下又は脈拍数を減少させる作用のある薬(降圧剤,ジギタリスなど)
・バルプロ酸(バルプロ酸の血中濃度が増加する可能性がある)
・アルコール

副作用
傾眠(眠気)が50%以上の割合であらわれます。ひどい眠気が続いたり、昼間からうとうとして仕事や学業に支障がでるようでしたら医師とよく相談してください。頻度は少ないですが、もっとも重要なのが低血圧と徐脈です。インチュニブはもともと高血圧のお薬(降圧剤)として開発されたものだそうです。多くは軽度ですが、なかには失神するほどの重症例も報告されています。ふらつき、立ちくらみ、息切れ、意識低下といった症状に注意が必要です。その他にも、頭痛、倦怠感、気分がしずむなどの副作用が報告されています。

「学校に行きたくない」大人は受け止めて

新学期 いま、あなたへ
山崎聡一郎さん 「学校に行きたくない」大人は受け止めて

2021/8/24 【毎日新聞】

小学校高学年の時、友人をかばったことで同級生に悪口を言われ、暴力を受けました。下校中に後ろから蹴られて歩道から農道に落ち、左手首を骨折しましたが、ほぼ毎日学校へ通いました。休めば自分が悪いような気持ちになりました。行かない選択肢はないも同然。「学校に行かなければ」というプレッシャーが一番つらかった。

同級生と離れたくて中学は私立に進みましたが、今度は加害者になりました。部活で部長を務めていた3年生の頃に後輩の一人が来なくなり、活動に支障が出たため全員で話し合う場を設けました。後輩は来ませんでしたが、退部させることを決めました。後で先生はこう言いました。「大勢で1人を追い詰める、いじめだよね」。後輩に謝り、関係は修復できました。加害者にはならない自負がありましたが、いとも簡単に、なり得ると知りました。

いじめの経験を経て、小学校の時に「人権って何だろう」と考えるようになりました。さまざまな法律が載っている本が読みたくて六法全書を手に取るようになりました。法律で、殴ってけがをさせることは傷害罪にあたる、などと書かれているからといっていじめが起こらないかといえば、それほど単純ではありません。ただ、法律を守れば起こりにくくなる可能性はあります。「いじめ防止対策推進法」は加害者を被害者とは別の場所で勉強させるなどして、被害者が安心して学べる環境を整えるよう明記しています。子どもも大人もそういう法律の知識を持つことも大切です。

もし、子どもに「学校に行きたくない」と言われたら「いいんじゃない?」と受け止めてあげてください。勉強が遅れることや将来に響くかもしれないことに、親は不安になるかもしれません。学校は理不尽さを学ぶ場だという意見もあります。でも、殴られる、ののしられるといった理不尽さなら、そんなことを体験する場所ではありません。

新型コロナウイルスの感染が広がるまでは、子どもたちに「助けを求めて」と伝えてきました。今は大人のケアも必要だと感じます。ストレスやつらさを抱えたままでは子どもに当たってしまい、追い詰めてしまう。大人も周りに助けを求めていい。それは子どもの安定にもつながるはずです。【聞き手・田中理知】

いじめ防止対策推進法
2011年に大津市の中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した問題を受けて成立し、13年9月に施行された。いじめを「児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、防止対策について国や自治体、学校の責務を明記している。

山崎聡一郎さん略歴
1993年、東京都生まれ。慶応大で「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究。在学中に法教育副教材「こども六法」を製作し、書籍化された。教育研究者や俳優など幅広く活動し、子どもに法教育を教える学習塾を今年開校した。
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発達障害のある子どもたちは新学期をどう感じているのでしょう。利用者の小学生に夏休みの宿題の進捗を聞くと、「まだ半分しかできてない」と言う子もいました。「やばい。でも、テレビで夏休み延長するって言ってた」と、目を輝かせて言うので「あれは高校だけやで」と返すと、「まじかー」とうなだれていました。本当は学校行きたくないんじゃないのと聞くと、こくりと頷きます。

ASDの子どもは社会性の発達が遅れるので、中学年以降にちょっと自分は集団から浮いているなーとか、友達から嫌われているんじゃないかなーと感じて登校渋りが始まります。集団の前でも、それまではみんなのアイドル「不思議ちゃん」だった彼らが、少し自信を失い友達への反応も悪くなって、それを周囲がいじるという形でいじめの芽が出てくる場合もあります。

ある利用者の女子は、中学年以降登校渋りが起こり、高学年になってからは教室ではほとんど話さなくなったと言います。いじめる奴らもそれを見ぬふりする人も馬鹿だから話さないというのが理由です。読み書き障害もあり知的な遅れはないのに、じりじりと学力は落ちていきました。授業中は漫画を描いて一日を過ごします。何が目的で学校に行くのか聞くと、学校が嫌だと言えば親が悲しむし、中間休みや昼間休みの男子とのドッチボールは、話さなくても楽しめるのでそれだけを楽しみに登校していると、聞いているだけで私の胸が張り裂けそうでした。

子どもへのソーシャルディスタンスの要請は、遊びの共感性を薄め、笑い合ったりぶつかったりして育む友情の機会を狭め、マスク利用はただでさえ表情の読み取りの弱い彼らの人への誤解を増やします。日本中がマスクをしていたのに感染が増加しています。つまり、飛沫感染を理由にしたマスク予防の効果はなかったのです。学校内でのマスク使用についてアメリカでは義務化にしてはどうかという州もあるようですが、対人理解発達のデメリットが大きいという議論に何故ならないのか不思議です。

一方で、ソーシャルディスタンスやマスクのおかげで、対人交渉の頻度が減り、いじられることが少なくなって助かっているASDの子どももいます。マスクは感覚過敏で嫌がる子もいますが、大きなマスクで顔を覆う事で安心感を得ている子どももいるので、発達障害の子どもにとってはどちらがいいとは一概に言えないようです。乙訓は明後日から始業式。学校に行きにくくなった子どもが出てきてもそんな時もあるよと、子どもの言葉に耳を傾けたいと思います。

お彼岸

昼と夜の長さがほとんど同じ長さである秋分の日は、お彼岸の中日にあたります。例年9月23日ごろが秋分の日です。秋分の日は、1948年に公布・施行された「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」とされています。 戦前、秋分の日は「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」と呼ばれていました。秋季皇霊祭とは、毎年秋分の日に宮中で、歴代の天皇や皇族の神霊をまつる儀式です。その後、庶民の間にも徐々に広がり、戦後「秋分の日」と改名されました。

秋分の日の正確な日程は、国立天文台が作成する「暦象年表」に基づいて閣議で決定されます。そのため、必ず9月23日が秋分の日であるわけではありません。天文計算上、秋分の日は2044年まで9月23日です。(うるう年に限り9月22日)

お彼岸は年に2回あり、春分の日にあるお彼岸を「春彼岸」、秋分の日にあるお彼岸を「秋彼岸」と言います。「彼岸」とは先祖がいる「極楽」を指します。反対の「此岸(しがん)」とは私たちが生きている世界のことです。仏教では、彼岸は西に位置し、此岸は東に位置すると考えられています。春分の日と秋分の日は太陽が真東から昇り真西に沈むため、彼岸と此岸が最も通じやすい日と考えられました。

「暑さ寒さも彼岸まで」というように、お彼岸は季節の変わり目を感じることができる日です。農耕生活が中心だった時代、日本人は太陽を崇拝しており、気候が良いお彼岸は五穀豊穣を祈願する絶好の時期でした。春分の日は種まきが始まる時期で、秋分の日は収穫の時期です。そのため、春には収穫を祈り、秋には収穫を感謝してお供えをしたと言われています。昔からある日本の自然信仰と仏教の教えが結びつき、お彼岸は定着しました。

秋分の日には、家族でお墓参りや寺で開かれる彼岸会(ひがんえ)に行く方もいると思います。秋分の日は、お墓周りや仏壇周りの掃除をします。秋分の日のお供え物といえば「おはぎ」が定番です。実は秋分の日にお供えするおはぎと、春分の日にお供えするぼたもちは同じもので、名前だけが異なるのです。おはぎは秋に咲く萩の花にちなんで、ぼたもちは春に咲く牡丹の花にちなんで名付けられました。日本では昔から、小豆には邪気を払う力があると信じられていました。お彼岸におはぎやぼたもちを供えることにより、祖先への供養を行います。

21歳ドローンパイロットは弱みを強みに変えた

文字の読めない彼が「好き」から辿り着いた天職
21歳ドローンパイロットは弱みを強みに変えた

2020/08/07 8:00【東洋経済オンライン】

「ドローンパイロット」という職業がある。「無人航空機」「マルチコプター(UAV)」などとも呼ばれ、人を乗せず、ラジコンヘリのように空を飛ぶ機体を地上から遠隔操作できるマシンが「ドローン」。それを自在に操って映画やドラマ、CM、地方のイベント、観光PRビデオなどで使われる映像のほか、橋や工事現場の安全点検など人には難しい場所の撮影をしたりするのが、ドローンパイロットの主な仕事だ。国際的なドローンのレース大会にレーサーとして出場する場合もある。

そんなドローンパイロットとして活躍する1人の若者がいる。髙梨智樹、21歳。高校時代に「World Drone Prix」と呼ばれるドローンレース大会の日本選考会で優勝、日本代表としてドバイ大会へ駒を進めた。それが転じて、18歳だった高校4年生(定時制)のときに父・髙梨浩昭と一緒に立ち上げたドローン撮影会社「スカイジョブ」を経営する起業家でもある。

「情熱大陸」で特集も
ドローンで狭いところを通ったり、スピードを出したりなどの要望に対して、細やかに応えられる操縦技術が髙梨の持ち味の1つ。空撮の仕事に限らず、ドローンの機体メーカーから開発の助言を求められたり、各所から講演の依頼が来たりなど引っ張りだこだ。昨年6月2日にはMBS(毎日放送)・TBS系で放送されたドキュメンタリー番組「情熱大陸」で髙梨の特集が組まれたほか、大手新聞などからインタビューを受けるなどメディアにも多く露出している。

ドローンパイロットという職業に就いている人は確かに数少ない。父と二人三脚とはいえ、大学に進まず若くして起業し、ちゃんと生計を立てている若者も今どきの日本では希有と言えるだろう。とはいえ、髙梨がここまで注目されている理由はそれだけではなく、彼の生い立ちにもある。8月7日にイースト・プレスから上梓される著書のタイトルが、まさにそれを表している。

『文字の読めないパイロット 識字障害の僕がドローンと出会って飛び立つまで』――。

髙梨は知力や言語の発達に遅れはないものの、生まれつき読み書きがうまくできない「識字障害(ディスレクシア/読み書き障害)」だ。最近では一般的になってきた「発達障害」の一種であり、厳密に言えば「学習障害(LD)」の分類の1つである。

文字がどういう意味を持つのかがわからない――。それが髙梨の偽らざる真実だ。例えて言うなら、多くの日本人が韓国語やアラビア語の文章を見たときに、それが韓国語やアラビア語の文字だということがわかっても、何を意味するかはさっぱりだというのと同じ感覚なのかもしれない。

この識字障害は髙梨や両親、関係者を苦悩させた。髙梨は「周期性嘔吐症」という日常生活で急に吐き気が起きて嘔吐してしまう病気も併せ持って、小学校のころは休みがちだったという。

髙梨が小学校に入学した2005年頃は発達障害とはどういうものかという情報や対処法が、教育現場や医療現場ですら浸透していなかった。一般の人だと、なおさら耳にすることが少ない時期だったため、「学習障害」や「識字障害」というものがあることなどわからず、髙梨の両親は、息子に「識字障害」があることに気づくことができなかった。

髙梨の母である髙梨朱実は、息子の著書にこんな手記を寄せている。

「当時の私は、文字の読み書きができない智樹のために、なんとかして字くらいは書けるようにしてあげたいという思いでいっぱいでした。あの手この手で文字を書く機会を作ってみては、『どうしてできないのかな』と悩むばかりでした。識字障害に対して知るのにも、受容するのにもかなりの時間がかかってしまいました」

文字の読み書きができないのは、学校を休みがちで授業に参加できず、努力不足だからだと髙梨は本気で思い込んでいた。しかし、5年生の担任を受け持った教師の冨岡薫は、髙梨の様子を見たとき「識字障害」の可能性を感じた。

読んで説明するとすぐに理解し、忘れない
問題を読んで説明すると髙梨はすぐに理解し、問題処理能力が速く、一度理解したら忘れない。理科のテストでは読み上げの支援をすると100点近い点数を取ることもあった。このとき、冨岡は「彼は決して勉強ができないわけではなく、読み書きの障害があるのかもしれない」と思ったのだという。「障害」という言葉は慎重に扱う必要があるため、その言葉は使わずに、髙梨がどのようにしたら理解できるのかを教師として手探りでいろいろなことを試した。

「人間誰でも何か苦手なことはあるけれど、なにかしらすばらしいものを持っている」。冨岡は髙梨に伝え続けた。

幼い頃から障害を持っていると、親や教師が先回りしていろいろな支援をしてくれるため、ひとりだけだと何もできなくなってしまうという。

顕著な例だと、車椅子の人がエレベーターを使うときに、手の届かないボタンを誰かが押すまでずっと待っていた、ということがある。家族や支援者ではない、周囲にいる人に「手伝ってください」とみずから依頼することで、自立して行動できるようになる。

ひと昔前の障害児教育は、車椅子をこぐのが大変な子に車椅子を動かす訓練をさせたり、視聴障害のある子に聞こえにくい聴力を頼りにした口話法(聞き取り・読和・発語で指導やコミュニケーションをする)を学ばせたりすることに重点がおかれていたが、現在では、電動車椅子を使えば自らの意思で動けて移動にも時間がかからない。手話を使ったほうが学習内容を理解しやすいと言われている。

「できないことを頑張る時間は端折り、便利なものや使いやすいものをどんどん使って、本人に合う学習法を見つけていきました」

髙梨が通った特別支援学校の中学時代の担任を受け持った教師の宝子山尚生は振り返る。視力が弱い人がメガネをかければ大丈夫なように、髙梨の学習はパソコンなどの機器を活用すればハンデを補えることが分かり、「DAISY(デイジー)」という読み上げ教科書や電卓を使うなどして授業を工夫していたという。

文字の読み書きができなくても、パソコンを使うことでわかる。合成音声で読み上げてくれる音声ソフトを使用し、キーボードで文字を打つ。このほうが断然早いし、楽だ――。髙梨はそう思うようになった。

転機は中学3年生のときに訪れる。髙梨は初めて識字障害と診断された。

髙梨が他人に「僕は読み書きすることが難しい」と説明しても、目に見えない障害は、人から理解されにくく、受け入れられにくかった。しかし、それまでは「身体障害」か「精神障害」しかなかったのが、「発達障害」という新たな3つ目の障害があるという認知が広がり、髙梨がその状況にあることを世の中が理解してくれるようになった。

「『手が不自由で書けないのではない』という説明はしやすくなりました。読み書きすることを人並みに頑張れなかったのは、頑張れなかったわけではなく、『自分にはできないことだった』ということだとわかりました。読み書きができないことに理由がちゃんとついたので、診断を受けて本当によかったです。薄々感じていたので、モヤモヤが晴れたという感じですね」

加えて、2016年4月に、「障害者差別禁止法」という法律ができ、合理的配慮が世の中に認められるようになった。髙梨の場合は、例えば駅の窓口で、今までは「代筆はできません」と断られていたのが、「代筆で」と言えば多少嫌な顔をされるぐらいで済むようになった。

読み書きができないからこそ五感が発達
今でこそドローンパイロットという自分に合った仕事を手に入れ、それを突き詰めて生き生きと充実した日々を送れている髙梨。だが、それは「識字障害というハンデを負っていたからこそ」という裏返しの事実もある。

「僕は読み書きができないので、ほかに頼れるものとして五感の感覚が人より発達しているのだと思います」

髙梨は常人からすると考えられないほど、聴覚が鋭敏だ。例えばドローンのプロペラの音を聞いただけでプロペラが少し欠けていることや、肌でプロペラの風を感じることで故障に気づくことがある。髙梨に言わせると「頭の中で地図を描くことができ、あまり道に迷ったりしない」。匂いにも敏感だ。

ドローンは普通の人でも割と誰でも簡単に飛ばせてしまうが、機体の具合を確認しながら微妙な調整をしたり、イレギュラーな状況に対応したりといったことができるのは、髙梨が培ってきたこれらの感覚によるところが大きい。

幼い頃より、何事に対してもこだわりが強く、マイペースで、自分の好きなことや気になることが見つかると、そればかりに没頭してしまう性格であった髙梨は、おもちゃや時計をひとりで勝手に分解してしまう、困った子供だったという。

よく遊んでいたプラレールの電車を改造してオリジナルの乗り物を走らせてみたり、戦車のラジコンを改造してカメラをつけ、2階の自分の部屋から映像を見てリモート操作し、1階にいる母に向けて攻撃ごっこをしたりして遊んでいた。

家にいることが多かった髙梨に、ラジコンを趣味とする父親が「外に出るきっかけとなれば」という思いで、ラジコンヘリに髙梨を誘った。それを機に、もともと空を飛ぶ乗り物が好きだった髙梨は、ラジコンヘリに夢中になった。

父親に連れられラジコンメーカー主催の会に参加したり、YouTubeで国内だけでなく海外の人のラジコン技術を動画で学んだりなど、とことん操作技術を磨いていった。

ラジコンヘリを自在に操れるようになった頃、海外の人がプロペラの4個ついた機体にカメラを載せて、空からの映像を遠隔操作でゴーグルから見ている動画を偶然発見する。それが、ドローンとの出会いだった。

はじめて見た機体に「なんだこれは!僕も空からの景色を見てみたい!」とワクワクした。当時小学校6年生だった髙梨は、海外のウェブサイトからドローン機材を購入した際も、親の許可を得るため、なぜ海外で購入しなければならないのか、海外の輸入サイトの信憑性や安全性について、購入する機材は電波法などの法律に対して違法性がないかなどをしっかりと説明できるように準備し、ドローンの購入を交渉したという。

まるで自分がパイロットになって飛ぶように
髙梨はもともとパイロットになりたいという夢を持っていた。ドローンにカメラをつけて飛ばすと、まるで自分がパイロットになって飛んでいるかのような目線になる。日常生活をしていて上下前後左右に自在に動くことはできないが、そんな3次元的な動きがドローンでは可能だ。そして、疑似体験とはいえ自分が「飛ぶ」ということにワクワクした。それも上空1万メートルを超えるような「空」を飛びたいわけではなく、地上500メートルぐらいまでの地上の景色が見える高さに惹かれるようになった。ドローンパイロット・髙梨智樹の誕生だ。

徐々にヘリコプターの種類や仕組みについても興味を持ち始め、工学的なものを勉強するようになる。そして高校2年生からはドローンのレースに出場するようになる。初めての大会で4位に入賞。はじめてテレビの取材を受けた。その後、世界大会にも進んだ。

幼い頃から身体が弱く、スポーツや走ることが得意でなかったため、運動会などの競技で勝ちたいと思ったことがなかった髙梨は、ドローンレース大会に出場し日本選考会で優勝したことをきっかけに、初めて競い合うことは楽しいと思うことができた。

本を読む習慣がなかった髙梨は、インターネットの情報の他にも人に質問をすることで、自分が知りたい情報を得ていた。ドローンのレースをするにあたっても、無線のことや精密機器などに関して、髙梨は世界のプロフェッショナルに直接アドバイスを受けていた。

ドローンパイロットにはカメラを操縦する技術だけでなく、カメラマンとして映像を撮るセンスや、空撮ならではのセンスも必要になってくる。

髙梨はカメラワークを学ぶため、映画やCMをたくさん観た。映画は、プロの監督が満足のいくものをギュッと詰め込んでいる。ただ単に映画を観るだけでなく、作り手の目線になって映画を観ることで、「こういう撮り方をするとこういう表現ができるんだ」と学ぶ。

特に印象に残っているのは、子供が泥棒を撃退する映画「ホーム・アローン」の空撮シーン。少年が空港からタクシーに乗って移動するシーンで、遠くから大きな吊橋を空撮するが、タクシーの窓から子どもが顔を出しているところまでギューッとカメラが寄っていく映像がワンカットで収められている。わざわざ近づくのも危ないし、技術的にも難しい。その技術や挑戦する内容、表現方法に感動した。

楽しかったから続けて来たことが生業に
純粋にドローンに興味を持ち、楽しかったから続けてきたことが、いつのまにか生業となった。家族や教師、友人、ドローン仲間など、誰もが髙梨を応援したくなるのは、髙梨のまっすぐな人柄があってこそだろう。

髙梨が高校に進んだのはもともと大学に進学するためだった。同世代で大学に通っている人たちを見たり、接したりすると正直揺れる気持ちもなくはないが、日進月歩のドローンの世界は大学や専門機関で学ぶよりも早く現場に出たほうがいいと、起業を決めた。

最近では一般の人が手軽にドローンを手に入れて空撮動画をネット上にアップするようになってきた。テレビの制作現場では、簡単な空撮なら制作スタッフがみずから撮影できるようになってもきている。将来的にはAIがドローンを飛ばす日が来るかもしれない。

髙梨が得たドローンパイロットは、今後もずっと安泰な職業ではない。だが、髙梨自身が今後を見通しているように、ドローンの修理やレクチャーをする講師、あるいはドローンの開発など、好きなドローンにまつわる仕事はいろいろと考えられる。たとえ、ドローンパイロットで食えなくなっても、そうした時代の変化を乗り越えて次の居場所を見つけていくのが、髙梨の将来的な課題となるだろう。

髙梨は言う。

「識字障害であっても早期に気がつき、環境を整えるなどの対処をすれば、生きづらさを解消することがきっとできます。誰でも楽しく輝いて生きることができるし、その権利を持っているのです」

髙梨がテレビで識字障害をカミングアウトしたことで、多くの反響があったと父の髙梨浩昭は息子の著書に手記を寄せている。

「『うちの子もそうです』という保護者の方や『子供の頃私も字が読めなくて大変だった』という話もいただきました。今では発達障害に対する支援もだいぶ厚くなってきたと聞きます。『障害』には程度の差があり、とてもデリケートな問題なので一概には言い切れないかもしれませんが、早い段階から周囲の支援を受けることができれば、障害を持っている方も、生きやすくなるのかもしれません。

テクノロジーも発達し、『障害』を持っている方の手助けになるツールもたくさん出てきました。そのようなツールを活用するのも1つの手段だと思っています。いわゆる『普通』の生き方が向いてなくても、ほかにいくらでも生きる方法はあるということに、私たちは智樹と生きる中で気づかされました」。

「こうやって生きることが正しい」というように、正解が1つに絞られるのではなく、ひとりひとりに、いろんな正解があるのだろう。

できないことはやらなくていい
障害を持つ人だけに限らず、誰もが苦手なことと得意なことがある。人は「自分が苦手なもの」にとらわれてしまいがちだが、これはもったいないことだと髙梨は語る。

「できないことに時間を使うよりも、得意なことに時間を割くほうが有意義だと思います。『苦手なものをできるようにしなければいけない』と思う人は、もしかしたら『みんなができるんだから、自分も同じようにならなければ』と周囲の人と自分を比べすぎなのかもしれません。気楽に考えて、『できないことはやらなくていい、できることを伸ばせばいい』と思えば、きっといい人生が送れるのではないでしょうか。死ぬほど生きるのがつらくても、そのエネルギーを仕事や好きなことに注ぐと、すごいエネルギーになると思います」

苦手なことに悩むよりも、好きなことを突き詰めていくほうが人生の可能性は広がっていく。髙梨智樹は身を持ってそれを体現している。

養護教諭 子供を守る駆け込み寺の癒し役

チーム学校
養護教諭 子供を守る駆け込み寺の癒し役

2021/8/25【産経WEST】

教員と教員以外の専門職が連携し、学校を中心に一つのチームとして子供たちをサポートする「チーム学校」において、心身に問題や悩みを抱えた子供たちが出入りする保健室は核となる存在だ。教室に入れない子供がいれば戻るきっかけを模索し、虐待やいじめなどの深刻な問題の端緒をもつかむ。昨年からは新型コロナウイルスの感染対策も担う。体調を崩した子も、一見元気そうな子も-。養護教諭は、平穏な日常を守る砦となっている。

7月上旬の平日、午前11時。大阪府内の公立中学校の保健室は2つあるベッドが埋まり、離れた場所にあるソファや椅子に4人の生徒が座っていた。

さらに1人、男子生徒が戸を開けて「休ませてください」と小さな声で訴えた。「次の時間まで椅子で休んでもらってもいいかな」。そう言って男子生徒に体温計を手渡したのは養護教諭の佐藤あゆみさん(34)=仮名=だ。

「全然教室に行ってなかった人が、いきなり行ったらびびらん?」。別の男子生徒が佐藤さんにさりげない様子で尋ねると、「『来てくれたんや』っていう気持ちが勝つと思うよ」と笑顔を向けた。持病があって教室から足が遠のき、現在は保健室にだけ登校する生徒だと、後に佐藤さんが教えてくれた。

様子を見に来た担任が生徒に声をかけて立ち去ると、佐藤さんは走って廊下まで追いかけ、保健室での様子や訴えなどを伝えた。「教室に入りにくくなった子供が戻るための足掛かりは、担任の先生の協力なしには作れないんです」

教室に入れない事情
保健室は、新型コロナウイルスの影響も色濃く受けている。佐藤さんは「一時は保健室に来る生徒がもっと多かった。発熱した生徒とそうでない生徒を分けるゾーニングもできず、苦労した」と振り返る。

そんなコロナ下の今春、佐藤さんが気にかけていた卒業生の女子生徒が保健室に姿を見せた。現在は高校生。家庭状況が厳しく、中学2年から教室に入れなくなった。頭痛や腹痛を訴え、登校すると保健室で時間を過ごし、佐藤さんに少しずつ家庭事情を打ち明けた。

父親は大声で生徒や母親を罵倒し、「俺の金で生活してるんやろ」と威圧していた。生徒は母親に離婚してほしいと訴えたが、母親には一人で子育てをする自信はなく、離婚に踏み切ることはなかった。

家では父親の顔色をうかがい、学校でも無理に元気に振る舞う。佐藤さんは「周囲への配慮でエネルギーを使い果たし、へとへとになっているようだった」と振り返る。

女子生徒の望む進学先は、父親の方針とは違っていた。安易に口にすれば、殴られるかもしれない。佐藤さんは母親と連絡を取り、父親の説得に知恵を絞った。生徒をスクールカウンセラーにつなぎ、校長や生徒指導の教諭らも参加する学校内の会議で毎週生徒の状況を取り上げ、対応策を検討した。

そして生徒は希望していた高校に進学した。だが再び、高校卒業後の進路選択が目前に迫っていた。「大学に行ったら家を出たい。でもお母さんが心配」。佐藤さんはそんな生徒の話に耳を傾け、最後にそっと背中を押した。「お母さんは大人だから大丈夫」

生徒と一緒に考える
学校教育法は「養護教諭は児童の養護をつかさどる」とのみ書く。だが、その職務の幅は広い。肥満や痩身(そうしん)、生活習慣の乱れ、アレルギー、性の問題、いじめ、虐待…。子供の健康上の問題は多様化し、精神状態とも密接にからみあう。

現在、大阪府立吹田東高校で指導養護教諭を務める鈴木秀子さん(58)は30年以上、各地で世相を映すさまざまな問題に直面してきた。覚醒剤を使用した生徒もいれば、女子生徒が個室で男性客をマッサージする「JKリフレ」にかかわったケースもあった。親族の介護を担う「ヤングケアラー」もいた。本音をなかなか打ち明けない生徒も多い。

鈴木さんは入学してきた一人一人の生徒について、中学校の資料を基に家庭状況を整理している。支援が必要な生徒は顔や名前を覚え、職員室に出向いて情報を収集することもある。若い頃は生徒の困難を前に右往左往したが、「一生懸命考えてくれているとわかったから、私も頑張ろうと思えた」という生徒もいた。

保健室は、医務室でも家でも、ただの居場所でもないと鈴木さんはいう。「最後に答えを見つけるのは生徒自身。私にできるのは生徒と一緒に『次の一手』を考えることです」(地主明世)

子供のSOS、いち早く気づく力 小山健蔵氏
大阪教育大の小山健蔵名誉教授(健康生理学)は「養護教諭にとって、大切な力の一つが『みる力』だ」と指摘する。「患者を診る、注意して観る、面倒を看るなどの言葉があるが、すべて養護教諭の職務にいえること」だからだ。

国は子供たちのさまざまな困難に対応するため、教員と教員以外の専門職が連携するよう求めている。その「チーム学校」の中で、養護教諭は児童生徒が助けを必要としているサインにいち早く気づき、学校と専門職をつなぐ窓口となる役割を担う。

もともと養護教諭の始まりは、明治時代に目の感染症への対策として岐阜県が「学校看護婦」を採用したことだった。その後全国に広がり、昭和16年に教職員として位置付けられ、同22年に制定された学校教育法で「養護教諭」となった。

アレルギーやメンタルヘルスなど、子供たちが保健室を訪れる理由が複雑化、多様化する一方、多くの学校で養護教諭は変わらず1人だ。子供たちの学校における健康や安全管理の基礎を学ぶ「学校保健」についても、養護教諭や保健体育の教員以外は養成課程上の必修ですらない。

小山教授は「養護教諭の仕事を一人でこなすのは困難な状況だ。一般の教員も知識を持ち、養護教諭の複数配置も進めて負担を減らすことが望ましい」と指摘。「学校保健は教員になるための必修とすべきだ」と訴えている。

児童虐待・いじめ…存在感増す
公益財団法人「日本学校保健会」が平成28年度に行った調査では、保健室の1日の平均利用者数は小学校で22人▽中学校19人▽高校19・8人。保健室を訪れた子供に継続した支援を行ったとする学校の割合は、小学校から中学校、高校と学校段階が上がるごとに増加し、高校では9割に上る。養護教諭が対応した「いじめに関する問題」は小学校で前回(23年度)の3倍に増え、保健室利用の背景に児童虐待を指摘した割合は中学校で前回から倍増するなど深刻さを増している。

新型コロナウイルスの影響の分析はまだこれからだ。ただ、昨年3月の一斉休校直後から継続的に養護教諭にアンケートを行ってきた埼玉大の戸部秀之教授(学校保健)の今年の全国調査では、コロナ禍で不登校や保健室登校になったり、不安定な精神状態の児童生徒が増加したという回答が全体の4割を超えた。栄養バランスや生活リズムの乱れなどを指摘する声が減少傾向なのに対し、この項目は減っていないという。

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保健室や養護教諭の事を悪く言う子どもはいません。担任の先生たちは忙しそうにしているのでゆっくり話しかける機会がありません。また、先生の居場所は教室か職員室なので落ち着いて話すことができません。学校で静かな空間を占有しているのは校長室か保健室、学校用務員室です。

養護教諭は、身体測定や健康診断、怪我の時にも軽く身体に触れることが多いので皮膚感覚の安心感が生まれるのかも知れません。また、白衣を着ている養護の先生は、他の教員とは一線を画したように子どもには見えるのかも知れません。中には校長先生や用務員さんの部屋を好んで休憩場所にしている子どももいますが、圧倒的に保健室と養護教諭が人気です。

事業所利用の子どもたちに、私達は、担任の先生に話しにくければ保健の先生に話せばいいし、用があってからでは話しにくいので、用がなくてもちょくちょく話に行くといいと助言しています。養護教諭は外傷や内臓疾患だけでなく、学校精神保健の要でもあるので、発達障害の子どもたちの様子も知って欲しいのです。学校連携で話をしに行くと、最も発達障害の理解が早いのは養護教諭の先生です。教員は集団適応を求めがちですが、養護教諭は適応よりも子どもの目線で安心や安全を第一に考えるからだと思います。

支援学校の養護教諭は複数配置です。支援学校は通常学校の小児科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科の4校医以外に整形外科医や精神科医も校医にして対応しています。相談できる医師が多い方が心強いとは思いますが、ここに学校看護師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった専門家も束ねて、教員との橋渡しの役割もあるので連携ストレスの負荷が一番たくさんかかる部署でもあります。子どもには暇そうに見せながらも、頭脳はフル回転の養護教諭に頭が下がります。

※座高測定は2015年に「測定の意味がない」と廃止された

ロスジェネ

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“就職氷河期世代”の採用試験 約550倍の狭き門に 兵庫 宝塚
2019年9月23日 7時28分 NHK NEWSWEB

兵庫県宝塚市で「就職氷河期」世代を対象にした正規職員の採用試験が始まり、3人程度の募集に対し、1600人を超える人たちが受験しました。「就職氷河期」に希望どおりの就職ができなかった30代半ばから40代半ばの人たちを支援しようと、兵庫県宝塚市は、この世代から正規の職員を採用する取り組みを始め、22日に1次試験となる筆記試験が行われました。3人程度の募集に対し、全国から1635人が受験して、倍率はおよそ550倍となり、市は試験会場を急きょ3か所から10か所に増やして対応しました。受験した大阪市で非正規社員として働く36歳の男性は「大学時代の就職活動では面接に進むことすら厳しかった。いろいろな仕事をしてきた経験を生かしたい」と話していました。また、尼崎市の43歳の男性は「安定した働き方をしたいと思って受験した。住民サービスなどの仕事に就きたい」と話していました。宝塚市給与労務課の廣瀬義則課長は「予想以上の方に受験していただき、関心の高さ、支援の必要性を感じている。人生を切り開こうという思いを感じたので、これまでのつらい思いをぶつけてほしい」と話していました。筆記試験を通過した人は面接試験などに進み、11月下旬までには内定者が決まるということです。
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この動きは政府の就職氷河期(ロスジェネ)支援策の一環として始まったものです。今後各地の自治体で職員募集が始まります。ロスジェネの支援対象となるのは現在35─44歳で無職とパートやフリーターなど非正規雇用者およそ400万人程度が主な対象者です。ハローワーク、大学・職業訓練機関、経済団体等が連携する協議会を立ち上げ、対象者の把握、地域ごとの事業実施計画を立てるほか、ハローワークには専門部署を置き、人生再設計、就職アドバイス、リカレント教育の情報提供、人手不足企業への就職促進や情報技術等の能力開発等も強化すべきとして政府が方針化したものの行政版が上の記事です。ただ、550倍ってことは、氷河期より超ひどい倍率じゃないかと思う人は少なくないでしょう。1800の大小の地方公共団体が平均3人ずつ氷河期フォローをしても、対象400万人に対してわずかに0.13%の5000人です。しかし、時はあまりありません、20年後から40万人づつ前期高齢者になるのです。それまでにかけた年金が少なければ、到底生活はできず生活保護受給がどんどん増えていくのです。試算ではこのうち147万人が生保予備軍となり、自己責任と言ってかたずけられない、国家規模の問題なのです。

ただ、行政の職員募集だけでの達成は焼け石状態で到底不可能ですし、経済の回り方としても不健全です。今、人手不足の民間で給与を上げて、就労人口を増やすことで、経済は好循環を起こします。消費が上向けば、GDPも上昇し、緩やかなインフレも始まり、すべてが良い方向に動き出します。なのに、10月から増税です。増税と言うブレーキを踏みながら雇用拡大というアクセルをふかしているのです。

 

すすめよう!自閉症の子どもへの支援

自傷行為や他害…強度行動障害、支援のポイントは専門家に聞く

2020/8/20 14:27 【西日本新聞】三宅 大介

自傷行為や他害などを起こす強度行動障害。もともと自閉症や重い知的障害がある人に多く、早期に適切な支援や配慮を受ければ予防できるとされ、学校現場でもノウハウが蓄積されている。福岡県内で、その研究事業に取り組んだ福岡教育大・教職大学院教授の納富恵子さん(62)に支援のポイントを聞いた。

精神科医として発達障害のある子どもの診療に携わってきた納富さん。1990年に福教大に移り、本格的に教育的支援を研究してきた。「特性を理解し、一人一人に合った環境を整え、意思疎通できるよう工夫して支援すれば行動面での課題は十分解決できると、一般の人たちにも理解してほしい」と語る。学校でも適切な配慮を行うため、福岡県教育委員会と2004~07年度、県内の小中6校、特別支援学校2校と協力しながら調査研究に取り組み、計2冊の手引書もまとめている。

絵や図で具体的に
自閉症の子どもは、周りの情報を自ら選んで取り入れ、整理することが苦手で、あいまいな状況に混乱しがちとされる。基本的な支援としては、いつ、何を、どのようにするのか、具体的に示すことが必要だ。納富さんはキーワードとして「シンプル(簡潔)、クリア(明確)、ビジュアル(視覚的)」を挙げる。

例えば、教室には不必要な物を置かない▽黒板の板書が際立つよう、本棚などはカーテンで覆う(シンプル)。指示は「廊下は走ってはだめ」ではなく「廊下は歩きます」と具体的にする▽事前に活動の順序を黒板などに示す(クリア)。教室内でもパソコンを使うスペースを仕切るなどし、一つの場所では一つの活動しか行わない▽スケジュールや予定も色分けするなど文字や絵、図を使って提示する(ビジュアル)。
「自分で見て、考え、主体的に活動できるように支援する。やり遂げた経験によって学び続けようと勇気づけることが大切です」

嫌な経験思い出し
中には、感覚が過敏なため、ほかの人は気にならない音などの刺激に極端に驚いたり、同じような場面で過去の嫌な経験を思い出し、パニックになったりする子どももいる。自傷行為や物を壊すなど、周囲から問題行動と受け取られがちだが「特定な苦手なことから逃れたい、あるいは物や周囲の人の注目などが欲しくて繰り返しているのかもしれない」と納富さん。困った状況を発信するコミュニケーションの意味を持つ場合もあるという。

こうした際は原因をじっくり見極め、その背景に応じた対応が不可欠。音楽がかかると教室を飛び出す時は耳栓を活用したり、大きな音がきっかけになる場合には運動会のピストルの音を旗の合図に変えたりする。「いつどこでどんな行動をしたか、どう対処したか記録を取り、状況を整理して原因を推測していく」作業も必要になってくる。

いずれにしろ「単に部屋を仕切ったり、手順を示したり、環境を形式的に整えればうまくいくわけではなく、一人一人と丁寧に向き合い、個別に配慮を考えること」(納富さん)が支援の成否の鍵を握る。

意思疎通法も進化
言葉では自分の気持ちを伝えられないもどかしさが問題行動の原因にもなることから、近年は「欲しいもの、したいことを絵カードを使って意思疎通し、コミュニケーション能力を伸ばすトレーニング」も知られる。情報通信技術(ICT)の進歩に伴い、iPad(アイパッド)などを活用し、手軽に視覚的に意思表示することも可能だ。

「押しつけではなく、自らこうしてほしいと発信できて初めて、相互に分かり合える」と納富さん。ここ10年、さまざまな企業などがコミュニケーションの支援や環境を整える教材などの作成に参画しているという。「学齢期であれば比較的容易に、社会に適応していく力やコミュニケーション能力を伸ばせる。さまざまなノウハウを今後も引き継ぎ、学校現場と保護者が連携しながら、生きづらさを抱える子どもたちを支えていってほしい」

◇◇

福岡県教委が納富さんらとまとめた手引書(報告書)「はじめよう!自閉症の子どもへの支援」「すすめよう!自閉症の子どもへの支援」は、同県教育センターのホームページ(HP)でダウンロードが可能(ページ内「研究成果物」の「平成17年、19年度」から)。

また納富さんが準備委員会委員長を務める「日本特殊教育学会第58回大会」が9月19~21日、今年はコロナ禍のためオンラインで開催される。特別支援教育についてはさまざまな研究が続いており、講演や70を超えるシンポジウムなどで最新の研究を公表。事前に申し込めば約1カ月間、誰でも同学会のHPから視聴できる。参加費は一般1万1千円、大学院生は6千円、大学生は千円。申し込みもHPから、8月31日まで。(編集委員・三宅大介)

東大先端研のプロジェクトは、子供を変えるのではなく社会を変える挑戦<前編>

東大先端研のプロジェクトは、子供を変えるのではなく社会を変える挑戦・・・中邑賢龍教授インタビュー<前編>

2021.8.24 【リセマム】

才能に恵まれても個性が強くて仲間外れにされたり、問題児扱いされて不登校になってしまったり…そんな「生きづらさ」を抱える子供たちに、学びの場を提供する東京大学 先端科学技術研究センターの異才発掘プロジェクト「ROCKET」。そのディレクターを務める中邑賢龍教授が2021年6月、「どの子も違う -才能を伸ばす子育て 潰す子育て」(中公新書ラクレ)を上梓した。
今回は中邑教授に、子供ひとりひとりがもつ多彩な才能を潰す子育て、伸ばす子育てについて話を聞いた。

東大の異才発掘プロジェクトへの誤解
~「ROCKET」は神童を輩出する集団ではない~

--東大先端研の異彩発掘プロジェクト「ROCKET」(Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents)には、強いこだわりとユニークさゆえに不適応を起こした子供たちが集まりました。才能を「潰す」から「伸ばす」へ、子育てのまさにパラダイムシフトですが、このプロジェクトは、どんな思いから始められたのでしょうか。

ユニークな個性をもっているのに、働けない大人がたくさんいます。その背景には、子供のころからその特性をすべて否定された、深い心の傷があります。なぜ彼らは傷つき、その傷が深くなったのか。それは「学校に行くのが当たり前だと思っていた」から。そこで無理をし続けたことで、傷が深くなってしまったのです。

きっと今も同じように苦しんでいる子供たちがいるはず。だったら「学校なんて行かなくていい」というプロジェクトをやれば良いじゃないか、と。それが「ROCKET」の始まりでした。

--アカデミックな世界の基礎研究や、新しい価値を生み出す革新的なモノづくりなどに没頭する異才児が集まり、メディアからも大きな注目を集めましたね。

注目して頂けたのはありがたかったですが、本来僕らが目指していたのは、あくまでもこだわりが強く、異質扱いされて生きづらさを感じている子供たちの「能動性」を、それぞれのペースに合わせてじっくりと引き出していくことでした。

その結果として、「Extra-ordinary Talents(特異な才能)」という言葉どおり、既存の枠を超えて才能を開花させ、一流大学に進学するなど、「ROCKET」をキャリアパスとして羽ばたいていった子もいます。けれどその一方で、今も自室に引きこもり、ドア越しに「おーい、そろそろ出てこないか?」と僕らが声をかけ続けている子供たちもいる、というのもまた現実です。

成長のペースは子供によって違うので、こうした結果は僕らにとっては想定どおりなのですが、世間からは「ROCKET=神童を輩出する集団」のように見られるようになり、最近は勉強がずば抜けてできる子たちが多く集まるようになってしまいました。

オール1でも、懸命に生きている子供たちを支援する新プロジェクト「LEARN」

--そうしたサクセスストーリーを目にすると、親はついわが子と比べてしまい、「そうやって突き抜けられる子はごく一握り」「うちの子があんなふうにうまくいくとは思えない」「社会で自立してやっていけるのか」といった不安をかき立てられます。私もこの仕事をしていて、活躍にばかりフォーカスした記事を書くことで、新たな格差を生むことに加担していないか。傷つけ、絶望させてしまっている人たちがいるのではないかと反省することがあります。

そうですね。確かに、発達障害や不登校など、生きづらさを抱えている子供たちの中にも成長差はあります。その強いこだわりや個性をうまく伸ばし、大学まで行けるような子供は何も問題はないのですが、僕らが本当に支援しなければいけないのは、そこまで突き抜けられないものの、必死にもがき、懸命に生きている子供たちです。そこでいったん「ROCKET」の看板を下ろし、プロジェクトとしてのベクトルが「神童」だけに偏らないよう、もっとマルチに広げたいと思い、新たに「LEARN」というプロジェクトを立ち上げることにしました。

このプロジェクトは、ニトリの会長である似鳥昭雄さんから声をかけてもらいました。似鳥さんは70歳を過ぎてから、自身が発達障害、ADHD(注意欠如・多動症)であることがわかったそうです。子供時代の成績はオール1。小学校4年生になっても漢字で自分の名前が書けず、全然勉強ができずにいじめられ、本当に辛い経験をした、と。だからこそ、同じような思いで苦しんでいる子供たちを応援したいと言ってくださったのです。

「LEARN」では、学校の成績がオール1の子でももらえる奨学金をつくります。勉強ができる子ではなく、勉強したい子に奨学金を出したいのです。他にも、これまで「ROCKET」ではサポートしきれなかった、医療的ケアの必要な重度重複障害と呼ばれる子供たちや、そういった障害など生きづらさを抱える子を育てる親御さんたちにもフォーカスを当てたプログラムを展開していきたいと思っています。

大人から褒められるのが大好き。外発的な動機付けで動く子供が増加

--ご著書の中で、「そもそも日本社会は集団志向で、異質な人に対して寛容とは言えなかったものの、社会はもう少し緩く穏やかにまわり、その分、ユニークな人たちにも生きる道が残されていた」という指摘がありました。昔はもっと大雑把で、おおらかな社会だった、と。ところが今は、「何が正しいのか」「何が間違っているのか」を明確に求めるようなコンプライアンス(*1)意識が高まり、大人たちは出る杭にならないように怯え、萎縮している。そして、そうした意識は子供にまで浸透し、小学校でも低学年から、同調圧力がいじめや不登校の原因にもなっているようですね。(前回の不登校新聞・石井氏インタビュー「低学年からマウンティング・同調圧力に苦しむ子供たち」はこちら
*1「コンプライアンス」:法令や規則、社会的規範や倫理などを遵守すること

子供というのは、生まれつきもった特性に応じて行動していきます。けれどそれを放っておくと、社会の中でコントロールしきれません。だから特に日本の教育では、枠にはめることで金太郎飴のように均質化された人材を育て、効率的に働かせて、戦後の高度成長を支えてきました。さらに、「ゆとり教育」を否定した反動で、学校がますます杓子定規な社会になってしまっているように感じます。

中邑賢龍教授と加藤紀子さん
--小学校では、プログラミングや英語が加わり、現場の先生達はやることが増えて大忙しです。また、家庭でも「小1プロブレム(*2)」を避けるべく早期教育に頼るなど、子供たちも幼い頃からとても忙しくなっています。こうした変化についてはどう受け止めていますか。
*2「小1プロブレム」:小学校に入学したばかりの1年生が、黙って座って授業を受けられない現象。スムーズに小学校生活へ移行させるため、小学校入学前に読み書きや計算などに一定時間集中させる練習などを行う保育園・幼稚園や習い事などがある。

都内の小学校でも関わっているプロジェクトがいくつかありますが、とにかく子供たちに時間がないことに驚きます。先生方はやることが多くて授業数が足りないと嘆いているし、子供たちは放課後も塾や習い事でびっしり。これじゃ、ぼーっとする時間もありません。

でも子供たちはそれで満足しているんですよ。なぜなら子供って、大人から褒められるのが大好きだから。こうして、外発的な動機付けばかりで動かされて成長する子供が増えているのです。

「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げているうちはダメ

--先生は「成績が良ければ優秀」な時代は終わった、とも仰っています。真面目で、友達も多く、テストの成績が良く、悩みがなく、親も教師もまったく心配していない。そうやって「問題が顕在化していない子」の方が心配だ、と。

そう遠くない未来に、AIやロボットが既存の仕事を代替するようになります。ところが未だに、「問題が顕在化していない子」が追い求めているのは、このAIやロボットに奪われる対象となる能力なのです。これから人間は、余暇を充実させたり、自分で仕事をつくり出したりする能力が求められるようになるでしょう。けれど彼らは、外発的な動機付けで楽しいと感じているだけで、「これは本当に自分の人生か」「自分が好きなこと、やりたいことは何か」と自分の内側に問うことがなく、同調圧力に流されてしまう。そこが心配です。

--歴史を振り返れば、社会に革命を起こしたり、新たな道を切り拓いたりした「異才」たちの幼少期は、必ずしも学校に適応して、成績が優秀だったとは限りません。確実にその人たちは変わり者だったけれど、芽が出るまで放っておかれたから、「異才」たり得たわけですよね。

最近、発達障害がブームのようになっていますが、周囲から変わり者と見なされるユニークな子供たちを安易に「障害」と認定し、性急に治療するという考え方は非常に危ういと感じます。落ち着きがなく、空気が読めず、成績も悪く、学校に行き渋っている子でも、その子の特性を理解し、周囲の大人が見守ってやれば、彼らは自分の力で動き出せます。

学校で「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げているうちはダメですね。「ひとり静かに大人しく」っていうクラスがあっても良いじゃないですか。全然喋らず、人の話もまともに聞かず、「一体こいつは何を考えてるんだ?!」って思ったら、結構面白いこと考えている子っていっぱいいますよ。テストや学校の勉強が苦手でも、じっくりと物事を深掘りして探究できる。そういう才能も潰さない社会にしなければいけません。さまざまなイノベーションのタネを撒きたければ、凸凹で多様な特性をそのまま包み込める社会に変える必要があるのではないでしょうか。

苦手なことを無理に克服しようとしなくて良いじゃないですか。子供を変えるのではなく、社会の制度を変える。僕は今、そこに挑戦しているのです。

インタビュー後編「子供たちに必要なのは『リアリティ』と『自分の無力さを気付かせる時間』」へ続く。

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中邑先生のお話を読んでいると、坂本龍馬を思い出します。「日本を今一度せんたくいたし申候」と言って、これからの世の中に必要なものが幕府にないなら自分たちが海援隊をおこして新しい経済の仕組みを作ればいいと、「時勢に応じて自分を変革しろ」「何の志もなきところに、ぐずぐずして日を送るは、実に大ばか者なり」と大勢を非難して自らを奮い立たせます。中邑先生も、学校で「明るく仲良く元気よく」という標語を掲げている限り、ユニークな人が育つわけがないと大勢を敵に回すような発言をされます。

転ばぬ先の杖のような教育や発達支援をしていて、今後の未曽有の世界が乗り切れるか?中邑先生は、AIが得意とするものは素早く検索できる知識と、枠組にはまり込んだ既知の思考パターンだと言います。それをAIに奪われた「エリート」に残されるものは皆無だと言って、既成の価値観や評価軸を疑ってかかります。

龍馬は、「わずかに他人より優れているというだけの知恵や知識が、この時勢に何になるか。そういう頼りにならぬものにうぬぼれるだけで、それだけで歴然たる敗北者だ」として既存の知性を笑い飛ばします。

そして、時代の変革者龍馬自身の人生については「人生は一場の芝居だというが、芝居と違う点が大きくある。芝居の役者の場合は、舞台は他人が作ってくれる。なまの人生は、自分で自分のがらに適う舞台をこつこつ作って、そのうえで芝居をするのだ。他人が舞台を作ってくれやせぬ」と独立独歩を尊重します。これは凸凹の子どもたちを含む全ての子どもたちに向けた中邑先生のメッセージと瓜二つです。

人手不足

放課後デイの仕事の休みは日曜日だけ、土曜も祝日も全て開所しますから、ほとんど開所日です。しかし、給与は中堅で年収400万程度です。民間の平均には違いないですが、土曜祝日の年間70日の出勤日は他の職種より勤務日が多いのでみなさん敬遠されるのです。最近は給与額だけでなく休日がどれだけあり有給休暇が取りやすいかどうかが就職決定の大きな条件になります。

年間休日が60日以下のこの事業は全く人気がないのです。人を増やせば休暇も増やせますが、人が増えないことには休暇も増やせません。このジレンマに中で「すてっぷ」は持続可能性の瀬戸際に立たされています。子ども関係や福祉の仕事を考えておられるお知り合いの方がおられましたら是非ご紹介ください。来年に向け少なくとも2名の新規採用が必要ですが、このままでは新規採用への応募は大変厳しいです。どうかお知り合いの方のご紹介のご協力お願いします。求人条件は左上の「求人情報」の内容です。

 

マスク警察

「マスク警察」が世界中で困った事件を起こしています。「マスク警察」とは、武漢ウィルスを予防するとして、公衆場面でマスクをつけるように強要する人のことです。1件目の記事は、マスクを着けなかったためにディズニーショップに入れなかったASD女子の記事です。

2件目はWHOが学校開始前のタイミングで、5歳~12歳にもマスクを求めるとした報道です。重要な事は、運動する際にはマスクは必要ないとしているほか、発達障害を抱えている子どもに対しては、年齢に関係なくマスク着用を強制しないよう呼びかけています。

おそらく、ディズニーショップの店員は、一つの情報とらわれて柔軟に対応できないという、ご本人がこだわりの強い方だったのかもしれません。しかし、これだけマスク着用への同調圧力が強くなると、WHOだけでなく政府機関が、合理的理由があるなら強要してはならないという合理的配慮宣言を文書として掲げる必要があります。また、同調圧力とは関係なく、ステレオタイプのこだわりを持って「マスク警察」行動を行う人たちへも社会の配慮が必要だと思います。

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マスクが付けられない自閉症の少女がディズニーから退去指示。「感覚過敏」を知ってほしい(カナダ)

8/18(火) 17:00【Yahooニュース】配信

新型コロナウイルスの感染拡大以降、人が密集する場所でのマスクの着用は、半ば義務的なものとして定着した。
しかしその一方で、わけあってマスクが着用することができない人もいることを知ってほしい。

マスク着用が困難な「感覚過敏」
マスクを着用していると、肌がチクチク痒くなったり、頭痛がしたりする症状を「感覚過敏」という。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚といった感覚が、一般的な人と比べ過敏に反応してしまい、激しく苦痛を感じる状態だ。
外部からの刺激に対し、適度に調整する脳の働きがうまく機能しないのが原因で、自閉症スペクトラムなどの発達障害、うつ病や認知症などによって発症するとされる。
日常生活で困難を抱えているにも関わらず、周囲に理解されず、わがままだと誤解されるケースも後をたたないようだ。

ディズニーストアからの退店命令も
カナダ・オンタリオ州のロンドンでは、ディズニーストアを訪れた自閉症スペクトラムの6歳の女の子が、マスクを正確に着用していなかったことを理由に、退店を命じられたと『CTV News』が報じた。
自閉症スペクトラムのルビーちゃんは、歯が抜けたことを記念し、家族でディズニーストアに行くことにした。母親のサラさんは、ルビーちゃんは感覚過敏であるため、マスクを着用し続けることができない、という旨を入店前にスタッフへ伝えており、了承を得ていた。
しかし、店内に入ると別のスタッフから複数回注意を受け、その都度説明を繰り返すことに。しかも、数分後にマネージャーがやってきて、「自分の知っている自閉症の人はマスクをすることができた」と発言。しかし言うまでもなく、自閉症は人それぞれ症状がまったく同じわけではない。フェイスシールドなどを提案されたが結果、ルビーちゃんは店内から出ていくことになった。

地元自治体の条例や公衆衛生規則においても、障害者や12歳未満の子どもがマスクを着用することを義務付けてはおらず、医療担当官であるクリス・マッキー博士は「店側は、病気や障害のためマスクを着用していないことを理由にサービスを拒否することはできません」と語っている。
忘れがちだが、大多数の人が当たり前できることでも、すべての人ができるわけではない。それは、マスクの着用においても同じだ。感覚過敏の人にだけ無理を強いるのではなく、あらゆる人が柔軟に対応できるよう、少しずつ社会が変わっていくことを願う。

赤井大祐

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マスク着用、12歳以上の子どももすべき WHOが指針

8/23(日) 11:58【 BBC News】配信

世界保健機関(WHO)は21日、12歳以上の子どももマスクを着用すべきとする指針を発表した。それぞれの国や地域で、大人に推奨されているのと同様の対策を取るよう勧告している。
WHOは、子どもによる新型コロナウイルスの伝染についてはほとんどわかっていないと認めている。一方で、10代の若者が大人と同じように他人に感染させることを示す証拠があるとしている。
5歳以下の幼児には通常、マスクを着けさせるべきではないとした。

新型ウイルスの死者は世界で80万人を超えている。
米ジョンズ・ホプキンス大学によると、感染者は世界で2300万人以上確認されている。多くはアメリカ、ブラジル、インドで見つかっている。しかし、ウイルス検査が不十分で、無症状のケースもあることから、実際には感染者はこれよりずっと多いと考えられている。感染者は韓国、欧州連合(EU)各国、レバノンといった国々でも再び増加している。
テドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は21日、パンデミック(世界的流行)が2年未満に収束することへの期待を表明した。一方、英政府の科学顧問は、新型ウイルスの感染症COVID-19を根絶することはできない恐れがあると警告。定期的なワクチン接種が必要になる可能性を指摘した。

■WHOの指針
WHOがウェブサイトで発表した指針は、子どもを3つの年齢層に分けて以下のように推奨している。
・12歳以上の子どもは、大人と同じようにマスクを着用すべき。他人と1メートル以上の距離が取れない場合や、地域の広い地域で感染がみられる場合は特に着用が求められる。
・6~11歳の子どもは、感染の広がりや、高齢者などハイリスクの人と交流しているかを考慮して判断すべき。マスクを使う場合は、安全に着け外しできるように大人が注意する必要がある。
・5歳以下は通常の状況ではマスクを着けるべきではない。

学校教諭について、WHOは「伝染が広範囲でみられる地域では、60歳未満で健康な大人は全員、他人と1メートル以上の距離を取れない場合に布マスクを着用すべき。これは、子どもと接近する仕事をしている大人や、子ども同士が近づく職場で働いている大人では特に重要だ」としている。
また、60歳以上や基礎疾患がある人に関しては、医療用マスクを着けるべきだと勧めている。

■学校ではどうする? 
12歳以下の子どもが学校でマスクを着用すべきかは、今回の指針は明確にしていない。欧米などではもうすぐ新学期を迎えることから、今後この点が問題になる可能性がある。
フランスは最近、11歳超の子ども全員にマスク着用を義務付けた。イギリスでは正式な政府指針には含まれていないが、多くの学校が独自に、生徒にマスクを着けるよう求めている。
エディンバラのジェイムズ・ギレスピー高校は、生徒や教職員、保護者に意見を聞いたうえで、「休み時間に屋内で動き回る際にはマスクを着ける」ことを決めた。
スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は、「近い将来に」中学校での生徒のマスク着用を義務付けるかもしれないと表明している。

(英語記事 Children aged 12 and over should wear masks - WHO)

子供たちに必要なのは「リアリティ」と「自分の無力さを気付かせる時間」中邑賢龍教授インタビュー<後編>

子供たちに必要なのは「リアリティ」と「自分の無力さを気付かせる時間」・・・中邑賢龍教授インタビュー<後編>

2021.8.26 【リセマム】

才能に恵まれても個性が強くて仲間外れにされたり、問題児扱いされて不登校になってしまったり…そんな「生きづらさ」を抱える異才児たちに、学びの場を提供する東大・異才発掘プロジェクト「ROCKET」。そのディレクターを務める中邑賢龍教授が6月、「どの子も違う -才能を伸ばす子育て 潰す子育て」(中公新書ラクレ)を上梓した。

中邑教授に、子供ひとりひとりがもつ多彩な才能を潰す子育て、伸ばす子育てについて話を聞いたインタビューの前編では、外発的な動機付けで楽しいと感じているだけで、「これは本当に自分の人生か」「自分が好きなこと、やりたいことは何か」と自分の内側に問うことがなく、同調圧力に流されてしまう子供たちが増加している背景と、学校の枠に収まることができず、生きづらさを抱えた子供たちの支援について語っていただいた。後編は、子供たちの「生きる力」が弱まっている背景と、子供のために親ができることについてお話しいただいた。

便利が当たり前の子供たちに必要な「18禁デザイン」

--中邑教授は「人間支援工学」と呼ばれる分野の第一人者です。「ROCKET」のほか、障害や病気を抱えた子供たちのための大学・社会体験プログラム「DO-IT Japan」や、身の回りのテクノロジーを教育に活用する「魔法のプロジェクト」、医療的ケアの必要な重度障害児のコミュニケーション支援プロジェクトなどに携わってこられました。さまざまな子供たちとの関わり合いを通じて、最近感じる変化はありますか。

近年では発達障害のグレーゾーン(境界型)と呼ばれるタイプが増え、重度の障害や病気だけではなく、幅広くいろいろな子供たちと付き合うことが増えてきました。そこで僕が気づいたのは、日本の子供はすべてディスアビリティ(*1)ではないか、ということです。子供たちから如実に「生きる力の弱さ」を感じるのです。これは本当にまずいぞ、と。この本を書いたのも、今、改めて子育てのあり方、子供との向き合い方を考え直すべきときではないかと思ったからです。
*1「ディスアビリティ」:心身の機能上の能力障害

--子供たちの生きる力が弱くなった理由は何だと思いますか。

今の日本は高齢化社会なので、高齢者向けにバリアフリーやユニバーサルデザインが行き届き、何事も安心・安全に使いやすくつくられています。食べ物のパッケージひとつとっても、指先の力が弱くても簡単に開けられるきめ細やかな仕様で、高齢者にはとても優しい社会です。子供たちもその便利さを当たり前のように享受しています。すると、逆に不便なもの、粗悪なものに出くわした時に、手も足も出ないどころか、出そうともしない。ハサミを使ったり、歯で噛みちぎったりして何とかしようともがきもせず、「ハサミを持ってくるのがめんどくさい」「袋に口を付けるなんて不潔」などと言い訳ばかりで、簡単に諦めてしまう子が少なくないのです。

--高齢化に合わせた社会のデザインが、子供たちを「茹でガエル」にしてしまっている、と。「茹でガエル」のまま大人になってしまうと考えると…ちょっと恐ろしくなりますね。

僕は、18歳以下は使ってはいけない「18禁」のデザインがあっても良いと思っています。これ、冗談じゃなく本気でね。あえて使いにくいもの、すぐ壊れるようなものを子供に与えていかないと、普段生活する中で学べることが少なすぎるのです。

本来学校の役割とは、僕らが生活の中で学んだことを授業で補完することにあると思うのですが、今も子供たちが向き合っている学びの多くは、知的反射神経を鍛えるようなドリル的な学習です。中でも早期教育という名の下、幼少期から訓練されてきた子供たちは、生きる力がとても弱いと感じます。これでは今、社会で声高に叫ばれているイノベーションなど起こるはずがありません。

「ギフテッド教育」は早期教育ではない

--特異な才能を伸ばす教育法として「ギフテッド教育」があります。中邑教授はこれについて、世間で誤った解釈があると指摘されていますが、本当の意味での「ギフテッド教育」とは何でしょうか。

ギフテッドとは生まれつきもつ、突出した能力を表した言葉です。ギフテッド教育とは、そうした能力が伸びていくのを阻害せず、のびのびと育てていこうとするものであり、けして大人が作為的に道を敷いていこうとする教育ではありません。ところが日本では、ギフテッド教育が早期教育と取り違えられることがよくあります。

たとえば小学校受験のための訓練や勉強は、知的反射神経を鍛えるような課題が中心で、IQを調べる知能検査の問題にも類似しています。したがって、早期教育を施せば必然的に成績が高くなり、IQも高く出る可能性があるのですが、これだけを根拠にギフテッドと判断できるかどうかは疑問です。幼児期に高いIQを叩き出し、神童扱いされてきた子供が、小学校高学年になると他の子に追い抜かれ、周囲の期待に応えられなくなって苦しむケースは少なくありません。

すべての子供には天賦の才能がある。だから芽が出るまで放っておきましょうというのが「ギフテッドの本質」です。

STEAM教育に必要なのはダイナミックでリアルな原体験

--文部科学省も大きく舵を切り、学校ではアクティブ・ラーニングやSTEAM教育といった活動の中で、子供たちひとりひとりの個性を伸ばし、考える力や主体性などを育もうとしています。こうした教育活動を行うにあたり、一番重要なことは何でしょうか。

東大の学生たちを見ても、考える力や主体性がないわけではありません。自分から進んで多くの論文を読み、本やネットで貪欲に知識を習得するなど、さまざまなことに詳しい勉強熱心な学生はたくさんいます。ただし、彼らの知識にはリアリティがない。このリアリティのなさが今の子供たちの特徴です。

今、多くの学校で実施されているアクティブ・ラーニングやSTEAM教育は、安全に管理された状況で行われる実験や、周到に準備されたプログラムなど、先生が想定したアウトプットに向かっているものが大半です。ダイナミックさやリアルさがなく、子供たち自身が何か問題にぶち当たって考えるというプロセスが抜け落ちています。

もちろん、先生が生徒に対し、構造的に知識を授ける役割は引き続き重要だと思います。けれど子供たちにはその前に、自由に気の向くまま過ごしてきた、ダイナミックでリアルな原体験が必要なのです。僕はこれを「Pre-STEAM」と呼んでいます。じーっとアリの行列を眺めていたり、穴の中にひたすら石を落とし続けたり、大人から見れば一見無駄と思えるような単調な行動こそが、子供時代にはとても大事なのです。

遠回りで非効率でも、教えない。体を動かし、汗をかいて、気づかせる

--大人がお膳立てをした予定調和ではなく、子供が自由に気の向くまま過ごせる時間が必要だ、と。その他、コロナ禍で親子が過ごす時間が増える今、「生きる力が弱い」「ダイナミックでリアルな原体験が足りない」子供たちに、家庭でできることは何でしょうか。

コロナ禍では在宅時間が増えて、子供たちがゲームやタブレットといった道具を使う時間も増えました。未曾有の危機の中、現実世界を体験しにくい状況ですが、空気や湿気、匂いなど、リアルな経験を失っていくのはとても恐ろしいことです。

中邑賢龍教授と加藤紀子さん
「子供が夢中になれることをどうやって探せばいいか」とよく聞かれるのですが、デジタル機器から完全に離れて、何もないところに連れていって好きにさせてみてください。GPSに頼らず目的地を目指してみたり、畑で野菜や果物を育ててみたり、動物や自然に触れ合ったり。情報や労働はタダではないこと、生き物は人間の思うようにならないことなど、子供たちに体験を通じて気づかせることがとても大事です。

それには親にも覚悟が入ります。親もデジタル機器を手放し、遠回りで非効率でも、一緒に体を動かし、汗をかいて、知恵を絞る。子供に何かを「教える」のではなく、リアルな経験を徹底的に体に染み込ませて、子供に「気づかせる」のです。今、親が子供に授けるべきものは、子供に自分の無力さを気づかせる時間だと思います。

すべての子供たちが、心に傷を残すことなく育つ社会

--すべての子供に天賦の才能がある。でも、どうしても社会でうまく立ち回れず、振り落とされてしまう子たちもいます。すべての子供たちの才能を潰さず、伸ばしていくために、社会はどう変わるべきだと思いますか。

社会の中に、新しい評価軸、多様な枠組みをつくっていくべきです。今の社会は、「ありのままでいい」と言いながら、ひとつの枠組みの中に、既存の評価軸で、個性の強い子も十把一絡げに押し込めようとしています。「インクルージョン」「ダイバーシティ」という標語を掲げていても、当事者に聞いてみると、足手まといになってしまうからと仕事が与えられなかったり、コミュニケーションの難しさからいじめにあったり、必ずしもうまく共存できていないのが実情です。

多様な枠組みと新しい評価軸をつくり、環境さえ整えてあげれば、どんな人にも自分の居場所ができ、落ち着けるはずです。でも今はひとつの枠組みしかなく、そこからはみ出てしまった人たちを福祉の対象とし、エクスクルード(排除)してしまっているのです。

鹿児島市にあるしょうぶ学園は知的障害者向けの福祉施設ですが、職員は福祉の専門家だけでなく、アートや音楽など、さまざまな専門家がいます。こうした専門の目利きが、作業場で障害者が作ったものに価値を見出し、作品として販売しています。一見して価値があるかわからないものでも、プロデュースによって見事に高値が付く作品に変えられる。まさに新しい評価軸です。畑で作った野菜を使い、洒落たレストランで美味しい食事を提供したり、パンを焼いたりと、地域コミュニティの住民の憩いの場にもなっています。

新しい評価軸をプロデュースできる人々を介して、障害のある人達のコミュニティが外の環境と分離されず、地域と結びつく。ひとりの人間としては難しくても、そのコミュニティごと地域と共存できれば良い。「社会がおかしい」ってことに気づく人が増えて、「社会を変えよう」と動けば、それによって生きやすくなる人たちはたくさんいるのです。

--最後に、生きづらさを抱える子供たちへ、そしてその子供を見守る親たちへ、メッセージをお願いします。

子供は何も悪くない。だから、子供を変えようとする必要はありません。ものすごく抵抗する子供がいますが、それもその子の特性なのです。その特性を親や周りの大人が力尽くで潰してしまうと、子供は必ず心に傷を残します。トラウマになり、一生苦労する子もいます。すべての子供たちが、心に傷を残すことなく育っていく。僕はそれが一番大事だと思います。今、辛いかもしれないですけど、どんな子供も必ず動き出しますから。どうか目の前の子供を信じて、見守ってあげてください。

--ありがとうございました。

「苦手なことを無理に克服しようとしなくていい」「子供は何も悪くない」「すべての子供には天賦の才能がある」中邑先生の言葉を改めて噛み締めると、私たちの社会はどれだけのギフトをみすみす失っているのだろうという悔しさを感じずにはいられない。

目の前にいるわが子のギフトは何か。私たち大人こそ依存状態になっているさまざまな道具を手放し、ダイナミックにリアルに、親子で今この瞬間を一緒に過ごすことで、その本質が見えてくるのかもしれない。

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今回のインタビューは示唆に富んでいます。ユニバーサルデザインではなく「18禁デザイン」とは面白い発想です。何でも便利ではなくあえて不便を提供する、いわゆる野外活動のようなことを、日常スタイルにも教育として求めるということです。すてっぷもそのことはとても大事なことだと考えています。できるだけ野外に出かけ、水や土、火や風、生き物や草花を対象にして遊ぶことが重要だと考えています。確かに公園遊びは子どもを管理しやすいですが、遊具遊びとボール運動程度で変化に乏しい物ばかりです。働きかければ変化するもの、工夫すればするほど変化するものはタブレット中にもありません。

何でも便利なものを与えてはいけない、不便だから便利にしようと考える、知らないことだから知ろうとする。こうした動機を子ども時代から奪ってはならぬと中邑先生は警鐘を鳴らします。こうした子どもたちの体験の上にSTEAM教育は成り立つのであって、その逆はないと思います。「S」(SCIENCE 科学)「T」(TECHNOLOGY 技術)「E」(ENGINEERING 工学)「A」(ART 芸術)「M」(MATHEMATICS 数学)これらを結びつけた教育が必要だと専門家は唱えますが、土台になるカルチャー(文化)が貧しくては成立しません。

中邑先生は、自発的に学んだり遊んだりする環境と付き合う大人だけ準備して、あとは放置せよと言っているようにも思えます。「インクルージョン」も「ダイバーシティ」という標語も息苦しいという当事者の声に私たちは耳を傾けなくてはなりません。ただ、世の中は皆で生きているのですから、どこかで折り合いをつける必要があります。それは少数者の当事者だけに求められるものではなく、多数者の我々にも求められるべきものです。その双方の折り合いのつけ方を、「支援」と呼ぶべきだろうと思います。折り合いと言うからには、お仕着せではなく当事者の意見もあるという事です。従って、支援はいらないのではなく、その折り合いの境界線は人によって違うので、支援も人によって違うのだと思います。

ラグビー・ワールドカップ

先週、ラグビー・ワールドカップが開幕しました。初のアジア開催ということもありたいへん盛り上がっています。日本はロシアに初戦勝利です。ところで、初めて観戦した人は、日本チームを見て「え?外人チームなの」と思った方もいたかと思います。ラグビー ワールドカップ 日本代表は31人中14名の外国出身者がいます。ラグビーの場合は国際ルールで、代表チームはその国の国籍を持たない外国人選手であっても登録が認められています。その条件は、出生地がその国、両親・祖父母のうち一人がその国の出身、その国で3年以上継続して居住していることです。このいずれかの条件に該当し、他国の代表選手になっていない場合、代表チームに入ることができます。ラグビーでは「国籍よりも実際にプレーしている土地」を優先するのです。

ナショナルチーム編成のコンセプトから言えばどうでもいいことですが、日本チームは14人のうち9人が日本国籍を取得しており、他国のチームより帰化割合は高いです。ヴァルアサエリ愛やリーチマイケルは、高校で来日して高校ラグビーや大学ラグビーでも活躍し、日本ラグビー文化を体現し、帰化もした真っ当な日本代表選手です。帰化してないトンプソン ルークや南ア戦逆転トライのカーン ヘスケスは長く日本で生活し、日本のトップリーグと日本代表合宿、代表戦を経験して日の丸を背負う覚悟と誇りをもって戦ってきたのです。ルークはさすがに年齢で無理にしても、他のみんなは次回のW杯目指して頑張ってくれるだろうと思います。

ところが、外人ばかりが目立って日本チームと言えないと非難する方がいます。しかし、他国チームでも同じくらい外国人選手はいます。サモアチームやUSAチームは日本チームより外国人が多いのですが、肌の色や顔つきが同じで目立たないだけです。故郷を離れて日本で戦ううちに日本が好きになり、文字どおり、体を張って日本チームの為に活躍してくれている代表選手の活躍を素直に喜びたいと思うのです。「国家への所属」よりも「チームへの所属」を優先する。ここがオリンピックや他のスポーツと違うところで、いいところだと思うのです。がんばれニッポン!

特別支援学校人気

二日続いて朝日の支援学校記事が続きました。要するに、支援学校人気でどの自治体でも教室数が足りず支援学校を新設せざるを得ないというものです。人気の原因は、昔のように支援学校を否定的に見ないで、専門教育と就労支援に手厚いので通常学校より丁寧でお得じゃないかというのが理由です。

確かに、高等部だけでなく今や小学部でも従来通常学校に在籍していたような子どもが1年生から入学してきます。保護者が気にしているのは「いじめ」です。それは本人へのものもありますが、兄弟へのものも心配されているのです。高等部の増加は、このまま大学進学できても就労は望めないし本人が苦しむという「配慮」から発達障害の生徒も含めて増えてきているようです。

インクルーシブ教育へとダイバーシティー社会へと唱えるならば、通常学校の教育サービスが変わらないとこの傾向はさらに拍車がかかります。場所(学校種別)で保障されるサービス(教育)ではなく、個人(個性)に保障される教育が求められています。

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特別支援学校、開校続々専門のケアや就労支援へ需要増

2020年8月23日 21時30分【朝日新聞デジタル】

少子化で子どもの数が減り、学校の統廃合も進むなか、障害のある子どもらが通う特別支援学校が次々に開校している。朝日新聞の取材では、2018年度以降の3カ年に全国で17校が開校し、さらに今後、全国で36校の新設計画がある。専門的な支援教育を望む保護者が増えたことなどで、支援学校に通う子どもはここ10年で約2割増加。深刻な教室不足が背景にある。

47都道府県の教育委員会に取材したところ、支援学校は18年度から今年度までに、東京や神奈川、愛知など12都道県が17校を開校。さらに来年度以降、埼玉、東京各6校、福岡3校など、19都道府県に36校の新設計画がある=表。ほとんどが子どもの増加による教室不足への対応だった。昨年度、教室が足りず、会議室などを教室に転用した支援学校は、すべての都道府県にあった。

〈特別支援学校〉盲・ろう・養護の各学校が07年に一本化され、幼稚園から高校にあたる各部ができた。視覚・聴覚・知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱の子どもが対象で、障害に応じた専門的な教育や就労・自立支援を行う。

障害ある子の就学、悩む親「長所大事にしてくれるか」
文部科学省によると、全国の小中高校に通う児童生徒数は1985年度の2226万人をピークに、昨年度は1280万人にまで減少し、学校も約4万2千校から7千校減った。

一方、支援学校に通う子どもは2009年度に11万7千人だったのが、昨年度までに2万7千人増えて14万4千人に。知的障害のある子が約9割を占める。学校数は116校増え、1146校となった。昨年5月の文科省の調査では、全国の支援学校で計3162教室が不足していた。国の有識者会議は支援学校が最低限備えるべき施設などの設置基準をつくるよう求め、文科省が検討中だ。

国は障害がある子とない子がともに学ぶ「インクルーシブ教育」を進めようと、13年に学校教育法の施行令を改正。通常校か、支援学校か、子どもの就学先を決める際に保護者の意見が反映されるようにした。就学時の健診で障害を見つけやすくなったこともあり、支援学校だけでなく、通常校に通いながら校内の特別支援学級で学ぶ子どもも、この10年で倍増した。ただ、17年度の調査では、どちらにも入学できる障害の重さと判断された約1万人の7割が支援学校を選んだ。また、支援学校では高校にあたる高等部で特に生徒が増えている。

背景について、支援学校6校を新設する埼玉県教委の担当者は「子どもの特性にあわせた、より専門的な教育に期待する保護者が増えた」とみる。2校を新設する大阪府教委の担当者は「就労を想定した専門の授業もあり、福祉事業所などへの就職に期待する保護者もいる」と言う。

こうした状況について、特別支援教育に詳しい都留文科大学の堤英俊准教授は「支援学校も保護者の大事な選択肢の一つ」としたうえで、「教室不足への対応として学校を新設するのはあくまで緊急対処。通常の学校にも、一人ひとりの個性や特性に応じた授業ができる少人数学級を設けるなど、保護者が安心して子どもを預けられる態勢を整えるべきだ」と話す。(渡辺元史、玉置太郎)

<特別支援学校>盲・ろう・養護の各学校が07年に一本化され、幼稚園から高校にあたる各部ができた。少人数の学級編成で、障害に応じた専門的な教育や就労・自立支援を行う。学校教育法施行令に基づき、重い障害を持つと判定された子が対象だが、高校生にあたる生徒が学ぶ高等支援学校は、比較的軽度の知的障害の生徒も受け入れている。

特別支援学校の新設状況
北海道3校(2):岩手県1校:宮城県2校(1):福島県1校(1):茨城県1校:埼玉県6校(6):千葉県1校(1):東京都10校(6):神奈川県2校:山梨県1校:岐阜県1校:静岡県2校(2):愛知県3校(1):三重県1校:滋賀県1校(1):京都府1校(1):大阪府2校(2):兵庫県1校(1):香川県1校(1):愛媛県1校(1):福岡県3校(3):佐賀県1校:長崎県1校(1):熊本県3校(2):大分県2校(2):沖縄県1校(1):
※2018年度以降の開校数と、来年度以降の新設予定数の合計。()はうち予定数

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特別支援学校、開校相次ぐ深刻な教室不足、背景通う子ども、10年で2割増

2020年8月24日 5時00分【朝日新聞デジタル】

少子化で子どもの数が減り、学校の統廃合も進むなか、障害のある子どもらが通う特別支援学校が次々に開校している。朝日新聞の取材では、2018年度以降の3カ年に全国で17校が開校し、さらに今後、全国で36校の新設計画がある。専門的な支援教育を望む保護者が増えたことなどで、支援学校に通う子どもはここ10年で約2割増加。深刻な教室不足が背景にある。

47都道府県の教育委員会に取材したところ、支援学校は18年度から今年度までに東京や愛知など12都道県が17校を開校。さらに来年度以降、埼玉、東京各6校、福岡3校など、19都道府県に36校の新設計画がある。ほとんどが教室不足への対応だった。昨年度、教室が足りず、会議室などを教室に転用した支援学校は、すべての都道府県にあった。

文部科学省によると、全国の小中高校に通う児童生徒数は1985年度の2226万人をピークに、昨年度は1280万人にまで減少し、学校も約4万2千校から7千校減った。一方、支援学校に通う子どもは2009年度に11万7千人だったのが、昨年度までに2万7千人増えて14万4千人に。知的障害のある子が約9割を占める。学校数は116校増え、1146校となった。昨年5月の文科省の調査では、全国の支援学校で計3162教室が不足していた。国の有識者会議は支援学校が最低限備えるべき施設などの設置基準をつくるよう求め、文科省が検討中だ。

国は障害がある子とない子がともに学ぶ「インクルーシブ教育」を進めようと、13年に学校教育法の施行令を改正。通常校か、支援学校か、子どもの就学先を決める際に保護者の意見が反映されるようにした。就学時の健診で障害を見つけやすくなったこともあり、通常校に通いながら校内の特別支援学級で学ぶ子どもも、この10年で倍増した。ただ、17年度の調査では、どちらにも入学できる障害の重さと判断された約1万人の7割が支援学校を選んだ。また、支援学校では高校にあたる高等部で特に生徒が増えている。

背景について、支援学校6校を新設する埼玉県教委の担当者は「子どもの特性にあわせた、より専門的な教育に期待する保護者が増えた」とみる。2校を新設する大阪府教委の担当者は「就労を想定した専門の授業もあり、福祉事業所などへの就職に期待する保護者もいる」と言う。こうした状況について、特別支援教育に詳しい都留文科大学の堤英俊准教授は「支援学校も保護者の大事な選択肢の一つ」としたうえで、「教室不足への対応として学校を新設するのはあくまで緊急対処。通常の学校にも、一人ひとりの個性や特性に応じた授業ができる少人数学級を設けるなど、保護者が安心して子どもを預けられる態勢を整えるべきだ」と話す。(渡辺元史、玉置太郎)

◆キーワード

<特別支援学校>盲・ろう・養護の各学校が07年に一本化され、幼稚園から高校にあたる各部ができた。少人数の学級編成で、障害に応じた専門的な教育や就労・自立支援を行う。重い障害を持つ子が対象だが、高校生にあたる生徒が学ぶ高等支援学校は、比較的軽度の知的障害の生徒も受け入れている。

京都府井手町で建設中の特別支援学校2022年4月開校予定

分け隔てない支援教育 モデル実施へ 大阪

分け隔てない支援教育 モデル実施へ 大阪

8/30(月) 【産経新聞】

大阪府教育庁は30日、軽度の知的障害や発達障害のある高校生らが必要な支援を受けながら他の生徒と一緒に学べるよう、新たな教育課程に基づく教育を令和5年度からモデル校で実施すると発表した。今後、カリキュラムなどの具体的な検討を始める。

府教育庁が掲げるのは「『ともに学び、ともに育つ』多様な教育実践校(仮称)」。モデル校は府立西成高校と同岬高校で、いずれも小中学校の内容から学び直せる「エンパワメントスクール」に指定されており、支援の必要な生徒が多い。習熟度別の授業や少人数指導など、両校で実践している支援のノウハウや課題をもとに新しい教育課程や学級編成を庁内で検討。6年度からは指定校を増やして本格実施する予定だ。

また、府の教育委員会議は同日、島本、茨田(まった)、泉鳥取高校の3校を、今年度の入試を最後に募集停止する方針を固めた。府条例では、3年連続で入学志願者が定員割れし改善の見込めない高校を再編整備の対象と規定しており、今年度の検討対象は13校。エンパワメントスクール全8校のうち岬、西成、箕面東高校も定員割れが続いている。

受け入れ体制に課題も
大阪府教育庁が今回、高校で新たな教育を導入する背景には、中学の特別支援学級から高校への進学率の高まりがある。令和元年度の卒業生の進学率は全国平均を大きく上回り、約8割に達した。現在は現場の工夫で支援しているが、適切なカリキュラムや学級編成を制度化し、卒業後の自立に向けてより充実した教育を実践するのが狙い。外部有識者による審議会が提案したもので、全国的にも珍しい取り組みという。

公立の小中学校には、学校教育法施行規則などに基づき支援学級が設置されているが、高校にはない。このため、支援学級の在籍生徒の進学先は特別支援学校高等部か一般の高校となる。

文部科学省によると、近年は全国的に中学の支援学級から高校への進学率が高まっており、令和元年度の卒業生では半数を超える。特に大阪府では以前からその傾向が顕著で、元年度は8割超の2035人が高校(高等専門学校含む)に進んだ。要因の一つとして、定員割れした府立高には成績にかかわらず入学できるという、大阪特有の事情もある。

府教育庁は、知的障害のある生徒を対象にした「自立支援コース」を府立高9校に設置しているが、定員は1校3~4人。課題に応じて一部の授業を別室で受ける「通級指導教室」も4校にしかなく、高い進学ニーズに対応しきれていない。また、支援学級に在籍していなくても学習やコミュニケーションに課題を抱える生徒も増え、入学時の調査で「配慮を要する」と回答する生徒は2年度で3174人と、平成20年度の2倍超となった。生徒の状況によって年度途中で新たに教員を配置するなどの対応が必要となる学校もあり、「現場に任せるには限界がある」(府教育庁幹部)という。

こうした問題について、大学教授らでつくる府学校教育審議会が今年1月から協議。8月下旬にまとめた中間報告の中で、こうした教育システムの導入を提案した。

目指すのは「『ともに学び、ともに育つ』多様な教育」の実践であり、対象は支援を必要とする生徒だけでない。橋本正司教育長は「さまざまな生徒が一緒に学び、誰もが意欲を持って自分の力を伸ばせる魅力ある学校にしたい」と話す。(藤井沙織)

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大阪府だけでなく都市を抱える自治体では少子化に伴い、私学志向が高まる一方、公立校は定員割れを起こして試験が0点でも氏名が書ければ入学できる状況が一部で起こっています。サイエンス校とかグローバル校等の高機能公立高校を作って一部の「高学力」生徒を集める施策は、それ以外の高校に「低学力」の子どもが集まります。そうした高校では中堅大学も目指せないと、中間層の生徒も私学志向になって、さらに公立校の定員割れが進みます。

さらに国の就学支援金と大阪府独自の授業料支援補助金を合わせれば、世帯収入が800万円以下の家庭なら年間平均50万円以上の補助があるので、これまでの学費の半額程度の負担で私学に行けるので「教育環境の良い私学へ」という流れをさらに後押しします。

こうした中で、低学力生徒の多い高校への支援としてエンパワメントスクールに指定して、読み書き計算の基礎基本から教える取り組みを始めましたが、それは大学には行けそうにない高校だと、逆に定員割れを起こす皮肉な結果となっています。これは、ハイタレント(高学力者)囲込みの高校教育施策の矛盾を、泥縄式に手立てを打っている対症療法としかいえず、かえって発達障害のある生徒などを特定の高校に囲い込む施策にも見えます。

今回は、これを打破しようとした高校教育の起死回生をかけた教育システムですが、橋本教育長が言うように「さまざまな生徒が一緒に学ぶ」学校にするには、一点豪華主義の公立高校設置を改め、どの学校でも有名大学が狙え、どの学校でも基礎基本に戻る教育課程も行う公立学校本来の姿、多様性社会を校内で実現していく姿勢がベースに求められると思います。そうすることで、中学校の進路指導や特別支援の姿も変わってくるものと思われます。特別支援学級在籍者の報告書(内申書)を本人の実力に関わらずオール1にするなど※旧態依然として、多様な学びを認めない中学校の改革にも一石を投じるものになると思います。

※例えば、「令和3年度京都府公立高等学校入学者選抜要項」の「4 出願の要領(全日制・定時制共通) (3) 中学校長の手続  エ 報告書(様式Cの1及び様式Cの3)について b(a)」には、「なお、特別支援学級(中略)生徒等については、(a) 「中学校学習指導要領」に示す目標に照らして、その実現状況を5段階の評定点により記入すること。」とある。「支援学級生はオール1」という申し合わせが存在するならば絶対評価の公平性が失われていることになる。

 

秋のおすすめ講演会

スポーツの秋、行楽の秋、食欲の秋、読書の秋。秋には様々な講演会も開かれます。普段は講演会なんて行く暇がないのですが、秋にはちょっと出かけて講義を聞いてみませんか。きっといいヒントが見つかるかもしれません。

◆『内山登紀夫先生 講演会』

日 時: 2019年10月13日(日) 13:20~16:00

場 所: ドーンセンター 4F 大会議室(大阪市中央区大手前1-3-49)
内 容: 青年・成人期の実態調査から見て、大切なこと、必要なこと
これからの自閉症支援 現在から未来へ~切れ目のない支援、ライフステージを考える~
講 師: 新澤 伸子 先生(武庫川女子大学 教授) 内山 登紀夫 先生(よこはま発達クリニック 院長)
参加費: 一般 2000円、会員 1000円
定 員: 70名
締 切: 10月6日(日)
主 催: 自閉症スペクトラム児・者を支援する親の会オアシス
申込み&問合せ: Fax.06-4862-4158 E-mail Kinenjigyo@oasc.jp
詳 細: https://oasc.jp/pickup03/10月13日%E3%80%80オアシス講演会


◆『京都府自閉症協会50周年記念大会』
日 時: 2019年11月9日(土) 10:50~16:30(開場10:30~)
場 所: KBSホール
内 容: “わたし”を取り戻す いつか親業を卒業する日のために・・・
講 師: 上野千鶴子先生(NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長)
参加費: 無料
(祝賀会 平安ホテル  18:00~20:00(受付17:30~)参加費:5.000円(洋食))
定 員: 700名
主 催: 京都府自閉症協会
申込み&問合せ: http://as-kyoto.com/?p=1207
詳 細:http://as-kyoto.com/wp-content/uploads/2019/04/追刷50周年オモテ面.pdf
詳 細:http://as-kyoto.com/wp-content/uploads/2019/04/追刷50周年裏面.pdf

クワイエットアワー

薄暗い店内で静かに買い物 欧州のスーパーが導入、発達障害者に優しい「クワイエットアワー」

2020年08月25日(火)19時25分【Newsweek】
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

<ちょっとした配慮でこれまで来店できなかった人たちも買い物ができるように──>
BGMなし、薄暗いスーパー
8月から、スイスのスーパーに「クワイエットアワー」という時間帯が試験的に初導入された。クワイエットアワーは、音や光やにおいに敏感で日常的に困っている発達障害(自閉性障害やアスペルガー障害など)の人たちに配慮し、音楽やアナウンスをなくし、照明の明るさを下げるといった調整で買い物がしやすいようにした時間帯だ。ヨーロッパを中心に広がるスーパー、スパーの一部(4店舗のみ)で週2日午後1~3時までの2時間実施している。

発達障害者専用ではなく、それ以外の人たちも買い物できるというので4店舗のうちの1つに行ってみた。音楽はなく(スイスのスーパーは、元々BGMがないところが多いが)、確かに薄暗かった。レジでバーコードを読み取る際のピッという音はしていたが、この音を当事者はどう感じるだろうか。

スイス国内の報道によると、2年前はクワイエットアワーに関心がなかった大手スーパーのコープも、現在、試験導入の準備を進めていることがわかった。

クワイエットアワーは、日本でも導入してほしいと思っている人はいる。一般社団法人日本発達障害ネットワークと明治大学建築環境計画研究室が共同で実施したアンケートでは、よく買い物に行く店でクワイエットアワーが実施されれば、その時間に利用したいと答えた人が41%いた。51%はどちらともいえないと答え、「その時間帯に行けるかわからないから」「デジタル音ではなく人が多いことや人の声が困るから」といった理由が挙がっていた。

イギリス、アイルランドなどが先行実施
クワイエットアワーは、スイスに先駆け、自閉症者が約70万人いるイギリスで2017年に大々的に実施された。イギリス自閉症協会が1週間「自閉症の時間(1時間)」を設けるキャンペーンを呼びかけ、4500以上のスーパーやショッピングセンターが参加した。このキャンペーンは継続中で、昨年は 1万4500以上の店(公共施設も含)が参加し、クワイエットアワーへの関心が徐々に高まっている。

同協会は、キャンペーンを機に自閉症者への理解が深まることを願い、企業が定期的にこの時間帯を取り入れることを目指している。実際、キャンペーン参加企業の多くが簡単に実施できたと感想を述べ、自主的に実施するようになっているという。他の国でもこの時間帯を設ける動きが広がっている。アイルランドでは独系ディスカウントスーパーチェーンのリドルが、全国の店舗で週1回クワイエットアワーを実施、ポーランドでは仏系スーパーのオーシャンが全国にあり、各店舗でクワイエットアワーを実施している。

これらのチェーン店は国境を越えて同じ方針を取っているとは限らず、リドルはスイスにも広がっているがスイスでは導入の計画はなく、スイス・ドイツ語圏自閉症協会は遺憾を表明している(地方紙アルガウワー・ツァイトゥング)。冒頭のスパ―も世界展開しているが、他国の店舗では未導入のようだ。また日本でも一部で報道されたように、ニュージーランドでは、試験期間を経て、昨秋から大手スーパーのカウントダウンが全国的にクワイエットアワーを導入した。隣国オーストラリアでも昨春から、コールスが全国250以上の店舗に取り入れた。

オンラインショップよりいい 当事者の声
店内の音楽や明るさが気になるならオンラインショップがあるではないかと、発達障害をもたない人なら思うかもしれない。しかし、オンラインショッピングには短所もあることを忘れてはならない。ある自閉症者が、イギリスの消費者団体フィッチ?でこう主張していた(2018年寄稿)。彼女はオンラインで買い物を済ませることが多いが「オンラインでは店頭と同じ特売がないことがあるし、店員との交流はないし、店頭と同じサービスも受けられない」という。香水が大好きな彼女は店頭で芳香を嗅ぎ比べるのが好きなのに、オンラインで買い物すれば当然それはできない。

そしてクワイエットアワー以外の時間に店頭で買い物しても、不利な点があると説明する。店内で緊張してしまうと、よい判断ができずに買い物してしまうそうだ。商品を比較する余裕がなくていつもと同じ物を買ったり、特売のサインがある物をサッと買ったり、とにかく最初に見た物(買おうとしていたのとは別の物)をつかみ買ってしまったりするという。つまり、買い物する楽しみも味わえないのだ。

障害者、高齢者、妊婦、小さい子ども連れなど、誰もが暮らしやすい環境を作るためには少しの工夫でよい場合もある。それがすぐに浸透することは難しいとは思うが。

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日本でもイオンが神奈川で試験実施したり大阪ではトレーニングジムで実施したりしています。賑やかな人には申し訳ないけど、職場や公共の場で、「たかがおしゃべりや喧噪」で苦しんでいる人もいるという想像力が大切です。

ICT機器 児童生徒の9割が期待も 学校は半数以上が十分活用せず

ICT機器 児童生徒の9割が期待も 学校は半数以上が十分活用せず

2021年9月1日 【NHK】

小中学生に1人1台配られているタブレット端末などのICT機器について、児童生徒の9割が「勉強の役に立つ」と期待を寄せる一方、十分活用していない学校が半数を超えていることが文部科学省の調査でわかりました。

文部科学省は、ことし5月、全国の小学6年生と中学3年生、200万人以上を対象に「全国学力テスト」を実施し、あわせてタブレット端末などICT機器の活用状況についても調査して、31日、公表しました。

この中で児童や生徒に、タブレット端末などICT機器の使用が勉強の役に立つと思うか聞いたところ、「役に立つと思う」、「どちらかといえば役に立つと思う」という回答が小中学生ともに90%を超えました。

一方で、学校に対し、教職員と児童生徒がやりとりをする場面でどの程度ICT機器を活用しているか尋ねたところ、「全く活用していない」、「あまり活用していない」という回答が、小学校で55%、中学校で57%でした。

また、児童生徒に1人1台配備されたタブレットなどの端末をどの程度家庭で利用できるようにしているか聞いたところ、小中学校ともに「持ち帰らせていない」もしくは「持ち帰ってはいけないことにしている」があわせて60%以上となり、毎日もしくは時々持ち帰り利用させている学校は20%程度にとどまりました。

文部科学省の浅原寛子 学力調査室長は「ICT機器の学習への活用について子どもたちの期待が非常に高いことがわかった。休校など非常時に備える意味でも1人1台の端末を積極的に活用してもらいたい」と話しています。

端末の持ち帰り 学校の対応に差
感染の急拡大で今後、臨時休校も想定される中、文部科学省は小中学生に1人1台整備しているタブレット端末などの最新の活用状況も公表しています。

ことし7月末の時点で1人1台の端末の整備は全国の96%にあたる1742の自治体で終えていますが、3.9%にあたる70の自治体では完了していないと答えたということです。

家庭に端末を持ち帰ることについては、全国の公立小中学校などおよそ3万校のうち、感染拡大や災害など非常時に対応できるよう「準備済み」と回答した学校は64%、「準備中」と答えたのは32%、「実施・準備をしない」が4%と、対応に差があることがわかりました。

文部科学省は夏休み明けに登校できないケースや休校などが想定されるとして、「実施・準備をしない」と回答した自治体に対し、速やかに準備をするよう促したということです。

専門家「平常時から教室で使い、持ち帰って練習を」
ICT教育に詳しい東北大学大学院の堀田龍也教授は、タブレット端末などに対する子どもたちの期待は高い一方、活用は十分広がっていないという調査結果を受け、「自治体によっては、オンライン授業の取り組み事例を徐々に近隣の学校に広めているところもあるが、中にはすべての学校が一斉にできるようになるまで活用を始めない自治体もある。できること、できるところから進めていくことが大事だ」と話しています。

そして、感染拡大が収まらない中で新学期が始まることから、「学校でも十分使い方がなじんでいないのに、非常時にタブレット端末を家に持ち帰ったところで活用は容易ではない。平常時のうちから教室で使い、持ち帰って練習をするなど備えておくことが学習を保障するうえでも非常に重要だ」と指摘しています。

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端末持ち帰り調査: 05/27)でもコメントしましたが、すてっぷで把握する限り、全児童分のタブレットが配備された乙訓の小学校で、夏季休暇中に家庭に端末を持帰らせた学校はなかったようです。大阪では環境が整っていないのに市長のオンライン授業発言はけしからんと校長先生の市長あての提言がSNSで拡散される事件も起こりました。ただ、実際の提言は現在の教育を憂う個人的な感想が多く、オンライン学習に触れたのは全文の1割もなく、しかも具体的な指摘もないままに一方的に校長の感想が書かれているだけで、事実に基づいた内容がありません。恐らくは、これはメディアが大阪市長批判のためにする政治的に煽った事件であり、子どものオンライン学習の具体的な推進には何の役にも立たない話だと思います。

けれども、「全体が揃うまで実施しない」というのは、公平性を大事にしているかのように聞こえますが、このフレーズを使う人によって意味合いは変わるのです。サービスを受ける人が使うと同じ税金を払っているのだからサービスは公平にしてくださいと言う意味になります。しかし、サービスを供給する側が使うと、全体が揃わないのだからサービスできるところもやらないし、もう少し努力すればできるところも全体の足並みがそろうまでやらなくていいという言い訳になるのです。つまり、公平と言う言葉が努力しない事を免罪し、個々で努力したり工夫することを抑制してしまうのです。

年金や給付金などの公平性と、設備や技術格差の可能性を内包しているサービスの公平性とでは意味合いが違います。前者は一律平等ですが、後者はできるところから実施し、遅れたところは公平性を目指して全力で追いつく努力するのが公的サービスのあり方です。そういう意味では、オンラインができないと言う前に何か努力をしたのかという疑問が残ります。

前回も紹介しましたが、民間のリモート用サーバーを使ってオンライン授業を実現している学校(学校つなぎ学習支援: 06/03)もあるのです。できない理由を並べるのは簡単ですが、子どものためにICT教育を実現しようとする前向きな姿勢がなければ、できるものもできないのです。世の先生方は公的サービスの公平性とは何かを再考され、タブレット持帰りを実現してほしいと思います。

9月病


長い夏季休暇が明け慌ただしい日常に戻るとき、変化に順応できず気分がふさいでしまうことを、欧米では9月病と言われてきました。日本でも、9月に調子の悪さを感じる人がふえ、9月病と言われるようになってきました。体の症状は、疲れが抜けない、過食(食べすぎる)、眠れない、過眠(眠りすぎる)、体や頭が重い、だるさがつづく、頭痛がする等です。心の症状は、気分がおちこむ、やる気がでない、元気がでない、楽しくない、悲しい、めんどくさい、心配になる、焦燥感(どうしていいのかわからない)、イライラしてる、けんかばかりする等です。大きく分けて、5月病の秋バージョンの「秋うつ」タイプと、夏の疲れからくる「秋バテ」タイプに分けられます。

秋うつタイプの9月病は、秋になるとなんとなく悲しい気分になったりする季節性感情障害(SAD)という病気があります。もともとの9月病はこのタイプで、日照時間なども関係して脳の働きが不調になるようです。秋うつタイプの特徴としては、気分が沈みがちということに加え、過眠・過食がみられます。秋バテタイプの9月病は、エアコンの効いた部屋での体の冷やしすぎが大きな原因です。秋バテタイプの9月病の特徴は、夏の疲れが蓄積された疲労感です。体温調整の乱れが原因のことも多く、夏の間に冷たいものを食べる習慣がついて胃腸の調子が悪くなっている人もいます。そして、両者に共通するのは自律神経の乱れです。

秋うつタイプの9月病の子どもの気持ちは、長い夏休みを終え、新学期が始まり、「早起きが嫌だ」「だるい」「夏休みの生活が良かった」などの思いがとても強くなってしまった状態です。秋バテタイプの9月病の子どもは、冷えが原因で、アイスの食べすぎだったり、涼しくなったのにタオルケット1枚で寝ている場合などです。共通する自律神経の乱れを正すには、規則正しい生活(睡眠・食事・適度な運動)です。でも、9月病で体調が悪いから生活が乱れているのですから、そう簡単には直せません。それでも、楽しい活動を朝方に用意する、お日様の下で活動する、ぬるめの風呂にゆっくり浸かるなど、体内バランスの正常化が何より大切です。そして夜中のブルーライト(PC等液晶の光)は脳の混乱の長期化につながりますので、何はともあれ、しばらく禁止してみましょう。眠れぬ人は無理に眠ろうとしなくていいので、布団に包まって癒し系の音楽を流すとか、それでも眠れぬ過ごしが辛いなら、落語や一人語りのオーディオブックをかけてみるとかして、酷使してきた視覚系を休めて聴覚系の入力に切り替える工夫をしましょう。ラベンダーの香りが嫌いでないならこれもオススメです。

eスポーツ、障害者施設や企業で新しい交流の機会

eスポーツ、障害者に人気コロナで外出制限、リハビリ効果も―対戦通じ交流機会増

2020年08月21日07時16分【時事ドットコム】

新型コロナウイルス感染予防のため、外出や面会制限が続く障害者や長期入院者の間で、対戦型コンピューターゲームで勝敗を競う「eスポーツ」が人気だ。施設や病院にいながら外部とゲームで交流できるほか、プレーで体を動かすことのリハビリ効果も期待されている。

ゲームメディア事業を展開する「KADOKAWAGameLinkage」によると、今年の国内eスポーツの市場規模は76億円。各地で大会が開かれるなど盛り上がりを見せており、3年後には153億円へと急成長が見込まれる。

昨年、国民体育大会で初採用されたeスポーツの全国大会では、障害者も参加しやすいように改造コントローラーの使用が認められた。障害者限定の全国大会も開かれるなど、参加の垣根は低くなりつつある。北海道八雲町の国立病院機構八雲病院では、国内外のプレーヤーがチームを組み、敵地を攻略するゲームが入院患者に人気だ。

徐々に筋力が衰える難病で、10歳から入院を続ける吉成健太朗さん(24)は「eスポーツは誰かとつながる懸け橋」と目を輝かせる。オンラインでリモート参加できる大会も増えており、「病院からでも出場できる可能性が見えてきた」と歓迎する。今年からゲーム機材を導入し、入所者が格闘ゲームや運転ゲームを楽しむ秋田市の「障がい者支援施設ほくと」では、eスポーツによるリハビリ効果にも注目している。

同施設の作業療法士若狭利伸さん(30)は「普段、腕が上がらない人がゲームでハンドルを回すと自然と上がるようになった」と強調。ゲームがコミュニケーションの機会となり、入所者の笑顔も増えたという。

半身まひを抱える入所者の成田久さん(50)は格闘技ゲームをプレーする際、敵を倒すため、技ボタンを勢いよく連打する。ビデオ会議システムでの取材に対し、「外出できずつらいが、息が上がるほど運動になる」と充実した表情を見せる。脳性まひで体が不自由な小笠原順一さん(60)は日々、ゲームの腕を磨いているといい、「eスポーツは(障害という)ハンディを克服できる手段。全国大会に出て、一緒に戦った人と交流したい」と話している。

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eスポーツで社会人交流企業対抗戦、リーグ設立―コロナ禍、オンライン活路

2020年08月20日07時05分【時事ドットコム】

コンピューターゲームで競い合う「eスポーツ」の社会人による活動は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンライン対戦に活路を見いだしている。プレーヤーや観客が一堂に会する形式の大規模イベントは開催できなくなったが、オンラインの企業対抗大会が開かれ、新たに社会人リーグも設立。社内外の交流に役立てる取り組みが広がっている。

コロナ禍で前進、eスポーツオンライン増えファン拡大
日立製作所のIT子会社、日立システムズ(東京)は社内交流の活性化を掲げ、2018年に「eスポーツ部」を設立。若手社員からベテランまで約35人が所属し、終業後に集まって飲食しながらゲームを楽しむことが多かった。しかし、コロナ流行で集合してプレーできなくなり、オンライン形式の大会参加や社内対戦で活動を続けている。
オンラインによる企業対抗戦の場をつくろうと、大日本印刷(DNP)や、NTT東日本の子会社でeスポーツの施設運営を手掛けるNTTe―Sports(東京)などが6月から大会を開催。在宅勤務や外出自粛で減った社内外の交流を促す試みで、地方や自宅など場所を問わず参加できるメリットもある。過去5試合には富士通やヤフーなどのチームが参戦。「普段つながりのない企業人と接点ができ、視野が広がる」(DNP広報)のが魅力だ。

凸版印刷などは7月、企業チーム向けの「アフター6(シックス)リーグ」を立ち上げ、10月から対戦を始める。試合の前後にビデオ会議による顔合わせや意見交換を行い、ビジネスのアイデア創出やマッチングの場としても活用したい考え。社会人のeスポーツに対する関心は高まっており、20年度中に50社ほどのリーグ参加登録を見込む。凸版の担当者は「コロナとの共存が求められる中、交流の一つの形として定着させたい」と意気込む。

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たかがゲームと思うなかれ、eゲームはスポーツです。コロナ禍でこれまでスポーツを通じた交流も自粛され、オンラインゲームで交流する企業間交流や障害者団体も増えてきたと言います。

学校ではマスク着用なしで抗原検査を徹底──英国

米国とは反対の施策を進める
学校ではマスク着用なしで抗原検査を徹底──英国のコロナ感染対策は「有効」と示唆

2021.9.2【クーリエ・ジャポン】

日本では新型コロナウイルスに感染する子供が増加し、すでに夏休みの延長やオンライン授業を検討する小中学校が増えている。新学期を迎え、不安を感じる家庭も多いだろう。

デルタ株が蔓延する英国では、休校措置やマスク着用の義務なく、抗原検査の徹底によって校内のクラスターを抑えようという動きがある。感染拡大を防ぐのは可能なのだろうか──。

子供たちがマスクを着用し続けるリスクは大きい
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、マスク着用を義務付けずに、無償配布した抗原検査キットを活用することで、校内の感染率を抑える英政府の事例を紹介した。記事には「英国では子供たちは学校でマスクをしていない」と驚きを込めた見出しが付けられた。

英セント・ジョージ病院の小児感染症の専門家シェームズ・ラダーニは「人と人との交流において顔を合わせることは重要で、子供たちがマスクを着用し続けることは潜在的なリスクが大きい」と話す。また、英政府は回避可能であれば「子供がマスクで顔を覆う必要はない」という姿勢を当初から明確にしているとも述べた。

英国では6月以降にデルタ株が蔓延し、7月中旬に感染のピークを迎えた。しかし、パンデミック中に開校を続けた英国の学校内の感染率は、社会全体の感染率を上回らなかった。英政府も「大規模なクラスターは起きなかった」と調査後に結論づけたことを、ニューヨーク・タイムズは報じている。

抗原検査を徹底すれば、隔離時と変わらない陽性率に
英政府は以前から、家庭に検査キットを無償提供し、子供に週2回の検査を要請。学校のバブル(安全圏とされるグループ)内で陽性者が出た際には、10日間の隔離が求められていた。実際、英国では7月中旬に公立校生徒の14%にあたる100万人以上が隔離を強いられ、子供たちや親の混乱を招いたことも事実だ。

しかし、隔離の代替策になると期待されているのが、徹底した抗原検査だという。英国ではデルタ株の感染拡大時に、対象となる中学校から大学までを「隔離型」と「検査型」のどちらかに無作為に振り分けて、感染状況を比較した。検査型の学校では、関係者は感染の発覚から1週間は抗原検査を受けることを条件とし、陽性反応が出た子供だけを隔離する方法をとった。

結果、どちらのグループでも陽性反応が出た接触者の割合は2%に留まった。また、教員の抗体検査結果をみても、陽性率は地域の成人と同等以下であり、学校が「感染のハブ」ではないことが示されたという。

二極化する校内の感染対策
英紙「ガーディアン」は、英国の学校における最新の感染対策を次のようにまとめる。
・子供たちを少人数のグループやバブルに入れるという要件は取りやめ。マスク着用の義務化も廃止され、感染した生徒の連絡先の追跡なども必要なし(登下校時などふだん会わない人と接触する閉鎖空間ではマスク着用を推奨)。
・10日以内に濃厚接触した5人の生徒や職員が陽性となるなど、一定の条件を満たす場合、学校はマスク着用などの助言を教育省に求めることができる。しかし、いかなる施策も期間限定であること。
・政府が求める対策は前年度に比べて少なく、手洗いなどの基本的な衛生管理と換気のモニタリング、生徒と教職員への抗原検査の実施が求められる。

対して、米国ではCDC(米国疾病予防管理センター)が、予防接種の有無にかかわらず学校内では全員がマスクをすることを推奨。加えて、バイデン大統領が学校でのマスク着用義務に抵抗する州に対して、法的措置を検討するよう教育省に要請したことが明らかになっている。

英米を見ると、学校内での感染対策は二極化している。日本でも、文部科学省が全国の幼稚園や小中学校に抗原検査キットを配布する方針を明らかにしたが、今後は英米の学校における対策事例が参考になるかもしれない。

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同じアングロサクソンでも、風評や感情に揺れる米国と人権とエビデンスを大事にする英国では国家が誘導する感染対策でもこんなに違うのかと思いました。この記事内容が事実なら、まともに読めば英国が正しいということになります。学校が「感染のハブ」かどうかを確認するために「隔離型」と「検査型」を感染拡大期にすぐに調査する等、行政のエビデンスベースの素早い動きには感心します。いつまでたっても、感染者数と重症者数の発表だけで、エビデンス調査をしようとしない日本とはえらい違いです。

翻って米国CDCは政府と独立して機能する専門集団ですが、この権威のあるセンターが全員がマスクをすることを推奨しています。ただ、今回のCDC推奨の科学的な根拠は英国のようには明確に示されておらず、政治力が働いている印象がぬぐえません。確固たる根拠がないのに、マスク拒否者を法的に強制するコメントを大統領が出すなど、冷静な判断とは思えないです。感染拡大はマスク拒否が原因とマスク拒否者をスケープゴートにして、政権批判をかわす為に、世論を誘導しているようにしか見えません。

我が国でも、GOTOやら飲食店やら、オリパラを何の科学的な根拠もなくスケープゴートにして、政争の具にしています。真面目な日本人は、誰が勧めたわけでもないのに、いつのまにか熱中症のリスクまで冒して戸外でマスクをつけています。それに乗っかって厚労省の感染予防リーフには戸外でも2mの距離が取れないならマスクをしなければならないかのように推奨しています。

日本人はそれに従って真面目に戸外でマスクを装着し、飲食店を閉め、盛場での飲酒まで控えてきました。感染拡大が収まらない事実を目の前にしても、同じことを続けて平気というのは、お人好しならばまだいいのですが、全体主義を受け入れやすい性質が日本人にあるのではないかと心配になります。科学や学問を尊ぶ学校教育の場で、科学的根拠を示した予防策が先進国日本として展開されることを願わずにはいられません。

グレタ・トゥーンベリさん

9月23日にニューヨークの国連本部で行った演説が、大きな反響を呼んでいるグレタ・トゥーンベリさん。しかし、彼女が動かしているのは、温暖化問題への人々の関心や行動だけではありません。その強い意思と行動力は、「障がいとは何なのか」という問いを全世界に投げかけているようにも思います。彼女は、スウェーデン出身のグレタ・トゥーンベリさん(16歳)。地球温暖化対策を訴える行動が評価され、2018年3月にはノーベル平和賞にノミネートもされました。

彼女の呼びかけはシンプルです。「地球温暖化が私たちの生存を脅かす重大な問題ならば、どうして私たちは行動しないのでしょう」というものです。スウェーデンで総選挙が迫っていた2018年8月。グレタさんは、「気候のためのスクールストライキ」というプラカードを掲げて、ストックホルムの国会議事堂の前で座り込みました。ストライキは総選挙までの2週間、毎日続けました。その後も、毎週金曜日には学校を休んで、座り込みを続けています。彼女の行動はまたたく間に世界中に広がり、地球温暖化対策を求める大規模な抗議運動へと発展しました。

「#FridayForFuture (未来のための金曜日)」というハッシュタグと共に、欧米を中心に多くの若者が運動に参加し、その様子をSNSで発信しています。グレタさんは12月には、ポーランドで開かれた会議COP24(通称:国連気候会議)、2019年1月にはダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で演説しています。

グレタさんは、アスペルガー症候群と強迫性障害、場面緘黙であることを公表しています。Twitterのプロフィールは「16歳のアスペルガーの環境活動家」です。アスペルガー症候群とは、知的障害を伴わない自閉症のことです。対人コミュニケーションが苦手、興味の対象が限定的、などが主な症状です。 しかし、グレタさんは「アスペルガーは病気ではなく、1つの才能。アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう」とFacebookに書いています。

「アスペルガーだからこそ、人とは違った視点で世界が見れるのです。もし私がアスペルガーでなかったら、そんな風に世界を『外側から』見れなかったでしょう。私のようなアスペルガーの人間にとっては、ほとんど全てのことが白黒どちらかなのです。私たちは嘘をつくのがあまり上手ではありません。(中略)私にとってこれ(地球温暖化)は白か黒かの問題です。生き残りの問題となればグレーな部分はありません」と言います。

「正直すぎること」もアスペルガー症候群の特徴の1つです。これは、コミュニケーションにおいては「空気が読めない」という欠点にもなりますが、「社会のルールや常識にとらわれず、思ったことをはっきり言える」という利点にもなります。グレダさんの「温暖化は深刻な問題なのに、なぜ私たちは行動を起こさないの」というまっすぐな問いかけは、「正直で」「白黒つけないと気が済まない」というアスペルガー症候群の彼女の個性からきているのかもしれなません。

一方で、グレタさんは障がい者としての生きづらさも語っています。「自閉症であることは、学校や職場、そしていじめとの終わりなき闘いです。それでも、正しい環境下で、正しく適応すれば、(自閉症であることは)スーパーパワーとなり得ます」とFacebookで語り、「アスペルガーは才能」「アスペルガーであることは私の誇りです」とTwitterに投稿しています。

少年野球チーム「レアーズ北九州」

発達障害の子どもだけの野球チーム、リーグ加盟目指して
2020年8月28日 6時00分【朝日新聞デジタル】

発達障害がある児童だけのチーム
北九州市の少年野球チーム「レアーズ北九州」では現在14人がプレーする。いずれも発達障害がある。他人とのコミュニケーションや社会性を築くことに不安があり、かつては野球のルールの理解もおぼつかなかったという。

学校の部活などに代わる新たな受け皿として、放課後等デイサービスを運営する社会福祉法人「青雲会」の山本大介さん(34)が中心となってチームを立ち上げ、2018年1月に始動した。練習はミーティングから始まる。守備練習のグラブさばきはなめらかで、打てば鋭い打球を飛ばす。練習試合を通して、試合勘も磨いてきた。そこで「新しい挑戦。次の段階に」と、地元リーグへの参加を目指すことにした。同年代の児童がいるチームとの試合を通じて「仲間と協力しあうことの大事さなど、社会で必要なことを学んでほしい」と山本さんは話す。

当初は三塁に走り出す子も
山本さんによると、船出は難航したという。当初は「打つ、投げる」以外の具体的なルールを理解している子どもは少なかった。打てば三塁に走り出す子どもがいれば、どこにも走らないような子もいた。外野の守備範囲を教えようと白線でラインを引くと、線の外に出ようとしなくなった。投手はストライクを取れず、5ストライク制を導入するなど、試行錯誤しながら成長してきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でリーグ加入は来年度に持ち越されたが、7月に活動を再開してからは感染防止策をとりながら練習を重ねる。

子どもたちは対外試合ができることを心待ちにする。小学5年生の男子児童は、かつては人と話すことが苦手だったが、今は初対面でも堂々と語る。「野球が楽しい。将来はギータ(プロ野球ソフトバンク・柳田悠岐外野手)みたいになりたい」

チームで活動する難しさ
文部科学省によると、発達障害の程度に応じた個別指導を受けながら、小中学校の普通学級に通う児童・生徒は、2016年で約9万8千人と、10年間で2倍以上に増えた。それでも学校の部活動など集団で活動する組織体に参加することにはまだまだハードルがあるという。一般社団法人「全日本知的障がい者スポーツ協会」の斎藤利之会長は、発達障害の児童が健常者のみのチームに加わって活動することについて「周囲によき理解者がいなければ参加が難しい側面はある」と指摘する。

一方、発達障害のある児童に、スポーツは好影響をもたらすという。かつて文科省で特別支援教育調査官を務めた丹野哲也・東京都教育委員会特別支援教育課長は「スポーツで何かを達成することで自己肯定感を持てるようになるケースも多い。日常生活にもいい影響を与えるのではないか」と話す。(河野光汰)

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スポーツをしている方のほとんどは、プロを目指している訳ではありません。スポーツを「楽しむ」ことを目的にしていると思います。スポーツを楽しむことを第一に考えた場合、発達障害児がスポーツに向いていないとは思いません
子どもたちは定型発達の小学生・中学生と同じチームで野球をすることは、叶わないかも知れません。しかし、心から楽しんでスポーツをしている限り、そのスポーツに向いていると言え、それは「環境」さえ整えられれば、発達障害であるかどうかは関係ないと感じています。そして、子どもがスポーツをする「環境」を整えてあげるのが、大人の役目なのだと思います。

 

山口、世界新で金メダル 涙の母「人生最高の日」

東京パラ競泳男子100平
山口、世界新で金メダル 涙の母「人生最高の日」

2021年8月30日【愛媛新聞】

「すごい、やった」―。29日の東京パラリンピック男子100メートル平泳ぎ(知的障害)決勝。今治市の山口尚秀(20)が世界新で金メダルを決めた瞬間、同市南大門町2丁目の四国ガス本社で社員ら約30人と中継を見守っていた母由美さん(52)は、手に持つバルーンをちぎれんばかりに振った。そばには、山口を水泳好きにさせてくれた祖父母の写真。お祭り騒ぎの中「人生最高の日」と流れる涙を抑えられなかった。

由美さんによると、山口選手は3歳で知的障害を伴う自閉症と診断され、祖父母と温水プールに歩行浴に行くうちに水泳が大好きになった。トップ選手と泳ぐようになり「障害があっても勇気や希望を人々に届けられる」と実感。四国ガスでガスメーターの管理業務に携わる傍ら、週5日の練習に励んできた。

決勝は圧巻だった。最後までリードを守り、5月に出した世界記録1分4秒00を0秒23縮めてゴール。目に涙をため祈っていた父峰松さん(55)は相好を崩し「うれしいの一言。苦しい練習にめげず、よく頑張った」。姉智子さん(24)は「弟が必死で頑張る姿を見て励まされた。姉でいられて本当に幸せ」と赤くした目で話した。

四国ガスの片山泰志社長も「大変な誇り」。上司の片上幹雄今治支店長も「真面目で丁寧な仕事ぶりの一方、泳ぎはダイナミックで別人のよう」とたたえた。

「尚秀は予定通りにいかないとパニックになる傾向がある。大会延期や練習中止に加え、大きな期待はかなりの重圧だったはず」と由美さん。山口は笑顔を2年間見せなかったという。10日に無言で握手して送り出した息子の快挙に「まっすぐ突き進んで勝った。人生を明るく楽しく送ろうと教えてくれた」と感激する。

「尚秀」は、生まれた2000年のシドニー五輪女子マラソン金メダリスト高橋尚子さんと、プロ野球の松井秀喜さんから名付けたと明かし「ふかふかの布団と好物の焼き肉を用意して待つ」と一日も早い帰郷を待望。「周囲に感謝し、人間としても成長し続けてほしい」と願った。

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パラリンピックの表彰式の映像はオリンピック以上に泣けてしまいます。というか、パラの場合ずっと泣いています。ボッチャの杉村英孝選手や水泳の鈴木孝幸選手の金メダル、車いすラグビーの銅メダル。表彰式だけでなく、水泳の東海林大選手が泳いでいる姿だけで泣けてしまい、テレビの前のティッシュペーパーが足りません。

泣けてしまう背景は、障害を乗り越えた人生、さらにアスリートとして世界の壁を乗り越えていく姿に感動することもあるのですが、やはり家族の苦労を思うから泣けるのだと思います。山口選手も東海林選手も知的障害のある自閉症です。二人とも20代ですから、20年前の日本の自閉症支援はというと、絵カードなんて社会には用意されてないから学校で教えても意味がないと言われた事を思い出します。自閉症児がわがままなのは親のせいだと平気で言う人がまだこの業界にいたころです。

家族は心無い人たちの言葉や後ろ指にどれだけ傷ついたか知れません。感動するのは山口選手を水泳好きにさせてくれたのは祖父母だと言う話です。平成の時代でも、祖父母が自分の家系には障害者はいないと、支援学級や支援学校に行くことに反対されているという母親の話をたくさん聞いてきました。

山口選手の祖父母は、水が好きならと孫と歩行浴に通い水に親しませてくれたのです。祖父母が子育てに協力してくれることでどれだけ家族は心強かったことかと思います。山口選手が水泳競技に取り組んだのは高校からですが、この祖父母のサポートがなければ今の彼はいないと思います。パラリンピックで家族の話を聞いていると、我が国の障害者の理解の歩みと、それを推し進めてきた人々の熱い思いを感じます。このコメントを書いているだけで、胸が熱くなって、また泣いてしまいそうなのでこの辺にしておきます。

不便を便利にするあゆみ

自閉症支援における構造化は、生活や学習のさまざまな場面で、その意味を理解し、自分に何が求められているのかをわかりやすく伝えるための方法です。「自閉症」は、「自閉症スペクトラム障害=ASD」を意味しており、知的障害の合併の有無は関係ありません。また、構造化のことを自立課題やスケジュールカードのこととしか理解していない方がいますが、構造化は机の上も、机の周りも、部屋の中も、生活の中で意味を説明しなければならないすべてのものに適用するのものです。構造化はカードや衝立などモノをさすものではなく、視覚による意味の伝え方です。

下図は、「必要な支援により成長を促すための一番の土台は、教育や療育の環境であり、その土台の上に特性に応じた工夫が、またその上に学習を支える学びがあり、この土台の上に学習内容が位置づくのだ」というものになります。このように、「視覚的に表現する」ことの効果は、わかりやすさにあるということです。ただし、視覚化は細かな情報を伝えにくい面もあり、何もかもを視覚化できるわけではありません。「自閉症教育の基本構造」は、自閉症教育というより「すべての教育や療育の基本構造」と考えても良いものです。
 
教育・療育における構造化の利点を言い換えれば、当事者にとって便利で快適だということです。
1) 支援を受ける側の方々が、理解しやすい、不必要な混乱をしなくてすむ
2) 効率的に学習するのを助ける
3) 安心して自信を持って学習、生活できる
4) 必要な情報に注意を集中しやすくする
5) 地域でできるだけ自立して生活する
6) 行動をマネジメントする
3)~6)で示していることは、構造化は教育や療育の場だけで利用するものではなく、家庭や地域社会、職場でも利用できる考え方と言えます。誰でも構造化された方が自立しやすいのは当たり前です。一人でも多く自立すればそれだけ生産量や消費量が向上します。だからこそ世の中はどんどん便利になっていくのです。人類の歴史は、いつも不便を便利にして新しい価値の創造や次の目標を見出してきたのです。

東京パラへ「チャンス増えた」

競泳の木村、1年後の東京パラへ「チャンス増えた」

2020年8月31日 3:00【日経電子版】

「障害を持っている人たちって自分ではどうしようもないことが多いので、仕方ないって言い慣れてるんです」と木村。東京パラ延期にも明るさは失っていない。

開幕まで1年を切った東京パラリンピック。競泳日本男子のエース格で、100メートルバタフライ(視覚障害S11)代表に内定している木村敬一(29、東京ガス)は「(大会が)いつ来てもいいかなって感じ。1年後だろうとあしただろうといける状態ですね」と自信に胸を膨らませている。新型コロナウイルスの影響で練習拠点を置く米国からの帰国を余儀なくされたが、本番までに与えられた時間を充実させるべく、楽しみながらできることと向き合っている。

■低酸素プールで自ら追い込む
「めちゃくちゃきつい……」。東京都内で報道陣に練習を公開した8月20日。アシックスの低酸素トレーニングジム内のプールで、木村はぷかぷかと浮かびながら何とか言葉を吐き出した。プール内は標高2000メートルの場所と同じ酸素濃度になっており、ハードな練習で上がった心拍数はなかなか戻らない。だが、その言葉とは裏腹に満面の笑みを浮かべている。「きょうは100メートルバタフライの後半を想定しました。酸素も少ないし、乳酸もたまるので、レースよりもきつい状態をつくり出せた」。練習の充実感が表情にも表れていた。

2018年4月から米メリーランド州で武者修行に励んでいたが、新型コロナの影響で住んでいた寮も練習拠点も閉鎖。生活自体が回らなくなり、3月に帰国した。「夏には(米国に)戻れるんじゃないかなとちょっと思っていた」。だが帰国してまもなく、東京パラの延期が決定。「しょうがないなと。スポーツって平和なときにしかできないものですし。障害を持っている人たちって自分ではどうしようもないことが多いので、仕方ないって言い慣れていますよね」


8月20日に報道陣に公開した練習では、標高2000メートルと同じ酸素濃度に設定された施設で自らを追い込んでいた
帰国してしばらくは東京・西が丘の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で練習していたが、緊急事態宣言でNTCも利用停止に。滋賀県の実家に戻ることになった。約1カ月間は水から離れ、筋トレや懸垂、自転車型トレーニングマシンに励み、5月に緊急事態宣言が解除されてから近くのスイミングスクールのプールで練習を再開した。泳げない時間や限られた練習環境に直面し「スポーツそのものは人間の生活には不要不急なものなんだなと。オリパラがあれば選手は意味のある存在として認識してもらえるけれど、大会がなくなると必要のない人間になってしまう」。自分の存在価値すら疑う時間の中で、木村には別の気づきもあった。

「自分は水泳を通していろんな経験ができたんだなと気づいた。米国へ練習に行けたのも、いろんな大会に出ていろんな人に会えたのも、水泳をしていたから。その瞬間(ステイホーム期間)には不要なものだったけれど、水泳があってよかったなと」。2008年の北京パラリンピックに初出場してから、金メダルのためにがむしゃらに泳ぎ続けてきた。リオデジャネイロ大会は最有力候補として挑んだものの、結果は銀メダル。新たな刺激を求めて渡米し、表彰台の一番上だけを目指してきた。

■実戦遠ざかるも前向きに
水泳選手として必死にもがいてきた経験が人生をも豊かにしてくれた。「(米国では)呼吸をしているだけでもいろんな学びがあって、水泳を軸にいろんな経験をさせてもらえた。もし東京パラがなくなったとしても、いい4年間だったなと思えると思う。パラリンピックで金メダルを取るのは目標ですけど、それも僕の人生を彩るパーツ。(米国に行ったことで)それと同じような人生のパーツが増えたなと思う」

6月下旬からNTCで本格的に練習を再開した。年内は試合の予定がなく、次の大会は来年3月になりそうだ。1年以上実戦から遠ざかることになるが、「新しい刺激を得られるチャンスが増えた。大会がなくても、きょうみたいにいろいろ練習してみて自分の体がこうやって反応するんだと発見できるのが面白い」とポジティブ思考は健在だ。本番までの1年は「せっかくの1年なので楽しくというか、引き続き自分の人生が豊かになる1年にしたい」。自分の思い描いていなかった環境でも楽しんで吸収していく。そして1年後には金メダルという人生のパーツも付け加えるつもりだ。(田原悠太郎)

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白血病で長期休養していた競泳の池江璃花子(20)=ルネサンス=が29日の東京都特別水泳(東京・辰巳国際水泳場)の女子50メートル自由形で594日ぶりにレースに復帰。26秒32で55人中5位の結果を残したことがメディアを賑わせています。

「世界中のアスリートに諦めないことを伝えていた」と自分を追い込む姿は痛々しいという感想もありますが、「人間万事塞翁が馬」です。人生の幸・不幸は予測しがたく、幸運も喜ぶに足らず、不幸もまた悲しむにあたらないとのたとえの通り生きていく彼らの姿は、清々しい感動を与えてくれます。

9月1日、4300人超が「休み」 3割は「感染が不安」

2学期初日の9月1日、4300人超が「休み」 3割は「感染が不安」を理由に新型コロナ・鹿児島

2021/09/04 【南日本新聞】

新型コロナウイルスの子どもへの感染が拡大する中、鹿児島県内の多くの学校で2学期の始業式があった1日に少なくとも4300人以上の児童生徒が学校を休んだことが3日、南日本新聞の調べで分かった。「まん延防止等重点措置」が適用されている鹿児島市の市立校の児童生徒は前年比の約2倍に当たる2266人が休んだ。そのうち約3割の671人が「感染への不安」を理由に挙げた。

臨時休校中の薩摩川内市を除く42市町村教委に調査。回答した35市町村の市町村立の学校で、少なくとも4345人が休んでいた。県教委は「県立校のデータは未集計」と答えた。

鹿児島市教委によると1日、小学校で1256人(前年比906人増)、中学校で962人(前年比254人増)、高校で48人(前年比9人増)が休んだ。全児童生徒の4.4%に上った。「感染への不安」から休んだのは1.3%で、小学生が567人で大半を占めた。

そのほか鹿屋市で休んだ児童生徒は496人、霧島市302人(出席停止を除く)など。昨年9月1日と比べて2倍以上になったのは12自治体で、9倍になった自治体もあった。

児童生徒が学校を休む場合、「欠席」と「出席停止」の区分がある。鹿児島市などの多くの学校が(1)ワクチンの副反応がある(2)風邪症状がある-といった場合は「出席停止」で、「感染への不安」を理由とする場合も「欠席」とせず「出席停止」としている。

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以前にも鹿児島の感染がらみの記事を掲載しました(感染情報、身内にも秘密に 鹿児島市教委が口止め: 01/29)。なるほど、情報を公開したら混乱するという前回の鹿児島市教委の思惑は当たっていたとも言えます。まさに大混乱です。昨日の時点での陽性率は、全国平均で1.2%、トップの東京で2.5%、鹿児島は0.5%です。東京の5分の1、全国の半分未満で、鹿児島市の子どもは陽性になって学校を休む推定値の2~4倍以上(子どもの陽性率は低い)の子が、感染恐怖から休んでいることになります。

感染報道は都市部のものが地方局にダイレクトに流されることと、実際には感染者の実態を目にしたことがないので余計に恐怖感を抱いてしまうと言う理由から、学校は感染するところ通学路はウィルスが飛び交っていると子どもがイメージしても不思議ではありません。都市部であれば実際に身の回りに感染した子の様子がリアルに伝わってくるので、普通はそれほど恐れるものではないことが分かるのです。

メディアから流されてくる感染者の情報は重症化したかその一歩前まで進行した人の体験談ばかりですから、怖がるのは無理もないのです。テレビは子どもも見るのですから、もう少し実態に合わせた報道はできないものかと思います。とはいっても、テレビは見てもらってなんぼですから、テレビは怖さを煽るお化け屋敷みたいなもんだと子どもに言って聞かせるべきかもしれません。そして、正しい情報を大人が学んでおく事が一番大事です。小児科学会資料.pdf

消費税

消費税が今日10%に引き上げられました。五年半ぶりの増税です。今回は軽減税率が導入され、飲食料品(外食と酒類を除く)と定期購読の新聞の税率は8%に据え置かれます。キャッシュレス決済のポイント還元制度も始まり、消費税の仕組みは、これまでより複雑になります。

軽減税率の導入により、外食と酒類を除いた一般的な飲食料品は、一日以降も軽減税率で8%と変わりません。しかし、8%か10%か、店頭で戸惑いそうなものも多いです。例えば調味料は8%ですが、みりんは酒税法で酒類に分類されるため、10%。みりん風調味料なら8%、料理酒も例外はあるけど8%です。また、キャッシュレス決済のポイント還元制度では、対象店舗でクレジットカードなどで支払うと、ポイント還元が受けられます。還元率は中小の店舗が5%、フランチャイズチェーン店舗が2%。事実上の「減税」となります。全国では約五十万店舗が還元制度を導入しますが、対象事業者の四分の一にとどまっており、店頭ポスターやノボリなどで確認する必要があります。

ややこしい、ややこしいと言いつつ、キャッシュレスの方がポイントがつくので、筆者は5%ボーナスポイントのあるPayPayにして、コンビニ(2%還元)ではじめてスマホ購入をしました。便利です。レジのお兄さんも、キャッシュの出し入れが少なくなって楽ちんとは言っていました。食品はしばらく据え置かれるとはいえ、放デイの消耗品も賃貸料もあれやこれやを消費税をかぶり続けるわけにいかないのでどうしたものかと検討中です。

ADHDと睡眠障害

ADHDと睡眠障害遺伝的に関連浜松医大研究グループ発見
2020年8月27日 05時00分 【中日新聞】

発達障害の一つである注意欠陥多動性障害(ADHD)に見られる症状と、場所や状況を問わず強い眠気に襲われる睡眠障害「ナルコレプシー」。この二つが遺伝的に関連していることを、浜松医科大子どものこころの発達研究センターの高橋長秀客員准教授、土屋賢治特任教授らの研究グループが、世界で初めて発見した。研究成果は、英医学誌「TranslationalPsychiatry」に掲載された。

ADHDを有する人が、思春期前後から日中に強い眠気を感じることが多いことは傾向として知られていたが、その原因については分かっていなかった。高橋客員准教授らは、ADHDとナルコレプシーの治療にメチルフェニデートという「中枢刺激薬」が共通して用いられることに着目。ナルコレプシーに関連する遺伝子の変化が、ADHD症状のなりたちに影響するのではないかと考えた。

研究では、八~九歳の子ども七百二十六人の口腔(こうくう)内からDNAを抽出。全ゲノム遺伝子解析をしてナルコレプシーの「遺伝的傾向」を数値化して算出し十段階に分類した。ADHDについては、世界的に用いられる質問紙を使い、保護者に回答してもらうことで、落ち着きなく、思いついたまま行動する「多動・衝動性症状」、忘れっぽさや見落としの多さに現れる「不注意症状」の傾向を測定した。

この二つのデータを組み合わせ関連を分析したところ、ナルコレプシーの「遺伝的傾向」の数値が高いほど、多動性・衝動性症状、不注意症状のいずれも点数が高くなる傾向があることが分かった。
土屋特任教授は「ナルコレプシーは遺伝的な背景がある程度分かっているが、ADHDの原因は分かっていないことが多い。今回の成果はADHDの原因を理解する手がかりとなる可能性がある」と話す。両障害の関連性については「遺伝的傾向と病気のなりやすさは別物で、誰もがADHDやナルコレプシーになる可能性があるということでない」と説明する。

今回の結果は、ADHD症状を持つ人が日中に強い眠気を感じるのは、生活リズムの乱れなどだけでなく、遺伝子に由来する体質の影響がある可能性が高いことを示しているとし「ADHD症状を持つ方や、関わる人、サポートする人が、この視点を持ってもらえたら」と呼び掛ける。

<メチルフェニデート>「中枢刺激薬」と呼ばれ、神経と神経の間の情報伝達を担う物質ドーパミンの量を間接的に増やす作用があるとされる。ADHDに対しては、ドーパミンが増えることで脳の「前頭葉」を活発化させ、多動・衝動症状にブレーキをかけ、不注意症状も集中力を高めて改善すると考えられている。ナルコレプシーに関しては、脳のどの部位への作用が効果をもたらしているのか分かっていないが、ドーパミンが増えることで眠気を改善するのではないかと考えられている。

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眠気と注意集中は誰だって関係があります。考えてみればうとうとした状態で生活するのは大変です。そんな中で生活をしている子がいるとすれば、「よく聞きなさい」とか「よく見なさい」とか「努力しなさい」というワードがいかに過酷なものか想像ができます。

辞退者が続出した学校連携観戦現場は苦悶

辞退者が続出した学校連携観戦現場は苦悶「イメージで批判」の声も

2021年9月5日 【朝日新聞】

5日に閉幕する東京パラリンピック。新型コロナの感染急拡大で、一般客の観戦は断念したのに実施に踏み切った学校連携観戦プログラムには「矛盾している」「感染のリスクがある」「テレビ観戦でも学べる」などと批判が集中した。

対象は競技会場がある1都3県の小中学生ら。国や都などは開幕約1週間前の8月16日に希望者の受け入れを決めた。

都では、都教育委員会臨時会で教育委員5人中4人が反対を表明。江東区や港区なども中止に転じ、参加を決めた自治体でも辞退者が続出した。開幕日の24日時点の観戦予定者数は約2万4千人だったが、組織委によると、5日までの入場者数は約1万2千人にとどまった。

参加を決めた区市の学校も、希望者の把握や事前のPCR検査など対応に追われた。

千葉県では7市町207校の約2万6千人が観戦を予定していたが、8月29日に観戦を引率した教員2人の感染が明らかになったことで、熊谷俊人知事は「保護者の不安を払拭(ふっしょく)する(事前のPCR検査などの)施策の実施が困難」などとして途中で中止を決めた。県によると、観戦者は同30日までに6市町92校の計3292人だった。

国や都が実施にこだわったのは、多様性や共生社会の大切さを知る教育効果が高いと考えたからだ。

都教委によると、参加者からは「障害を乗り越えてパラの舞台で活躍する姿に感動した」「ボランティアやコーチを見て、支え合う大切さを感じた」「人生に一度だと思う東京でのパラリンピックを観戦できてよかった」などの感想が寄せられた。担当者は「共助の意識につながる感想を持ってくれた」と手応えを語る。

選手からも「子どもたちの応援がうれしかった」「(感染対策で)声は出せないが、応援する心は十分に伝わってきた」と一様に喜びの声が上がった。

参加したある学校長は相次いだ批判について、「PCR検査を受け、定員の半分以下でバスを利用し、競技会場もほぼ貸し切り。正直、普段の学校生活よりも感染リスクは低いと思う。イメージで『感染を広めるのか』と批判されているようだった」と振り返る。

別の校長は「様々な考えがあることは承知しているが、数年来行ってきたオリパラ教育の集大成。子どもの学びを止めないことを大切にした」と話した。(荻原千明、真田香菜子)

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オリパラで感染が広まる不安を煽ったのはメディアです。学校観戦に一貫して不安をあおったのは朝日新聞をはじめとしたメディアでした。そんな中でも千葉県知事などは一貫して「会場も移動過程も部外者と接触しないなら学校環境下の授業と変わりはない」として、子どもたちにオリパラから学んでほしいと推進してきましたが、観戦者の中の教員と児童に、数名陽性者が出た時点で、不安を払しょくできないとして中止したのです。

結局、パラリンピックを参観した児童は1万5千人程度でした。ただ、朝日新聞の記事だからと言うわけではありませんが、パラリンピックの前に開催された夏の甲子園は1試合4000人で1日5試合程度ですから2万人。15日間で30万人が観戦したのです。もちろんこの中には陽性が判明して涙をのんだ不戦敗高校もありましたが、観戦は中止されません。どのメディアも陽性者が出てけしからんなどとは書き立てずスルーしているのです。陽性率は現在全国平均で1.2%です。観戦者は3000人以上に陽性反応が出るはずですから、陽性者がでないはずがありません。メディアが取材をしなかっただけのことです。

プロ野球も同じです。オリパラのない毎日、1試合5000人の観客が6試合3万人近くが観戦するのです。メディアのスポンサー企業が関わる試合開催には何も言わず、TV中継さえすれば損害の出ないオリパラ観戦には執拗に感染不安を煽っているのは、2枚舌メディア、Wスタンダード(二つの基準をもって自分の都合で使い分ける)と言われても仕方ないです。オリパラはテレビ観戦で十分と言う方もいますが、勝ち負けだけではないのです。それを支えている関係者やボランティアの様子を目にするだけでも教育効果は全く違います。「正直、普段の学校生活よりも感染リスクは低い」と校長先生、オリパラが始まる前に言って欲しかったです。

閉会式は素晴らしい演出でした。そして何より衝撃的なのはフランスパリの観客の映像でした。「手のパフォーマンス」こそ室内でのオールマスクでしたがパリ市街でウェルカムイベントをしている主催者も観客もノーマスクです。密密の野外会場にマスク者を見つけるのに一苦労するくらいノーマスクの大歓声状況です。日本のメディアはパリ五輪委員会やフランス政府をどう描くのでしょう。今のところ二枚舌メディアはこれもスルーしています。

 

 

パチンコ理論

応用行動分析を学んでいる方ならパチンコ理論は耳にした方は多いと思います。パチプロでない限りは、パチンコはトータルでは負けるものと相場が決まっています。そうでなければパチンコ屋さんは倒産しているはずです。それを知りながらも、「私だけは違う!儲けられる!」とつぎ込んでいく仕組みがパチンコ理論です。パチンコでフィーバーするとジャンジャン球が出てきて、脳内に報酬ホルモンのドーパミンもバンバン出てきて気持ちいいのです。あの気持ちよさをもう一度という生理的欲求とあわせて、フィーバーはたまにごく稀に法則性もなく実現するから、今度こそ当たるかもしれないという動機を強く作るのです。これを部分強化といいます。

部分強化の王様は変動比率スケジュール(Variable Ratio schedule:VR)と言い、強化子が与えられる条件が変動する回数のスケジュールです。回数が固定している法則性があるものを固定比率スケジュール、ないものを変動比率スケジュールといいます。変動比率スケジュールで獲得された行動は、高頻度で自発され、消去されにくい傾向があります。ほとんどのギャンブルが変動比率スケジュールで強化されていきます。

さて、これを不適切行動に置き換えると、大声を出したり、奇声を上げたり、地べたにひっくり返ったり、嘘をついたりすると、たま~に要求が実現します。しかも実現しない日もあるので、これは法則性がなく変動比率スケジュールと言えます。つまり、このパターンは、変動比率スケジュールで獲得された部分強化の行動であり、高頻度で自発され、消去されにくい傾向があるのです。いわゆるパチンコ理論による「しつこく繰り返される不適切行動」がこれにあたるわけです。この部分強化された行動をどう消去すればいいか、以前もすこし応用行動分析の投稿「応用行動分析を支援に生かす (7/23)」で書きましたが、次回に考えてみたいと思います。

固定比率スケジュール(Fixed Ratio schedule:FR)

変動比率スケジュール(Variable Ratio schedule:VR)

 

障害者雇用率 企業2.2%役所等2.5%へ

障害者雇用率 新型コロナで当初案より遅く 来年3月引き上げへ

2020年8月21日 21時05分【NHK】

障害のある人の雇用を増やすために、企業などに義務づけられた障害者の雇用率が、来年3月に0.1%引き上げられることになりました。厚生労働省の審議会は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ引き上げを、当初の案よりも2か月遅らせることを決めました。

障害者雇用促進法では現在、従業員45.5人以上の企業には2.2%、職員40人以上の国の機関や地方自治体には2.5%の障害者の雇用を義務づけています。

厚生労働省の審議会では障害のある人の雇用を増やすために、来年3月に雇用率を現在より0.1%引き上げる案を21日、了承しました。

当初の案では来年1月からとしていましたが、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、引き上げを2か月遅らせることにしました。

来年3月からの障害者の法定雇用率は企業では2.3%、国の機関や地方自治体では2.6%となります。

厚生労働省によりますと、全国の企業で働く障害者の数は去年6月の時点で56万人余りにのぼり、これまでで最も多くなっていますが、法定雇用率を達成している企業は48%にとどまっています。

また、新型コロナウイルスの影響で解雇された障害者は、先月までに1300人余りに上っていて、厚生労働省は再就職や雇用率を達成できるよう、企業の支援などを検討しています。

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ユニクロやマクド、スターバックスも障害者雇用に熱心です。ワタミなどチェーン店展開しているところは全国で一店一名を目標に雇用を進めています。メディアでも問題になりましたが国や自治体の雇用が進んでいません。また、障害者雇用というと肢体障害や視覚障害がイメージに上がりやすいですが、知的障害や発達障害の雇用をどう伸ばすかが課題となっています。

精神科医が教える「対人関係のしんどさ」を減らすコツ

【発達障害を専門とする日本屈指のスペシャリスト!】精神科医が教える「対人関係のしんどさ」を減らすコツ

9/7(火) 【ダイヤモンド・オンライン】

仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手・・・。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。

本田氏は1988年に東京大学医学部医学科を卒業。横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究を重ね、現在は信州大学で臨床・教育・研究に従事している。2019年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演して話題になった。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。

2021年9月初旬に、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』が発売となる。今回は特別に本書の中から、対人関係のつらさを減らす方法について、一部内容を抜粋、編集して紹介する。

●「協調性」よりも「ルール」を優先しよう
対人関係には、会話が苦手、挨拶がうまくできない、飲み会がストレスになっている、人の顔色を気にしすぎてしまうなど、さまざまな悩みがあります。対人関係の悩みを解決するためには、「協調性」よりも「ルール」を優先することが大切です。ここでいう「協調性」とは、「相手に合わせて行動しよう」とすることです。協調性は一定ではなく、相手次第で変わるものです。

協調性を意識しすぎると、常に相手の話すことや表情、行動などを気にして、「やりたくないことを相手に合わせて無理してやっている」という状態が長く続き、心が落ち込む原因になります。それに対して「ルール」というのは、一定の決まりごとです。常に一定で、相手によってぶれることがありません。ルールにも社会のルールから家庭のルール、マイルールまでさまざまなものがありますが、大切なのは、社会のルールから大きく逸脱しなければ、自分の生きやすいスタイルを選んでいいということです。

●人の評価を気にしすぎない。受け流すことも大切
対人関係で「しなくていいこと」を手放すには、「人の評価を気にしすぎない」という点も大切になります。対人関係で悩んでいる人は「自分がこういうことをしたら、相手はどう思うだろう」「嫌われるかもしれない」と考えがちです。

そんなときは、「協調性よりもルールを優先」という原則を思い返してみてください。社会のルールを守っていれば、少しくらいやり方を変えたからといって、人に嫌われたり怒られたりすることは、基本的にはありません。もしも、ルールを守っているのにネガティブな反応をする人がいたら、その人とは距離をとったほうがいいというだけのことです。

誰かに合わせるやり方ではなく、社会のルールを守りながら、自分自身に合ったスタイルをつくっていきましょう。そうすることで、対人関係のつらさは軽減していきます。

(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)
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書いてあるのは、いちいちもっともなことですが、発達障害の中でピュアなASDの人では、こういう悩み方をする人は少ないです。本田先生の言われているケースは、うつ病になるメランコリータイプの人に多く、ピュアなASDの方の悩み方ではないように思います。ASDの方はどちらか言うと、協調性を気にせず、周囲の人に不快になるマイルールを押し付けてくるので、周囲が本人と口をきかなくなり、必要な情報が当事者に届かなくなって初めて「ハブられている」ことに当事者が気付き、何故だか意味が分からず悩むというパターンが多いです。

人の評価も、仕事上の特定のスキルの事では気になりますが、職場内で協調性がない自分に気が付く人は少ないです。或いは、当事者は協調性を大事にしているつもりで、誰にでも同じ距離感で接したり、逆に必要以上に距離を取り、誤解される事があります。他者の事がわかっているつもりになり、妙な気遣いをしてしまって迷惑がられることもあります。つまり、「そのマイルールーが周囲には痛い」場合が多いのです。

これは当事者むけの本なので、比率としては一番多いソフトな境界域の発達障害の方の事なのだろうと思います。協調性の必要性を知ってるが故に苦痛、対人上の良い評価を得たい故に苦痛、なのだと思います。もちろん、そういう方には、社会性を逸脱しないマイルールかどうかを、職場の信頼できる人に聞いてみて、それで「まぁ、まぁ」ならあとはマイルールで行動して気にしないというのが大事と言うのは書いてある通りです。発達障害と言っても、最も多い境界域から一番端の方に偏在している少数の人までいろいろなので、どういう人を対象にしているかで、かなり対応が変わってくるので、気になって書きました。

消去抵抗に負けないで

「部分強化効果」連続強化条件よりも部分強化条件の方が消去抵抗につよい(消去しにくい)のです。つまり、何回もこれが大事だというより時々これが大事なんだと言った方が効果が高いということです。彼氏に毎回会いにいきその度に好きだよと言われるより、毎回会いにいき時々好きだよと言われる方が嬉しい気持ちは高いといえばわかるでしょうか。しかも、ランダムに言われる。いつも言われるよりはるかに効果が大きいのです。だから毎回欠かさず会い行くことになります。これが変動比率スケジュールによる最強の部分強化です。

この最強の部分強化が不適切行動に応用された場合、消去するのは並大抵ではないのです。きっとまた好きと言ってくれるかもという最強の部分強化の餌食になるからです。これをきっぱり「彼は私を金輪際好きとは言わない」と自ら納得するにはどうすればいいでしょう。

自分の思い通りに周囲をコントロールしたいという動機に対して、それは叶わないと諦めてもらうには、思いが実現しない期間の長さと、願いはきっと叶うという不適切行動がバースト(エスカレート)しても耐え忍んで対応(無視)し続けることです。そうすれば時間はかかっても消去の時がやってきます。

行動療法を実践する人が、なぜそんなに力強く言えるのかと言うと、もちろん科学的根拠に基づくのはいうまでもないですが、この「パチンコ理論の行動消去に何度も成功した」という部分強化の学習をしているからです。期間も違うあれこれの問題行動の消去を直接にも間接(助言)にも実現したと言う変動比率スケジュールの部分強化の体験をしているからです。

貴方もくじけないでください。必ずやってくる不適切行動の消去まで頑張りましょう。子どもが受け入れてくれるには時間は相当かかります。だから、様々な不適切行動の結果として、ゲームを与えてはいけません。ゲームを買ってはいけません。テレビやゲームの時間を譲ってはいけません。「約束したこと」は不適切行動で譲ってはいけないのです。子どもたちは何の悪気もないのです。前は叶ったから、もしかしたら譲ってくれるかもという変動比率スケジュールによる部分強化の学習をしつこく続けようとしているだけです。その学習は実現させてはいけません。その決意が負の学習の終結を決定します。また、このブログでは繰り返しすぎるほど強調しますが、具体物を含めたあらゆるレベルでの自発コミュニケーションの獲得による適切なコミュニケーション場面の日常的な実現と、適切な行動を褒められる体験が増加する(強化される)機会を意識的に作り出すことが、小手先の無視行動よりもはるかに強い影響を与えます。

おいしく飲んで障害への理解に

「好きな酒のためなら」西成で障害者ら造るビール人気

2020年8月27日 15時00分【朝日デジタル】

大阪市西成区産のクラフトビールが人気を集めている。障害のある人らが醸造し、ビアパブで提供もする。「西成ライオット(暴動)エール」「新世界ニューロマンサー」。地域にちなんだビールが、暑い夏ののどを潤し、就労支援にも一役買っている。

西成区花園北のビール醸造所「ディレイラブリューワークス」。大人の背丈より高さがある500リットルタンクが6台並び、約1カ月の間、熟成を待つ。

同区を拠点に高齢者の介護や障害者の就労支援を手がける「シクロ」が2018年春に開いた。仕込み、瓶詰め、ラベル貼りから配送までを同社の社員とともに、主に精神疾患がある人らが担う。製造に携わる上園広海さん(65)は「みんなビールが大好き。好きなものを仕事にできるから、一生懸命になれる」と胸を張る。

シクロが、畑違いとも思えるビール製造に乗り出したのは、就労支援事業の利用者と社員らが席を共にした飲み会がきっかけだ。

「楽しくない」「もっとやる気になれる仕事はないのか」。ネジの袋詰めや封筒ののり付けといった単純作業への文句が出た。長く西成で暮らし、こよなく酒を愛する面々は「酒のことなら本気出すで」。

「僕がポケットマネーを出した飲み会でした。そこで説教されて悔しくて」と山崎昌宣(あきのり)社長(43)は苦笑いで振り返る。ならば、とラベルだけを自社製作したビールを800本仕入れると、利用者たちはつてを頼るなどしてすぐに売り切った。もう一度仕入れても同じ結果だった。

「自分たちで造れば、もっと誇りを持てるはず」。17年末に市内の醸造所を間借りしてオリジナルビールを造り始め、翌春「ディレイラ」をオープン、近くにビアパブ「アビタイユモン」も開いた。こちらも就労支援の場として、障害のある人を中心に運営している。

醸造長の伊藤将広さん(27)は「ビアパブの瓶ビールを見て『おれが貼ったラベル』と話す利用者さんもいる。商品が喜んで消費されるのを間近で見られることが、やりがいにつながっている」と話す。

看板商品の「西成ライオットエール」は、甘い香りが鼻先をくすぐり、飲み口にはくせがない。

同区にある日雇い労働者の街・あいりん地区でかつて暴動があった頃、「西成で酒が密造されていた」。うそかまことか、利用者たちがそんな話をしているのを聞いた山崎社長が命名した。「アビタイユモン」ではSサイズ税込み600円、Mは同800円で販売する。

大阪名物・ミックスジュースをヒントに、桃の缶詰やバナナを仕込みに使ったビール「新世界ニューロマンサー」も人気だ。

商品はオンラインショップでも購入できるが、醸造が間に合わず、欠品になることもある。生産量を増やすために、年末には別の醸造所を稼働させる予定だ。

山崎社長は「新商品を作るたびに利用者のおっちゃんたちと品評会をすると、みんな真剣に意見を出してくれる。『暴動』の名を商品名に付けてはいるが、過去のマイナスのイメージだけではない、西成のこれからを代表する商品にしたい」と意気込んでいる。

京都市でも取り組み「障害の理解につながれば」
障害者の就労の場でビールを造る取り組みは、京都市でも進められている。
NPO法人「HEROES(ヒーローズ)」(同市上京区)は2017年に「西陣麦酒(ばくしゅ)」を設立、ユズの香りがする「柚子(ゆうずう)無碍(むげ)」などのクラフトビールを製造している。

知的障害のある人や、自閉症などの発達障害がある人たち15人が関わり、瓶ビールには1本ずつ「自閉症の人とともに」と書いた飾りをつけて販売する。

法人理事長の松尾浩久さん(41)は「『清く正しく』と思われがちな福祉就労のイメージとアルコールは合わないかもしれないが、より一般の人に届きやすい市場性を意識してビールを造っている。おいしく飲むことが、障害への理解につながればうれしい」と話す。(松尾由紀)

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地ビール・クラフトビール流行りで、福祉も醸造に参入してくることが珍しくなくなりました。乙訓にもサントリービール工場がありますが、あそこで何人の障害者が働いているのでしょうか。最近、アルミ缶のビールではなく瓶ビールが復活しつつあります。あそこにラベルを張ったり瓶を洗ったりはおそらく全自動です。でも、大阪の施設のように「わしが貼ったラベルやねん」と誇らしげにビールを勧める姿が、この地にあってもいいよなと思います。

 

 

苦行じゃ意味がない 障害児の「療育」はほどほどに

苦行じゃ意味がない 障害児の「療育」はほどほどに 自分らしく、生き生きと暮らす

7/4(日) 【オトナンサー】

「療育」とは、障害のある子どもが社会的に自立できるようになるために行う教育のことです。わが子に発達障害があると分かると、療育を受けさせる親御さんも多いと思います。

しかし、療育を「定型発達児に近づけること」と勘違いし、苦手を克服させようと必死に努力させたり、「やればできる」と過度な期待を抱き、何でも1人でやらせようと試みたりする「熱心な無理解者」と化している親御さんや支援者がいるのも事実です。こうなると、子どものためであるはずの療育が、子ども本人にとっては苦行となってしまいます。

子どものための「療育」
療育は子どもが日常生活を送りやすくするために、こだわりの緩め方を学んだり、コミュニケーションの取り方を学習したりする場です。「一つでも、普通の子と同じことができるように」と定型発達児に近づけようとすればするほど、本人の自己肯定感を下げるだけになってしまいます。もし、そうなってしまったら、「やらない方がよかった」ということにもなりかねません。

一方で、親にとって、療育はどのような意味があるでしょうか。それは、周りが定型発達児の親ばかりで孤立無援の状態だったところから、同じ障害を持つ子を育てる保護者との交流が持て、居場所が見つかることです。また、療育の様子を見学して、親が支援の仕方を学ぶことができるなどのメリットもあります。ただし、周りのママ友が熱心すぎて“才能の温泉掘り”に必死になっていたり、「熱心な無理解者」の支援者がいたりしたら、その人は良い手本ではないので気を付けなくてはなりません。

音が怖いなら…
私の息子は知覚障害のある自閉症児です。聴覚過敏のある息子は幼児期、公衆トイレのハンドドライヤーの音を怖がっていたため、外出先でトイレに行けませんでした。そのため、療育施設ではこれに慣れるための訓練を受けていました。

実際、ハンドドライヤーを怖がる自閉症の子は多いようで、ママ友の中には「家庭での練習も必要だ」と思い、自宅のトイレにハンドドライヤーを設置し、親が“療育の先生”となって練習をしている人もいました。しかし、これでは子どもにとって、家が“恐怖の館”になってしまいます。

息子が次第に療育を拒むようになってしまった中、当時通っていた児童専門の精神科の主治医に、ハンドドライヤーを使う練習をしていることを伝えました。すると、「そんなことをしていると将来、2次障害を起こして入院することになりますよ。そんな練習は今すぐやめなさい。お母さんがハンドドライヤーのないトイレを探してあげて、そこを使えば済むことです」と叱られたのです。

さらに「障害児なんだから、堂々と多目的トイレを使えばいいんです。そこだったら、急に誰かが入ってきて、ハンドドライヤーを使うことはないでしょう。息子さんも安心してトイレが使えるはずです」と言われました。実際、この病院には、親がわが子を思って、「定型発達児と同じことができるように」と引っ張り回した結果、うつの発症やリストカットなどの深刻な2次障害を起こしている子どもが多く入院していました。

私は主治医に言われた通り、ハンドドライヤーがない公衆トイレを探して使うようにしました。駅やデパート、ファミリーレストランなど、外出時に利用する機会が多い場所のトイレはハンドドライヤーの有無、設置個数について特によく調べました。

やがて、外出時はいつも、トイレを我慢している様子だった息子が、私と一緒のときは公衆トイレに入れるようになったのです。中学生の頃、ボウリング場に行ったときには、かつて、あんなに怖がっていたハンドドライヤーをうれしそうな顔をして使っていました。

なぜ、息子は苦手だったハンドドライヤーを怖がらなくなったのか。それは主治医の助言以降、安心・安全を確保した状態でトイレを利用できるようにしたから、そして、息子自身が14年という人生経験を積み、3歳の頃と違って苦手なものにも挑戦できるようになったからだと思います。

息子にとって、いつしか、トイレは恐怖の場所ではなく、「こだわりの場所」になっていったようで、公衆トイレは今や、息子が一番好きなものになりました。特に便座のメーカーや型番をチェックするのが大好きで、文字を書くのも絵を描くのもトイレのことばかり。外出先でトイレを見つけると吸い込まれるように入っていきます。

成人した息子を見てしみじみと思うのは、幼い頃に「この世界は怖くない。安心、安全だ」「先生や親は自分を脅かす存在ではない」「大人は自分を守ってくれる人間だ」ということを体験させれば、子ども本人の力で自然に乗り越えられるようになるということです。世の中は定型発達の人が生活しやすいようにできています。そのため、社会になじめるように練習していく必要はあります。しかし、それが行き過ぎるとデメリットもあると私は思うのです。

障害のある子どもは定型発達の子どもと同じやり方では学びづらいです。療育とは、その子に合ったやり方でできることを増やし、自分らしく、生き生きと暮らせるようになるために行うものです。何のための療育なのか。誰のための療育なのか。「療育はほどほどに」という考え方も大切にしたいものですね。

子育て本著者・講演家 立石美津子
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掃除機の音が怖い自閉症児の事を思い出しました。小1のA君は体育館に入れず、誘導すると逃げ出したり泣きだしたり、誘導する大人を激しく蹴りに来たりするのでした。聴覚過敏のASD児が多いことは知っていたので、体育館の反響音とか喧騒が怖いのだろうと、無理強いはせずに声かけはしますが入場は本人の主体性を尊重していました。。その後に、T君の就学前通所施設(今の児童発達支援事業にあたる)の話を聞いて、原因が分かりました。

確かにT君は聴覚過敏で、園児が集まるプレイルームの喧噪が嫌で入れなかったそうです。ところが、それではT君が集団性を学べないと言う理由で、プレイルームに入れるために、T君が嫌いな掃除機でプレイルームの入り口のT君を追い立てて入れていたと言うのです。掃除機音に追い立てられるわ怖いプレイルームに入れられるわで、T君がPTSDを抱えてしまったと言うわけです。

小さい子は、力が弱いですから、大人の強制力で簡単に屈服させられます。しかし、やがて身体が大きくなり幼少の期のトラウマを抱えたままの場合は、衝動的に暴れたり暴力をふるったりするようになることがあります。言語発達に遅れがある場合は、恐怖の原因を大人に語る事すらできません。こうして、発達障害とは何の関係もない行動障害を抱えることになります。無論、当時の大人はそんな事を知るすべもなく「集団性」を優先したのです。ASDの事を知らない事業所に療育を受けに行ったばかりに、PTSDを負わせてしまったのです。

熱心な療育が間違っているのではなく、障害特性も良く把握しないまま、「慣らそう」としたり「できるように」しようとするのは療育ではありません。ただの、お節介で迷惑行為なのです。他にも、思春期に荒れるのは、受動型のASDで絵カード支援をした子どもに多い等というデマ説がありますが、これは、理解コミュニケーションばかり教えて、表出コミュニケーションや交渉を教えなかった結果です。療育者が、コミュニケーション支援を正確に学ばずに、絵カード支援を見よう見まねで「熱心」に実施した結果です。私たちが絵カード支援で、安くはないPECSマニュアルの熟読を勧め、高額だけど支援者トレーニングを受けて欲しいと言うのはこういう理由があるのです。

しかし、療育技術はその時代の限界性はあるとは言え、支援者が子どもと養育者をリスペクトして、子どもの発達や障害特性に支援者がアンテナを張っていれば、効果的な療育が見つからない場合はあっても、間違った療育を強いることはないと思います。それを筆者は「ほどほどの支援」と呼んでいるのかも知れません。

 

 

感情の理解

発達障害の特徴のひとつに、自分の感情の理解が難しいという場合があります。自分が感じている気持ちがはっきりとわからない時があるのです。たとえば嫌な感じを受け取っていても、「不安」なのか「怒り」なのか「悔しさ」なのかの違いがわからず、嫌な気持ちだけが悶々と溜まってしまい、大きなストレスになったり、溜まりすぎてパニックになることもあります。また怒りを感じても、何に対して怒っているのかが理解できずに曖昧になってしまい、ただ怒っているという感情だけが高まって爆発してしまうこともあります。

ストレスや不安を対処できる人は、ストレスを感じた際には場所や行動を変えて気持ちを切り替えたり、好きなことや楽しいことをして発散することができます。自分で解決ができなくても、親しい人に愚痴を言ったり悩みを聞いてもらうことで気持ちを落ち着けることができます。発達障害の子は自分での解決はもちろん、親や親しい人に自分の思いや悩みを打ち明けることも難しいため、自分一人でストレスや不安を抱え込んでしまいます。また、嫌な事や怒りを感じることがあったら言葉で「やめてください」などと相手に伝えることができますが、コミュニケーションが苦手な子はそれも言えずにストレスがたまる一方になる場合があります。

様々な気持ちや感情とその対処は、コミュニケーションなどの対人関係の中から学ぶことが多いです。発達障害の子どもはそもそもコミュニケーションを取るのが不得意であったり、様々な社会経験を体験する機会が少ないため、自分の気持ちを理解したり感情をコントロールする経験が少なく難しくなることもあります。発達障害の中でもADHD(注意欠陥・多動性障害)などのように、衝動性の特徴が強いと、イライラを感じた際に、自分を抑えることができず突発的に感情を爆発させてしまいます。衝動性とは今の状態や今後のことを考えずに、思ったことをそのまま行動に移してしまう特徴で、衝動性が強いことでここで怒りを爆発させてしまったら後々どうなるかまで頭が回らず、その場で怒ったりしてしまいます。

子どもがイライラした時やストレスを感じた際には、本人に自分の気持ちやその度合いを確認してもらいます。気持ちを確認する上では『どのような気持ちか』『誰に対する気持ちか』『どの程度のものか』が重要になります。子ども本人が自分の気持ちを理解するのが難しい場合には、周囲の大人が子どもの状況を見て気持ちを汲み取ってあげ「○○でイライラしたのだね」「□□に対して怒っているのだね」と気持ちを代弁し一緒に確認をします。イライラなどの怒りやストレスを感じている場合には、誰に対する気持ちなのかを明確にするのも重要です。誰に対する気持ちなのかをハッキリさせると、あの人にそこまで怒らなくてもいいなというフィードバックの力が働いて鎮まることもあります。

自分の気持ちを理解できる子の場合には、イライラの度合いのメーターや表などを用いてどれぐらいイライラしているかを確認しましょう。メーターや表などがない場合には「レベルいくつの怒り?」など聞いてみて、気持ちの度合いを確認する方法もあります。ストレスやイライラを感じていた場合には、落ち着けるような場所や行動へと誘導したり、イライラを解決できる方法を一緒に考えます。自分がストレスなどを感じていても対処方法がわからないため、溜め込んで感情が爆発してパニックなどになってしまう場合には、適切な対処方法を教えてあげましょう。対処方法はその子の特性や発達レベルにもよりますが、クールダウンの方法を教える、誰かに助けを求める、安心できるグッズを持たせるなどの方法があります。

学校などではクールダウンをできる個室やスペースを作って自分で逃げ込めるようにします。スペースが用意できない場合には潜り込む事のできる毛布、周囲の視界をさえぎる為のアイマスク、音を遮断するためのイヤーマフなどを準備し、それらの使い方などを教えます。自分で対処が難しい場合には、親や先生など周囲の人にストレスを感じていることを伝える方法を教えます。言葉で自分の気持ちを伝えることが難しい子どもには、表情の絵カードを用意したり、助けを求めるための簡単なサインやジェスチャーを教えてあげましょう。おもちゃやヌイグルミなど持つことで気持ちの安定がはかれる安心グッズがある場合には、安心グッズを持たせてあげましょう。また、空腹で気持ちが苛立っている場合には飴やちょっとしたお菓子を渡すといった方法もあります。

子どもがどのような状況や状態に弱くストレスを感じているのかを、事前に本人や周囲の人が知ることも重要です。どの場面でイライラを感じたり、ストレスを受けるかがわかれば対処もしやすくなります。ストレスから癇癪やパニックを起こした場合には、その状況や原因を記録して確認をしましょう。また、直近の出来事ではなく、以前の出来事を引きずってフラッシュバックしていたり、過去のことでストレスを感じていることもあるので事前に何が有ったかなども必要です。様々な感覚過敏がある場合には、音、光、臭い、場所、雰囲気、人や物など、感覚として影響するものを確認しておきましょう。