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みんなちがってみんないい

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このページは、福祉・医療・教育の分野でトレンドになっているトピックを取り上げて、スタッフの私見も含めて紹介していきます。引用先を掲載するので読者の皆さんの参考にしてください。

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保育所等訪問支援事業

すてっぷでは保育所等訪問支援事業を実施しています。

障害児が障害児以外の児童との集団生活に適応することができるよう障害児の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて適切かつ効果的な支援を行うものです。支援には当事業所のスタッフ(訪問支援員)が当たります。

すてっぷの利用者の方でも外部の方でも利用できます。保育所等とありますが、児童の利用するところなら、保育所・幼稚園・小学校、特別支援教室、放課後教室等で実施できます。詳しくはスタッフまで。 

AI医療

【2月12日 AFP】検査結果やカルテ、手書きの診断書などを学習して、子どもの病気を医師と変わらない精度で診断できる人工知能(AI)プログラムの開発に成功したと、中国や米国の研究者らのチームが発表した。医師のような仕方で患者を診断するAIは世界初としている。論文が11日、医学誌「ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)」に掲載された。

 AIはデータ量勝負です。医療情報を多く取り込めば取り込むほど診断確度が上がリます。そのうち、病院の代わりにスマホで病気診断してもらう日が来るのでしょうか?残るは対人交渉の暖かさと対人摩擦ですが・・・あなたはどちらを選びますか。

すてっぷは何処?

注文していた机を運送屋さんが運んできました。近所の人にホップすてーしょん知ってますか?と聞いたけど誰も知らないので探すの苦労したとのこと。備品の発注はNPOの名前「ホップすてーしょん」を使うので迷ったみたいです。育ちの広場すてっぷは、NPOホップすてーしょんが展開する事業所の一つです。まだ事業所は、「すてっぷ」だけですが、地域の期待に応えて事業拠点を増やした行けたらいいなと考えています。

 

ダンボール廃棄

みんなの教材用にとダンボール箱をストックしていましたが、教材室に溢れかえっていたので倉庫を購入しました。倉庫にも入らないダンボール箱は廃棄しようと近くのエコゲートという回収業者の回収ステーションに持って行きました。回収用のコンテナはすでに溢れかえっており、コンテナ周りにダンボール箱が所狭しと放置されて、これを片付ける業者さんは大変だなぁと思いました。人手不足の中ここに人を雇い入れることははできないようですが、障害者雇用のチャンスも感じました。箱は規格品ですからいくつかの大きさのトレイを準備すれば構造化した仕事になるかもしれません。回収ステーションを回る「モービルクルー」(車で巡回するスタッフ)の仕事が開発できるなと思うのですが、どこかの会社でこのアイデア使ってくれないでしょうか。

コミュニケーションスキルとPECS

PECS(Picture Exchange Communication System)は代替・拡大コミュニケーションシステムで、1985年にアンディ・ボンディ(Ph.D.)とロリ・フロスト(MS. CCC-SLP)によってアメリカで考案され、最初にデラウェア自閉症プログラムの自閉症の未就学の児童に実践されたことから始まりました。それ以降、PECSは世界中、年齢関係なく、様々な障がいを持つ(認知、身体、そしてコミュニケーション)沢山の学習者に実践されてきました。

人は自ら伝えることで社会との調和を図っていきます。他者が言っていることが分かるだけでは人は社会や環境の奴隷です。自ら表現をし、折り合いをつけることで他者と対等の参加となるのです。

 

絵カード交換コミュニケーションシステムの導入とトレーニングをお望みの方はスタッフまでご連絡ください。

https://eikaiwa.weblio.jp/mirai-junior/column/developmental-disorders/pecs/

https://pecs-japan.com/絵カード交換式コミュニケーションシステム/

アマゾンでPECSのスタータキットを売っていました

 

 

 

インクルージョン??エクスクルージョン??

インクルージョンとは、 ラテン語の語源によれば、 中に招き入れて入口を閉めるという意味があります。 包摂と翻訳されることもあるようです。 エクスクルージョンは、 戸を閉ざして建物の外に締め出す、 排除するという意味です。

ダイバーシティー社会は異質な人々が共存する社会の姿であり、これをさらに進めて皆が貢献参加するのがインクルージョンな社会だと言います。

どんなことでも分け始めるとキリがありません。合理的で効率的だと思っていてもいつの間にか排他的になってそれが日常に変わってしまうこともあります。

うまくいかないから、合理的でないからと環境の工夫や支援の方法を顧みず、場所を分けてしまおうとするエクスクルージョン志向に陥るのではなく、昨日より少しでもうまくいくように、コツコツ工夫していく地道なスタイルこそインクルージョンを進める王道なのかもしれません。

連休と好きなこと

子どもにとって、学校はしんどいことも多い場所でもあります。じっと先生のお話を聞いたり、一時間机に向かって勉強したり。家に帰れば苦手な宿題をしたり。

新学年からひと月。子どもたちは新しい環境に慣れようと頑張っています。この連休は学校で疲れた子どもたちがほっとリラックスしたり、自分の好きなことに向き合えるようになったらいいですね。

子どもたが好きなことをすれば、気持ちが上向きます。パワーアップのチャンスです。

子どもの好きなことは得意につながります。子どもを育てていると、得意なことと苦手なことの差に驚かれる親御さんも多いと思います。

得意なことはどんどん伸ばしたい!他に得意なものはないだろうか?1つでも多くの「得意」を身につけさせてあげたいです。

「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、好きなものは得意なものになっていきます。好きだからこそ繰り返し、繰り返すからこそ習得が早いのです。

1つの好きなものを起点に、好きなものがどんどん増えていくこともあります。大好きな電車を起点に、好きなものがどんどん広がっていく方もあります。

電車が好きだから、車体の名前を覚える。鉄道会社を覚える。路線図を覚える。プラレールで線路を作ってみる。線路を立体化してみる。

電車は乗り物だから、他の乗り物も気になる。飛行機を覚える、船も覚える。船は海を走るから海も好き。だから海水浴も大好き!

好きな遊びをとことんできる環境を作れば、子どもは自分からどんどん興味を広げていきます。ぜひ、ゴールデンウィークは子どもが好きそうななことをどんどん提供して、1つでも多く興味を広げてあげましょう。もちろん親御さんに無理のない程度にです…。

 

鉄道ファンと子育て

 親たちから絶賛され、オンリーワンの強さを誇る雑誌『鉄おも!』(ネコ・パブリッシング)をご存知でしょうか。名前の通り「鉄道」に特化した5万部を誇る児童向け月刊誌です。

親にはイベントや商品情報、「新型列車が出た」とか子どもに伝えて喜んでもらえる情報に人気があります。実際、大抵の鉄道関連企業のホームページは情報量がとても多いので、あまりネットにふれない方には大人でもわかりにくい面があります。本にまとめた旬の鉄道情報が人気の秘密のようです。

インドア派の親や子どもにも、好きなことなら行ってみようかということになります。先日も書きましたが好きなことから世界が広がり興味を広げ知識を広げる契機となります。一度読んでみてください。もちろん鉄オタのお父さんは、とっくに把握済みの情報でしょうけど。

平成から令和へ

平成最後の日がやってきました。テレビでは「平成を振り返って」特集をあちこちでやっています。
昭和生まれにとっては、平成よりも昭和の方に懐かしさを感じてしまいます。平成は30年、昭和は60年余と2倍の長さがあり、敗戦から高度経済成長そしてバブルと、実にドラマのような展開でした。

平成はというとバブルがはじけ「失われた20年」という言葉が日本の衰退と没落の代表語のようにも使われます。けれども、私はそうは思いません。平成は、驚くべき勢いで日本の福祉が進んだ時代であったと思います。共同作業所という成人障害者の進路先ですら親がお金を出し合って細々と経営していた昭和。放課後等デイサービスは、学童保育所ですら全国にいきわたらなかった昭和では思いも及ばない公的サービスの実現でした。
文明は進化する。考えてみれば人口減少だ、少子高齢化だ、デフレだ、財政破綻だといっても、平成の日本の労働者1人あたりのGDPは2000年から15年間で約20%も伸びているのです。経済を支える舞台裏で日本人が頑張り続けた結果です。もちろんブラック企業が大きな顔をしたりする時もありましたが人手不足の今では影を潜めています。福祉が目に見えて進んだ平成時代が終わりをつげ、明日から始まる令和がどんな時代になっていくのかは誰にも分かりません。わかっているのは、時代を作っていくのはその時代を生きていく人たちだということです。昭和や平成を生きた人々と同じように。

令和元年

テレビのどこのチャンネルも令和元年の報道ばかりです。そもそも天皇一代で元号一つは明治からの話です。むかしは案外簡単な理由で元号が変わっていたそうです。明和は、1764年から1772年までの8年間施行されました。この時代の天皇は後桜町天皇、後桃園天皇。江戸幕府将軍は徳川家治でした。何故明和9年がなかったのか?「めいわく年」は良くないという理由で8年で終わり 安永(1772-1781)に続いたというのです。案外簡単な理由で変えているのです。日本古来の元号は面倒ですが世界に一つのオンリーワン、と思えば誇らしくもあります。

高文脈型コミュニケーションと低文脈型コミュニケーション

日本人と米国人のミックスの子どもで使う主言語がどちらかによって、行動や心理発達まで変わってくるといいます。

『すてっぷを見に行くね。』と言うと、日本人だったら言ってる本人が行くのだろうとすぐ想像がつきます。しかし、英語を母国語に持つ人は、『誰が行くの?』と聞き返してきます。食後『テーブルを片付けといて。』と頼むと、『テーブルは重くて動かせない。』と返事されます。端折った日本語表現も悪いのですが、テーブルは誰でも重くて動かせませんし、その上にあるものだと分かるはずです。また、『そこ、拭いといて。』と言うと、『そこじゃ分らん。』と返事が返ってきますし、『テーブルだ。』と返事をすると、近くにあったティッシュで拭き始めました。『テーブルは台布巾で拭くものだ。』と話すと、『言わないと貴方が考えていることは分らない。』と反論されます。英語圏人には、とにかくいちいち説明する必要があるのです。
コミュニケーションには、"HC" High Context Communication(高文脈型コミュニケーション)と"LC" Low Context Communication(低文脈型コミュニケーション)があり、日本語は高文脈型に属します。

高文脈型は、集団主義的な考えを持つ文化で生まれ、非言語のコミュニケーションが多いことが特徴です。人間関係が密接で情報が共有されるため、言葉以外の文脈や状況までコミュニケーションの前提としています。また、全体との協調や調和を大事にするため、主体的でない間接表現が多く、遠まわしで曖昧な言い回しが多いのです。
英語は低文脈型に属します。低文脈型は個人主義的な考えを持つ文化から生まれており、個性を重視した主体的なコミュニケーションに価値をおく言語です。よって、伝達される情報は言葉の中にすべて入っており、逆に語られない言葉にはメッセージが存在しない事になります。

自分の考えを言葉にはっきり出すため、分りきった内容でもいちいち言葉として表現する必要があり日本人にはストレスに感じる部分も多くあります。英語はお互いの意思を一つ一つ言葉で確認し合う低文脈型の文化圏で発達した言語であることを意識する必要があります。

このように文化が先か言語が先かは今となっては卵と鶏で、どちらが先と言えないですが、言語スタイルと思考パターンやコミュニケーションパターンはセットとなるということです。だったらバイリンガルの人はどうなるんでしょう?どちらかの言葉を主で考えているという答えが多いようです。

文脈のとらえ方が使用言語によって違うというのは、子どもたちとのコミュニケ―ションでも考えさせられることです。子どもは低文脈型ですからいちいち言語(シンボルやサイン含む)にする必要がありますし、いちいち表出させないとそれで伝わったと勘違いして育つ可能性もあります。

 

子どもの疲労回復力

小学生ぐらいの子どもの日常を知っている人にはさほど驚きのない研究結果がフランスから報告されました。

小学校高学年の子どもにはプロのトライアスロン選手ぐらいの体力があり、しかも肉体疲労からの回復力がハンパなく早いことが科学的に実証されたそうです。

「ママになって体力が落ちた」
「パパも、もう歳かな……。」

なんて今まで思っていたのは間違いで、そもそも子どもと体力を比較しても一般の大人が勝てるわけがなかったのです。

小学生と20歳過ぎの成人男性とプロのアスリートに、同じ量の激しい運動をしてもらい、体に残った疲労感(乳酸の分泌によって引き起こされる)がどのぐらい早く回復するかを心拍数、酸素摂取量と、血中の乳酸の濃度を量って調べたそうです。

すると子どもたちとプロアスリートたちはほぼ同格の数値だったのに対し、一般の成人男性は、疲労からの回復が遅いという結果が出たのです。それどころか、子どもたちのほうがプロのアスリートたちよりも疲労からの回復が早かったそうです。

「なぜ子どもたちは一日中遊んで、遊んで、大人たちが疲れてダウンしてしまった後にもひたすら遊び通せるのか、ようやく解明されたかもしれません」との報告でした。どおりで親が子どもより先に寝落ちするわけです…。

福祉用具の選定・適用のできる事業所

質の高い福祉用具を効果的に使うことで、自力での生活行動の範囲を広げることが可能になりますが、福祉・介護従事者の中には、その十分な知識とスキルが不足するために、福祉用具による介護を人の温かみがないと否定したり、機器の操作を覚えることを苦手とする人が多く、介護現場でなかなか福祉用具が活用されていないのが現状です。

自立とは、何でも自分でできることを意味する訳ではありません。何らかの障害があっても、何をしたいか、どうしたいか、自分が主体的に望むことの選択ができることです。そのために、他人の助けや協力を得ることがあっても、また福祉用具を使用することであったとしても、主体的に選択し行動できることが自立を意味するのです。福祉用具はそうした自立生活を確保するためにきわめて重要なものです。

たとえどんな障害があっても、主体的に生きることができる環境を用意し、それぞれが希望するスタイルを実現することが大切だという理念をもち、福祉用具の選定・適用のできる専門職がいるすてっぷでありたいものだと思っています。ただし、資本力がものを言いますが・・・。

 

児童福祉司と虐待対策

子どもの虐待を防ぐため、児童相談所で相談、調査、指導をする「児童福祉司」を、2019年度から2022年度までの4年間で「約2000人増員」することになりました。度重なる子どもの暴行死亡事件を受けての緊急対策です。

児童相談所の業務は、「養護相談」「保健相談」「心身障害相談」「非行相談」「育成相談」など、多岐にわたっています。児童福祉司」を増員することは、いいことだと思いますが、「虐待対応」には、高度な専門性と知識・技術が必要で、そのスキルを得るためには、最低5年から10年かかると言われています。

ところで「児童福祉司」になるには、自治体の公務員試験を受けて採用され、所定の資格を持つ人が「児童相談所」に配置されて1年で任用資格が出来ます。だから、異動等で配置された職員が、よくわからないまま対応に当たることも少なくないと思います。

この状況を打開するには「児童福祉司」を専門職にし特別に育成していくことが急務です。また、「児童福祉」に関係する機関との密な連携をすることで、関係機関とも協力でき、「虐待」だけでなく、総合的に対応ができるシステムが構築できると思います。

「虐待」に関しては、「早期発見・早期対策」「児童の保護」が必要ですが、目に見える体罰など物理的な虐待のすそ野にはその何千倍ものネグレクトや心理的虐待が存在します。見えない虐待は氷山モデルで見ていきます。「育児スキルの低下」や「子どもへの愛着欠如」の本質は世代間で繰り返される「貧困」と「被虐待」が少なくありません。

表面化された虐待への保護は欠かすことはできませんが、この水面下の問題に取り組むには、今回の増員では少なすぎます。今できることは、業種を超えたチーム支援ですが、このチーム支援も曲者で、指揮権や責任が曖昧なので「船頭多くして舟山のぼる」様子が散見されます。児童福祉司の専門職化に加えチーム指揮権の付与が求められていると思います。

ワーキングメモリー

ワーキングメモリーは、情報を脳内で一時的に保持する能力・また保持した情報を選択して処理する能力のことです。
ワーキングメモリーは、日常生活における会話や読み書き・計算・仕事・勉強などを行っていくにあたって欠くことのできない能力です。私たちは、無意識のうちにワーキングメモリーを働かせています。

会話能力
人と話をしている時に、話しかけられた内容を脳内に記憶して、的確な返事をすることにワーキングメモリーは関わってきます。会話能力に長けている人は、人から言われた話やその場の雰囲気を瞬時に判断して、その場に適した言葉を選択することができています。これは、ワーキングメモリーが効果的に働いているからです。

物事の優先順位選択力
同じタイミングでいくつかのことをこなさなければいけない時、ワーキングメモリーが上手く働かないと、何を先にすれば良いのか分からなくなり、パニック状態に陥ってしまいます。仕事をするようになると、優先順位付けというのがとても大切で、これができないと職場や家庭生活で様々なトラブルを起こします。

スポーツでの判断力
ワーキングメモリーの、短期的な記憶と情報の選択という機能は、スポーツとも深く関わってきます。特に、チームスポーツのように、プレーの中にいくつかの選択肢があるような場面で、的確な判断をできる人は、ワーキングメモリーが強い人と言えます。子供が行うドッチボールなど単純なスポーツにおいても、「どこに投げればいいか」・「どっちに逃げればいいか」などの判断には、ワーキングメモリーが働いています。


発達障害のある人には、ワーキングメモリーが上手く働いていない人が多いようです。発達障害のある子供たちが日常生活において感じている様々な困難は、ワーキングメモリーの働きと関係していることもあります。

ただ、ワーキングメモリーが上手く働かないということは、言葉で上手く説明することが難しいので、子供も周囲に自分の状況を上手く説明できずに辛い思いもしています。
親や周囲も子供の置かれている状況を上手く想像するのは、難しく、つい叱ってしまうという場合もあります。

ワーキングメモリーを鍛える方法は様々ですが、まずはワーキングメモリーが弱くても、メモを取る、IT機器を使うなど弱さを補完する方法を当事者と一緒に開発することが支援の第一歩です。

iPecs

iPecs(あいぺくす)とは、従来のPECS®コミュニケーションブックからハイテク拡大代替コミュニケーション(AAC)へと進化したiPadのアプリを駆使するコミュニケーションスタイルを意味します。絵カード交換式コミュニケーション®(略してPECS®)のフェーズIからIVまで従来のPECS®のコミュニケーションブックを使用して熟達している方にはPECS®IV+(ぺくすふぉーぷらす)を使うことで、もっと幅広く自由に自発のコミュニケーションの可能性が広がります。

PECS®IV+はどの様な環境でも使用できるようにデザインされており、PECS®IV +の利用者の方々はアプリ内の音声出力装置で話すのに述語カード専用のページを含む、最大20ページものPECSブックのページから何個もの絵カードを使用し文カードを作成できます。
絵カードライブラリで利用可能な言語は、英語、スペイン語、日本語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語と6か国語使用ですから旅行でも使えますよ。ただしiOS(iPad)用のアプリだけです。

自発のコミュニケーションに革命がおこります!!

詳しくはスタッフまでお問い合わせください。

https://pecs-japan.com/アプリ/

放課後等デイサービス支援とバランス感覚

放課後等デイサービスで一番大事なことは、学校と放課後等デイサービスのコンセプトを混同をしないことが重要です。学校は勉強するところ、放課後等デイサービスは余暇を過ごすところです。ただ以下の3点が放課後等デイサービスのミッションなので支援者の勘違いもおこります。

★ひとりひとりに合わせた療育を提供
放課後等デイサービスの特徴の1つは「ひとりひとりに合わせた療育」を提供することです。保護者との面談をとおして個別支援計画を作成し、お子さんの発達段階や特性に応じて課題を設定します。
これは学童保育にはない特徴ですが、学校では同じことが掲げられていますので学校教育と混同されやすいですし区別もつきにくいところです。ただ、この分野では応用行動分析に基づく支援等は多くの学校ではまだまだ導入されていない場合があるので、福祉分野が先導してもいいものはあると思います。

★小集団の中で社会性を身につける
特徴の2つ目は「小さな集団」であることです。学童保育の定員が40~70人なのに対して、放課後等デイサービスの定員は10人ほどの小さな集団です。小さな集団のメリットは、スタッフの目がとどく中で自由にすごせることです。ひとり遊びなら家でもできますが、他のお子さんと一緒にすごすので「自分の思いどおりにならないこと」もおきます。集団の中で人を傷つけず、自分も傷つかない距離でお友達と関われるようにスタッフが支援していきます。しかし、これも学校の中でも日常的に行われている指導でしょう。では、学校とどう違うのか、ほっこりする場であるという前提をスタッフが心得ていることが大事です。

★家族のサポーターとしての役割
放課後等デイサービスの3つ目の特徴は、家族のサポーターとして「レスパイト(respite)」の役割を担っていることです。レスパイトとは、「休息」「息抜き」「小休止」という意味です。福祉サービスなどを利用している間に、介護をしている家族などが一時的に介護から解放され、休息をとれるようにする支援のことです。放課後等デイサービスを利用して、ご家族が自分のための時間を過ごしたり、家事やきょうだいの育児ができます。お母さんが息抜きできることは、お子さんにとっても良い効果があります。

このようにして、三つ目のサポーター以外の役割は学校と区別がつきにくいですが、子ども目線では「ほっこりする余暇の場」であることが重要です。社会性を育てるために支援することは大事ですが、一方でゆったり見守るというバランス感覚がスタッフに最も求められるところです。

 

マインクラフト

放課後等デイサービスで不動の地位を得ているマインクラフト。子どもたちはみんなマインクラフトで新しい世界を作ることに夢中になります。これをプログラミング教育の一環として売りにしている事業所も出てきました。

マインクラフト(minecraft)とは、3Dのレゴ風のブロックで構成された世界で、最近のゲームのリアルなグラフィックと比較すると、レトロな雰囲気ですが、ブロックでできた世界を自由に探検したり、採掘して、自由な世界を組み立てることができます。  

「視覚的なフォーマットの情報と構造や、ある程度の予測可能性を与えてくれる」ことが、子どもを混乱させずに、課題に取り組みやすくしてくれるのです。

 マインクラフトが提供する環境で、子どもたちは、コミュニケーションを学んだり、明確なゲームのルールのなかで遊ぶといったような社会的な相互作用を促すことができます。

マルチプレイヤーモードで子どもたちがいっしょに遊ぶときには、お互いに会話して、アイデアや計画をシェアする方法を学びますす。マインクラフトで学んだことを、実際の生活でも応用することができるようになれるかもしれません。

他のゲームのようにストーリーにそって何かしなきゃいけないのではなくて、好きなものを好きなように作ることができるというのも、マインクラフトの魅力です。

何を創造してもいいという自由度があるというのも、マインクラフトが好まれる理由です。自閉症スペクトラムの人で、あまり一般的ではないことに熱中して詳しくなることがありますが、マインクラフトはそうした好奇心を満たしてくれるゲームでもあります。

マインクラフトは「サンドボックス型のゲーム」というジャンルに分類されていますが、箱庭療法(サンドプレイセラピー)に似たところがあると思います。

 

 

才能開発


発達障害の症状は、一つのことに異常にこだわることや、普通なら気が付かないことに気が付く特徴があります。

これを長所とし、才能にまで開花させて、天才と呼ばれるようになった発達障害の人は大勢います。

むしろ、世界中で天才と呼ばれている人の多くは、発達障害であったのではないかとされています。

★アインシュタイン

天才といえばアインシュタインですが、アインシュタインはアスペルガーとLD=学習障害だったといわれています。

 ・5歳までほとんど話すことができなかった
・読み書きが苦手で、時間がかかった
・数字と自然科学には興味があり集中した
・興味がないことには集中できなかった
・仕事が長続きせず転々としていた
・コミュニケーションをとるのが苦手だった
・部屋がいつも散らかっていた。整理整頓が苦手だった
・汚い布で顔を拭いたり、服の汚れを気にしない無頓着さがあった
・簡単な数字すら覚えるのがたいへんだった

アインシュタインはLD=学習障害もあったため、子どものころは勉強ができずに苦労していたようです。大学に入学するのも、行きたかった大学にはおちて、なんとか滑り止めの大学に受かっているほどです。

そんなアインシュタインには、よき理解者の父親がいて、父親がアインシュタインの個性を認めのばしていたそうです。

LDは、知的障害はなくIQが高い場合が多いのです。このような凹凸ある才能が、天才を生み出します。

★野田あすか

人気マンガでドラマにもなった「のだめカンタービレ」のモデルではないかと噂をされる(年齢から考えると違うと思われますが)、天才ピアニストの野田あすかさん。野田さんは、自閉スペクトラム症、解離性障害であることをカミングアウトしています。 

子どものころから発達障害の症状のせいでいじめをうけて、そのせいで何度も転校することになります。そんないじめを受けるなか、夢中でとりくんでいたのがピアノ。でも、大学にもなじめず大学を中退してしまいます。そして22歳の時「広汎性発達障害」と診断されました。

それでもピアノへの想いは捨てきれず、宮崎学園短期大学に入学し、ピアノ講師の田中幸子さんとであったことで、野田あすかの才能は開花し、数々の賞を得ました。

発達障害の「興味があることには過集中する」「強いこだわりをもつ」という症状は天才の王道でもあります。

 ★黒柳徹子

「徹子の部屋」でおなじみの黒柳徹子さん。どんなゲストがきても徹子流に見事にさばいてその人となりを表現していく天才トーク。

芸能界という移り変わりが激しい世界で、トークの力だけで長年テレビに出続ける。天才パーソナリティと言われる所以です。

 黒柳さんも自らの著書「小さい時から考えてきたこと」で、自分が「読書障害」「計算障害」であり、発達障害ではないだろうかと語っています。 

 レオナルド・ダ・ビンチ エジソン ガリレオ ベンジャミン・フランクリン ウィンストン・チャーチル ネルソン・ロックフェラー ヘミングウェイ アンデルセン アガサ・クリスティー ロダン スティーブン・スピルバーグ ウォールト・ディズニー ビル・ゲイツ スティーブ・ジョブズ 天才の多くはこだわり続ける変人=偉人として紹介されます。

しかし、発達障害の少なくない人たちは学校で勉強につまずき、友達を作るときのコミュニケーションにつまずき、就労でも躓いている方が少なくはありません。 周囲が良かれと思って普通を求めれば求めるほどそのつまずきは必然となっているようにも見えます。

とびぬけたこだわりを発見したのなら、その時代の「普通」とされるレールを走る必要はないという身近な誰かの気づきが重要です。こだわりを追求できる環境があってこそ、こだわりは長所となり才能は開発されます。つまり、才能の開花は、その才能のつぼみを見つけ水をやり肥料を与え、太陽の光をあてるファン=サポーターが必要なのだと思います。

 

熱中症

いつでもどこでもだれでも条件次第で熱中症にかかる危険性がありますが、熱中症は正しい予防方法を知り、普段から気をつけることで防ぐことができます。基本は無理をしないこと。急激な温度上昇。急激な運動。あとは「この程度は大丈夫」という過信の禁物です。水分補給だけでは予防にはならないという知識も必要です。

5月から7月にかけての気温は、広い範囲で平年並の見込み。5月は、晴れると気温の高くなる日があり、6月以降は、湿度が高く蒸し暑い日がある。

と気象庁…。なのに、まだ5月なのに今日は警戒レベルです。

熱中症指数とは、温度と湿度の関係で度数を出します。気温が30度でも高地など湿度の低いところでは汗が乾いていくので暑さを強く感じませんが、気温28度でも京都のような湿度の高い盆地では汗が乾かず暑くてしかありません。この温度と乾燥の関係を度数化したものが暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)です。

英文を読んでわかった方もいると思いますが、湿った布を巻いた温度計と球のまんま(実際は黒球)の温度計のことです。球が湿った温度計は周囲の湿度が低ければ気化熱で温度が下がります。黒球は太陽の光が強ければ温度が上がります。この二つと通常の温度との関係を度数で表したのが暑さ指数です。

暑さ指数をみて上手に熱中症を予防したいものです。

右のページに向日市の暑さ指数を新たにリンクしました。ご覧ください。

ニュース

今週末にはすてっぷ通信5月号が配布されます。昨年は2回の発行でしたが、今年は毎月発行にしようと頑張っています。ニュースというのは文字通り新しい情報です。古くなっては意味がありません。

ということで、今年は情報量は少なくても毎月発行して、利用者の保護者の方に取り組みや私たちが考えていることを発信しようと通信だけでなくブログも精力的に発信していきます。

すてっぷ通信は、webにアクセスしてもらうきっかけとして読んでもらえればということです。またwebにアクセスする環境にない方にも1か月に一度くらいは様子を知ってもらうためです。

すてっぷ通信もこのブログもどうぞごひいきにお願いします。

eスポーツ

「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称で、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技のことを指します。 つまり、複数のプレイヤーで対戦するゲームをスポーツと認め「eスポーツ」と呼びます。

アメリカではすでに、国が「eスポーツ」を「スポーツ」として認めており、「プロゲーマー」が「スポーツ選手」であることを認めています。また、韓国や中国でも「eスポーツ」が非常に発展していて、市場規模も日本とは桁違いのようです。
日本はアーケードゲームでは世界に名を轟かしているのに、「eスポーツ」では後進国と呼ばれていて、「eスポーツ」という単語すら広がっていません。
「eスポーツ」が盛んな国ではプロゲーマーがサインを求められるほどその地位は確立されています。日本では、もう少し時間がかかるようですが、「eスポーツ」には他のスポーツよりインクルージョン社会を推進する可能性があるのではないかと思います。

eスポーツは他のスポーツに比べ、年齢や性別、障害の有無など気にしなくて済む可能性があると思うのです。コントローラーを工夫すれば重度の運動障害のある方でも参加の可能性が開けるし、対人関係の障害でもディスプレーの向こう側の対戦相手なら試合ができます。そんなわけで、学校の部活動・サークル活動への支援や、障害者の社会参加などに取り組む企業も出てきました。
高校生のeスポーツ大会では、知的障害を持つ生徒と健常者の混成チームが参加しました。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、障害者も参加できる大会など、機運がさらに高まっています。

「たかがゲーム」と考えてしまうのは、もったいない話です。今NHKで「韋駄天」というオリンピックドラマが放送されていますが、陸上競技ですらかつての日本では「たかがかけっこ」とされていたのを、嘉納治五郎をはじめとする人達が何十年も取り組んで昭和の東京オリンピック開催にこぎつけたのです。「eスポーツ」もきっと同じ道をたどるでしょう。ゲーム好きが世界を極める時代がすぐそこまで来ています。

ペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングとは、知的障害や自閉症などの子どもをもつ保護者を対象に、アメリカで開発されたプログラムです。
はじめは、「親は子どもの最良の治療者である」という考えのもとに、支援機関で取り組んでいる子どもへの療育を家庭でもおこなうことで、療育の効果を上げたり、維持させたりすることが目的でした。

ペアレントトレーニングは現在、発達障害を持つ子どもの親を対象とした、子どもの行動を変えるテクニックを身につけるためのトレーニングとして普及しています。
ペアレントトレーニングでは、子どもの好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためのテクニックを、親が修得します。そして、子どもの困った行動や親子関係のこじれた状況に対して、まず親が関わりを変えることで子どもの変化を促し、子どもが変わることで親がさらに変わるという好循環を生み出すことを目指します。
また、トレーニングを続ける中で、親が抱えていた悩みや不安を軽減させることも、ペアレントトレーニングの重要な効果です。
ストレスで余裕をなくすと、子どもの行動を冷静に受け止められず、つい頭ごなしに叱りつけるといった不適切な関わりをしてしまうことがあります。
そして、親の不適切な関わりが続くと、子どもは「親に受け入れられていない。」などと落ち込んだり、反発して問題行動に拍車がかかったりし、親はさらに不適切な関わりを繰り返すという悪循環に陥ってしまいます。
ペアレントトレーニングは、親の関わり方を変えることで子どもの行動を変え、子育てへの悩みや不安も軽減させようというトレーニングです。

トレーニングを続けることで、親子の関係性の悪循環を解消し、より良い関係性を築いていくこともできるということで、京都府では現在保健所を中心にペアトレの講座が紹介されています。講座は短いもので5回長いもので8回程度ありますが、1か月ほど間をあけてトレーナーと2~3人の保護者のチームを形成して約半年間続けていきます。

ペアトレを受けたいとお考えの方はスタッフまでご連絡いただければご紹介できると思います。

忘れ物

「○○さーん、帰るけど忘れ物ないですかー?」「ハーイ完ぺきでーす。」5分後に帰宅の車中に連絡。「○○さーん、二階に筆箱と連絡帳忘れてますから帰ってきてくださーい」「あっちゃー( ;∀;)」

忘れ物。私も子どものころからしょっちゅう忘れます。人生のかなり多くの時間忘れ物に振り回されています。以前ワーキングメモリーの話題を掲載しましたが、相当前に経験したエピソードなんかはひとつ残らず覚えているのに、わずか1分前の記憶の保持が難しいのです。二つ以上のことを同時にやっているとものの見事に一つ以上忘れます。これは記憶する脳の場所が違うそうです。

ワーキングメモリーは長くは保持されないのですが、作業台のようなものでこっちの材料とあっちの材料をちょっとだけ置いておいて、もう一つの材料と一緒に加工するための仮置きのような感じです。ところがワーキングメモリーが弱い人はこの作業台が小さく、置いておいても狭いので机の下に落ちてしまう感じです。

無理やりこの作業台を広げようとしたり、狭いところに無理に高く積んで置いておくのは可能ですが、大変不安定ですし、その分パワーを使うので結局ほかに使うべきエネルギーがなくなって、早く疲れてしまうのです。解決策はひとつづつこなす癖をつけること、記憶を脳の外に保存する、すなわち目で見えるように視覚化することです。視覚支援とは実はワーキングメモリーの弱い人への支援の一つなのです。

「注意しようね」だけでは解決しないのです。あら?また車の中に取りに行った連絡帳を忘れていますよ。

 

読み書き障害


「読み書き障害=全く読み書きができない」ではなく、「読み書きを正確かつ流ちょうに行うことができない」状態のことです。知的な障害とは異なるため、文章の意味を理解できないわけではありません。

 「文字を見て認識することは難しいが、音を聞いて意味を理解することはできる」、「文字を拡大したり、行間を広げたりといった調整で意味の理解が助けられる」という児童生徒も少なくありません。


そうした読み書き困難を見つけ出すためには、学校でよく行われる発達検査では、読み書きの能力を測ることができません。 そこで、適切な読み書きのアセスメントを行う必要があります。 アセスメントは、子どもたちに音声教材支援を実施する根拠にもなります。

読み書きの困難
• 読むことが遅いと?
– 理解が不十分なままに教科書の学習が進んでいく可能性が生じます。 
– テストの問題文を読むことに時間がかかり、理解できていても解答できていない可能性もあります。

• 書くことが遅いと?
– 黒板をノートに全部写す前に消されてしまったり、書くことに極端な苦痛を感じていることもあります 。
– 試験の途中で時間切れになってしまうことも考えられます。

• その結果として?
– 理解できており、書きたいことはあるけど表現ができない、評価されない状態かもしれません。
– 学習が遅れたり、意欲をなくしてしまっている可能性もあります。

• 読み書きの速度や正確性を確認する
– 学年ごとの平均値と比べることで、個々の児童生徒の読み書き困難の状態を客観的に把握することが必要です。
– 極端に読み書きの困難がある場合、「自分の目で文章を読む」、「鉛筆を使って文字を書く」以外の 別の方法を使うこともあります。

すてっぷ では読み書き検査と発達検査を実施することができます。ご希望の方はスタッフまでお問い合わせください。

★STRAW-R(ストロウ-改訂版)小学生の読み書きスクリーニング検査
小学1年生から高校3年生までの(本事業所は小6まで)音読速度を調べることのできる速読課題や、漢字の音読年齢が算出できる漢字音読課題を検査します。本邦で唯一ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の表記について比較できる検査であり、どの表記から練習したらよいのかの指標が得られます。さらに速読課題は文章課題を含んでおり、入試で試験時間の延長を希望する際の客観的な資料にもなっています。(1時間程度の検査)

★K-ABC II
認知尺度と習得尺度の2つの尺度からなる検査。認知面での障害や得意な部分の状況と、学力の習得の状況の両方の側面を、同時に調べて比較することができます。小学生から高校生程度までを対象にすることができます。(1時間程度×2回の検査)

読み書き障害は二つある「視覚系」「音韻系」

発達性読み書き障害のお子さんには「知的には問題がない」ため、知能検査を行い、知的発達に問題がないことを確認することが前提ということを以前書きました。

ただ、読み書き障害と簡単に言いますが、その原因メカニズムは大きく二つに分かれます。(両方あるときも稀にありますが…。)

それは、字は見えているけど読めない場合、音は聞こえているけど音のつながりが読めない場合の二つです。今回は前者の視覚系に課題のある場合について述べていきます。

「視覚情報処理に問題がある」子どもの場合、視覚認知機能や視覚性記憶を要する方法で読み書きの指導をすることは有効ではありません。例えば字を何度も書くトレーニングは効果が上がらないのです。やってもやっても覚えられないからです。

視覚的な入力での指導は困難ですが、知的には遅れがないのですから、聴覚的な入力で代償するとうまくいくことがあります。例えば、“動く”という漢字を覚えるとき、「重いものに力を入れると動く」と文字の形態を言語化して覚え、言いながら書くことで習得することが容易になります。

視覚系に躓きがあるお子さんはノートに何度も“動く”と書く通常の教育方法は、書くのが遅い上に、他のお子さんと比べると字が下手。その上、何度書いてもなかなか覚えることができません。字が汚いと怒られ、書くのが遅いと怒られ、覚えられないと怒られ、それでは文字を書くことがどんどん嫌いになってしまいます。

足に障害があり歩けない人に、何度も歩く訓練をすれば障害のない人と同じように歩けると言っているのと同じです。分からなかったとは言え全く科学的根拠がないトレーニングを私たち大人は特定の子どもたちに強いてきたかもしれないのです。

確かにトレーニングすることできれいな字が書けたり早く書けるようになる子どもはいます。しかし、考えてほしいのです。視覚系に躓きのない子が今の能力量の3割で文字を書いたり読んだりしているとしましょう。ところが視覚系に躓きのある子は8割の力を使って同じ作業をしているとすれば余力はあと2割しか残りません。学習の大事なことは得た情報から推測したり考えたりすることですが、書くことにエネルギーの大半を消費した子には、考えたり推測に充てるパワーが残っていないのです。

次は音韻系で躓く読み書き障害について書きます。

 

 

音韻系の読み書き障害

前回は「文字の形の認識が難しい」など視覚情報処理の不全について述べました。これはどちらか言うと視覚入力はしているが処理(文字認知段階)や出力(字を書く段階)に課題がある場合です。
しかし、中には、入力段階で眼球運動に偏りがあり、普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。水に浸したように文字がにじんで見えたり、目が悪い状態のように文字が二重になったり、ぼやけて見える方。文字がらせん状にゆがんだり、3Dのように浮かんで見えたりする方もいます。鏡に映したように文字が左右反転して見える方もいます。

さて、今回は「文字の音のつながり方の認識が難しい」音韻処理の不全についてです。

音韻機能とは最小の音単位を認識・処理する能力を指しますが、ディスレクシアの人の脳の特性として、音韻の処理に関わる脳の領域に機能異常があるという説が主流となっています。そのため音を聞き分けたり、文字と音を結びつけて「読む」ことが難しいと言われています。

※文字と音の変換が苦手
ひらがなの文字と音を結びつけて読むのが難しいことがあります。また小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」や音を伸ばす「-」などの特殊音節が認識できず読めないこともあります。

※単語のまとまりを理解するのが困難
たとえば「み」「か」「ん」などのひらがなやカタカナの一音ずつは読めてもそれを「みかん」というひとまとまりの言葉として理解するのが難しいことがあります。

※聴覚記憶が苦手
言葉を音として記憶しながら読んだり話したりしますが、ディスレクシアの人の中にはこの音韻認識が弱く聴覚的な記憶が苦手な人がいます。このように処理と記憶を同時に行うことが難しいことから読むことに困難な場合があります。

こうした場合は、「活字を読めばわかる」ということにはなりませんから、聞いたり見たりしてわかる状態に持っていくことです。マルティメディア(iPadやPC)を用いて文章を読んでくれる教材やデジタル教科書(無料配布されています)を使って、読むことにかかるエネルギーをできるだけ少なくして、推論したり考えることに学ぶエネルギーが使えるようにします。記録は音声記録に残したり、キーボード入力を早くから教えていきます。ローマ字打ちは音声表現の規則性が高く、最近のデバイスは入力を予測したり読んでくれたりするのでひらがな打ちよりも教えるのが容易です。

また、読み書き障害の中には記憶力の良い子もいて、最初は教えられたことのなんでもかんでも記憶したり物事の法則性を見出したりして小学校時代をしのいでいく子がいます。しかし、中学校の時期に危機が来ます。英語の発音と綴りには簡単な法則性がありません。「A」を「ア」「アイ」「エイ」と前後につく文字でいくつも変化するからです。撥音や拗音等の日本語発音表記の法則性よりはるかに複雑です。それでも記憶力の高い子は法則性ではなく英単語や英語文書を丸ごと記憶して中学英語をしのぐ人がいます。

それでも、とうとう高校内容の記憶量は半端ではないのでここで、英語だけがガクンと急降下します。それではじめて読み書き障害が発見されるケースが少なくありません。
高校生の彼は言います。
「みんなは、僕以上に頑張っているからできるのだと思っていた」と。
「もっと早く読み書き障害のことを教えてほしかった」とも言いました。

読み書き障害の子の他者への認識は、「みんなは僕より頑張っているから読める」「僕は馬鹿だ」と勘違いしています。ちょうど目の悪い子が、「みんなも同じように見えている」と勝手に思い込んでいるのと同じです。眼鏡をかけたら「なーんだみんなはこんなに見えていたのかと」気が付きます。だから「視力検査」があるのです。
何故「読み書き検査」はないのでしょう?視力が悪くてその子だけが眼鏡をかけていやがる先生はいませんが、読み書き障害の支援にデジタル教科書などをその子だけに使うのをためらう先生は少なくありません。令和の時代こそ、読み書き障害への支援が眼鏡と同じように広まり認められる世の中に早くなってほしいです。

うちの学校では読み書きの検査をしてくれないという方は、スタッフまでご連絡ください。可能な限り読み書き検査のご要望にお応えしていきたいと思います。

空気を読む

日常生活において、他者の心を理解する能力は大切です。他者の心を理解する能力は、心理学分野においては「心の理論 (Theory of Mind)」 研究として、数多く行われてきました。文化による多少の違いはあっても、定型発達児は4歳頃にこのような能力を獲得することが現在の統一見解となっています。
また、自閉スペクトラム症児は心の理論の発達が倍ほど遅れるということもあるそうです。近年は、研究対象となる年代が広がっており、広義における他者の心の理解の学術用語としてマインドリーディングという言葉が使われます。
「空気を読む」ことについて、自閉スペクトラム症のマインドリーディングに関わるエピソードが引用されることもあります。わざとじゃないけど相手の嫌がることを言ってしまう。全体としての暗黙の意向は決まっているのに蒸し返す。空気を読むとは、相手の考えていることを読む、あるいはその集団の意図の方向性を読むと同義です。是か非か程度なら人の顔色で読めそうなものですが、相手の表情を読むのもASDの方は苦手です。欧米では空気を読めという慣用句は見かけませんが、米国の、"Read the room!"「雰囲気を読め!」という表現があるそうです。「身の回りの雰囲気を把握してから行動や発言をして」ということだそうです。以前、高文脈型コミュニケーションと低文脈型コミュニケーションについて掲載しましたが、英語という「低文脈型コミュニケーション」であっても、雰囲気というASDの方には大変むつかしい、見えも聞こえもしない他者の意図を感じ取れという言葉があるのです。

どうすればいいか?話し合って情報を共有するのが一番です。正確な情報もないのに勝手に想像するなんて、双方の誤解を作ってしまうだけです。「低文脈型コミュニケーション」でも行き違いはたくさんあるのですから、誤解が生じても、「空気を読め」なんて言わずに説明して許し合う寛容さも大事になります。

レジリエンス

レジリエンスは“Resilience”と書き「困難や苦境からの回復力、復活力」という意味です。逆境に置かれたときに早く復活できる人をResilient(レジリエント)な人と表現します。同じ状況に置かれても、すぐに回復する人もいれば、長々と引きずってしまう人もいます。
立ち直りが早い人と遅い人、何が違うのでしょうか?
誰でも、しんどい環境の中にいたら、気が滅入るものですが、「動き出せば好転するはず」と思えるポジティブな思考ができるかどうかが大事です。

このポジティブ発想やネガティブ発想は生まれつきではありません。小さい頃の身近な大人の関わりが大きく影響することが分かっています。
大人がポジティブな関わりをすると、その子もポジティブ発想を学びやすく、大人が、ネガティブな関わりをしてしまうと、ネガティブ発想を身につけてしまうのです。

「大丈夫、なんとかなる」
「この程度で済んでよかった」
「長引かせない+否定的に考えすぎない」発想を優先し、それを言葉で伝えていきます。
一方で、「もうダメだ」「最悪だ」のような言葉を慎むことです。「○○すると怖いよ」「○○したら大変なことが起こるよ」と脅さないことも大事です。
「学習性無力感」と言って、すでに“無力”を学んでしまっていると、「どうせダメだ」「ムリに決まっている」と最初から決めつけてしまうことがあります。
「無力感」は失敗経験の繰り返しで学習されます。
子どもの思考スタイルは、大人の関わりで変わります。意識的に、ポジティブになる働きかけが大事です。

身近な人間関係が励まし合う関係だと、人は強くなれます。家族の絆や友だちとのつながりが前向きだと、もし傷ついたり落ち込んだりするようなことがあっても立ち直りは早くなります。
相手の痛みや悲しみが理解できる力が身につくように、人を励ます言葉が持てるように、大人自ら、共感力を示すと、子どもの学びにつながります。

大人は先回りして、あれこれと子どもにしてあげたくなります。本当に大人がしてあげるべきことは、そこそこ失敗しない方法は教えるけれども、重要なことはつまずいてしまったときにどう対処したらいいかを教えることです。
怖いのは、失敗することではなく、その後の解決法を知らぬまま育ってしまうことです。先回りして学ぶべきリカバリーの経験を回避することではないということです。

もし大人が、子どもの行動を管理しすぎてしまうと、その子の自立力はなかなか育ちません。子どもの頃、自分で決断をする機会が多い子は、自立度が早いということも分かっていますので、大人が先導しつつも、子どもにできる判断や決断は子どもに委ねます。

自己管理が上手になると、レジリエンスが向上するだけでなく、スランプやストレスを未然に回避する力にもつながっていきます。まずは、何で遊ぶか、何を着るか、何を持っていくかなど、自分の身の周りの簡単なことから決める習慣をつけていきます。

レジリエンスは、コツコツと積み重ねていくものです。積み上げは今からでも可能です。

ラーニングピラミッド

学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。学習時間が限られていて状況では、より効率の良い方法での学習がスムーズに学習内容を身につけることにつながります。学習方法を見直すだけで思わぬ効果が出ます。

ラーニングピラミッドを見ると、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いことがわかります。では、各段階の内容について見てみると(下図)

講義を受ける(5%)
読書する(10%)
視聴覚〔ビデオ・音声による学習〕(20%)
実演を見る(30%)
他者と議論する(50%)
実践による経験・練習(75%)
他人に教える(90%)

物事を他人に教えるためには、自分でしっかりと内容を理解していなければなりません。「他人が書いた文章を読み上げるだけ」「書籍・ネットの文章をツギハギしただけ」では突っ込んだ質問をされると返答に詰まります。いろいろな方法で何度も実践経験を積み、時には失敗も経験することで教えることができるようになります。
定着率の高いラーニングピラミッド下方の学習法ほど、より自発的・能動的な働きかけが必要です。能動的に学習するためには、まず知識や興味を高め、その後話し合って理解を深めてから発表したり教えたりすれば限られた時間を上手に使った学びが進みます。

ラーニングピラミッドの中でもより能動的な「他者と議論する」「実践による経験・練習」「他人に教える」を重視した勉強方法「アクティブラーニング」が新しい学習指導要領の中で注目されています。でも、昔から「人に教えることが一番の勉強」と言われ続けているのですからいまさらという気にはなりますが、やっと公教育が注目し始めたということが重要です。

視覚支援

視覚支援は、1960年代の半ばに、米ノースカロライナ大学のエリック・ショプラー教授のグループによって始められたTEACCHプログラムで提唱された「構造化」と同じ意味です。
視覚支援の代表例はスケジュール表であり、毎日の生活や学校での学習時間割を作成し、視覚的なスケジュール表として前もって示すと、ASDの子どもは不安や混乱が少なくなります。
ASDの子どもはいつもと違う予期しない状況になると、恐怖や困惑を示すことが多いです。スケジュール表を、いつも使うリビングの壁や学校の自分の机の上などに掲示しておくと安心して次の予定に向かえます。言葉や文字が理解でいない自閉症児の場合、スケジュール表ではイラストや写真を使った絵カードが用いられます。
自閉症児者の用いるスケジュール表では、個々の行動予定は、認知レベルによって文字だけで書かれたものから、文字カードや絵カードのようにカード化されています。また、工程のある作業を行うときはワークシステムという名前でスケジュール表を作業や仕事の一部分で使うこともあります。これはワーキングメモリーという短期記憶が弱い人にも有効です。音声は消えてしまいますが、文字や絵は消えません。「何回言えば覚えるの?」と言い続けたが一回書いて示せば忘れなくなったというケースはたくさんあります。

また、「声かけ、表情や表現」を大事にしたいと思うばかりに、絵カード支援や視覚支援をためらわれる方がおられます。でも、聴覚に障害がある方と知れば視覚支援も使うでしょうし、視覚障害のある方に白杖や点字ブロックが必要ないという方もいません。ASDをはじめとする発達障害は即座に理解してもらいにくい障害です。発達期の子どもならなおさらです。発達はできないことができるようになる過程ですから、今できないことが未来にできないとは言いにくいからです。

それでも、誰が発信しても本人が理解できているかどうか、子どもの発信していることが誰でも理解できるかどうかは子どもの普段の生活に寄り添っていれば、わかることです。子どもの時期に、分からないことが長く続いたり、言いたいこと言えない状況が長く続くと、レジリエンス(逆境からの復元力)は低下していきます。

このような視覚的なスケジュールを用いることで自閉症の子どもは、「今何をすべきか」「次は何をすべきか」「最後までにはどれだけ残っているか」を理解しやすくなります。求められていることを達成したとき提示した大人も受け止めた子どもも嬉しい気持ちを交流し合います。スケジュールカードやワークシステムはあくまでも成功を支えるツールでありそれ自体が目的ではありません。

絵カード支援でいつもとても気になることがあります。大人のしてほしいことは絵や文字でしつこく示すのに、子ども側から発信する方法を与えていない場合がとても多いのです。つまり一方通行の視覚支援です。言っていることはわかるけど言いたいことが言えない状況が続くと自立することができません。自分は自分、人は人、みんなちがってみんないいを実現するにも理解と発信は一体なのだということです。

ASDの人たちが周囲の人たちと「やったね・いいね」をたくさん積み上げられるように視覚支援を利用していきたいものです。

スヌーズレン

すてっぷでは空気清浄機を稼働しています。この清浄機の正面パネルはコバルトグリーンの水流が渦巻いている様子が見えるようになっています。この輝く水流をいつまでもいつまでも楽しむ子どもたちがいます。引き込まれてうっとりするようです。私も小さいとき水道の流れに見とれたり洗濯機の渦巻きをいつまでも見ていた記憶があります。心が穏やかかになるのです。これを最近ではスヌーズレン効果というそうです。

スヌーズレンとは、オランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」、「うとうとする」という用語を組み合わせた造語で、外界を探索することや心地よくまどろむ状態を示すものです。もとは1970年代にオランダで重い知的障害がある人の余暇活動として始まりました。
この活動を行う空間スヌーズレンルームには、光・音・匂い・振動・触覚の素材等、感覚を優しく刺激するものが効果的に配置してあります。
利用者はこの空間で、自ら好きな感覚を楽しみ、誰からも指示されない特別な時間を過ごします。

アロマセラピー、タッチングケア、音楽療法等の温かな治療が注目され始めた1980年代、それらを一つにまとめようという動きの中でスヌーズレンはヨーロッパを中心に発展してきました。
昨今では、世界30カ国以上に広がり、その人にとって心地よい感覚刺激を通じたアプローチをすることで、思考・感情・行動を変化させていく治療的なものとしても用いられています。
スヌーズレンを構成する要素は、(1)利用者、(2)ケアする人、(3)環境の3つです。
現在ヨーロッパでスヌーズレンルームはこのような目的で使用されています。
●重い障害や病気がある人の余暇活動
●精神障害者・発達障害児へのプレイセラピー
●認知症の老人へのケア
●心理的に不安定な人の情緒安定のため
●自発性・コミュニケーション力を養う探索活動として
●子どもたちがゆったりしたペースで過ごせる時空間として

このような使用目的でコミュニティセンターや保育園にも広がっており、日本でも様々な場所での活用が期待できます。

かたずけられない


子どもが自分の部屋を片付けられなくて、部屋がいつも物で散乱していて困っておられる方は少なくありません。散らかっている部屋にいるのに平気でいるというのは、どうしても心配になりますし、部屋を片付けて生活してほしいと思うのは当たり前です。
部屋を散らかす子どもは片付けが苦手で、言われて部屋を片付けても、あっという間にまた散らかってしまうものです。
あまりにも汚い部屋で暮らしている子どもは、もしかして病気なのではないだろうかと不安に思われる方もおられると思います。
病気でなかったとしても、部屋を片付けられない子どもは、いつまでたっても片付けられないままなのだろうかと心配になり、どうすればよいのか悩んでいる方も少なくありません。
部屋を片付けられないという病気や障害は確かに存在します。
しかしきちんと観察して、ひとりひとりの子どもに合った対応をしていくことで、片付けられない子どもも、片付けられるような方法がみつかります。
また、病気や障害とまで言えなくても、片付けられない子供に寄り添って、片付けられるようになるまで親が教えたり手助けしたりすることで、多くの子どもは片付けられるようになるものです。

なぜ子供が片付けられないのか考えてみると以下の理由が考えられます。

★必要性を感じていない
片付けをしない子どもたちの中には、『部屋が散らかって汚くなっていても気にならない』という子どもがいます。
片付けられない子どもたちは、部屋がおもちゃやゴミ袋が散乱しているような状態でも気にならず、片付けをする必要を感じていません。親が『片付けて』とか『掃除をして』と言っても、家族みんなが気持ちよく暮らすという他者の視点がわからないので掃除や片付けをしなくても良いと考えています。
★片づけ方がわからない
または、ただ単に面倒くさくて掃除が大嫌いなので、片付けができないという子ども達もいます。片付けをしなくてはいけないと感じながらも、どうやって片付ければ良いのか分からないで、結局散らかった部屋のままでいる子どもたちもいます。片付け方が分からない子どもには、大人が丁寧に片付け方を教えることで、うまく片付けられるようになります。

★ストレスが原因になっているケース
子どものストレスが原因になっているケースも考えられます。子どもの生活の中の、学校生活、家庭環境、親子関係、夫婦関係、友人関係などの中で大きなストレスを感じている場合、心に抱える問題が大きくて、その子どもの中では片付けをしている場合ではない、片付けをする気も起きないような心理状態になっているケースです。ストレスによって片付けができない子どもの場合、やはり片付けよりもその子どものストレスの原因となっている問題を、解決していく必要があります。

★病気や発達障害などによるもの
『片付けられない症候群』と言われるADHDやADDという発達障害がありますが、この障害を持っている場合、その子どもは片付けがとても苦手です。ADHDである場合は、脳の機能的な障害に原因があり、『不注意』『多動性』『衝動性』と言う特徴を伴っています。
ADHDの特徴である、うっかりミスがとても多かったり、少しもじっとしていられない性格だったり、衝動性を抑えられないなどコントロールがしにくい性質を感じられる場合は、正しく診断をしてもらう必要があります。
発達障害と診断されたら、その障害に合った支援や薬の力で、片付けられないことも含め、生活の不自由さを和らげることができます。
片付けられない子どもの中には『ため込み症候群』といわれる強迫性障害のひとつ、ホーディングという障害を持っている場合もあります。『物を集めすぎて困る』とか『捨てられない』という特徴があります。ADHD、強迫性貯蔵症のほか、ASDのこだわり等柔軟性の欠如が原因の場合もあります。
そのほか、うつ病、セルフネグレクト、統合失調症、認知症。これらの病気は、ストレスが原因で引き起こされる病気です。

片付けられない子どもが片付けられるようになるには、大人の助けが必要です。言葉を教えるように、子どもに片付けを教えていきます。
一緒に片付けを始めることで、片付けに対する重要性に気が付く機会となります。
部屋での探し物が多かった子どもなら、一緒に分類したり、整理したりする作業を通して、部屋を片付けることは生活を快適にし、物の置き場所を把握することが、便利で心地よいことであるということが分かってくると思います。一緒に片付けをしていく中で、片付けられない理由や行動の癖が分ってくると思います。つい散らかしてしまう癖を解消するための対策を一緒に工夫することで、散らかさないためには『具体的にこんな工夫をしたい』という、対策の意図も理解してくれます。
例えば、ゴミ箱の置き場所ひとつとっても、ゴミを入れやすい場所へ移動するだけで、ゴミ箱へゴミを入れる行動がかなり増えると思います。脱いだ服を床へ置きっぱなしにされないように、サッとひっかけられるフックを壁に取り付けたり、かけやすいハンガーラックを用意したりすればよいかもしれません。帽子やかばんなども、簡単にかけられるようポールハンガーやハンガーラックがあると、簡単にひっかけるだけで片付けられる仕組みを作ることができます。

部屋が汚いと怒るのに、部屋をきれいにしても褒めないでいるという事も多いです。怒られて仕方なくする片付けと、片付けたら褒められるという片付けだと、片付けをした時の気分がよいものになるか悪いものになるか、ずいぶん違ってきます。『片付けを始めた時』『片付けをしている時』『片付けが終わった時』など、こまめにほめて、子どもの片付けへのやる気を引き出していきましょう。
逆に、もし片付けが上手くいかなくても、怒ったり嫌味を言わないことが重要です。ほめるという大人の行動は、片付けが嫌いな子どものやる気を引き出していきます。みんなの一員として、子どもに『お手伝い』として役割分担を与えましょう。お手伝いのご褒美としては、『褒めること』が最もよいのですが、なかなかお手伝いをしてくれない子どもには、お手伝いの分担をこなしたら、例えば何か好きなことをしてよいというご褒美などを与えると、お手伝いも続けられるようになります。
片付けられない子どもには、それぞれ違った理由や原因があります。
親が子どもを見守り、必要な時に必要な助けをタイミングよく差し出し、子どもに寄り添っていくことで、片付けられない子どもも少しずつ片付けられるようになります。
片付けは教えていかなければならないものであると意識して、ひとつひとつ褒めながら教えてあげるとうまくいきます。

 

学童保育のありかた

学童保育(乙訓では留守家庭児童会)は「地域で子育てする」制度で、「子どもは放課後に育つ」視点を持った地域事業とも言えます。嘱託職員や派遣労働の職員が人材となる中で、子どもが自ら通いたくなる学童保育にするためには、教育福祉家庭の連携以前に学童保育の運営方法を検討する必要があると言われています。
「子ども主体の学童保育」の理念を掲げ、地域の指導員会議や研修会をもち、理念をどう具体化するかに腐心する中で、親も子も次第に学童保育に好感を寄せ始め大型の学童保育所も好評を得ているという報告もあります。その中身は、保護者の多くが、「外遊びが多く」「手づくりおやつは美味しく」「子どもは楽しく通えている」、「子どもの気持ちを大切にしてくれる職員」が多く、「楽しい行事が増え」、「家庭との連携」も「トラブルへの対応」も適切にされていると評価しています。ステークホルダー(利用者)を大切にする方法を抜きにしてどんな組織も発展はありません。
良い学童保育は、①学童保育運営に責任を持つ法人等の正規職員の採用で学童保育実践の持続可能性を図ること、②正規職員を核にした責任ある運営体制を創出すること、③保育内容をお仕着せのものから子どもと共に作り出すものに転換すること、そのために、④職員間の連携を深めること だとしています。
学童保育を「子どもの生活」を守るための地域拠点として位置づけ、家庭と深く連携し、学校との連携も図る、「福祉と教育をクロスボーダー」できる位置に置くことによって、居心地のよい子どもの居場所を創出し、親子関係の修復、家庭や地域の再生にも寄与できるのではないかといわれています。そのためには、利用者=ステークホルダーの意見聴取や運営への参加は欠かせません。

8050問題

8050問題とは1980、90年代頃にひきこもりの子を持った家庭が、年月を経て、高齢化し、80代の親が50代の子を養う現象の事を言います。
8050問題が深刻化してしまったのは原因を若者問題・しつけ問題と浅薄にとらえてしまった政策の誤りだといわれています。
ひきこもりは、「社会復帰させる」「更生させる」事として捉えられたこと。そして、ひきこもりは単なる、「親のしつけ不足」や「若者に良くある心理」として考えられたからです。だから、ひきこもりの本人やその家庭は恥ずかしくて、悩みを打ち明けられず、改善する場所を見いだせずに現在に至ったのです。自治体や研究者はひきこもりの年齢が40歳以上にも調査結果がでていたのに、「若者自立・挑戦プラン(2003年)」という若者政策を出してしまい、修正しなかったのです。これらが結果的に8050問題につながるひきこもりの長期化をもたらしたと言われます。
ひきこもりは職場や学校での精神的なトラウマから起こる病気といっても過言ではありません。国の政策は実質、そのトラウマのある場所に戻そうとするのですから成果が上がらなかったのです。
8050問題の状況下にある家庭に良くある特徴は、ひきこもりを恥だと感じて、他者の協力を得る事が出来ない事です。その為、一向に子どもが現状から何もできない状況に陥ります。まずは、ひきこもり本人と、その家族がその悩みを打ち明けられる場所を全国的に設ける事が必要です。そして、「どこかに就労しなければならない」という事にこだわらず、働かなくても人はつながれるし生きていけるという選択肢を増やすことが重要です。現在、働く事は企業に勤める事だけではなく、支援を受けながら働く可能性は広がっています。その様な選択肢をひきこもりで悩む人に合わせて考えていける場を作る事こそが重要だと言えます。

 

 

発達障害のある子どもの家庭教師

発達障害のある子ども専門の家庭教師が増えています。「教育を十分に受けさせたい」という保護者は多いのですが、学校の現場には、特別支援教育の知識や経験がある教師の数が十分ではないことも背景にあるようです。

例えば、注意が散りやすい子どもには、上手な家庭教師なら90分の授業の間、教材を次々と変えていきます。集中力を途切れさせないための工夫です。ASDの場合こだわりが強い子が多いので、じっくりと向き合って、潜在能力を引き出すことが大事です。

発達障害の診断を受ける子どもが増え、保護者のニーズも高まり「発達障害コース」を設けた塾は次第に増えてきています。授業では生徒ごとの特性に合わせて、視覚優位を生かしたカラフルな教材を使ったり、歴史をうまく覚えられない子には歴史上の人物が載ったカードでゲームをさせたり、計算の苦手な子には教材に玩具のブロックを使ったりします。

教える側には、大学で心理学や特別支援教育を学んだ人や、身内に発達障害の人がいて育てた経験がある人などがいるところが信頼できるでしょう。料金は1時間あたり6千円~1万円ほど。教材をたくさんそろえ、個人にあった教え方が必要ですから市販の教材では間に合わないことも少なくないからです。環境が変わると混乱する子が多いので、同じ先生が担当することが多いです。

作文を一行も書けなかった小学生が原稿用紙一枚書けるようになったり、漢字が書けなかった中学生が漢字テストで平均点を取れるようになったり、通信簿がオール2だった中学生の生徒が2年間でオール4以上になって進学校に進んだケースが紹介される一方、うまくいかなかったケースはなかなか拡散されないので、どこのどの先生の指導がいいかどうかは何とも言えません。

全国展開をしているアークスタイル(大阪市)は派遣する専門の家庭教師の数は都市部でも足りず全国的に不足しているのではないかと言います。また、関係者は、家庭教師はただ遅れを取り戻すだけでなく、その子どもが何が得意で何が苦手かを正しく理解し、自尊心を尊重する指導を目指すことが大事だといいます。

学校では一律に授業を進めなくてはならず、カバーしきれない部分もあります。個別の対応を必要とする子がいる中、こうした家庭教師や塾の重要性はますます高まるのではないかと感じます。

学習性無力感

「学習性無力感」は、失敗や嫌な経験をしたことが原因で何をしてもうまくいかないとあきらめてしまい、仕事や勉強に対してやる気がおきない無気力状態に陥る状態を指す言葉で、以前このブログにもレジリエンス=「困難や苦境からの回復力、復活力」で掲載しました。

さまざまな失敗経験をする中で、大きなストレスや苦痛を感じたことが原因で意欲が低下していきます。「自分にはできない」「何をしても無駄」だというあきらめの意識が芽生えて、仕事や勉強に取り組むことができない学習性無力感に陥ります。周囲からは「だらだらしている」「さぼっている」などと思われていますが、本人はなんとかやる気を出そうと葛藤しています。そのため、周囲に理解されにくくますます無力感が強くなるといわれています。

学習性無力感の原因は大きく4タイプに分けられるそうです。
1 完璧主義の人は何事にも100%で取り組むためエネルギー切れしやすく、ケアレスミスでさえ気にする傾向が高いため、負のループにはまりやすく、学習性無力感になると考えられます。
2 やる気や達成感に関係する脳内物質のドーパミン・アドレナリン・セロトニンは睡眠中に調整されます。そのため、睡眠時間が少なくなったり眠りが浅いと脳内物質の調整が不十分で、ささいなきっかけで学習性無力感に陥るといわれます。
3 幼い頃から大人の言うがままで、自分で意思決定をせずに大人になった人は、大人になっても現実の自分と向き合えず、学習性無力感に陥りやすくなります。このタイプは人生の節目(就職・結婚・子育てなど)ごとにつまずく人がいるそうです。
4 幼児期に虐待や過酷なイジメにあった、恋人や配偶者からDVを受けたなど自己否定をされ続けたことがあるタイプの方は、潜在意識で「何をしても無意味」「自分が認められることはない」などと考えているために学習性無力感に陥ります。この4番目のタイプには学習障害など発達障害の子どもたちが支援のない学習環境で苦手を強いられる状況に置かれていても同じように無力感に陥ります。
タイプ別に示しはしましたが、簡単に分けられない事も事実です。無力感が続けば生活リズムも乱れるでしょうから睡眠も不十分になる事もあります。また、環境変化に柔軟に対応しにくい自閉症圏の方なら1番も関係しやすいし、過集中のADHD圏の方なら2番もあてはまるというように発達障害の方はこの学習性無力感にハイリスクで陥りやすいということです。

回復の手立ては簡単ではありませんが、確実に達成可能な小さな目標を持たせ、一歩ずつ少しずつ実行させていくことです。本人に「できることがある」ということを認識させることで、自己肯定感を強めます。これを繰り返していくことで自己肯定感を持たせ、自信を取り戻してもらうことで学習性無力感を改善することができます。周囲にはサボっているように見えていても本人は一生懸命闘っているので「がんばれ」は激励にはならないので、温かく見守ることが大事です。

自閉症圏の方をはじめとする完璧主義タイプはすべてのことに対して100%を求めます。考え方として「70%達成できれば合格」と大人が誘導することで、「ほどほどの感覚」を学んでもらいます。
「何がしたいのかわからない」という悩みを持っている人は今後の目標を考えることが苦手です。今後の目標もなく学習や仕事に向き合っていればいつか行き詰まります。目標を持って学習や仕事に向き合ってもらうために、好きなことを実現する短期中期の目標や見通しを構築する支援をしましょう。
やる気や達成感の源である脳内物質のドーパミン・アドレナリン・セロトニンは睡眠によって調整されるので、睡眠時間を確保する手立てが必要です。最初は薬の力を借りて睡眠をしっかりとり生活リズムを整えることも可能なので、医師に相談してみましょう。

学習性無力感の原因は完璧主義、生活の乱れ、目標の未確立、つらい経験の4タイプがあります。また、学習性無力感になると意欲が低下して挨拶や発言をしなくなり、周囲からだらだらしていてサボっているように見えます。学習性無力感の人には、叱咤や激励よりも成功体験を積み重ねられるように工夫し支援しましょう。

プログラミング教育

2020年から小学校でプログラミング教育の必修化が発表されました。
プログラミング教育の必修化を推進する背景として、Webエンジニアをはじめとする情報技術(IT)者の人材不足があります。調査によると、2020年に37万人、2030年には79万人のIT人材が不足すると予測しています
2015年に総務省の調査研究によると、2013年以降から子ども向けのプログラミング教室が増えているそうです。
そして、IT人材の不足に対応するため、総務省は2025年までにIT人材を新たに100万人育成する方針を発表しており、プログラミング教育が推進されています。保護者の反応としては、プログラミングを実際に勉強した人はプログラミング教育の必修化に賛成し、自分の子どもにもプログラミングを勉強させたいと思っているようです。
このブログでも書きましたが、マインクラフトもプログラミング教育として役立つと掲載しましたが、他にも実際にロボットを動かしたりと様々な企業が参入して面白い教材を開発しています。少なくない放デイの事業所もマインクラフトやプログラミング教育を導入しています。今後10~20年で、私たちの知っている半分の職種がAIで動く機械にとってかわられ、新しい職種が生まれるといいます。私たち大人も産業再構成に柔軟に対応していく必要がありそうです。

保育所等訪問支援事業ーその2

かなり前に保育所等訪問事業を当事業所で実施しているとアナウンスしました。先日も連携先の施設参観や懇談を行いました。保育所・小学校・中学校と大きくなればなるほど支援関係先が増え、お互いに情報をいきわたらせるだけでもかなりの労力を割きます。というか、同じ情報を共有していなければ連携などできないといっても過言ではありません。そして、大勢の方たちのスケジュールを合わせて会議設定をして支援の方向性を出していきます。会議というのは結構コストがかかる代物です。人件費×人数×時間ですから多ければ多いほどコストがかさみます。保護者のオーダーで訪問事業者には支出されますが、残りの部署の各自は全額持ち出しですから、受け手の善意で成立しているといってもいいでしょう。もちろん訪問を受けることで各部署にも専門的な知見や技術が提供されるメリットがあるというのがこの事業の建前です。

さて、保育所や施設の場合は直接介入して「こんなふうに工夫します」と構造化支援や視覚支援ツールを使ったりや感覚統合アプローチなどを実際の子どもにやらせて、スタッフに見てもらって理解を促すことができますが、大きくなるとなかなか他の現場に実際に介入することがむつかしくなっていきます。第一に、当事者の思いがあります。また周囲の子どもや職員の理解や感情にも配慮していくことになります。そういうわけで高校までの支援ではありますが、だんだんお互いの情報を共有してベターな支援策をお互いに見つけていく支援会議の比重が重くなっていきます。このシステムは福祉だけでなく教育分野で準備しているところが多いですが、地域によって格差があります。

もともと、保育所等訪問支援事業は年齢の小さな子や障害の重い人でも工夫によって通常の環境に適応させていくというインクルージョン志向から始まったものです。つまり、児童発達支援事業や放デイを推進することはエクスクルーシブ(障害者の囲い込み)じゃないのかという声にバランスをとった政策と言えなくもないのです。実際には子どもを預かっているところが発達支援のイニシアティブをとるのは当然です。従って支援に必要な経費もスタッフの専門性維持の何もかも相談支援事業者には執行の権限がないなかでどれくらいのパフォーマンスが実現するのかは、双方の相性や条件次第というところかもしれません。

ただこの事業のいいところは業種を超えて知恵を集めてチームで子どものために頑張ろうというところだと思います。当然家族も含めてです。

声のメータ表


不必要に大きい声で話したり、または逆に全く聞こえない声で話したりする子が少なくない当事業所では声のメータ表を掲示しています。
事業所100m前から来たな!とわかる声もあれば。1m隣でもこちらの耳の老化のせいもあり聞き取れない小さな音量もあります。
でも、視覚で確認できれば自分はどのくらいの声で話したら良いのかがわかるようです。イラストにしていまの声はこれくらいかなと示せるようにしてあります。
「0」が心の中
「1」が隣の人
「2」が4、5人のグループ
「3」が部屋全体
「4」が屋外
数字で表すととても具体的で子どもにも分かりやすいです。実はこの課題に取り組んでいる方は結構いて、「アリからライオンの声」までで表現したり「円の面積の大小」示したりいろんな工夫があります。筆者が困るのは声の大きさは丁度よくても、早口で声のトーンが上がってしまいキーキー声になる方がいるのです。これにはどんなレベルメータがいいか思案中です。

 

対人関係を調整することの難しさ

ASDの人たちに共通する特性の一つに対人関係を調整することの難しさがあります。特性の強さや現れ方は子どもによって違いがあり、ある特性が特に強い場合や、成長に従って特性が変化することもあります。

ASDの子どもは、他者との関わり方やコミュニケーションの取り方が変わっていることがあります。相手の気持ちや状況といったあいまいなことを理解するのが苦手で、字句どおりや状況に関係なく理屈だけで判断したり行動をとる傾向にあり、臨機応変な対人関係を築くことが難しく、誤解されたり相手を誤解したりすることが少なくありません。

表情や話しぶり、視線などから相手の気持ちをくみ取ることができにくいので「暗黙のルール」がわからず孤立しやすいです。受け身過ぎたり、一方的過ぎるなど、双方向の対人関係がうまくとれない人もいます。
表面的な会話だけでは問題はないのですが、場の空気を読めないなどの特徴のために周囲の人のひんしゅくを買ったりすることがあります。普通に話しているつもりなのに相手を不愉快にさせたり、怒らせてしまったりするので友達ができにくい人もいます。

この特性のために本人は「生きづらさ」を感じることもあります。一方で、「人の意見にぶれずに課題を遂行する」などの形で、特性がむしろその人の強みになることもあります。「高い記憶力」や「好きなことへのこだわり」といった特性を発揮して仕事や趣味で充実した生活を送っている方もたくさんいます。だから、その子がもって生まれた個性と理解して、「生きづらさ」を軽減しながら得意なことを伸ばす支援が大切です。

筆者がよく経験するのは、ASDの方が緊張をされている環境の中では対人理解に誤解がよく生じます。先生から、友達から、上司からひどいことを言われたというものです。また、誤解された相手は「そんなひどいことは言った覚えがない」と憤慨されます。相手方の言われた内容をよく聞いてみると、通常の関係なら善意の励ましや激励、正確な理解を促すための説明となるのですが、聞き言葉をうまく処理できにくい方や中心的な趣旨をつかみにくい方なら、誤解するかもしれないなと思うことはよくあります。

こんな時に言った言わないについて第3者が介入すると、水掛け論どころか火に油の場合もあります。言った言わないは保留して、あの環境下では誤解が生じやすかったのだという認識を双方が持つことが大事ではないかと思います。どちらも悪意はない。善意で話しあったけれども、双方の真意は届かなかった。届かなかったものは今届ければいい。今後はこういう解決方法を取ればいい。と未来志向で向かい合って話し合うことが必要です。第3者はどちらの肩も持たず、誤解があったこと、誤解ならば解く必要があること、次回はこうすればうまくいくという支援が大事だと思うのです。

 

慣れる?

うまくいかずに困っている子どもを見て、よく大人は「そのうち慣れるでしょう」と言います。慣れるとは、大辞林を引くと

①たびたび経験した結果、当たり前のこととして受けとめるようになる。なれっこになる。 
② 何度も経験してうまくできるようになる。習熟する。 
③ 接触する機会が多く、心理的な隔たり・距離感がなくなる。
④ 体になじんで具合がよくなる。
⑤ 動詞の連用形や名詞の下に付いて、何度も経験して具合がよくなる意を表す。 
⑥ なじんで打ち解ける。
⑦ 着物が着古されてよれよれになる。 

つまり時間が解決するということでしょうか。けれども時間をかければなんでも慣れるでしょうか。嫌なことが毎日毎日繰り返されたり、意味のわからないことが繰り返されたりすることに人は慣れるでしょうか。

仮に今努力が必要だとしても、将来の見通しがあれば頑張れます。でも慣れるというのは努力した結果とは少しニュアンスが違いませんか。慣れるというのは、自然にだんだんと適応していく意味合いが強い言葉です。でも、自然にと言うのはいずれ誰が説明しなくてもわかるとか、いずれ普通にできると言う意味合いで。いつまでたってもかなりの努力を必要とし、持てるパワーの半分以上を消費してしまう様子ならそれは普通の状態では無いです。

ここらを混同して使う大人が結構います。意味がわからなくて混乱状態の子どもを前にして慣れるだろうと根拠ないことを言ったり、かなりの努力をしていつバッテリー切れを起こすかわからない状態なのに、できているから「慣れてきただろう」と言うのです。要するに子どもの内面が見えていないのに、「慣れた」という言葉を使って子どもの内面に関する思考を停止してしまうのです。

子どもは子どもで、みんなは自分よりはるかに努力をしているからできるんだ、自分はダメな人間だと思ってしまうのです。他の子は自然にできていくだけなのです。すなわち慣れたのです。その子にとって特別な努力をしないとできないようなことに慣れるという言葉は使ってはいけないですね。

宿題と学習時間

筆者が小学校の頃は先生によって宿題の量はまちまちだったみたいです。「みたいです」というのは、最後まで宿題をやったためしがないのでおそらくそうではなかったかという話です。今はほぼマニュアル化されていて先生によって大きく違うことはないようです。文科省が出している宿題の目安として(引用資料探せませんでした)、「学年×10分」です。1年生なら10分、6年生で60分です。はっきり言って短いです。でも、平均より学力の低い子を目安にこの程度と言われています。小学生段階だと、家庭学習の「習慣」を身につける練習にはこれくらいということでしょうか。

ただ、学力は量だけで決まるものではなく質だと言われる向きもあります。平均的高学年の子どもが学習を持続できる時間は50分程度といいます。そのうち完ぺきに集中できる時間は平均15分程度らしいです。だとすると、集中できる15分間に何の学習をもってきて、それ以外の時間にはどんな学習を持ってくるのか考えておく必要があります。漫然とドリル学習をさせるだけではもったいないということです。

ここまで読んでお気づきの方もいると思います。同じ子どもが向かっている学習時間ですら時間帯によって質が違うとすれば、違う子どもならさらに違いが生じるはずだということです。子どもの特性をよくつかんで宿題を開始する時間、内容の順番、今の宿題の学習量や質が子どもに適しているかどうかは家庭で組み立てたり見てあげるしかありません。小学校の宿題は子どもが大きくなって家庭で自学自習の習慣とその自信を子どもにつけるために行うものだということです。

 

アセスメント

当事業所が発達検査を実施しているのは「読み書き障害」のところで掲載したところです。当事業所が実施しているのはKABC2という最新の理論に基づいた検査です。この検査は子どもの認知力と学力の両方を見る検査です。WISC4などほかの検査は認知力しか見られないので実際の読み書き計算の力がはかれません。ただ、認知と学力の両方を検査するので2回に分けないと子どもが疲れてしまうという課題はあります。

アセスメントは、医師がおなかが痛いのに頭痛薬を出さないように、療育者もどこが課題か把握してから療育を進めた方が最短距離で結果に到達できるからです。もちろん検査なんかしなくても、長年の勘で子どもの課題を見つけて支援を考える方もおられますが、今はチームで支援するのがあたりまえですので、誰もが根拠に納得をして支援を進める必要があります。誰もがというのは支援を受ける本人も家族もさしています。

検査はするけど、検査結果を口頭でしか報告しないとか、報告すらしないという検査者がいるそうです。こういう方は、病院で検査をして結果表を病院が見せてくれなくても、医師が数値をもとに診断しなくても大丈夫なんでしょうか。みなさん「数値が独り歩きする」と言って「親が数値だけで子どもを見てしまう」と報告されないのですが、それならあらゆる統計値で構成された天気予報も保険料も認めないのでしょうか。天気予報が外れたと訴える人はいないでしょうし、保険の生存率や事故率を認めない人もいません。統計値を確率として了解しているからです。

とういうことで検査根拠に基づいた支援をしてほしいとご希望される方はスタッフまでお知らせください。

 

みんなでお出かけしたい。福祉車両が欲しい

当事業所は職員の自家用車を事業対応車として保険に入り送迎の運用をしています。自宅の送り迎えはそれでいいのですが、みんなでお出かけするときは小さな車だと分乗となり車内指導がむつかしかったり運転手が余計に要ったりで効率が悪いのです。10人乗り車なら子どもを一気に乗車させてみんなで移動できます。車内指導も容易です。

さらに、福祉車両なら車いすも乗ったままでそのままリフトやスロープ・ウィンチで乗車できるのでみんなでお出かけできます。また、車いすの方の乗降介助は窮屈な姿勢で介助されるので、精神的にも肉体的にも当事者が一番負担なのです。

でも福祉車両は例えばワゴン車なら400万近くしますし軽自動車でも150万を突破します。これを2台買うとかなり厳しいなと唸っています。そこで、あちこちの助成団体を見て申し込もうと思っています。だいたい価格の6割程度は助成してくれるそうです。しかし、車屋さんに聞くと当選の確率はこの地域では1~2割だそうです。でも申し込まなければ何も始まらないので書類の山と格闘することにします。がんばります。

西陣麦酒プロジェクト

昔、作業所で作ったアクセサリーを買ってほしいと会合で現物が回ってきたことがありました。皆さんは好意的に購入されていましたが、現物は販売品質のレベルには達していませんでした。材料費だけでも回収したいというスタッフの気持ちはわかるのですが、それなら正直にカンパをお願いしたらどうかと思ったことがあります。これは作業所の利用者のスキルの問題ではありません。経営者や職員がこの商品から製作に関わった利用者がどのように購買者にイメージされるか想定できたかどうかの問題だと思うのです。

前回(4/20)掲載した「西陣ビール」の続報が京都新聞6/11に掲載されました。「おいしい」「かわいい」「背景ストーリに共感」と言われ他の地ビールより割高でも取引されているそうです。商品は欲しいと思われてなんぼだと思うのです。おいしい!かわいい!がバズり(流行り)、そのことで製作にかかわった人たちが身近に感じられるように、経営戦略を立てることは会社だけでなく福祉の事業所にも求められていることだと思いました。

https://www.762npo.jp/

家事労働

子どもたちにお家で何のお手伝いしてると聞くと、たいがい「ふろそうじ」とか「食器下げ」です。昔は新聞取りとか牛乳取りとかあったのですが時代の変化で廃れたようです。

子どもは、お手伝いから多くのことを学び成長します。でも、お手伝いをやらせればいいというわけではないし親がどのように対応するのかが重要です。子どもは基本お手伝いをするのが好きです。子どもがお手伝いしたいと思う気持ちは、子どもが心身ともに成長しているからです。自分の力を試してみたいという意欲の表れでもあります。
自分からやりたいと言わない子どももやりたいと思っているかもしれません。「これをするの、一緒に手伝ってくれる?」と、声をかけてみましょう。一度にたくさんのお手伝いを頼まないように気をつけてください。お手伝いが嫌いになります。子どもによって、また、内容によって、子どもだけに任せる場合や、お母さんやお父さんと楽しんで一緒にやることもあると思います。


お手伝いは基本ほめましょう。子どもはお手伝いしたことをほめられると、また頑張りたくなります。失敗しても決して叱ってはいけません。少々のことには目をつぶり、大目に見て、やってくれている気持ちを尊重しましょう。たとえば浴槽洗いで子どもの洗い方が不十分な場合でも、その場で注意し、スポンジを奪い、親が子どもの目の前で洗い直すということは決してしないでください。子どもの自尊心を傷つけます。まずは感謝の気持ちを述べ、洗い直したければ、あとで子どもに気づかれないようにこっそりすればいいのです。次の機会に、親子で一緒に洗いながら「この角っこのところ、とくに注意して洗おうね。ヌルヌルが残っていないか、指でキュッキュッと、確かめてみるといいよ、そうそう上手上手」と教えてあげましょう。


子どもは、お手伝いしたことを感謝されることにより、人の役に立ててうれしい気持ちを実感し、また、最後までやり終えた達成感から、自分に自信を持つようになります。そして自分の判断で行動できる子どもになります。子どもはお手伝いからたくさんのことを学びます。どうやったら早くできるのか、どうやったらうまくいくのかを考え、工夫します。家族の一員として何か役割を与えられると責任感が芽生えます。
お手伝いは、子どもに任せるお手伝いもありますが、親がやっていることを一緒に手伝ってもらう場合もあります。親と同じことをすることで一体感が生まれ、いつもは話さないことも語ってくれるものです。子どもの方からあまり語らない場合は、親の方から子どもの頃の話など色々と話すと、子どもは共感し、心を開き自然と語るようになります。お手伝いをさせないで育ててきた子どもに、大きくなってから急に手伝わせようと思っても難しい話です。幼稚園や小学校など小さな頃からお手伝いの習慣をつけると自然に仕事が好きな子どもに育っていきます。

花粉症

昨日、すてっぷに来てから鼻水がずるずる出てくしゃみ連発なのでこりゃなんかのアレルギーだと思っていたのですが今日は何ともないのです。周囲を見回してみるとヒノキがありました。隣の庭のヒノキの花粉が風で飛んできて1本だけなので全部飛び散ったのかしらと推測しています。この時期はブタクサというイネ科の花粉とヒノキ花粉のアレルギーが多いといいます。

花粉アレルギーでアナフラキシーショック(アレルギー反応によって急速に、皮膚、呼吸器、消化器など複数の臓器と全身性の症状で生命にかかわるような状態)になる人もいるのでアレルギーといえども侮れません。最近はDNAレベルで治療するDNAワクチンが治療用にならないかと研究が進められています。

アレルギーには花粉だけでなく食物やペットの毛、化学物質、ホコリ、金属と挙げればきりがないです。なぜこんなにアレルギーが増えてきたのかは、ざっくりいうと人間の文明が進化したためです。古来人体が防護してきた微生物や細菌の防御機能が、清潔環境では感染がおこらず他のもので反応するようになるからだ(1989年イギリスStrachan博士)と言われます。

同じようなことはいろんなことで言えそうです。社会性の発達についても失敗がない子は後でしんどい目に合うと言われるようにです。ただ、だからと言って重篤な感染症にかかるのは予防する必要がありますし、病弱者なら些細な感染症でも防ぐ必要があります。同じように、重大な失敗体験が予測できるなら予防する必要があるし、子どもの特性によっては些細な失敗も重大なトラウマになってしまうこともあります。

要は一人一人の子どもの的確な見立て(どの程度の失敗なら大丈夫か)と、明確な支援策(失敗のリカバリー方法)を大人が持っているかどうかにかかわっています。これって、最近のアレルギー治療、つまり的確なアレルゲン特定と減感作療法(徐々に慣らす治療)によく似ています。

習い事型放課後等デイサービス

放課後等デイサービスについては以前掲載しましたが、前回は施行初期の頃の意義や厚労省が掲げたことをそのまま説明しました。しかし、実際は一言に放課後等デイサービスと言っても、取り組みの内容や一日の過ごし方など、施設によってかなりの違いがあります。
施設ごとの特徴としては次の4タイプ、もしくはそれらの混合があるようです。
A.生活型 B.療育型 C.お勉強型 D.運動型 
CDは習い事型といってもいいかもしれません。

A.生活型
ゆったり過ごせる雰囲気を大切にした放課後等デイサービスのことです。「それ、家でよくない?」と思うかもしれませんが、発達障害のある子は、人間関係を築くのが苦手な子が少なくないです。「他人に興味がない」「人の気持ちがわからない」という子には、生活型でゆったりと人とのかかわりを学んでいけます。
もちろん適切なかかわりを促せる大人の存在が必要なので、障害特性や支援のノウハウをスタッフが身に着けているかどうかでサービスに大きな差が付きます。
「学童保育」に近い内容、おやつを食べたり、宿題をしたり、友達と遊んだりするだけの場所なのですが、そういう「学校が終わった後に障害のある子も友達と遊べる場」という内容は最初に放デイに求められた社会的役割です。
また、親もスタッフと子育ての悩みや将来の不安などを相談できるという保護支援の観点も前回書いたところです。

B.療育型
療育型の放課後等デイサービスでは、子どもの発達支援に特化した取り組みをおこなっています。そのため、OT(作業療法士)やST(言語聴覚士)、PT(理学療法士)や心理士、音楽療法士などの専門スタッフが在中し、子ども一人ひとりの特性に合わせたカリキュラムを設定します。■感覚統合(バランスボールなど)■自立課題(弁別・マッチング・組立課題など)■自己理解 ■ソーシャルスキルトレーニング ■リラクゼーション訓練 ■日常生活動作訓練(ボタンの付けはずしなど)■学習支援(鉛筆の握り方など)■絵カードによることばの支援(理解・表出)■発音の訓練 ■基本動作の訓練(座る・立つ・歩くなど動作の維持・向上)■変形・拘縮の予防■姿勢の調整・管理 などを個別か小集団で取り組みます。
就学後の発達障害児が療育を受けるとなると、各自で専門の病院に通ったりする必要がありますが、このように放課後等デイサービスで療育をおこなうというのが特徴です。ただ、その分とても人気がある施設なので、かなりの数の待機児童がいます。

C.お勉強型
放課後等デイサービスの中には、■学力補充 ■英会話 ■ピアノ ■パソコン(プログラミング) ■ダンス などの個人レッスンを、本人や保護者の希望によりおこなってくれるところもあります(多くは時間制のようです)。発達障害児の場合、なにか習い事をさせたいと思ってもその環境(人の多さ・一斉指導など)に苦手感が出てしまい通えないという子も少なくないかと思います。「興味の幅を広げてやりたいけれど、一般的な習い事に通わせるのは敷居が高すぎる」と感じている方にニーズがあるようです。

D.運動型
お勉強型と同じように運動に力を入れた施設もあります。運動は、発達障害児の心身の成長にも良いので結構ニーズがあります。スイミングスクールで「プールサイドを走り回り、プールに飛び込み、ルールも守らないので危険」という理由で断られた経験のある親は少なくありません。聴覚過敏がある子もいるので室内プール特有の音の反響でスイミングが苦手になった子どももいます。こうした事態を把握してスイミングに力を入れ室内プールを持っている放課後等デイサービスも存在します。他にも■体操 ■テニス ■卓球 ■フットサル などスタッフの得意なスポーツを取り入れているようです。「運動面を伸ばしてやりたいのだけど、一般の習い事やスクールには通えなくて…」という方のニーズをくみ取ったのが運動型の放課後等デイサービスです。


ステップは生活型と療育型の混合を目指しています。様々な年齢、様々な違いのある子ども達が、スタッフの支援を受けつつ助け合ったりぶつかり合ったりして社会性が育つように取り組んでいます。また、子どもたちの自立性を高めるために構造化支援(視覚支援)を行い個別学習に取り組んだり、表出のコミュニケーション支援として個別指導を行っています。私たちは、社会性と自立性は多様な個性を基盤としながらも表裏一体なので日常生活の様子を把握してこそ生きた療育ができると考え、このAB混合型を選択しています。

CやDの習い事型は、このサービスの発足当初は想定されていなかったと思います。民間に任せれば、子どもを放置してビデオ・ゲーム漬けの悪徳放デイが出る一方で、利用者目線で痒い所に手が届く新しいサービスが生まれたのだと思います。障害のない子には学童保育も塾も習い事も家庭収入の差はあれども選択が可能です。やっとその選択の可能性が障害のある子にも広がってきたのだと思います。公立だから良くて民間だから劣るというのは間違いだと思います。利用者ニーズにこたえる公正な競争は良いサービスを生み出していくと期待したいと思います。また、そこに働く人々の労働条件や賃金も向上するようにバランスの良い業界の成長を期待します。

地震対策

先日、新潟で震度6強の地震があり驚きました。東北地震は日中でしたが、真夜中や明け方が多い気もします。もしも日中放デイの時間帯に地震が起こったらどうするか避難計画を検討しています。この建物は軽量鉄骨製ですから、家屋が傾くことはあっても倒壊はしません。ただ周囲は木造家屋が多く夕食前などは火災が心配され、北側の家屋が火災を起こすと避難が必要かもしれません。

すてっぷの前は狭い市道ですが、もう一本南側は外環の府道が走り東側は171号国道ですので信号停電による大渋滞や渋滞から逃げる車が前の道をたくさん通行することが予想され徒歩による避難所=向陽高校(徒歩5分)への避難には注意が必要かもしれません。被災程度によって避難所で過ごすか火災などがなければここで過ごすのが妥当かの判断が必要になります。

電話が通じなくても最後までネットは通じるので、このホームページやSNSなどで被災状況を発信します。保護者の皆さんはホームページやツイッターのチェックをお願いします。(現在、ツイッターでの発信はしていませんが、重大地震が起これば #すてっぷ地震 で検索してください)

こうした児童福祉施設の災害」による非常事態の対策は、非常災害対策計画として厚生省令でガイドラインが示されていますので興味があればご覧ください。計画が確定したら保護者の皆さんにも配布したいと思います。

不注意や集中しにくいADHD症状の治療(緩和)薬について

ADHDやASDの子どもの中に、勉強に向かうのにとても時間がかかったり、机に向かってもすぐに集中できなくなって他のことに興味が行ったりする子どもがいます。本人がとても好きな事でも、少し細かな作業や集中を要する内容があるとすぐに疲れてしまい、大人に代わりに作業をして欲しがったり、興味のあることなのにあきらめてしまうケースがあります。周囲には、「辛抱ができない」とか「あきっぽい」とか思われてしまったり、本人も「自分は皆と同じようにできなくてだめだ」と思い込んでいます。こうした子どもには、何をどれくらいすべきか視覚的に示したり、周囲の環境を調整して気が散らないようにしてあげたり、本人が集中できる時間を計測して学習や作業は短時間で休息を入れたインターバル構成にしたり、いくつか他の内容をするように設定してあげたりします。しかし、それでも本人の気が散って本来の能力が発揮できない場合や、自尊感情を失って意欲がない場合などは、服薬の力を借りて取り組みやすくしてあげることが必要な場合も少なくありません。ここでは、著しく不注意や気が散って集中しにくい子どもへの服薬について正しい知識を持ってもらうために、いくつかの資料からまとめてみましたのでお読みください。

コンサータ
鎮静効果があり、多動傾向や衝動的な行動を軽減することが出来ます。この事により、学校生活や仕事に集中することができ、生活にメリハリをつけることが出来ます。効果が出るのも比較的早く、服用をはじめて1週間以内にその効果があらわれます。効果時間は服用後、10~12時間継続し、1日1回(朝)が基本となります。最も多かった副作用としては、食欲低下で、不眠、頭痛と続きますが、副作用の有無は子どもによって違います。

ストラテラ
コンサータと同様に集中力の向上や多動傾向や衝動的な行動を軽減することが期待出来ます。ストラテラは即効性はなく、服用開始から効果が出るまでは約2週間かかり、安定した効果が得られるまでには6~8週間程度必要となります。ストラテラの効果の持続時間は服用から24時間です。子どもの場合は1日2回(朝・夕)が推奨されています。内用液剤もあり、カプセル剤が飲みにくい子どもにも飲みやすい物となっています。副作用の強さとしてはコンサータよりも軽く、副作用が発症しても2、3日で治まります。

インチュニブ
インチュニブはコンサータやストラテラと違い、小児用(6~17歳)のADHD治療薬として開発されました。効果自体は、コンサータやストラテラと同様に多動性、不注意、衝動性の症状を和らげる効果があります。服用開始からインチュニブの効果が出るまで期間は1~2週間であり、効果の持続時間は24時間です。服用は1日1回です。副作用として多いのは傾眠(うとうとする)で、血圧低下、頭痛と続きます。

ビバンセカプセル
2019年3月26日に日本で承認された新しい薬ですが、覚醒剤原料の規制対象となっていますので管理が厳しい薬です。小児にはリスデキサンフェタミンメシル酸塩として30mgを1日朝1回服用します。副作用は食欲減退(79.1%)、不眠(45.3%)、体重減少(25.6%)、頭痛(18.0%)、悪心(11.0%)などが報告されています。

効き目も副作用も個人差があり、人によってはほとんど効果がないものもあります。服薬の目的は「日々の生活を不自由なく、落ち着いて暮らせるようになる」ということと、学習は分かれば達成感のあるものだと感じてもらうことです。精神科が扱う薬だから不安だという感情をお持ちの方もおられますが、いつまでも処方するものではありませんし、服薬している多くの子どもたちが楽に過ごせているのも事実です。薬で無理に子どもを落ち着かせるという認識ではなく、また、効果について過度の期待もしないというスタンスが大事です。生きやすくなる手助けをするための「いくつかの中の一つの手段」として服薬があるということを理解することが大切だと思います。もしも、不注意の診断や治療を考えたい方があれば近隣の医療機関もご紹介できますのでスタッフまでご連絡ください。

あさイチ「どう向き合う? 思春期の発達障害」

今日の朝のEテレで、あさイチ「どう向き合う? 思春期の発達障害」の放映がありました。思春期になると、周囲との違いを意識することで、生きづらさを感じることも多いですが、なかには発達障害が引き金になっていることもあり、周囲にはどんなことができるのか考える企画です。

ASD専門医の大御所でもある信州大学の本田秀夫先生の最初のお話は、発達障害は大人から見て変に見える事を基準に診断している面があるけど、大人からは見えていないけど、独特な感じ方や考え方をしている子ども達が思春期になってくると悩みが表面化するということでした。

通信制高校に通う女子は教室の明るさに疲れて授業が受けられなくなっていました。光過敏のASDの特性をよく知る専門の先生が、暗い部屋に導いて何故彼女が苦しくなったのか今後どういう配慮をすればいいのかを相談にのっている様子が流されました。人との煩雑な交流を配慮した通信制高校ではあったけど感覚の問題も見抜いてくれる助っ人がいるなんてすごいなぁと感心しました。

二つ目は、読み書き障害の書字障害のために字を書くと頭が混乱して勉強ができなくなるという中学男子の話です。彼の訴えを中学校が理解してくれてPCでのキーボード入力を認めて(?)くれ安心して教室で授業に向かえるようになったそうです。ただ、気になったのは、彼はわざわざ自分の書字障害をクラスにカミングアウト(障害を自分から公開する)してクラスメイトから許容(?)してもらったという下りは、なんで自分でカミングアウトしないとパソコン入力如きが教室でできないの?と思ってしまいました。この程度の合理的配慮は学校の責務だからです。同じように感じたゲストからは、オーストラリアでは、教室でのPC利用は生徒全員が利用できるという話や、入学の最初に学校から生徒と保護者に向かって違う学び方をする人もいるから理解してほしいと説明するのが当たり前なので、みんな違う学び方をする人に違和感はないと発言されました。本田先生もPC利用はメガネと同じことじゃないかと助言されました。

最も心に残ったのは、発達障害の人たちに一番必要なのは好きなことを心ゆくまで仲間と楽しめる趣味の場の保障だという映像です。興味のあること好きなことをとことんやれる居場所を保障している東京のNPOでは、アニメの教室やボードゲームの教室で活躍している発達障害の青年を取材していました。好きなことだから難しくても追求できる、得意なことだから人にも教えられる、そしてそのことで仲間から必要とされている自分に気づき自尊感情を高めていくことができるという映像です。このブログでもすてっぷが、PCプログラミングでもカードゲームでもeスポーツでも岩石集めでも遺跡ほりでもなんでもいいから好きなことを見つける場になれればいいと書き続けてきたので、この放映はとても心強く感じました。

 

教育支援委員会

この時期は特別支援学校の学校説明会やら各自治体の教育支援委員会が主催する就学相談会が始まっています。自分の子どもはどんな教育環境が適しているのだろうとお悩みの保護者の方もおられるかもしれません。そもそもこの教育支援委員会は昔「適正就学指導員会」といういかにも上から目線みたいな名前がついていました。「適正」とは誰が決め、誰が誰に何の権限があって「指導」するのでしょう。やがてこの名前は時代と共に就学支援委員会という名前になり、最近は教育支援委員会という名前に衣替えしています。

前年度の半年ほどの期間で学校や学級を決める話をするのでは相談にも支援にもならないというのが名前変更の理由みたいです。もっと前から相談利用者と相談担当者が子どもを真ん中に置いてどういう教育をすればいいのかというやり取りを続け、その経過として学校選択や学級選択があり、義務教育が終了するまで相談員や関係者が伴走するような理想的なイメージで文科省のHPには説明されています。ただ、この相談に係るのは教育委員会の担当者と就学前施設の園長だったり学校の校長や関係職員の兼務が殆どです。就学だけでなく特支級入級や特支校への転学や中学校のことまで扱うので(本当は特支級から通常級への戻りも検討することになっています)、その相談数は長岡京市や向日市クラスの自治体でも半端ではない数です。文科省の言うとおりに長期間に何度も相談をするとなれば他の業務が滞ると関係者は言います。

虐待問題で児童相談所の職員数が少なすぎるという事を以前掲載しましたが、相談者の人手不足は特別支援も同じです。相談と名はついていますが、相談担当者と保護者の意見が違う時には説得担当者になってしまうと言う声も聞かれます。相談担当者にすれば人的配置の権限は行政にありますから来年度の職員体制を想像しながらの相談になるので立場は複雑です。また、相談から決定に至る期間が短いようにも思います。本当に相談してよかったと利用者に思われるにはまずは相談担当者にも時間的余裕が必要です。そして、利用者である保護者が結論を保留しているときでも、教育の在籍場所で教育内容が決まるのではなく、どこにいても可能な限り必要な教育サービス(例えば専門的支援の人員)が行われる財政的な裏付けが必要です。

では相談利用者である保護者はどうすればいいでしょう。一昔前よりははるかにましになったとはいえ、まだまだ特別支援に関する理解もその財政的な規模も先進諸国と比べれば不十分ですし、居住する場所によって地域格差もあります。居住地域の教育サービス情報を親の会などから仕入れ、まずは信頼のできる診断の専門家と支援の専門家を助言者にして子どもの特性や支援についての正しい知識を得ていくことが大事ではないかと思います。放デイは学校の行き先の相談はできませんが、子どもの特性のことやその支援についてなら助言はできます。ご希望の方があればスタッフまでご連絡ください。

ディー君

https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20190625000325.html

(ひと)ディー君 タイでAIプログラミングの一日塾を始めた日本人少年
2019年6月25日05時00分 朝日新聞デジタル より

まだあどけなさが残る少年は、人工知能(AI)に話題が及ぶと目つきが変わる。「AIは怖いものではなく身近なもの」
 バンコクで4月に始まった、AIを使うためのプログラミングを教える一日塾で、70代の高齢者も相手に手ほどきする「塾長」だ。
 こだわりが強く、集団生活になじめない発達障害の自閉症スペクトラムと診断された。5年前、環境を変えようと家族で日本から移住。AIの活動では本名を使わず、自ら愛称「ディー」で通す。タイ語で「良い」という意味だ。
 9歳のとき、父親を事故で亡くした。働き始めた母親の帰りを待つ退屈しのぎに、自宅マンションの共用パソコンで遊ぶようになった。我流で操作を覚え、画面が突然シャットダウンするイタズラができるまでに上達した。叱る住民はいなかった。「おおらかな環境が息子には合っているんだと思います」と母(55)は感謝する。
 パソコン好きが高じ、2017年に、孫正義氏が設立した育英財団の奨学生に選ばれた。AI開発会社グリッドからもネットを通じて東京から技術支援を受け、プログラミングの課題に取り組む。
 「10年以内に、世界の家庭でAIプログラミングをする時代が来る」と予言、自らの将来をこう描く。「塾の経験を生かし、タイのスラムの人々にAIの技術を出前したい」。その表情は大人びて見えた。
 (文・写真 大津智義)

大陸文化は個人主義が基本。多様な文化を持ち合う人たちが共生するには大事な流儀とも言えます。日本の独特の同調圧力の中で暮らすのが苦手な特性の人には、大陸文化の中で自由にできることで才能を開花する人も少なくないようです。

場面緘黙

場面緘黙(かんもく)とは、家庭なら話せるが学校のような「特定の状況」では声を出して話すことができないことをいいます。「家ではおしゃべりで、家族とのコミュニケーションは全く問題ないのに、家族以外や学校で全く話せないことが続く」状態です。この症状のために、本来持っている様々な能力を、人前で十分に発揮することができにくくなります。人見知りや恥ずかしがりとの違いは、「そこで話せない症状が何か月、何年と長く続くこと」です。人によって症状(話せない場面・程度)にはかなり差があります。

場面緘黙は、育ての方の問題ではなく、「不安症や恐怖症の一種」と考えられるようになってきました。「自分が話すことに怖れを感じる」人として支援を行なうのが主流となっています。発症原因は、『不安になりやすい気質』などの生物学的要因があり、そこに複合的な要因が影響していると考えられています。脳が新しい刺激に敏感に反応する「行動抑制的な気質」を元々もつというケイガン(Kagan 1989米)の仮説が有力です。不安が高まりやすく、行動が慎重となるため、環境に慣れるのに時間がかかります。10~15%の子どもがこの気質を持ち“その傾向は生涯続く”といいます。

入園や入学、転居や転校時などの環境の変化により、不安が高まって発症することが多いようです。クラスでの先生からの叱責やいじめがきっかけとなることもあります。一旦話せないことが続くと、「自分が話し出すとみんながなんていうだろう」など、注目されるような気がして強いプレッシャーを感じます。話さないでいる方が不安レベルが下がるため、この症状が定着するのではないかと考えられています。

場面緘黙を「家庭環境のせい」と考えるのは誤解です。過去の研究では「虐待」や「トラウマ」に関連付けられてきましたが、ほとんどの子どもには関係ないことがわかりました。学校の先生は「親の過保護のせい」と考えがちですが、子どもが人前で話せなければ親が心配そうにするのは当たり前ですし、親も不安になりやすい繊細な気質をもつ場合が多いので理解が必要です。親も周囲から「過保護」「心配し過ぎ」と言われて傷つき孤立しがちです。子どもの一番の理解者になれるのは親と先生です。親と先生が協力しあうことで、子どもへの必要な支援が始められます。

「必要な支援」を行ったうえで「子どもの成長の伸びしろへの手出し(過保護)」を控えることが大切です。症状改善や二次的問題予防には、親や先生、友だちなど、周りの人たちの「場面緘黙への理解」が大きく影響します。場面緘黙は、お医者さんや学校の先生から「大人になったら自然と治る」と言われることが多いですが、場面緘黙には、早期発見と対応が大切です。場面緘黙の子どもは、おとなしい子どもが多く、園や学校で先生が困るような目立つ問題行動がないため、支援を受けにくく、見過ごされがちです。自然に改善したように見える事例でも、事後検証すると、偶然、環境が治療的な設定になっており、本人の努力で治癒したケースも多いようです。支援を受けずに成長すると、症状改善が遅れるだけでなく、うつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が生じやすくなります。

場面緘黙の子どもは、自分でも自分がなぜ話せなくなるのかわかりません。それなのに、人から「なぜ話さないのか?」と問われます。周囲の理解やサポートがない幼稚園や学校生活は、緊張の連続です。腹痛や頭痛などの身体への影響、誤解や理不尽な扱いに、悲しみ、無力感、自責感、孤立感、自分への怒りが生じます。先生のサポートがなければ、いじめを受けるリスクも高くなります。話せないことから、社交スキルやコミュニケーション力の練習機会も狭まります。そのため、うつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が生じやすくなります。

場面緘黙は、「専門家だけで治せる症状」ではありません。家庭と学校が協力して、まず「安心できる環境」を調整することが最も大切です。研究では、不安が低い場面からスモールステップでチャレンジを進め、活動参加、動作、発話ができる場面を増やしていく行動療法的アプローチが最も効果的とされています。この方法は、「自転車の練習」と似ています。自転車に乗るのを避けていては、自転車はうまくなりません。逆に、いきなりロードレースに参加しても怖い思いをするだけです。補助輪をつけたり、人に支えてもらったりしながら、少しずつ怖くなくなるようにします。米国では、極微量のSSRI(抗うつ薬)で不安をさげて、このようなスモールステップと組み合わせる方法がもっとも有効と言われています。

大事なことは、話さないことを責めないことや、不安が高すぎる場面で発話を強要しないことです。答えが返ってこなくても、あたたかく話しかけてあげてください。返事は返せなくても、とてもうれしいと感じているはずです。筆談が出来る場合は、書くコミュニケーションを促しましょう。よく考えてみれば、私たちも緊張して声が詰まったり、頭が真っ白になることがあります。そんな時に何を言われても落ち着くまでは状況は改善しないことも思い出すはずです。その傾向が強いか弱いかの違いです。だとすれば、どの子にも傾向濃淡の度合いは違うがそういうことがあるはずです。つまり、発達障害の特性の濃淡の傾向と同じだという事です。

発達段階とあそび

前回は、習い事型放課後等デイサービスのことを掲載しましたが、今回は年齢別のニーズを考えてみます。小学校の低学年は体験型で、遊びながら考えていく段階ですが、高学年になると思考型で、計画してから遊びをデザインするように変わっていきます。集中時間も格段に伸びてきます。同じことを半日ぶっ通しでも平気になってきます。中学生はさらに価値観を計画に取り込みながら「いけてる」「ださい」と判断して遊びをデザインしていきます。これはもう趣味といってもいいレベルです。

このように、年齢によって遊び方は変わっていきます。これは別に、年齢別でないと遊べないというのではなく、各年齢のニーズを満たす内容が遊びに必要だという事です。例えば構成(役割)遊びや製作(ものづくり)遊びなどは、それぞれのニーズを満たす内容が準備されています。

しかし、遊びきるとなると、それぞれのニーズを満たしていく段階別に用意された遊びがやはり必要です。となると、放デイのありかたも年齢別に内容が変わってくるはずです。年齢が増すにつれて、専門的な事、普段はできないことを子どもは求めるようになっていきますし、このニーズにこたえることができない放デイは子どもの心が離れていきます。放デイの内容をデザインすることは子どもの発達のニーズに合わせていくことといえるのかもしれません。

ただ、対人サービスである限り子どもの信頼を得るのは内容だけではなく内容に導くスタッフの人格であるのはどんなところでも変わりはありません。

みんなの学校

「大阪市立大空小学校。大阪市住吉区にある公立小学校。2012年度の児童数・約220人のうち、特別支援の対象となる数は30人を超えていたが(通常学級数6・特別支援学級7)、すべての子供たちが同じ教室で学ぶ。教職員は通常のルールに沿って加配されているが、地域の住民や学生のボランティアだけでなく、保護者らの支援も積極的に受け入れた「地域に開かれた学校」として、多くの大人たちで見守れる体制を作っている。学校の理念は「すべての子供の学習権を保障する学校をつくる」であり、不登校はゼロ。唯一のルールとして“自分がされていやなことは人にしない 言わない”という「たったひとつの約束」があり、子供たちはこの約束を破ると“やり直す”ために、やり直しの部屋(校長室)へとやってくる。テレビ版「みんなの学校」の放送後には全国各地から、支援を必要とする子どもたちが数多く、校区内へと引っ越している。」

http://minna-movie.jp/

これは映画「みんなの学校」ホームページの掲載文です。この放送を見たとき、大阪出身の人は昔こんなクラスに自分もいたと思い出す人は少なくないかもしれましません。差別をしない教育として大阪のあちこちでこの風景はみられました。でもこの映画の感じとは全然違うと感じた人は多いと思います。差別禁止という考え方が先に立ち、子どもや先生たちの言葉がきれいごとで本音じゃない感じがあったのです。この映画を見た多くの人が感動をします。こんな学校であってほしい、こんな校長先生であってほしい、こんな職員であってほしい、こんな子どもたちであってほしいと思うのです。それは本音で子どもも木村校長も話すからでしょう。きれいごとを言わずに、現実は現実として受け止めながら人としての在り方を観ている人に考えさせるからかもしれません。正しい答えはないけど、正しい答えを探す努力を惜しまないところに感動するのかもしれません。まだ観たことがない方は上映会スケジュールが出ていますのでご覧になってはどうでしょう。

強度行動障害

強度行動障害とは、自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態のことを言います。
この定義に加えて、「家庭で通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい困難が持続している状態」という但し書きも付されています。つまり、精神医学的な診断(例:精神遅滞、自閉症、統合失調症)とは別に、さまざまな養育上の努力はしていても、行動面の問題が継続している状態に対して付けられる呼称が「強度行動障害」であるということです。

下に厚労省が示した障害支援区分に基づく行動援護の判定基準表があります。合計10点以上が行動援護の対象となる要件の1つとなります。

行動援護の対象が強度行動障害というわけではありませんが、強度行動障害と普通の行動障害に質的な境界線はないといった方が正しいと思います。強度と表現しているのは支援側の理由からです。自傷や他害、飛出や奇声は、またはその前駆症状と認められるような指示待ち等は、その程度に関わらず必ず同じ原因があります。少々の行動障害だから見過ごすというのは、困っている姿を見過ごすのと同じだと思うのです。

下記リンクの「強度行動障害支援者養成研修【基礎研修】」のテキストは支援者用に国立のぞみ園が作成したものです。今回は、このテキストに沿いながら、何故行動障害になるのかどんな支援が行動障害の予防につながるのか、連続シリーズで考えたいと思います。

http://www.nozomi.go.jp/investigation/pdf/report/04/05.pdf

 

その2:行動障害に有効な支援

上の図は、行動障害の人の支援を説明するのに定番で使われている資料です。有効な支援ベスト3は、1構造化支援・2コミュニケーション支援・3薬物療法です。やっかいなのは4番のキーパーソン(信頼できる人)ですが、大変曖昧な表現です。信頼できる人とはあくまで本人が決めるのです。信頼できる人とは、上位二つの支援を当たり前のように自然に支援してくれる人は必ず含まれているはずです。見通しのある環境を準備し、本人の伝えられる方法で言いたいことを聞いて周囲と折り合いをつけてくれる人がキーパーソンの条件だと思います。この二つのサポートを抜きにして、自分は信頼されているという支援者がいればそれは根拠のない妄想でしかないと思います。

しかも8割以上の有効票を得た上位2つと比べれば5割ですから、有効半分無効半分です。良いキーパーソンに当たるか当たらないかは裏表の賭けと同じ結果とも言えます。この結果からどうすれば行動障害が予防できるのかは明確です。そして行動障害の原因は何か次回に考えていきます。

その3:二つのコミュニケーション

行動障害の予防には原因を正確につかむことが必要です。この図は障害による二つのコミュニケーションの障害が行動障害の直接原因だとしています。そして環境要因としてのモノ・ヒト・コトが掛け合わされて長い年月をかけて積みあがり行動障害が形成されます。

さて二つのコミュニケーションと書きましたが、このブログをお読みの方はもうお分かりだと思います。

そうです。理解コミュニケーションと表出コミュニケーションの二つです。最近は、理解コミュニケーションは構造化支援や視覚化でずいぶん取り入れられるようにはなってきました。昔は絵カードなんて社会では使えないからと平気で言う方がおられましたが、さすがに影を潜めました。障害のない人でも記憶が定かでなかったり、すべてを知っているわけではないので書いてあるものを頼りにするのだから、聴覚入力や記憶がさらに弱い人なら視覚支援は当たり前だということがやっと広まってきたからです。

例えば以下の経験のない人がいるでしょうか。みんな物事を理解するために、忘れないために視覚支援という情報に大半頼っているのです。(1)カレンダーに予定を書き込んで、忘れないようにしていいる人。(2)《すべきこと》のリストを作って、机や冷蔵庫に貼っている人。(3)何がほしいかを伝えるときに、広告やメニューの写真を指さしたことがある人。(4)買い物に出かける前に、買い物リストを作る人。(5)「列に並んで下さい」、「入口・出口」などの標識を見たことがある人。(6)料理本のレシピを見ながら、食事を作ったことがあり、その料理を作る度に、そのレシピを繰り返す人。(7)家族への伝言を、メモに書いておく人。(8)レストランで注文を決めるとき、メニューに目を通す人。(9)子どもが歯磨きを忘れないように、チェックリストを作った人。(10)やるべきことを思い出すために、付箋紙に書いて鏡や玄関ドアに貼ったことがある人。(11)《イラスト入り組み立て説明書》を見ながら、買ってきた家具などを組み立てたことがある人。(12) 電車やバスに乗るときに、時刻表や接近情報を見る人。(13) 車を運転するときに、様々な道路標識や交通信号を見る人。(14) 新幹線や映画館で指定席に座るとき、座席の番号を切符を見て確認する人。(15) スーパーなどで買い物するとき、値札を見て買うかどうか考える人。あげだすときりがありません。理解コミュニケーションに障害があれば、もっと丁寧に支援するのは当たり前だと思います。

二つ目のコミュニケーションは最も大事なコミュニケーションです。表出のコミュニケーションです。どんなに周りのことや大人の言うことが理解できても、何も伝えることができないとすればあなたならどんな気持になると思いますか?それが毎日毎日です。永遠にその感じが続くとすればどうでしょうか?周囲のことが少々理解できなくても、自分から伝えることができれば大体のことは解決できると思いませんか?

明日は表出のコミュニケーション障害と行動障害について考えてみます。

その4:表出のコミュニケーション

前回の二つのコミュニケーションで重要なのは表出のコミュニケーションだと述べました。ただ、表出のコミュニケーションと言えども誰にでも伝わるものでなければ役に立ちません。また、自発的に使えないと肝心な時に役に立ちません。

言葉での表出は、発声機能に問題がないこと、言語処理機能に問題がないこと、聴覚的短期記憶や長期記憶に問題がないことが前提です。身振りはどうでしょう?身振りはそのサインを模倣できる力や相手にもそのサインが何をさすかがわかる必要があります。絵や写真はどうでしょう?相手にものを渡せる機能と、絵が現物を表現する方法だと分かればだれでも使えますし、誰でも伝わります。つまり、意思伝達に絵カード表現は最短距離で到達できるということです。

二つ目に大事なことは、表出コミュニケーションの自発性を獲得していることです。私たちは用もなく話しかけることはほとんどありません。必ず目的があります。ところが、行動障害の方は、相手に自分から情報を与えて目的をかなえる、「自発的」な表出コミュニケーションが困難な方がほとんどなのです。

また、日常相手が黙っていると「どうしたの?」と私たちは声を掛けます。「どうしたの?」は、「何か欲しいの?」「どこか痛いの?」「何か気分が悪いの?」「何か困っているの?」「何か助けがいるの?」等の意味です。自発的な表出に困難がある人は、「どうしたの」が聞かれなければ何も表出(言えない・身振りできない・カードが示せない)人が多いのです。中には何か言ってほしそうにじっと相手の顔を見つめる人もいます。これが「指示待ち」です。つまり「どうしたの?」や「~してね」を待っているのです。

相手が自分に話しかけたり相手が自分にはたらきかけたりして、初めて伝えるもの、初めて行動を起こすものという理解をしている方が大変多いのです。この状況を想像してみてください。自分の要求を叶えるために相手が自分に話しかけてくれるのを四六時中ずっと相手の様子を見守り待つのです。万が一、話しかけてくれたにしても表出スキルが低くかったり相手の理解力が低かったりして上手く伝えられなかったらまた待つのです。実力行使する行動障害の人たちの気持ちが分かります。

適切な意思伝達は自分から起こすものだということを理解してもらうには、適切なコミュケーションスキルで意思伝達ができ要求が叶ったという経験を蓄積するしか方法がありません。日常場面では、スキルを教えるよりこの自発性を教える方がはるかに難しいと感じています。それはある程度のコミュニケーションの成功体験の回数が必要だからです。その人にもよりますが、1日100回を超えなくては文字通り話にならないと思います。つまりその人が便利だと気がつくまで生活のあらゆる場面で経験が蓄積される必要があります。

その5:丁寧にひとつずつ

私たちは表出言語を教えられた経験はありません。自然に覚えたからです。行動障害を起こしていたりその可能性のある方に表出のコミュニケーションを教えるにも自分の経験がないのです。人は自分の経験にないことを習得するにはそれなりの時間がかかります。スポーツの経験のある方や習い事をされた方ならわかると思います。さらに、人に教えられるようになるには普通にできる人より深く広く熟知する時間が必要です。

サイン言語の研修会やPECSの研修会に行って少し職場でやってみたけど子どもがうまく反応してくれなかったり成果が出なかったりして、周囲からもなんとなく疎まれている感じがしてあきらめてしまう支援者は少なくないと思います。成功している方は、家庭でも現場でも長く粘り強く取り組んでいる方です。人の発達を考えても、自発のコミュニケーションの基礎が完成するまでに10か月から18か月かかるのです。焦りは禁物です。あの手この手の工夫も必要です。

子どもが自発の表出コミュニケーションの扉を開けると驚くような速さで表出コミュニケーションを吸収していくのも事実です。言葉の獲得まで進む方もいます。言葉があったけれどもうまく使えなかった人も適切に会話ができるようになる人もいます。

この道のりを試行錯誤で切り拓いたのは100年前のヘレンケラーとサリバン先生。今日、表出コミュニケーション支援が最も体系化されエビデンス(科学的根拠)が確認されている方法は、PECS以外に私たちは知りません。ただPECSも細部にわたって万能ではないし人はみな個性があり違います。一番大事なことはその人が好きなことをたくさん知っていることです。先にも述べたように私たちは表出のコミュニケーションを「教えられた」経験はありません。だから私たちも表出のコミュニケーションの学習者です。行動障害を予防し強度行動障害を軽減するコミュニケーション支援は、子どもたちに並走しながら地道に学んで伝えて、一歩一歩進むことが大事だと思うのです。

その6:虐待防止

行動障害の原因や支援方法を理解をしていないと虐待の可能性が高くなります。今回は虐待防止について考えてみます。
2012年から始まった障害者虐待防止法の最後に「養護者に対する支援等に関する施策を促進」と書かれています。また、「養護者に対する支援」という部分では、家族など養護者の虐待について触れています。家族は、もちろん愛情をもって育てていますが、介護している人の中には大きなストレスを抱えていたり、相談できる人が周りにおらず追い込まれた状態にある人がいます。これらが原因であることが多いので、虐待までに発展しないように、家族などの養護者を支援していく事が必要としています。
また、虐待が起こってしまった場合には、なるべく早く小さいうちに見つけて、虐待がエスカレートする前に被害を防いでいくことが重要です。そこで、法律の中でも早期発見・早期対応ということが重視されています。

虐待の類型は養護者・職員・使用者と分けて書かれています。

〔養護者による虐待の5つの類型〕
①身体的虐待:障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、または正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。②性的虐待:障害者にわいせつな行為をすることまたは障害者をしてわいせつな行為をさせること。③心理的虐待:障害者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。④放棄・放置:障害者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、養護者以外の同居人による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。⑤経済的虐待:養護者または障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分すること。その他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。

〔施設・事業所(職員)における虐待の5つの類型〕
①身体的虐待②性的虐待⑤経済的虐待は養護者と同じです。③心理的虐待では、「~不当な差別的な言動」が加筆されます。④放棄・放置では、「他の利用者による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。」が加わります。

〔使用者による虐待の5つの類型〕
①身体的虐待②性的虐待⑤経済的虐待は養護者と同じで、③心理的虐待は、職員と同じです。④放棄・放任では、「養護者以外の同居人」や「他の利用者による」となっていたところが、「~ほかの労働者による」とし、同僚・上司・部下などからの身体的、性的、心理的な虐待が起こっていることを容認したり見過ごすことが書かれています。この使用者による虐待については、障害児童も高齢の障害のある人もこの虐待防止法が適用されることになっています。

〔事業所での身体拘束・行動制限について〕
本人を落ち着かせるためにとか、周りへの影響を考えてなどの理由で本人の行動を抑制することが、本人にとってはマイナスになってしまう可能性があることや、倫理的な部分で問題になってくることがあります。障害特性などをしっかりと理解し、できる限り支援方法の共有化やマニュアル化などによって行動障害が起こってしまう前に、適切に支援することが大事です。身体拘束については、切迫性、非代替性、一時性の3要件すべてを満たすことが必要です。ただ、身体プロンプト(スキル獲得のための身体誘導で、徐々に消去していく行動支援)と身体拘束は全く違うものですから支援の専門家は行動支援の手法について良く学習をすることが必要です。
「問題行動」に対処するために、身体的虐待に該当するような行動制限を繰り返していると、本人の自尊心は傷つき、抑えつける職員や抑えつけられた場面に対して恐怖や不安を強く感じるようになります。人や場面に対しての誤った学習を繰り返した結果、さらに強い「問題行動」につながり、さらに強い行動制限を行うという悪循環に陥ります。行動障害に対する知識と支援技術を学び、支援をマニュアル化することなどによって職員全体で共有し、行動制限の廃止に向けて取り組むことが施設・事業所での障害者虐待を防止することにつながると共に、支援の質の向上にもつながります。

子どもの呼称

福祉の関係者の中には、「~ちゃん」「~くん」と呼ぶことを、人権侵害または人権侵害への傾きがあるとする見解を持つ人がいます。呼称は、そのように単純な問題ではありません。こういう指摘に対して、現場の支援者が納得できない気持ちは理解できますが、ちゃん付けが正しいわけでもありません。

呼称の問題を単純化する悪弊は、自治体職員や福祉支援者に地域住民・利用者を「お客様」と呼ばせることや、学校教育における児童生徒の男女差別を解消するための手立てとして、男女すべてを「~さん」に統一して呼ぶとするなどがあります。「お客様」は消費者主権主義にもとづくビジネスモデルにおける呼称ですから、ビジネスモデルに包摂されない地域住民やサービス利用者は、行政の主権者ではありますが金銭とサービスを交換する「お客様」とは違います。敬意をもって丁寧に接することと、お客様扱いは意味が違います。学校における「~さん」への呼称の統一というのは、差別事案を具体的にとらえて克服していこうとするのではなく、呼称の統一によって「性区別なく公平に扱っていますよ」、「君付けは上から目線だから使いません」というのは、アリバイ工作程度にしか感じないのです。だからと言って、これが全部間違いだというのも逆のステレオタイプのような気がします。もう少し呼称や敬称の問題の本質をつかんだ上で、プロとしての流儀を明確にしたいと思うからここで取り上げてみたのです。

福祉的支援における呼称の問題は、サービスの種類で区別して考える必要があります。一つは施設入所支援やグループホームのように親密圏を構成する支援サービスの中で、支援者と利用者が取り結ぶ関係性にふさわしい呼称の場合です。もう一つは、就労継続支援や就労移行支援に代表されるような、公共圏において支援するか、「公共圏に向けて」支援する時空間において支援者と利用者が取り結ぶ関係性にふさわしい呼称です。だから、この場合は呼び捨てにしたり「~ちゃん」はあり得ません。

親密圏における呼称は、関係当事者の同意に従ったいかなる呼称も、公序良俗に反しない限り、人権侵害には該当しません。ただ、支援者の優位性をテコに利用者を「子ども扱い」して呼び捨てにしたり「~ちゃん」と呼称するのは論外です。しかし、この問題の本質は呼称にあるのではなく「子ども扱い」することに人権侵害の根幹があるのです。関係者の相互了解さえあれば多様な呼称が容認されてもいいのかもしれません。ただ、利用者が施設やグループホームから地域社会のさまざまな活動(就労、買い物、外出、友人との仲間活動等)に参加する場面で呼び捨てや「~ちゃん」を使用し続けることは、人権侵害につながる問題をはらんでいます。地域社会における一般市民の受けとめ方の中に障害のある人に対する「子ども扱い」や特別視を助長しかねないからです。

「~ちゃん」の呼称が、いつの間にか人権侵害につながる恐れがあるという指摘は、呼称の問題が本質なのではありません。親密圏そのものがはらむ「割り切れないリスク」に問題の本質があります。親密圏における「暮らしの中の人権侵害」の問題には立ち入らず、呼称という表面的な問題で片づけているとも言えます。障害のある人が親密圏と公共圏のそれぞれにおいて、難しさを感じることなく、もっとも活き活きと周囲の人たちとの関係をゆたかに取り結べるための呼称を、ケース・バイ・ケースで考えるべきかもしれません。ただ、言霊文化を重んじる日本では、声に発した言葉が、相手にも自分にも良くも悪くも影響を与えると言われてきました。敬語や呼称敬称によってその関係性を持続させるという考え方は行動科学としては理にかなっており、あながち否定できるものでもありません。

そこで、児童サービスの場合も同じ課題が浮かび上がります。支援者が子どもを名前呼びにしたり、ちゃんづけしたりするのは良くあります。特別支援の必要な子どもの場合は日常茶飯といっていいかもしれません。しかし、ここにも親密圏と公共圏、もしくは公共圏に向けた支援かどうかということが問われます。中学高校生の利用者に「~ちゃん」と呼びかけた声を、同じ場所で小学生が聞いているという状況に、あまりにも鈍感ではなかったかと思うのです。子どもへの支援者の言動は子どもの言動に乗移っていきます。家族以外からいくつになっても「~ちゃん」と呼びかけられている子どもに、公共圏での自尊感情は担保されるのでしょうか。また支援者自身がそのことを意識できるのでしょうか。さん付け君付けだけで、子どもに敬意を払うことができるわけではありません。そのことを深く理解していること、それがプロとしての流儀と言えるのかもしれません。

 

気象病

「う~ん15時から降水率60%か~ビミョ~」今日は雨が降るかどうか、梅雨の時期だからこそ外で遊ばせたいスタッフは、ヤフー天気予報といつもにらめっこしています。ところで、季節の変わり目に体調変化や気分変動があるように、気圧が下がると体調が乱れ、片頭痛や関節痛、耳鳴りなどの症状が悪化する「気象病」はご存じでしょうか。季節の変わり目と同じように自律神経のバランスの乱れが関係するそうです。

気圧の低下によって悪化する症状の多くは、自律神経のバランスの乱れが関わっています。春先や秋口などの季節の変わり目や、梅雨時の低気圧接近による気圧の低下で、以下のような症状が悪化することがあると考えられています。

①片頭痛:片頭痛のはっきりとした原因は不明ですが、血管の拡張によって痛みが生じることが知られています。過労や環境の変化などによるストレスとともに、気温や気圧の急激な変化も、痛みの引き金となります。②関節痛:気圧が下がり、相対的に体内の圧力が上がることで、関節まわりの炎症部分が圧迫されます。また、気圧の低下による血流の増加で、自律神経の痛みに対する過敏性が高まると考えられています。③めまい:気圧の低下により相対的に耳の内部の圧力が高まることで、耳の内部にある器官(蝸牛や三半規管)から内リンパ液という液体が漏れだすことで、回転性めまい(ぐるぐると回っているような感覚になるタイプのめまい)が悪化します。④耳鳴り:気圧の低下により、相対的に耳の内部の圧力が高まることで起きます。エレベーターで高層階に行くときに耳鳴りが起きるのと、同じ仕組みです。⑤過敏性腸症候群(IBS):主にストレスによって胃腸の調子が悪くなる状態で、便秘型・下痢型・混合型に分類されます。低気圧が日本に近づく春先や秋口になると、自律神経のバランスが乱れ、症状が起きやすくなります。⑥精神関連:自律神経失調症、パニック障害、うつ病、統合失調症、不安障害などの精神疾患は、自律神経のバランスの乱れを招く気圧の低下によって、悪化しやすいと言われています。尚、昔は喘息も低気圧と関係すると言われてきましたが、最近の研究によると気圧変化か心理変化かどちらかはっきりとは言えないそうです。

それぞれの症状の悪化は、気象状況の影響かどうかに関わらず、医療機関を受診して、適切な治療を行うことが何よりも大切です。治療に加えて、日頃から予防するには、自律神経のバランスを整えるトレーニングも有効です。
●ウォーキングなど適度な運動を行い全身の血行を改善する。●栄養(繊維質タンパク質)がとれる食事と、規則正しい時間に食事をして代謝を整える。●シャワーではなくぬるい湯船にゆっくりつかって汗をかきリラクゼーションする。●就寝する2時間前以降はインターネットやゲームを禁止して快眠を得て生活リズムを整える。●小集団でのレクリエーションや軽作業など計画的に軽いストレスに慣れる。
要するに、自律神経系に働きかける、運動や食や温度管理や、過剰な視覚ストレスを避けつつ日常的に調節できる範囲で仕事や勉学の負荷をかけることです。放デイにできることは、雨の隙間を縫ってみんなで体を動かすことだという事です。

 

子どもへの診断告知

子どもに自分の障害について早い時期から告知していくことは必要なことだと言われています。ただ、診断名だけを告知しても、障害受容はできません。近視を説明するのに近視だというだけでなくメガネやコンタクトを装着させることで、なるほどと思わせるような支援の有効性とセットで教える必要があります。告知は子どもに諦めさせたり大人に従わせたりするためではありません。それでは診断名を否定的なものと考えてしまいます。診断名を知っても苦手なものは苦手です。子どもの苦手な理由を聞いて支援策を考えることが大事です。困難な状況であっても具体的支援で乗り越えるしかないのです。告知で何とかなるという発想は、治療方針を示さず当事者が聞いたこともない病名を告げて患者が安心すると言っているのと同じことです。「ADHDだから気をつけろ」とだけの注意は具体的な助言ではありません。これは「多動で不注意だから注意しろ」と言っているのに過ぎません。どうすれば集中できるのか、失敗をどうリカバリするのかを具体的に教える必要があるのです。

A病院では自閉傾向、BセンターではLD。C心理士はADHDと、結局のところよく分からないままでは、子どもに伝えようがありません。診断や評価は支援のためにあります。逆に言えば支援に結びつかない診断や評価は価値の低いものでレッテル貼りです。支援内容が具体的に出てこない診断名だけの診断・評価では、やればできると子どもに思わせるのは無理です。最初に、得手・不得手とその理由(見方・考え方のクセ)を具体的に見きわめます。子どもの見方・考え方のクセは、親にはあまりにも身近すぎて見えにくいです。子どもの考え方のクセを教えてほしいと事前にはっきりと伝えて、医療機関・療育機関・教育機関での評価を利用してみましょう。

子どもへの告知(医学心理学教育)の最も重要な部分は診断名を伝えなくてもできます。特性に合わせた具体的支援から始めるのです。親の判断はLDだったけれど医学診断は軽度精神遅滞だった、親の判断はADHDだったけれど医学診断は自閉症だった、ということは良くあります。子どもに診断名を伝えた後で修正の必要が生じると親子ともども混乱します。診断名を子どもに伝えるのは熟練した専門家の判断を受けてから行います。

赤ちゃんは、誰に強制されたわけでもないのに毎日努力を続けて這い立ち歩行へと進んでいきます。子どもというのは、本来、誰に言われなくても前へ進んでいきます。大人が邪魔し続けて、前に進むことへの希望を奪わなければ前へ進むのです。子どもが診断名を言い訳のように使うとしたら、その子は言い訳をする以外に自分の心を守る方法を手に入れていないのかもしれません。子どもにも達成可能な、人からも歓迎される具体的な方法を教えてあげてください。子どもの意欲を引き出すのは説得ではなく達成感です。

ASDやADHDは病気ではありませんから、治す必要はありません。でもそのために不都合が生じないための工夫や努力は大切です。でも最も大事なことは、子どもたちに何かの技術を教えるのは、子どもたちのやり方は間違いだから正しいやり方を教えるのではないということです。ASDが人口の99%を占める世界があったなら、研修の参加者が「187名が主催者発表でした」ではなく「まぁ200くらい?」なんて平然と表現する曖昧さや、「会話は、興味なくても相手に注目して、キャッチボールのように話す」という変なこだわりは、きっとASDの皆さんにあきれられてしまうでしょう。私たちの教えているのは「多数派のやり方」です。ASDの皆さんの感じ方も一つの真実だけど、みんなの暮らしやすさのために多数派のやり方に合わせるワザを使って欲しいということです。この続きは明日。

その2:特性は長所でもある

支援者が子どもに伝えるべき事柄は個々の具体的な困難への対処方法です。それは子どもが実践可能で、効果的でなくてはなりません。手助けと自分の工夫で、毎日の暮らしが安定する!嫌なこと・困ることも、やりようで変えていける!こうした経験を子どもにもたせてから告知は始まります。自閉症の特性は不都合の原因となる場合も多いものですが、人間としての長所でもあります。興味が偏る裏返しは、好きなものには集中でき探究心も高いところが長所です。自分の特性は長所でもあると告知の前に伝えて置くべきことです。叱られてばかりの暮らしの中で取ってつけたように誉められても子どもはそれを信じられません。「自分の特性は長所でもある」という認識は「やりようはある」という実感と不即不離のものです。

やりようはあるという実感・長所でもあるという実感を、毎日の生活の中で、個々の具体的事柄に関して積み重ねていくこの第一段階が、子どもへの告知の基盤です。これを子どもに充分に経験させるには支援者に技術力が必要です。この段階では診断名の告知は必要ではありません。この具体的対応を教える段階を充分に経験しているか否かが、告知が支援となるか、意味のない宣告となるかの分かれ目です。

親だからわが子に合った育児ができるなんて絶対にありません。子どもが自分の良さを発揮するために特別な工夫を必要としているように、特別な工夫を必要とする子どもを育てる親にも特別な工夫が必要です。子どもがその工夫のために支援者を必要としているように、親もまた支援者を必要としています。自閉症協会や親の会、保健所や発達障害支援センター、或いは発達障害の知見に詳しい地域の福祉事業所にも連絡を取ってみることをお勧めします。学校にも相談部門がありますから聞いてみましょう。ただし、担当者によって腕が違うのは病院やいろんな技術職と同じで、ある意味当たり前のことです。親同士の情報も参考にしましょう。この続きは明日。

その3:告知のタイミング

告知はとても個別性が高いものです。子どもの支援・親の支援・生活学習環境等を検討して方法を探ります。診断名告知に積極的に取り組んでいる専門家の中でも、どの時期が良いのかは様々です。幼児期からできるだけ早く診断名告知をしたほうがいいという専門家もいれば、問題が噴出しているときこそ診断名告知の好機だという専門家もいます。つまり、答えはなく、それぞれの対象の子どもの状況や環境、専門家のポジションやその背景によっても違うのです。これも必ずというわけではないないですが、前回述べたように支援の効果を子どもが知っていることは告知の理解には有利だという事です。だからといって、場合によっては詳しい告知から入った方が効果が上がる人もいます。

子どもへの診断名告知の判断を親だけが引き受けていくというのはとても荷の重い作業です。必ず医師や心理士、教育関係者等専門家のサポータを作ってから始めます。また文字情報を処理する能力が相応に高い子どもで、診断名に関してもしかしたら既に知っているのかもしれないと思われる場合や混乱なく受け止めるだろうと予測される場合には、ASDの子どもたちは自分のペースで文字情報を手がかりに情報処理をしたほうが理解も納得もしやすいので診断告知に関する書籍を与えて予習してもらうことも有効です。想像力の問題のために一度思い込んだ事柄を修正するのが苦手な子どもたちなので、その意味でもひとりでじっくりと情報で吟味することが有効な場合も多いからです。書籍を渡してもらう場合には、今、目の前で読めと迫ることはしないで、自分のペースで情報処理するようにゆったりと構えて取り組みましょう。また情報を渡す際には、後ろ向きな感想も含めいろいろのことを思ったり話し合ったりすることは大事だと必ず伝えていくことが必要です。

また、告知は1回で済むものではなく、サポーターが協力して少しづつ違う角度から複数回行います。また節目節目にバージョンアップもして伝えていくものです。ここまで読んでお分かりの方も多いかと思うのですが、子どもへの発達障害の告知とは、医師の特権行為というより子どもへの教育なのです。子どもが一つ一つ自分について知っていくプロセスを支援することが大事だからです。これを心理学的医学教育といいます。

ここまで書いたことは、日本のASD告知のオーソリティーでもある吉田友子医師のホームページを参照しています。書籍資料や講演会情報などアクセスしてみてください。http://i-pec.jp/

 

睡眠障害

人間をはじめとする多くの生物は、基本的なリズム(活動する・休む・眠る)および体内の働き(自律神経機能・内分泌機能・代謝機能などのさまざまな生体機能)が1日に約25時間を周期とするリズムで変動しています。そして、この変動のリズムをもたらしているものを生体時計(体内時計)と呼びます。ヒトの生体時計は実際の1日24時間より約1時間長いので、社会生活を維持していくためには、1日24時間を周期とする生活リズムに調整していかなければなりません。この生活リズムが狂ってしまうと、不眠症、うつ、不登校、全身倦怠感、注意集中困難、イライラ、学習困難などのさまざまな症状が出現します。不眠症は入眠困難という形で現れ、遅寝遅起きになります。近年、発達障害や夜型生活との関連で増加している睡眠相後退症候群は、子どもの身体・知能の発達、さらには不登校、神経症、自閉傾向を強めるとして注目されています。では、どのようにして生活リズムを24時間にリセットして規則正しい生活にすればよいのでしょうか?

生活リズムをリセットする因子として以下のものがあります。光による明暗(昼と夜)・社会的因子(家庭・学校・会社・仕事・遊びなど)・食事・身体的運動・環境(温度・湿度・騒音・振動など)。この中で、朝の光を浴びること、朝食、日中の運動がもっとも強い同調因子です。朝のジョギングや歩いて登校するなどの活動はこれらをすべて満たしてくれるといってもいいでしょう。特に、規則正しい生活リズムの獲得は身体にも心にも良い影響を与え、社会生活の様々なリスクを回避する礎となります。

睡眠を阻害する因子の中で、ストレスが占める割合は一番大きいのかもしれません。一般によく聞かれる不眠症とは、心身の健康を維持するために必要な夜間の睡眠が量的または質的に不足し、昼間の日常生活に支障をきたしたりストレスを抱え込んでいる状態のことをいいます。逆に、睡眠に問題がないということは、日中眠気がなく、心身共に健康に生活できる睡眠がとれるということです。ここで、睡眠障害の4つのタイプを見ると、入眠障害:布団に入ってもなかなか寝つけないタイプ。不眠の中ではもっとも訴えの多い症状です。中途覚醒:夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝つくのが難しいタイプ。熟眠障害:睡眠時間のわりには、朝起きた時にぐっすり眠った感じがしないタイプ。早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、まだ眠りたいのに眠れなくなるタイプ。高齢者に多いのが特徴。睡眠相後退症候群:夜なかなか寝つけず、朝はなかなか起きることができない状態が極端に悪いもので、最も多いのが、通常夜中の2時から朝の6時頃まで眠れず、そのため朝はまったく起きられなくなるというパターンです。一旦眠ると普通に眠れますが、その眠る時間帯が社会のリズムとずれているため社会適応が困難になります。遅刻や欠席が多く、また日中に強い眠気に襲われたり、授業に集中できないといった障害がおこります。このように学校に適応できない状態が続くと二次的に抑うつ状態、不登校、ひきこもりになることも稀ではありません。

中高校生の不眠患者の約半数がDSPSといわれており、思春期での発病率がもっとも高く、典型的なDSPS患者は発病前から夜型人間の傾向が強く、感覚過敏のあるASDや、ゲーム・携帯電話などにはまっている場合に多く見られます。また、DSPSが不登校の原因かもしくは結果かについての判断は難しいですが、両者は深く関係しており、DSPSの治療をすることで不登校から立ち直ることができたケースも多く見られます。DSPSの病態生理は、睡眠相だけでなく、深部体温のリズムや脳のメラトニン(睡眠を制御するホルモン)の分泌リズムが遅れており、このため生体リズムが後退したまま固定され、外部環境に同調できない状態となることがわかっています。

DSPSを改善するための早寝早起きの工夫をみてみましょう。日当たりの良いベッド。朝にカーテンを開ける。朝は必ず起きる。起きたらすぐに着替える。朝に日光を浴びる。日中に身体を動かす。入眠3時間前から照明を落とす。昼寝をしない。メラトニン療法。高照度光療法。ビタミンB12。

寝る前にしたほうがいいことは、寝る1~2時間前から脳をリラックスさせることが大切です。一旦布団に入った後でも、眠れない時は無理に眠ろうとせず、布団を出て気分を変えるのも一つの方法です。できれば眠くなるまで布団には入らないようにしましょう。また、布団の中で、好きな本を読む、携帯電話、ゲームなどをしないようにしましょう。他には、ぬるめのお風呂にゆっくりつかる。カフェインが含まれていないハーブティを飲む。眠りを誘う音楽や心が落ち着くビデオを鑑賞。空腹の時はホットミルクを飲む。就眠3時間前から室内の照明をダウンさせる(真っ暗より薄暗い程度、蛍光灯より白熱灯、直接照明より間接照明)。寝袋、身体を強くしばる、マッサージなどの刺激がよいことも。就眠儀式はあったほうがいい (歯磨き、ストレッチ、ぬいぐるみなど)が挙げられます。

寝る前に避けたほうがよいことは、熱いお風呂に入ること。コーヒーや紅茶などカフェインを含む飲み物。寝る前のおやつや食事。勉強や激しい運動。テレビ、ゲーム、パソコンなど。明るすぎる室内照明(明るい蛍光灯など)。

障害の種類に関わらず、また、テレビやゲームのしすぎなどにより、生活リズムの乱れている子どもも多く見られます。子どもが衣食住に関わる基本的な行動・習慣を身に付けるためにも、約束を決めて子どもがしたいことをする「時間」を保障しながら、まずは親が子どもの生活リズムをコントロールすることが重要です。さらに、タイムスケジュールのような簡単な表などを使い、目に見える形で評価することでより意識しやすくなるでしょう。そして原因のはっきりした避けきれないストレスが子どもの生活リズムを乱しているなら、まずは、その原因から子どもを遠ざけ、健康な生活リズムを取り戻すことを優先した選択を行うべきだという考え方もあります。

パラリンピック

東京オリンピックのチケットが取れなかった倍率100倍だったとネット上をにぎわせていますが、パラリンピックはいまいち盛り上がりに欠けると関係者の間では言われています。東京パラリンピックでは22競技537種目が実施されますが、チケットは8000円以下で平均2~3000円だそうです。

実はこのパラリンピックのチケットが史上初で完売されたのが前々回のロンドン大会でした。大会準備にあたって、関係者がとにかく市民にパラスポーツを体験してもらう取り組みを粘り強く行ったそうです。誰だって競技がわからなければ観戦なんてしません。パラスポーツが健常者競技に勝るパワーとテクニックが必要なことは競技を知らないとわからないのです。この結果、ロンドン大会は大成功を収めました。

ところが前回のリオ大会はロンドン大会以前に逆戻り。チケットが余り、観戦席もまばらで選手にも申し訳ない状況がおこりました。リオ大会はそもそも政変のただ中での開催で、選手宿舎問題やオリンピックインフラ建設が追い付かない状況だったので全体の準備そのものが大変だったようです。だからこそ、GDP世界第3位の日本の首都東京で開催するパラリンピックは、ロンドン大会のレベルまでに戻すことが重要です。

世界一の車いすラグビーや世界2位のボッチャなどみどころもたくさんあります。チケット発売は日本国内では、東京2020組織委員会が直接販売し8月発売の予定です。

 

ビジョントレーニング

ビジョントレーニングとは視覚機能の力を高めるためのトレーニングです。ものを見る力(視覚機能)は生まれつき備わっているわけではありません。徐々に発達して就学前までにその基礎ができあがると言われています。通常は成長の過程の中で、見たり触れたり体を動かしたり、様々な経験を通じて必要な機能を身につけていきます。これには個人差があります。特に不器用等調整力の弱さと「見えにくさ(視覚機能の困難)」においては関係性が強いといわれています。見る力は一人ひとり違い、この見えにくさを抱えた状態を放置しておくと、努力をしても結果が伴わなくなるという場面も増えてきます。そうなると「どうせ勉強はできない」「運動は嫌いだ」と意欲を失い、自己肯定感の喪失につながっていきます。

もちろん、学習の困難についてはこれまでのブログで述べてきたとおり、音韻機能や他の認知機能の問題もあり、視機能だけに関係づけられるものではありませんので、ビジョントレーニングで学習困難が解決するかどうかは他の認知機能との問題がないかどうかのアセスメントが重要です。ビジョントレーニング自身はそう難しいトレーニングではないのでホームページを見ていると、放デイの療育内容の目玉のようにしているところがありますが、アセスメントをどのようにしているのか明示しているところが少ないのが気になります。2012年の文部科学省実施の調査では子どもの2.5%に読み書き困難があり、その子どもの1割弱が視知覚の弱さが原因ではないかと考えられます。

ビジョントレーニングをすすめる記述には、視機能の課題が学習の困難と結びついている人は次のような傾向があると、書かれています。
1書字:文字を崩さずに正しい形で書けない。ノートに書かれているマス目や行からはみ出す。図形の形を正しく描けない。2読字:行間の読み飛ばしや、読み間違いをする。文章の意味を理解する力が身につかない。3手指の作業:ハサミやカッターなどを使い曲線などを正確に切ることができない。定規等をつかって正確な図形を描いたり、正確な線を引くことができない。紙を折ったり、貼ったりする作業をすることが困難。4集中力:授業中、しっかりと勉強に集中することができない。長時間(30分程度)の読書が続かない。5記憶力:ひらがなや漢字等、正しい形で記憶することが困難。学習において記憶の積み重ねが増えない。約束したことを忘れたり、忘れ物をしたりすることが減らない。6イメージ力:模様を見ながら再現できない。図形を正確にイメージして形を思いうかべられない。方向、方角の認識を身につけることができない。7運動する力:ボールを上手く受け止められない。縄跳びなどの跳躍運動が苦手。ダンスや体操など、目の前のお手本通りに真似るのが苦手。
確かに、生活の80%は視覚からの情報ですので、視知覚入力に課題があれば様々な問題が起こるのは当然です。だからと言って全てを視知覚の問題として扱うのは大雑把すぎる気がします。

これまで、スタンダードな視知覚検査は「フロスティッグ視知覚発達検査(DTVP)」でしたが、ここ10年視知覚の検査はたくさん開発されています。学力の問題との相関性を統計処理したものも出ています。おすすめはWAVESです。WAVESは Wide-range Assessment of Vision-related Essential Skills の略で、日本語では「視覚関連基礎スキルの広範囲アセスメント」と言います。この検査では、視知覚・目と手の協応を総合した総合指数により同年齢の子どもとの比較ができ、また、下位検査の成績によって、形態認知や記憶、協応動作について個人内の得意不得意も把握でき、段階内容別のトレーニングプリントもついています。おそらく多くのビジョントレーニングで療育を行う放デイはこれを利用していると思います。ただ、アセスメントに重要なのはテストバッテリーと言って一つの検査だけで結論を得るのではなく二つ以上の検査等から多面的に分析することです。本事業所ではWAVESとKABC-2(心理・教育アセスメントバッテリー)、STRAW-R(標準読み書きスクリーニング検査)によるテストバッテリーを組むことができます。ご希望の方はスタッフまでご連絡ください。

知っていますか「特別児童扶養手当」

特別児童扶養手当は、20歳未満の精神または身体に障害のある子どもを育てる養育者が受けられる手当です。対象は 20歳未満で精神または身体に障害のある子どもを育てている養育者に支給されます。
・身体障害者手帳1~3級程度、および一部4級程度
・療育手帳AとBの一部(審査されます)
・精神障害者保健福祉手帳1級と2級の一部(審査されます)
・手帳をもたないが、障害・疾病等により日常生活に著しい困難がある場合(審査されます)
支給制限は、扶養義務者の前年の所得が600万円くらい(共働きや扶養者数、内容によって違います)を超えると手当は支給されません。京都府の特別児童扶養手当月額は1級認定の場合 52,200円、2級認定の場合 34,770円です。(※手当の月額は物価変動などにより改定されることがあります。)
問い合わせ窓口 各自治体の「子育て支援」の窓口。特別児童扶養手当は毎年8月に「現況届」を提出して更新する必要があります。「現況届」とは手当を引き続き受給する要件があるかどうかを確認するためのもので、その年の6月1日の状況を書くものです。前年の所得の状況と6月1日現在の児童の養育状況等を記載します。「現況届」の提出がない場合、手当が支給されません。
手帳がない発障障害の子どもも特別児童扶養手当を申請することは可能です。その際には、役所の子育て支援の窓口で渡される用紙に、かかりつけ医に診断を書いてもらって申請したうえで、指定の判定医の診断をうける必要があります。

障害児福祉手当は、20歳未満の精神または身体に重度の障害のある子どもを育てる養育者などが受けられる手当です。手当の判定基準に該当する方は特別児童扶養手当と併給することができますが、障害福祉手当のほうが審査条件が少し厳しいです。これは各自治体の「福祉の窓口」で申請します。

そもそも、手当や福祉関係の情報って病院や学校、事業所でも教えてくれないことがあります。自分で積極的に調べて聞いていかないと申請できません。また、お兄ちゃんは特児手当がもらえたけど、下は軽度だからもらえなかったという家庭もあります。時々施しは受けないという方がおられますが、生活費に使っても後ろめたいことは何もないし、家族とその子のために使えばいいのです。
住んでいる自治体ごとに制度が違うので、詳しくは役所の子育て支援の窓口と、福祉の窓口で申請手続きをする際によく確認してみることをおすすめします。
乙訓各自治体のHP
向日市
長岡京市
大山崎町

これらの制度は障害者手帳(特に療育手帳)があるとスムースに申請ができることから、手帳の申請がまだの方は各自治体の「福祉の窓口」でお聞きください。税控除や様々な助成を受けることができます。

そして、手当についての「使い方」について共通しているのは「何が正しいか」ではなく、その家庭にとって「何が必要か」ということです。家庭の必要に合わせて使うことが正しい使い方だということです。必要な人に、必要な手当が届くよう、お役立てください。

台風5号

子どものころ、台風が近づいてくるとなんだかわくわくしたものです。今のように刻々と変わる正確で詳しい情報はありませんから、学校はすぐ休校になり、子ども心には余計なイメージが広がります。母はろうそくの買いたしや風呂の貯め水をしたり、雨戸を閉めてその上からくぎ打ちしていた父の姿が鮮明に思い出されます。非日常のドキドキもあるけど、家族全員で来るかもしれない困難に立ち向かっている姿が心地よかったのかもしれません。

今や都会では台風でも職場や学校に行き、ぎりぎりまで休業にしません。昔は町に出ても台風の前は静まり返っていて往来も少なかったものです。台風が来るかと思ったら次の日は晴れてたなんてこともよくあって、「あーよかったねー」で済んだのですが、今は正確な進路まで予想できますからそんなわけにもいかないようです。

20日(土)夜までの48時間で雨量は九州から四国、紀伊半島など西日本太平洋側の多い所で300mmに達する所があるそうです。また、21日(日)は台風5号に向かう南西からの湿った空気の流れが強まる九州では、雨雲が非常に発達し激しい雨となるおそれがあり、最大で500mmに達する大雨のおそれがあるそうです。広い範囲で南よりの風が強く、西日本では瞬間的に20m/sを超える強風に対しても注意を呼び掛けています。

DV防止法

7月12日千葉地裁は、千葉県野田市立小4年の栗原心愛さん=当時(10)=が1月24日に自宅浴室で死亡した虐待事件で、父勇一郎被告(41)の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告(32)に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した判決が確定したと明らかにしました。求刑は懲役2年でしたが、地裁によると、10日が控訴期限だったが検察側、被告側の双方から控訴がなかったので刑が確定したということです。母なぎさ被告も夫からDVを受けており、一部の意見には夫のDVの中で母親は子どもを守る判断力を失っているのだから母に刑を科しても刑の効果は薄く、保護と治療が必要というものもありました。

通称『DV防止法』が制定されたのは、2001年(平成13年)のことです。“夫婦喧嘩は犬も食わない”と限度をこえた夫婦の問題に対して、行政は関与することを長年控えてきたのです。ある面、他人が入り込むことを遠慮してしまう家庭という空間。法律がそこに踏み込むことで、辛い環境に耐えてきた女性達を救い出したことは、大きな意義があると思います。「DV」とは、ドメスティックバイオレンス(Domestic Violence)、略して「DV」です。ドメスティックは、「家庭的な」。バイオレンスは、「暴力、暴行」です。正式名称は、『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律』です。

一般的には「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」と書かれています。「配偶者からの暴力」に対する定義として、身体に対する暴力だけではなく、『心身に有害な影響を及ぼす言動』つまり言葉の暴力も含むということです。相手に危害を与える暴力は、圧倒的に男性から女性に及ぼすものが多いですが、言葉の暴力は、男性女性関係なく起こりえます。一年間のDV件数は、2015年(平成27年)には、63,141件の相談が寄せられています。検挙状況は、7,914人が刑法犯として検挙されました。DV防止法制定により、年間これだけの人が罪に問われ、同時にほぼ同数の被害者が救われていることになるので、法律ができた意義はとても大きいといえます。

法の前文には「配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する」とあり 家庭内の問題だからといって、今までのように放置しないで、しっかり対処しますよという法律になっています。『配偶者暴力相談支援センター』は、以下のことを行います。
○相談や相談機関の紹介 ○カウンセリング ○被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護 ○自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助 ○被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助 ○保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助です。DV相談件数は10万件超えの相談が寄せられています。他には、裁判所が配偶者に対して、保護命令を出すケースもあります。具体的に、被害者への接近禁止命令や住居からの退去命令が出されます。もし命令に違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。また、発見者による通報という項目があります。配偶者からの暴力を受けている人を発見した人や医療関係者は、すすんで警察や配偶者暴力相談支援センターに通報することを推奨しています。このようにDV防止法によって、様々な行政の支援体制が整ってきています。

DV防止法改正内容 2001年にDV防止法が制定されたことで、家庭内で暴力を受け、沈黙していた多くの女性達が、救われることとなりました。配偶者からの暴力も犯罪であるということ。閉ざされた家庭空間で、「暴力をふるわれるのは、私にも問題がある」という被害者の錯覚が明らかになったこと。 それらをDV防止法が、私たちに気づかせてくれたのです。DV防止法は2001年の制定・施行以来、18年の歳月が経ちましたが、その間に三度の改正が行われています。法律は、極論すれば、人々が幸福で安寧な暮らしをするために存在するものです。。まだまだDVはなくならないとはいえ、以前はDVについて議論すら許さない風潮があった時期を思えば、やっとここまで来たという感があります。

ソーシャル・ストーリー

ソーシャル・ストーリーとは、米国のキャロル・グレイが開発した「身の回りのものの性質や様々な場面でのふさわしい言動はどのようなものなのかなどをASDの子どもにわかりやすい形で伝えるためのコミュニケーションツール」です。

ASDの人は社会的な暗黙のルールのようなものを察することが苦手です。子どもたちが自然に身に付ける暗黙のルールですが、自閉症スペクトラムのある子どもたちは、認知上の偏りや興味関心の偏り、他者の感情の読み取りが苦手、情報の取り込み方も違うために、丁寧に教えてあげないと自然に学ぶことが非常に難しいと言えます。しかし、周囲の人たちはそうした事情を知らないので、問題児だとか、何を考えているのか理解できない子ども、などと思われることも少なくありません。

ソーシャル・ストーリーは、様々な知識や暗黙のルールを丁寧に教えることによって、ASDの人たちの理解力を高めて、自分自身で適切な行動をとっていけるように書かれた文章です。ソーシャル・ストーリーについての本は、「ソーシャルストーリブック」と「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」の2冊が有名です。この本には多くの文例が載っていて、そのまま使える文例集です。日常生活や学校生活で必要な様々なスキルや情報が網羅されています。

ただ、ソーシャル・ストーリーは本来一人一人にオーダーメイドで作る文章なので、自分で書く場合には「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」が必要です。「ソーシャルストーリーブック」だけ読んで、書き方について不完全な理解のまま新しいソーシャルストーリーを書くのはやめた方がいいです。

幼稚園・保育園の年少の幼い子どもでもわかりやすい内容では「マイソーシャルストーリーブック」が良いです。「ソーシャルストーリーブック」に比べ、一つ一つの項目が丁寧に書かれていています。子どもが小さいうちはこちらを先に読む(読んであげる)と良いと思います。

ASDの子どもは社会的な暗黙のルールを自然に習得してくのが苦手なので、特に教えなくてもよいような簡単なことを、大人になっても理解していないということがあります。このような理解不足は、幼稚園・保育園や学校または職場での生活トラブルの原因になります。

ソーシャルストーリーは、ASDの子どもに、肯定的な表現をしながら様々なことを教えるので、自尊感情を損なわずに理解力を高め、子どもの成長のためには必要なツールです。子どもの発達によってはすべての項目は必要ないかもしれませんが、ある部分だけごっそり取りこぼしている可能性があるので、読み物としてすべての項目を読んでおくのも無駄ではありません。

また、大人がソーシャルストーリーの語り口を知っておくことは、普段の生活で、子どもとのコミュニケーションに非常に役に立ちます。ASDの子どもには、ソーシャルストーリーのように説明をすると理解しやすいので、子どもに理解できるように話せるからです。子どもにこちらの意図がちゃんと伝わり、お互いに不要なストレスを抱えることがなくなります。ソーシャルストーリーは、こちらの伝えたいことを子どもにわかりやすい言葉と文字で伝える支援方法と言えます。次回は他者の内面が読みにくい子どもへの支援として、コミックストーリを掲載します。

コミック会話

今回は、コミュニケーションをスムーズにする、コミック会話についてです。コミック会話も先に書いたソーシャルストーリ―の開発者である米国のキャロル・グレイが発案しました。開発の順序はコミック会話(comic strip conversations)の方が先です。ASDの子どもは、うまく状況を理解できなかったり、周りの人たちと違った捉え方をしてしまうことがあるのですが、そうした困っている状況を言葉で表現して、周りに説明するのが苦手です。コミック会話は、ASDの子どもが、今どんなことに困っているのか、どんなことを考えているのかを理解する手助けをしてくれます。また、彼らの周りで起こっている状況を的確に伝えるための手段としても、使うことができます。コミック会話の手法を使うことで、コミュニケーションをスムーズに取ることができるようになり、お互いの理解が進むのです。

コミック会話の方法は、子どもに書きながらコミュニケーションするのは良い方法だという理解を得て教えていきます。棒人間を描き、その人が言ったことを吹き出しに書き、感情を雲型の吹き出しに書くといった方法で状況を説明します。従って、文字や絵が描けることが前提です。このルールを徹底するのでマンガを描くのとは違い、表現ルールを覚える練習が必要になります。普段の会話をコミック会話を使って行うのです。たとえば、 今日、学校でどんなことをしたの?という、普通の日常会話です。こうして、普段から日常会話にコミック会話を使っておくことで、なにか困ったことがあった時にも、コミック会話を使って、スムーズに状況を説明できるようにしておきます。基本的にコミック会話は、ASDの子どもが、自分の気持ちなどを説明するために使うので、主に描くのは子どもです。

練習段階では、大人が質問をしながら、コミック会話を書き上げていくことになりますが、慣れて書き方がわかれば、子ども一人でも表現することができるようになります。会話ですので、子どもが書き、大人が書きと、続けていくことで、お互いの理解を深めていきます。

ノートを使うか、ホワイトボードを使うか、どんな筆記具を使うかは、様々なものを試せばいいです。ただ、筆記具に関しては、8色で感情な表現をするので、色のある筆記具を用意します。大きめのノートに色鉛筆、水性ペンなどを使う人が多いです。

コミック会話ができれば、状況や感情表現に非常に役に立つツールになります。話し言葉より先に文字に興味を持つタイプの方はコミック会話はとても分かりやすいようです。今の状況を周りに伝えられることでストレスが少なくなり、周りの大人も、子どもの考えていることがわかれば、どんな支援をすればよいのかがわかります。コミック会話がうまくいけば、かなり気持ちの面で穏やかになる方が多いです。ただし、コミック会話では子どもの誤解や間違いもたくさん発見できるので、間違いを指摘したくなりますが、それはNGです。表現することで役に立った、聞いてもらえてよかったという実感が大事です。

ここの、ブログを前からお読みの方はもうお気づきかと思います。ソーシャルストーリが理解コミュニケーションで、コミック会話は表出コミュニケーションです。他者のことがわかるだけではなく自分のことも相手にわかってもらってこそバランスが取れた暮らしというものではないでしょうか。理解だけ進んでも表出手段がなければストレスが溜まって行き詰ってしまうのは当然だと思いませんか。

応用行動分析を支援に生かす

発達障害のある人の行動問題について、前回はその支援の一丁目一番地は表出のコミュニケーションだと述べてきました。行動問題の解決と予防に必要なものはは、表出コミュニケーションと理解コミュニケーション(視覚的構造化含む)、3番目には応用行動分析(ABA=applied behavior analysis)だと考えられます。

ABA理論は人間の行動の分析の仕方と法則を扱っている心理学理論です。ちょうど、化学反応の法則を導き出すことと似ています。水は電気分解すると水素と酸素になります。人は褒められるとその行動を繰り返そうとします。単純化すればのたとえ話ですが、このように化学反応と行動変容はよく似た表現をします。表出のコミュニケーションに取り組むPECSもABA理論に基づいています。激しい不適切行動も、成長の過程で周りの人たちの対応を含む環境によって強められた結果であることが多いです。まず、不適切行動が強まる例をABC(三項随伴性と言います)分析の枠組みで整理して示します。


<例1>
①(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)外出ができる
②(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)「後でね」と言われて外出できない
③(A)外に出たい→(B)窓ガラスをたたく→(C)母親に叱られるが外出できる
『課題からの逃避』の機能を持つ行動が強まる例は
<例2>
①(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了される
②(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了されない
③(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)課題が終了される
④(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)席に戻され課題が終了されない
⑤(A)課題が嫌(B)作業課題を投げる→(C)課題が終了される
⑥(A)課題が嫌→(B)作業課題を投げる→(C)課題が戻され終了されない
⑦(A)課題が嫌→(B)作業課題を破壊する→(C)課題が終了される


例1の先行条件(A=Antecedent)で子どもが求める結果(C=Consequence)は外出できることであり、例2では課題を終了することです。例から分かるように同じ結果を得るために行動が順に変わり強まっています。同じ行動でも段々強度が増していき(激しく、時間も長くなっていく)、下に進むほど対応が難しい行動になっていることが分かります。例1の『③窓ガラスをたたく』、例2の『⑦作業課題を破壊する』という行動(B=Behavior)は、対応する側としてはこどもの要求を通さざるを得ず、無視できない行動です(関係ない人を叩くといった他害行動が見られることもあります)。このような強力な行動を早い段階から行うこともありますが、不適切行動は例1、例2のように段階的に強度を増していくことが多いです。


ではな不適切行動の強度は増していくのでしょうか。決定的には適切な表出コミュニケーションができないことですが、強度が増すのはある行動を行うことで要求が通っていても、段々同じ行動では要求が通りにくくなるからです。保護者や対応する人が慣れてきて少々泣いても気にせず課題をすすめようとなったり、忙しくて対応できなかったり、「教育的」に外出の回数を制限するよう計画したりと理由は色々あります。

そして、ある行動を行っても要求が通らなくなり、または、通り難くなると、要求を通らせるために不適切行動をより激しく、より長く行います。これを消去バースト(消去時の爆発)と言います。この段階で要求が通ってしまうと、より激しく、より長く不適切行動を行うと要求が通るということを学習し、以前より不適切行動が強力になっていきます。それでも要求が通らなければ、要求が通るような行動を色々試し、自分のできる行動の中から要求が通りやすい行動を行います。そこで要求が通ると、新たな不適切行動が形成されるということです。このような仕組みで、不適切行動は強度を増し、対応せざるをえない行動に変わっていきます。これは障害のあるなしに関係なく、どんな人でもこのツボにはまると負の連鎖は繰り返されます。たまに要求がかなえば、例えばパチンコ通いのように次は成功するかもとお金をつぎ込むように、不適切行動をつぎ込んで要求が叶うまで繰り返します。次回は日常生活で不適切行動を強めないため何が必要かを考えます。

強化と行動

ある行動を行い、望ましい結果が伴えば、その行動の頻度は高まります。例えば、『(A)夕食後→(B)宿題をする→(C)母親に褒められる』と『(B)宿題をする』という行動が増えます。これを“強化”と言い、その際の望ましい(C)結果を“強化子(きょうかし)”や“好子(こうし)”と呼びます。

この強化は応用行動分析(ABA)の基本であり、とても大切です。強化子というのは嬉しいものであるとは限りません。直前の行動を維持し、強める結果のことです。ドアノブを回すとドアが開きますが、この『ドアが開く』という結果は『ドアノブを回す』という行動の強化子となっています。ドアが開いてもそう嬉しいわけではないですが、ドアが開くという結果がドアノブを回すという行動を維持します。

基本的には望ましい結果、嬉しい結果が強化子となることが多く、その内容は人それぞれです。保護者や先生の賞賛、お菓子、おこづかい、ゲームができる、遊びに行ける、微笑みかけられる、休憩時間が伸びるなど、その子どもが喜ぶものは基本的に強化子として考えることができます。やりがいや達成感を感じるということも同様です。ある行動を増やしたければ、その行動の直後に強化子を与えることで、その行動が強化され頻度が高まります。不適切行動も同様であり、不適切行動の頻度が高く維持しているようであれば、その行動はその子にとって望ましい結果によって強化されていると考えます。

計画を立てる際によく見られる誤りは、お菓子などの特定のものを強化子と決めつけることです。お菓子が好きな子どもならお菓子が強化子になり、お菓子をそれほど好きでない子どもならお菓子は強化子にはなりません。また、お腹がいっぱいの時はお菓子を別に欲しくないので強化子にはならず、その時の状態によっても強化子は変わってきます。

次に、ある行動を行い、望ましくない結果が伴えば、その行動の頻度は減少します(ご飯中におしゃべりをして母親に怒られる、など)。これを“弱化”または“罰”と言います。その際の望ましくない結果を“嫌子(けんし)”または“罰子”といいます。この嫌子も人それぞれです。叱られる、叩かれる、空腹、喉の渇き、極度の暑さ寒さ、周囲からの批判などです。

弱化にも2つの条件があり、ある行動を行って嫌子の結果となる正の弱化と、ある行動を行って強化子がなくなる負の弱化があります。後者の代表的なものはタイムアウトで、望ましくない行動を子どもが示したら、子どもを強化子から遠ざけるという手続きです。ゲームを取り上げられる、減点されるのも強化子から遠ざける負の弱化です。

この強化と弱化、そして4つの条件によって、行動が増えたり、減ったりすることの多くを説明することができ、行動を修正したり形成したりすることが可能となります。

<正の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子(好きな事)が得られ
 3. その結果、その行動が増える
<負の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子(嫌な亊)がなくなり
 3. その結果、その行動が増える

<正の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子が得られ
 3. その結果、その行動が減る
<負の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子がなくなり
 3. その結果、その行動が減る

結果が好きな事か嫌な事が消えるならその行動は増え(強化)、結果が嫌な事か好きな事が消えるならその行動は減る(弱化)ということです。そして、行動の形態や種類に関係なく、この強化の原理は人の行動なら何にでも適用されるということです。良い行動であっても、悪い行動であっても、日常的な行動であっても、奇異な行動であっても、同様です。子どもに不適切行動が見られるならば、その行動により子どもにとって何か望ましい結果が得られていて不適切行動が強化されていると考えることができます。従って、不適切行動を予防するには適切な行動が増える好きな事か嫌なことが消える結果を探し、不適切な行動を減らすには嫌なものか好きなものが消える結果を探して取り組めばよいことになります。

しかし、弱化はなかなか難しいのです。子どもの好子はかなり強力なものが多いですから、少々の弱化、つまり嫌な亊を与えたり好きな事を奪っても持続的な効果はすぐには見えず、逆に消去バースト(行動がさらに強くなる)を前に怯んでしまいます。また内容や程度にもよりますが、弱化は倫理的に考えて躊躇しやすいからです。つまり大人のほうが効果と言う強化子がなかなか得られず、倫理的という同調圧力の言葉で取組行動が減ると言う負の弱化が成立します。ではどうすればいいか次回に考えて行きます。

消去と強化を組み合わせる

おさらいです。人は起こした行動に対する結果が望ましいものだと、以降もその行動を繰り返しやすくなります。この望ましい結果(ごほうび)を与えてその行動を増やすことを「強化」と言い結果のことを「強化子」と言います。お菓子や、おもちゃ、褒め言葉など本人が喜ぶものはどのようなものでも強化子になります。

人は行動のあとにごほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが「負の弱化」=「消去」です。罰には積極的罰と消極的罰があり、ごほうび(快)を取り去るのが消極的罰です。ここまでが前回の掲載でした。でもそんなに上手くいかない現実の問題にどう対応するのかと言うのが今回のお題です。

ABAを心得ている現場では、原則は罰の手続きだけを用いることはありません。罰を与える人がいない時に不適切行動が増えたり、他の不適切行動が増える可能性があるからです。このようなときは、環境調整(強化子のない場所)などによって対応していくほうがよいと言われています。消極的罰を用いるのは、子どもが幼く、困った行動が起きてから期間がたっていない場合などに限ったほうがいいと思います。

不適切行動に対応するには、問題行動を減らしつつ、望ましい行動を増やすことが重要です。つまり、消去と強化の両方を使うのです。消去は、「求めているものを与えない、もしくは与えられない」という状況を作ることですので、例えば、欲しい物があって泣き叫んでも毅然と無視し「欲しいものが手に入る」という強化子をなくします。これまでの「泣く」→「欲しいものが手に入る」→「泣く」という負の循環を断ち切ります。消去を行う時は、一時的にその行動が悪化する「消去バースト」(泣く強さが強くなる、暴れるようになるなど)が発生します。これも大人が反応せずにいるといずれ消去バーストは収まります。他者の迷惑にならない場所に連れて行き、泣きやむで待ちます。

時間がかかる場合もありますが、要求に反応してしまうと、逆効果なので一貫した態度で対応します。消去バーストが起きた時に完全に無視し続けることができないと、その困った行動を強化してしまうことがあるからです。例えば、要求が叶わず大泣きしても無視しているとします。そこで、物を倒したり傷つけるなどして無視し続けることが難しくなり対応してしまうと、より派手で影響が大きい行動をすれば大人に無視されないと学びます。そうすると、次回以降は最初から影響が大きい行動をするようになります。それが予測できるなら「要求の起こる場所に行かない」「別の場所で過ごす」などの環境調整で対応するほうが無理なく困った行動を防ぐことができます。

不適切行動を減らすと同時に、望ましい行動ができた時に褒めたり、ごほうびを与えることで強化を行います。強化には、様々な方法がありますが、今回は「別の適切な行動を強化する」という方法を例にあげます。「泣かずに○回行動できたら要求を叶える」というルールを設定し、事前に子どもと契約します。このルールを子どもにわかりやすく伝えるために、ノートやメモ帳を使って、適切な行動が終わるたびにシールが貯まる仕組みを作りましょう。このように、ポイントが貯まることでほうびがもらえる仕組みのことを「トークンシステム」と言います。トークンが一定数たまったら、要求が叶うご褒美(強化子)を用意し、実際にルールを守って行動ができたときには褒めてあげながらシールを貼り、揃った時はごほうびをあげます。このトークンの数は子どもと交渉しないほうがいいです。交渉するとトークンが減ると言う行動が強化されてしまうからです。何をトークンにするか、多い少ない増やす減らすは現場のセンスが問われます。一気に核心に迫らず、成功しやすいものから徐々に取り組むことがセンスを磨く初心者にはおすすめです。

子どもの特性はひとりひとり異なること、また問題行動の種類や状況は様々であるため、対応の方法は全て異なりますが、これらの手法により、どのような原因があるのか、どう行動を起こすべきなのかが具体的になります。不適切行動には、大声を出し合ったり嫌味の言い合いをしたりと子どもと同じレベルで力比べのような対応をするくらいなら、その膨大なエネルギーを無視とアイデアと褒め抜く根気に使っても損はないと思います。そう周囲の人たちにも最初から言って回ればどうでしょう。そして、少しでもうまく行った時は同じく周囲の人に喜んでみせるのです。笑顔を否定する行動は倫理に反するので弱化され減って行きます。あなたを直接否定する声は減って行くはずです。そして、よかったねと言ってくれたらありがとうと感謝して励まし行動を強化するのです。消去と強化を組み合わせると言うのが今回の提案でした。ご意見、ご質問お待ちしています。

思春期1

思春期は、子どもから大人への変化期間で、男の子の場合は11~18歳頃です。とはいっても、6年になった途端に思春期が訪れるわけではありません。前思春期は小5から始まっていますし、個人差も大きいので、急に変わったと親が驚くことは少なくありません。体の変化から始まり、精神面にも、社会で担う役割にも変化が訪れます。発達障害のある子どもにとっては、この変化が怖く感じられることもあり、混乱から困った行動につながってしまう場合もあります。

思春期の混乱によって出てきた困った行動には、男女の違いも含まれます。母親にとっては、どのように関わったらいいか迷うこともあります。体の成長への対応、勉強や交友関係、ゲームとの関わりなど、さまざまな事があります。

心の変化としては、自意識の芽生え、恋愛感情を覚えること、イライラや不安を覚えやすくなるという点です。社会的な役割に変化が出てくることで「一人の人間」という自意識が芽生えます。また、第二次性徴による体の変化に伴い「異性」「同性」という概念をより意識することで恋愛感情が生まれます。このような変化を受け、子どもの心は複雑になっていきます。心が複雑になることで、自分の中では扱いきれないテーマや感情を抱えるようになることも増え、精神が不安定になったり、イライラを覚えたりするのです。

発達障害がある子どもの場合、このような変化に相手の感情が読みにくいTPOにかまわず字句通りに行動するなどの認知特性が加わることで、極端な感情を持ったり、行動に移してしまうことがあるかもしれません。自分の内外における変化の複雑性に耐え切れず、不安定になっている点が思春期の特徴です。ライフステージが上がるごとに、社会から与えられる役割はより複雑になります。例えば、以前なら許されていたわがままも「もう大きいんだから我慢しなさい」と、とがめられたり、他人や女性との距離感を調節する必要が出てきたりします。

思春期は、自立心の芽生えから自己主張が強くなり、大人の指示に対して反発することが目立ちはじめます。思春期の男の子を育てる保護者には「人間関係、家庭内での暴言・態度、ゲーム・ネットへの依存」などの悩みが多くあります。

心と体の成熟スピードのアンバランスさから困難を感じている場合もあります。体は大きく成長しているのに心は幼い場合や、体の成長に対して心がませている場合もあります。男女差だけでなく、子どもに起きているトラブルの背景に何があるのかを見極め、無理をさせすぎないよう留意しながら年齢相応な行動ができるよう、対応していく必要があります。次回は対応について考えます。

思春期2


さて前回は、思春期の子どもを育てる保護者の方が感じやすいであろう悩みの背景に、「今までのわが子とちがう」という点を述べました。また母親の場合、異性である息子の成長に戸惑い、対応の仕方に迷いが生じて、叱ってばかりになったり、はれ物に触るように対応したりなど、コミュニケーションがうまく取れなくなる人も少なくないということを書きました。今回は、どう対応すればよいかを考えていきましょう。

まずは視覚的構造化です。「勉強するゾーンと趣味のゾーンを分ける」「忘れ物しないよう置き場所を決めておく」など、環境を整えることで、子どもにとって刺激が少なくなったり、行動の切り替えがスムーズになります。そのため、大人の介入が減りストレスや衝動的な言動を減らすことができます。起床についても修羅場となる場合が少なくないですが、基本は起きて朝の家庭での活動(食器ならべ、掃除など)があることや起床習慣しかありません。これは前回述べた(7/13)睡眠障害のところもお読みください。

自立心が芽生えはじめた子どもに対しては、大人が指示する方法でのコミュニケーションは難しくなってきます。自立心の芽生えはじめた子どもにとって思春期は、自分の主張や考え方を表出して意思を示す事。自分の主張や考えを他者と調整して考える事。解決にむけて妥協する事。の力をつけていく時期にあたります。意思を示した子どもに対して、「考える」支援をすることで、解決に導いていくことが求められます。この時に「気持ちを尊重して聴く」ことが、子どもが自分で自分の考えを整理し動き出す支援になります。

聴く時は、すぐに否定せず「そう」「うん」などの言葉で気持ちをいったん認める。子どもの気持ちを代弁する。どうする?どうすればいい?など、考えをたずねることが重要です。気持ちを認め、代弁することで、コミュニケーションができる関係性をつくり、反発・拒否だけで終わらず、どうすればいいのかを自分で考えられる時間をつくります。

食事時間なのにゲームがやめられない場合
大人「ごはんだよ」子ども「分かってる」大人「そう。今いいところなの?」大人「…うん」大人「一応決着つくのに何分くらいかかりそう?」(時間をおいてから)大人「〇分たったよ。一応の決着ついた?」。「今いいところなの?」と子どもの気持ちをいったん認めたうえで、何分くらいかかりそうかたずね、自分で考えさせるのがポイントです。

思春期の子どもは、小さいころと同じようにほめられると子ども扱いされたような気持ちになることもあります。子どもの心の発達に合わせたほめ方が必要になります。ほめられることで適切な行動が増え、親子のコミュニケーションも向上します。ポイントは、できないことではなく、できていることに着目し、結果ではなく努力(プロセス)に着目し、感謝や敬意を伝え、さらりとほめることです。例えば、寝転がってお菓子をたべながら宿題をしている状況なら、「机に座ってやりなさい!」と言えば、「うるさいんじゃ」となりますが、できていることに着目すれば「お、やってるな!」となり、子どもも悪い気にはなりません。

買い物でも、「忙しくて手が離せなかったから、買い物に行ってくれてほんとに助かった。ありがとう」とほめるほうが「えらいえらい」よりはるかに感謝が伝わります。「えらーい」「すごーい」と言われると、馬鹿にされたような気持ちになることもあります。さりげなく敬意を伝えることが大事です。

また、聴きたいことがあるときは、最初から聴き出そうとするのではなく、子どもが興味のある・話したいと思っている内容をまず聴くことが大切です。大人にとって都合のいい話ばかりをさせたがると、大人と話すことに意義を感じられなくなってしまいます。

ゲームやテレビ、勉強の時間など、大人と子どもで目標となる行動を話し合って決め紙に書きます。約束が守れたら印をつけ、記録します。ポイントがたまったら決めておいたものや好きな活動を交換できるシステムです。約束しておくことで、行動を促す際にスムーズになります。保護者が一方的に押し付けるのではなく、子どもの気持ちを受け止め、意見を聴いてからつくり、ハードルは高くせず、やればできるけれど、「継続・定着」が難しい行動を目標にしましょう。評価のポイントを明確・具体的にして、できなかったときのリカバリー策(例えば、同等の時間を必要とする家事や作業)も予め話し合って設けましょう。行動契約のメリットは、自己コントロールが育ち、自分の頑張りや努力が表なので目で見て分かりますし、将来就労したときに給料と労働の仕組みを体感でき理解しやすくなります。

このほかに異性のことや第二次性徴のこともありますがこれはまた別の機会とします。大事なことは大人が子どもの心の成長と発達障害ならその特性に合わせた対応に変えていくことです。特に敬意を払うこと、予告や契約は重要です。子どもに敬意を払うなんてとか、身近な子どもに契約なんてよそよそしいとか思う方が少なくないのですが、約束は人間生活のあらゆることに大事なことです。また、約束が守れなかった時の謝罪を含めたリカバリー方法も絶対に必要なものです。それはお互いを尊重するからできることなのです。

他者感情をうまく読みとれないから、敬意をこめて丁寧に(しつこくではありません!)理由を話すのです。もともと整理や順序が苦手だからこそ構造化(目に見える)した環境でむかつく大人から介入されなくても一人でできるように自立させ、字句通りに0か100かで考える人だからこそ契約文書でのトレーニングが有効となるのかもしれません。

京アニ

7月18日に京都府京都市伏見区京アニで発生した放火・殺人事件は、京都アニメーション第1スタジオに男が侵入してガソリンを撒いて放火したことにより、京都アニメーションの関係者に多数の死傷者が発生しました。死者は35人に上り、警察庁によれば「放火事件としては平成期以降最多の死者数」となった痛ましい無差別殺人事件です。現在も世界中から京アニを支援する取り組みが続きクラウドファンディングはすでに2億円を超えています。筆者が京アニを知ったのは、2009年「けいおん!」ですが、たまたま知り合いの子どもが素敵なアニメだからと紹介してもらったのがきっかけです。アニメ「けいおん!」シリーズのロケ参考地となった滋賀県豊郷町では、同町の伊藤定勉町長が公式サイトに声明を発表し、豊郷町観光協会は同シリーズの校舎のモデルとなった豊郷小学校旧校舎群に献花台を設置しました。2016年には初めてのアニメ映画だけの製作「聲の形」が上映されましたが、これは聴覚障害者の学園生活を描いた同名の漫画を映画化したもので、素敵な映画です。「聲の形」の舞台モデルとなった大垣市でも事故翌日には市内2箇所に募金箱を設置したそうです。また、高校ブラスバンドのアニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズの舞台となった宇治市では事故の翌日、宇治市観光センターに募金箱を設置しました。この事業所の子どもたちも影響を受け毎日のようにアニメ画を描いている子がいます。京アニは私たち、子どもたち、世界に素敵なアニメを送り続けています。がんばれ京アニ!

不登校ユーチューバー

「不登校は不幸じゃない」と“不登校ユーチューバー”として「ゆたぼん」(10歳)が注目を集めました。
https://binged.it/2OtmXOL
不登校児は年々増加しており、調査によると「少子化にもかかわらず、不登校の児童生徒数の割合はこの20年で1.5倍に増え、過去最多になっている」そうです。ゆたぼんは不登校になった理由として「周りの子たちがロボットに見えたから」などと説明していて、ゆたぼんを後押しする著名人も多数登場した。脳科学者の茂木健一郎氏はゆたぼんと対談し、「学校に行かなくても学ぶことは無限にできる。学校で身につく社会性がすべてではない。応援しています」とコメントします。ほかにも「勉強が嫌いならしなくてもいい。掛け算は計算機があるんだから、できるようになる必要はない」と発言する人もいます。世の中では“不登校でも構わない”という主張が結構あるようです。

しかし、文部科学省の「不登校経験者への追跡調査」によると、「行かなくてよかった」と肯定的評価をしているのは約1割で、約4割が「行けばよかった」と後悔しているのも事実です。不登校でもいいという世論はあるけど、所詮、他人の子どもだからではないでしょうか。自分の子が不登校になったらどうされるのでしょうと思います。不登校当事者と無関係な人が学校に行かなくていいと安易に語っているような気がします。

なんとなく面倒で学校に行かなくなった人の中には、家ではゲームしたり、まったり自由に過ごし、浪人して大学に入ることができたのですが、学力が伴わないのと締め切りも守れないので、先輩や同期の友人に助けられながら卒業したそうです。そして、不登校のときは一人でも平気だと思っていたけど、人間関係が重要だということを初めて学んだと言います。

他には、学生時代の友人はゼロで、ネットを通じた知り合いが数人いる程度で、結婚式に呼ばれることもないし、人付き合いの仕方がわからないから、彼女ともつき合ったこともないそうです。体育祭や修学旅行など学校生活の思い出もなにので、ドラマやマンガでそういうシーンを見ると羨ましくて胸が締めつけられるそうです。そして今、将来の孤独死を恐れながら暮らしている方もいます。

小学校や中学校は、子どもたちが基礎学力や社会性を身につける発達期なので、行かなくていいという根拠がありません。おそらく、行かなくてよいという発言には、様々な子どもに合わせられない今の学校への批判が含まれているのでしょうが、そういう発言は改革に後ろ向きな学校を免罪するだけで、学校が子どもをふるい分けする仕組みを強化するだけです。大人になって何をやるにしても、柔軟な発想を生み出すためのベースは基礎学力と多様な対人経験だと思います。高校生や大学生なのであれば、本人の選択に任せていいと思います。本人が無駄だと思う時間を浪費するより、学びたい知識や実用的な技術を身につけた方がよいと思うからです。

カリスマティックアダルト

「カリスマティックアダルト」という言葉は、ハーバード大学のロバート・ブルックス教授が、「ありのままの自分を受容し、課題をきちんと指摘してくれるカルスマティックアダルトとのかかわりが、人の人生を大きく変える」と示し、発達障害の子どもらの成長に欠かせない存在としてこの言葉は引用されています。辞書には、『よき理解者あるいは本人を常に無条件で受け入れてくれ、また本人が全幅の信頼を寄せている成人のことを「カリスマティック・アダルト(Charismatic adult)という。本人を心から信頼してくれるよき理解者こそが、その子どもの秘められた才能を引きおこす最も重要なキー・パーソンとなる』とあります。

カリスマティックアダルトと呼ばれる大人は、子どもには、多元的(色々)な知能があること、人間社会には、多様性が必要であることを知っています。そして、子どもにおける「正常」というのは神話のような作り事で、だれにもその子の能力を予測することなどできないと信じています。

子どものカリスマティックアダルトは、同性の家族が理想的ですが、他人でも構いません。おじいちゃんやおばあちゃん、学校の先生や近所の人、たまたま知り合った趣味の人。それは、子どもがなりたいと憧れる大人だから、カリスマティックアダルトになろうとしてなれるものではありません。それは、子どもが決めるのです。このことを勘違いしている大人は多いです。できる人が「カリスマ」ではないのです。「しっかり」している大人が良いわけでもありません。弱点があったり苦手があったりするから子どもが選ばないわけでもありません。ずばぬけて得意な分野があるというのはきっかけにはなりますが、あとは子どもが見抜くのです。

以下のことは十分条件ではないけれども必要条件かもしれません。それは、相手に共感することができる人。子どもにレッテルを貼らない人。子どもが自分の弱点を才能にする手助けができる人。「何が欠けているか」ではなく、今ある自分の素質をベースにした自分らしさを育てる手伝いをする人。大丈夫という感覚を与える人。子どもの怒りを沈めるために冷静な無関心を用いる人。子どもをぞんざいに扱ったり見下さない人。子どもの目線に立つことができる人。その子が内に秘めている価値を見いだすことができる人。子どもがうまくいかないとき、自分ならどう違ったやり方ができるか考えられる人。子どもから自分の評価を求め、真剣に話を聞くことができる人。


子どもたちは、自分はここに居場所があり、自分に選択権があり、自立していると感じ、つまり「自分はできる」と感じることを大切にしてくれると信じる人を、カリスマティックアダルトと決めるのです。

インフォームドコンセント

心理検査の目的を一言で表すとすると、「子どもの障害の程度を把握し、1人ひとりに合った支援を行うため」です。発達障害の中には、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動症(ADHD)、学習障害(LD)などさまざまな障害があります。しかし、以前のようにアスペルガー症候群や非定型自閉症といった細かい分類をすることは少なくなっています。それは、発達障害では、障害の重なりがあり明確に分けられず、発達の凹凸は子どもそれぞれで異なり、それに伴って障害の特徴も細かく違っているからです。(日本の場合、障害の診断は医師しかできません。)

発達の度合いや知能の程度、各能力の特徴まで検査をすることで、発達障害の子どもの特性をしっかりと把握することができます。同じ障害の診断だとしても、検査の結果により見られる凹凸は一人一人違います。その結果をもとに、どの能力を活かしていくか、どのような支援が必要かを、子どもの特徴に合わせて考えることができます。

心理検査は、当事者か保護者の依頼がなければできません。もちろん、学校や施設は心理検査を行うことで正確な支援内容を考られることなどを保護者に説明して検査を勧めるのは良いことです。しかし、何故検査が必要なのか十分に説明しないまま、「障害の疑い=検査=診断=配慮の理由」という流れ作業のように扱ってしまうと、保護者は検査を子どものふるい分けに感じてしまい、たとえ検査を受けても、障害の証明書を突き付けられたような嫌な気持ちになることがあります。検査を勧めることは、その結果報告に基づいて、現場は全力で支援する約束をしたということです。「勉強ができなかったのは障害の結果」「不適切な行動は障害の結果」と子どもの責任にしないという約束です。

また、一部の地域では検査をしているのに検査結果の報告書を保護者にも当事者にも渡さない検査者がいるそうです。例えば、病院で検査を受けて、医師が病気のあれこれを言うだけで検査結果が当事者に示されなければ、何がどの程度悪い病気なのか患者にはよく分からないまま治療が進めらるのと同じです。今日、十分な情報を得た(伝えられた)上での合意(インフォームドコンセント)は医療に限られたことではありません。報告書がないのも問題ですが、報告書があるのに手渡されないなどという事がまかり通っている地域があるとは、開いた口がふさがりません。おそらく、報告内容に責任を取りたくない言質を文字で残したくないという検査者や組織の保身のためでしょうが、検査に携わる者として許されることではありません。医療も何もかも人が判断して行うことで100%はあり得ません。だからこそ、説明と合意が必要なのです。合意のための説明には文書があって当たり前ですし、当事者が写しを持ち帰るのも常識です。報告書を渡さないのがいかに非常識かということです。リスクを取らない検査者の言うことは信じられないと思います。

心理検査を依頼するときは、何のために検査をするのか、結果が出たら子どもにとってどんなメリットやデメリットがあるのかきちんと説明をしてくれる人かどうか判断して依頼しましょう。次回は、検査の実際について掲載します。

標準化された検査

検査は公的な機関や病院、教育機関などさまざまな場所で活用されます。発達障害の診断では、様々な施設で心理検査を受けることになります。専門家のいる病院やクリニック・発達障害者支援センター・児童相談所・保健センターなどです。また、診断以外でも発達障害の子どもの特徴や性格を細かく知って支援や教育の方針を明確にするために活用されます。そのため学校や放課後等デイサービスなどでも使用されます。逆に、心理検査の報告にあまり関心のない施設があったり職員がいたとすれば、そこは特性に応じた細かな支援については関心がないところかもしれません。

心理検査は子どもの一部分の情報ですから検査の様々な数値が子どもの実態の全てを表すものではありません。数値は低いのに努力した結果、進学校に入学している高校生もいますし、高い数値なのに怠学の結果、進学する学校の選択肢が少ない中学生もいます。心理検査の結果だけで、その人の人生はわからないのです。しかし、心理検査で能力の凸凹があることを知っていれば、子どもに向いた学習の仕方や生活の仕方をあらかじめ考えることができます。何かにつまずいた時も原因が把握しやすくなりますから、傷口が広がらないうちに早く対応できます。子どもに持ち続けてほしいものは高い能力ではありません。自分は失敗しても立ち直れる、その方法は必ず見つけることができるという気持ちが育ってほしいのです。そのためには、失敗しても支援によってリカバリーできた経験や、失敗を予測して別の方法で到達する経験をたくさん積んでほしいのです。そうすれば自分を信じることができるし、支援を信じることができるはずです。

心理検査の流れは、行動の観察・問診として、実際の検査を実施する前に、子どものおおまかな特徴、生育歴や生活環境を把握します。また、本人や両親の困り感、関係者の意見や周囲の環境面についても把握します。そして、報告がどの場所で誰に活用されるのかを判断して検査の種類を選択します。心理検査は1種類のみを実施するのではなく、複数の発達、知能、特性検査を組み合わせて行うことがほとんどです。

検査の種類はいろいろありますが、京都で多用されるのは「新版K式発達検査」です。本来この検査は乳幼児向けの適当な検査がなくて京都児童院(今の児童福祉センター)で開発されたもので、今は成人まで測れます。しかし、標準化(統計的に妥当性があるように作る)されていないのと、子どもの能力を運動・認知・言語の3つに分類され、新しい知能分類(CHC理論)に基づいていないので、何を測定しているのか分かりにくく説明がしにくいのです。それでも、ベテランの検査者にとっては子どもの苦手が推測しやすいということで関西ではよく使われています。

保護者にとってはこの3つの数値を示されても、見る力や言葉の力が進んでいるか遅れているかしかわからず、「一緒に生活したらわかる」程度の数値です。しかし、この検査者の中には「数値が独り歩きするから」と数値を当事者に示さない人がいるそうです。前回も述べましたが、常識で考えれば、検査結果の数値を隠す人の報告を信用できるはずがありません。そんなに自分が行う検査にも説明にも自信がないのならやらなければいいのです。そんな検査に付き合う子どもこそ迷惑です。

K式検査は2001年に改訂されたきり20年近く改訂されていません。知能検査は、10年で陳腐化します。文明の進化と共に子どもの知能全般が伸びるからです。今度予定されている改訂は2020年だそうです。これは標準化された検査になるそうですが、知能の分類は変えないそうです。明日は他の検査について掲載します。

K-ABCⅡ

WISC-Ⅳは、ウェクスラーという米国の心理学者が1949年に開発し改訂が繰り返されている知能検査の1つです。ウェクスラー式知能検査は世界でも広く使われている知能検査で、受ける人の年齢に合わせて、幼児用…WPPSI、児童用…WISC、成人用…WAISの3つがあります。ここでは対象年齢が学童期のWISCについて紹介します。定期的に改定されており、現在は第4版となるWISC-Ⅳが最新となっています。15の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)で構成されており、10の基本検査を実施することで、5つの合成得点(全検査IQ、4つの指標得点)が算出されます。それらの合成得点から、子どもの知的発達の状況をさまざま方向から把握できます。4つの指標得点とは言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標の4つで、それぞれの指標が出るため、得意なこと、不得意なことの判断に役立ちます。

特に情報をどのように入力し、どのように表現するのが向いているかという判断は、勉強法を考えていく上で役立ちます。例えば、知覚推理が弱い子どもには、絵や図で伝えるより言葉にして論理的に伝えたほうが理解しやすいなど、対策を考えることができます。標準化された検査は、検査項目で3ポイント、指標ポイントで15点が「有意な差」(明らかに違いがある)ですから、個人の凸凹を判断するときにはこの開きを見ていきます。

本事業所で採用している検査の一つは、K-ABCⅡです。アメリカの心理学者カウフマン夫妻により(1983)作成されました。カウフマン夫妻はウェクスラー博士のもとでWISCの改訂に協力してきました。妻のナディーン・カウフマンは学習障害をはじめとする発達障害が専門です。夫妻はWISCの課題をKABCで解決しようとしました。子どもの知的能力を、認知処理過程(認知)と知識・技能の習得度(学力)の両面から評価し、得意な方法を見つけ、それを子どもの指導に活かすことを検査の目的としたのです。

K-ABCⅡはカウフマンモデルとCHCモデルという2つの理論モデルに立脚し最新の理論を取り入れたこと、認知処理を、継次(言語的)処理と同時(視覚的)処理だけでなく、学習能力、計画能力の4つの能力から測定していること、が特徴といえます。WISC-Ⅳとの違いは以下の表のとおりです。

WISC-Ⅳには基礎学力を図る検査項目はありません。WISCは医療用として用いられてきた背景があるからです。K-ABCⅡには、習得尺度という基礎学力を図るための尺度があります。これにより、学習がどれだけ定着しているかを知ることができます。K-ABCⅡの検査は、教育を意識して作られているため、WISC-Ⅳよりも学習と結び付けて考えやすい特徴があることも本事業所が採用している理由です。学校や病院ではWISCがほとんど利用されます。KABCは2回に分ける必要があり時間がかかるということが大きな理由だと思います。次回はK-ABCⅡで検査の読み方について考えます。

 

検査の読み方

検査を見る人は、まず全検査IQ(WISC)とか総合尺度(KABC)が100よりどれくらい離れているかを見ようとします。心理検査の多くは100を平均にとって偏差値で得点を表現します。受験で使う偏差値の平均は50です。50から多いほど難関校の合格レベルになっていきます。しかし、検査は受検ではありませんので、100より多い数字だから良いという事ではありません。この数値は10以上ある検査の平均値に過ぎないからです。発達障害の子どものように能力に激しい凸凹がある人の平均値はほとんど意味がないのです。

学力で考えてみましょう。国語が10点で数学が90点ならこの人の平均点は50点です。クラスの平均点はどちらも50点だとします。ではこの人の全体的な学力は50点でクラスの平均学力なのでしょうか?そういうより、国語が超苦手で数学がめっぽう強いといった方がこの人の実態を表します。学力対策も平均50点の国数の対策をするより数学はおいといて国語の対策を集中的にとるのが当たり前です。

検査の結果も同じことです。KABCでいう同時(見て処理)尺度が115で、継次(聞いて処理)尺度85で他の2尺度が100なら、平均値の認知尺度は100です。この100を見て認知の力は標準と見てはいけないのです。言葉で理解する力は平均より低く、理解の早い図や絵も用いて説明した方がよいということになります。IQ(全検査IQや認知総合尺度)だけみても凸凹発達の人には意味がないというのはこうした理由からです。

一般にIQが安定するのは9歳以降と言われ、心理検査は3年生以降でないと大きく変化することがあります。また、IQと学力も必ずしも一致しません。研究によると4割程度しか一致しないのです。つまり、教え方や環境、本人の素質でIQは伸びるという事です。ただし、その人に適した教え方をやめるとIQが元に戻るという研究もあるので、いかに環境が重要かわかります。

検査の細かなことは、検査をした方が丁寧に説明をしてくれます。しかし、大事なことは、大枠を理解することです。大枠とは平均点でしかないIQではありません。大枠とは凸凹のプロフィールが何を意味するか理解し、凸凹のプロフィールつまり得意な事や苦手なことを組みあわせた支援のイメージのことです。

キャンプ

今夏は、経費削減でキャンプに出掛ける人が多いそうです。家族だけでなく空前のキャンプブームだそうです。『オートキャンプ白書』によると、2012年に720万人だった利用者は、2018年には850万人に増加し、6年連続して増えているそうです。野外キャンプを推進する団体が行った小学生対象の調査で「キャンプで一番楽しみにしていることは?」、1位は温泉。自由記述の「一番やりたいことは?」で最も多かったのは「ぼーっとしたい」でした。小学生が、中年サラリーマンのような回答で、みんなどんなキャンプだったのか、ちょっと気になります。

キャンプといえば、楽しくバーベキューをして、焚火の前で飲み食いしながらのおしゃべりが楽しいのですが、労せずその時間が待っているわけではありません。到着したら、まずはテント設営を家族全員で行い、タープ(日よけ雨よけ)を張り、子どもらと水汲み小枝集め、包丁を持つ子と、荷物やシュラフ(寝袋)のテント内整理の子に分かれるといった日常よりもすべき仕事、果たすべき役目がたくさんあります。これらを覚えさせ習得させるまで、ある程度時間がかかります。手伝っては虫を追いかけ、水を汲んでは川に石投げする子どもに、「大人ばっかり働いてるし、手伝わんならキャンプに連れてこんよ!」と叫んでいたりします。叱られた子は「もう、キャンプなんか嫌やし」とすね始めます。でも、うまく火が起こせたら「すごい!ありがとう!」と褒められ、水を運べば感謝されと、仕事を達成すれば何回でも褒められる環境なので子どもたちはまんざらでもありません。テントが設営された瞬間。タープが張れた瞬間。焚火に火が回り始めたとき。自分が切った具材の入った食事が出来上がったとき。子どもも大人も大きな達成感に包まれます。

たかが年に1、2回のキャンプかもしれませんが、子どもは野外活動で何かを獲得すると思います。最初は仕事の中身がわからなくてもめたりするけれど、最終的には自分から仕事を見つけて取り組みます。すべてが「内発的な動機づけ」です。内発的動機づけは、賞罰など外からの強制力に依存しない自発行動です。子どもが大好きな焚火。木を運んで、自分でくべて、乾燥しているものがよく燃えることを知って仲間に伝えていきます。何かを買ってあげるからというような「外発的動機づけ」で木を運んでいないから発見し伝えようとするのです。森の中の遊びなど、さまざまなところに自由があり、子どもは、自由を獲得してこそ、成長があります。

遊びに夢中になって雨に降られてびしょぬれになれば、次回は「風が出てきたら雨が降る」などと風や空の様子を感じながら遊ぶようになります。夕立がくれば、テーブルやいすをたたんでビニールシートをかける等、応急作業を家族や仲間と協力して迅速に行なえるようになります。昼食の枯れ枝を集めに行けば、たくさんある所見つけ夕食分もついでに拾う等、すべての体験が自分で考え判断する力や段取りする力につながります。ただし、最初からテントやコテージがあり道具もすべて整備された今流行の「グランピング」はここでいうキャンプではありません。不便さがあってこそ大事な宝物が獲得できるのです。それから、子どもが大きくなったら家族キャンプには誘いにくくなります。思春期は親は大抵うざい存在です。また友達同士で何かを成し遂げる価値を感じる時期です。家族でキャンプ、知り合い家族と合同キャンプは小さなうちの期間限定の値打ちがあると言えるかもしれません。

帰省対策

お盆が近づきました。お盆にはいつも会えない、おじいちゃん・おばあちゃんに会いに田舎に帰省される方も多いと思います。ただ、帰省は発達に凸凹のある子どもたちにとってストレスフルな行事となる子もいます。移動に時間がかかり、体力を消耗する。いつも会わない人に何人も会う。いつもと違う環境での寝泊まり、飲食。団体行動を強制される行事(法事・お墓参り・おでかけなど)等「いつもと違う状況」では不安が高まりやすくなります。その結果、いつもできていることもできなくなってしまうかもしれません。

そんな時に、おじいちゃんやおばあちゃん、親戚から「〇年生なのにこんなこともできてないの」と怒られたり、マイナスな言葉をかけられたりする場合があるかもしれません。最終的には「しつけをちゃんとしてるの」と親もつらい思いをすることがあるかもしれません。まだまだ、「子どもができていないことは親のしつけが悪い」「できないことは叱って教えるものだ」というしつけの文化が根強く発達障害に適した子育ては理解されていません。

本来は、おじいちゃん・おばあちゃん、親戚に事情を話して理解してもらうのが子どもにとっては一番ベストですが、少なくとも保護者が相談しやすいキーパーソンを一人決めて事前に相談すればどうでしょうか。帰省する前に「叱ることで自信がなくなってしまう」「褒めることに力を入れたら素直になってきた」と伝えるのです。

帰省先は基本的に子どもにとってストレスになる場合が多いです。生活のリズムが崩れないように調整し、いつも以上に、当たり前にできていることに目を向けて、細かく褒めることが大切です。そうすると子どもの調子がいい状態が作りやすく、自分から良い行動をとろうとし怒られる場面が減るかもしれません。

一方で、実家の祖父母が穏やかで包容力のある方なら実家が大好きになる子どもも少なくありません。そういうケースでは、家庭でうまく取り組めなかった朝型の生活リズムへの修正や、静かなゆったりした田舎の環境で好きな活動をたくさんさせて、思う存分リフレッシュさせましょう。子どもの調子が自宅より良いなら実家に始業式前まで預かってもらうのも悪いことではありません。子どもが多様な人と穏やかに関わるのはとてもいいことです。リスクは早めに察知して対策を考え、メリットは積極的に生かして夏の後半を乗り切りましょう。

響け!ユーフォニアム

叶えたい事が 溢れてるから 立ち止まってる 暇なんてないよね 胸に秘めたあこがれを フルボリュームで届けよう 行こう…クレッシェンドの向こうへ つまずいてもいい はみだしてもいい 君の音色を 僕たちは待っている 響け! 生まれたての夢つめ込んで 大きな空へ いま旅立とう 拓け! 笑顔を味方につけて 離さない 諦めたくない 限界さえも 跳ね返す勇気で DREAM SOLISTER....

歌詞は、京アニ製作アニメ「響け!ユーフォニアム」の主題歌「DREAM SOLISTER」。

立命館宇治は、夏の高校野球京都府代表校です。同校の地元・宇治市に本社を置く京アニの第1スタジオ放火殺人事件を受け、同校ブラスバンド部はエールの意味も込めて「響け!ユーフォニアム」の主題歌「DREAM SOLISTER」を応援歌に決定しました。ただ、コンクールと初戦の日程が重なり、演奏には初戦突破が条件となっていました。立命館宇治(京都)は、1点を守りきり、春夏通じて甲子園初勝利。2回戦では京アニ作品「響け!ユーフォニアム」の主題歌を応援歌として演奏する予定です。

…離さない 諦めたくない 限界さえも 跳ね返す勇気で DREAM SOLISTER ひとつ ふたつと増えてゆく おいでよ ここまでおいで 楽しまなくちゃ まだまだフォルテシモ DREAM SOLISTER La La La La La 君の声 聴かせて欲しい La La La La La 終わらない音楽は 続いてゆく…

頑張れ京アニ!

就労メニューとワークシステム

前回「すてっぷ日記」で就労メニューについてとりあげました。学童期の自立課題のワークシステムから積み上げていくものだという説明をしました。「一人で作業に取り組むなんてとてもとても」と思われるかもしれませんが、私たちはプットイン課題が自立的にできるなら何かの仕事が将来開発できると考えています。

プットイン課題とは、物を穴に入れる課題です。大きな入れ物に入れる素材の大きさに合わせた穴をあけて、右利きなら右からとって左の穴に入れるワークシステムです。ただ穴に入れるだけですが始めと終わりがはっきりしています。右のモノ(例えば小さなボール)がなくなったら作業終了です。この理解と動作ができれば、様々なものに発展していきます。量も多くできますし形も変えられます。色も変えられます。例えば三角の黄色の材料と四角の黒の材料を、空箱に三角の穴で黄色で囲った縁取りと、四角の穴で黒で囲った縁取りにします。最初は色は分からなくても同じ形の穴にしか入らないのでモノを選別する作業になります。やがて色に気が付けば、穴の形は変えずに色で選別するようになります。

このようにして14歳くらいまで様々に取り組んでいけば、何らかの選別作業を小一時間続けられるようになります。もちろん気が散りやすい方は、1分からはじめればいいし、5分課題に休憩つけてインターバルで10回やれば50分の作業になります。誰からも介入されずに自立して作業することが誇りになります。課題を終えてご苦労様と声を掛けられて達成感のない人はいません。就労メニューとそれに結び付くワークシステムについてご希望の方はスタッフまでご相談ください。

 

新型出生前診断

妊婦の血液を元に、ダウン症など赤ちゃんの染色体に変化があるか調べる新型出生前診断(NIPT)について、厚生労働省が国内の実態調査を始めます。2013年医学会などの5団体が施設認定に厳しい条件を付けることで了承し、臨床研究が始まり、これまでに約6万5千件が実施されました。しかし、認定を受けずに検査する民間クリニックもあるので正確な件数や実態は掌握できず、妊婦へのカウンセリング不足などが問題になっています。

厚労省は各地の衛生検査所を調査し、認定外の施設を含めた検査の件数を調べることにしています。また、実際にカウンセリングの状況や検査費用なども調査します。調査結果は今年中に検討会で報告して、検査する施設の要件などの今後の医療施策に生かされるといいます。

2011年に米国で始まった新型出生前診断は、採血だけですみ、しかも感度が約99%と高く、検査が受けられる時期も長いのが特徴です。妊婦の血液にわずかに含まれる胎児由来のDNAを分析します。採血だけでできるので、専門知識が十分にない医療機関でも検査できる反面、十分な遺伝カウンセリングなどが伴わないと混乱が生じるとして、遺伝に詳しい常勤医がいるなどの条件を満たす医療機関を認定し、臨床研究として実施してきました。対象を原則として35歳以上の妊婦に限り、調べる疾患も13トリソミーや18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)の染色体異常に限定しました。

この日本産科婦人科学会の指針では法的拘束力が無く、現状では無認可施設で十分なカウンセリング無しに検査が行われるなどの問題が起きているといいます。今後は、医療機関に加えて検査会社も登録制にするなど、法的にも抜け道のない実施体制作りが必要だということで今回の厚労省の発表になりました。テクノロジーの進化を止めることはできません。大事なことは人権尊重のモラルに基づいた法制化と、社会の寛容さではないかという議論が進められています。

高校野球

京都代表の立命館高校は2回戦で惜敗しました。でも京アニ「響け!ユーフォニアム」応援歌が演奏できて良かったです。

今も甲子園では灼熱の中激闘が繰り広げられていますが、文字通り灼熱の中の試合も何とかしてほしいですが、投手の肩の酷使は早く解決してあげて欲しいものです。一部の大人の利益のために、高校球児の才能を断ち切ってしまう可能性のある大会制度をいつまでも続けるのでしょう。殺人的な酷暑だとニュースでは警告しながら、同じチャンネルで甲子園を放映するテレビ局の葛藤は全く見えません。

大会前の高野連の発表では、投球数について、一定期間での総投球数に制限をかけるとの方向性を「これから議論する」そうです。なんで大会までに結論を出さないのかと本当にじれったいですが、とにかく一定の制限は来春からは、やっとできそうです。しかし、まだ酷暑下でのゲーム回避の問題は解決していません。甲子園のドーム化検討も一時はあったのですが、結局は甲子園球場の伝統と金銭の問題が入り混じって実現せずでした。みなさんはどうお考えでしょうか?

 

同窓会プランナー

この季節、実家に帰る方も多いので同窓会に参加される方も少なくないようです。最も企画が多いのは高校卒業時の同窓会のようですが、公立高校の1学年は平均的には200人程ですが、一昔前の1学年は500人程でした。ここに目をつけたのが同窓会プランナー会社です。同窓会の参加率は幹事の数にもよりますが、20名ほどの幹事がいれば3割は参加するそうです。これをホテルやレストランで1万円程の会費で同窓会SNSの設定から会場選び参加状送り、同窓会内容のプランニングまで4か月かけて全部込々でやってくれる会社がでてきました。会費1万ほどで儲かるのか?と思いますが、宣伝としての企業スポンサーを同窓会毎につけてこの企業からの宣伝費も入って来るので十分成り立つそうです。

簡単に言えば同窓会幹事代行屋さんなのですが、ここに独自の会員だけのSNSを組み合わせることによってスポンサーをつけられることに着目したところが秀逸なのです。同窓会幹事と言えどもほとんどの方が仕事を持ち、年々仕事が忙しくなるのが普通です。知り合いだけならまだしも、大コミュニティーの格式ばったお世話は年齢が増せば増すほど面倒になってきます。しかも代行料は参加費にわずかにつけるだけで済むのならお願いしようと思う方は多いと思います。

こんな仕事を思いついた人。大学時代はイベント屋さん、いわゆるパリピの仕掛け屋さんです。それを生業にしてしまったのです。成功のアイデアは自分の強みから生み出すものという法則を地で行っている方たちなのです。強みを生かすことは社会のあちこちに転がっているものなんだと感心してしまいます。

お客様相談センター

朝、事業所のPCスイッチを入れるとLAN回線が不通。電話も不通。ONU(光回線終端装置)のエラーかと再起動させても回復しないので、もしや断線?と光ケーブルをたどると、コネクターの根元で断線していました。光ケーブルの終端処理をした接続は専用器具が必要で素人に修理はできません。ONUより外側は通信業者しか修理できないと法律にあるそうで、なんか既得権限をうっすら感じますが、その関係で工具すら販売していないので仕方がありません。

しかたがないので、お客様相談室へ電話。案の定、待たされること1時間。「ただいま大変ご相談が込み合っており・・・。」「込み合ってないお客様相談室ってあるんかーい」と自動アナウンスに突っ込み入れながら待ちました。修理は明日とのこと。すてっぷは通信手段が絶たれても子どもがyoutubeにつながらないと不満を言うくらいで、個人携帯でなんとかなります。でも、最近はネットをフルに使っている大型事業所もあります。例えば毎日の日誌はすべてメール転送、希望日申し込みもネットサービス、お迎え時間も配車も職員動静シフトもネット連絡で運営しているのです。そんなところは臨時対応が超大変です。お客様相談室につながるまで電話をかけ続け、うまくつながっても修理は後日です。事務方の悲鳴が聞こえてきそうです。

善意に判断すれば、どこも人手不足なのですぐには電話に出られない、すぐには対応できないとも考えられます。でも、ネット販売なんかの電話って大抵すぐにつながります。時は金なり。それだけ人員を割いている証拠です。儲けにならないトラブルやクレーム部門は人手を減らすということでしょう。ただ、通信業者は法改正で雨後の筍のように参入してきています。これまでの電気通信法の既得権限の上にあぐらをかいていた事業者も競争に取り込まれます。顧客のアフターサービスに不満を持たせるとすぐに客は奪われます。そう思いながら、新たな通信業者の検索をしようとしたら、あーネットが切れているのでした。トホホ。

 

DNAスイッチが運命を変える

NHKスペシャルでDNAスイッチをON、OFF することでその人の体質や能力を変化させることが可能となってきていることが放送されていました。生活習慣病の代表「糖尿病」や「がん」の発症に関わるDNAスイッチの情報なども解明されつつあります。また、今後はDNAスイッチを自在にコントロールすることが実現するかもしれないと言われています。

番組では、340日間宇宙ステーションにいた人のDNAスイッチを調べると、宇宙での極限状態に耐えられるように様々なDNAスイッチが変化していたとのことを取り上げていました。人間は環境によって自動的にDNAレベルで環境に適応する体に変化するというのです。また、病気の耐性に対しては、現在いくつかのガンについて薬でDNAスイッチを”耐性有り”に切り替えることが可能になりつつあり、臨床試験を行っています。

音楽能力では、いろいろな音楽を聞き続けるとDNAスイッチが入り、音色など聞き分けられる能力が向上することが解明されつつあるそうです。ということは自分の能力を向上させるには向上させたい能力に関係することを継続的に続けると向上する可能性を示唆しているのです。ちなみに人間のDNAスイッチは2%程度しか使われていないのですから、人間はまだまだ使っていない能力があるということです。

今まで精子のDNAスイッチはリセットされた状態だと考えられていたのですが、最新の研究では親のDNAスイッチの状態を引き継ぐことがわかりました。マウスを使った研究で、肥満に関するDNAスイッチを調べた結果、肥満だったマウスの子どもと孫は少量のエサでも肥満になったそうです。つまり肥満に関するDNAスイッチが子ども、孫と引き継がれ、太りやすい体質になっていることわかったそうです。そこで、太った人がトレーニングして一時的に痩せたときに肥満に関するDNAスイッチをOFFにし、子供へ肥満に関するDNAスイッチを遺伝させない取り組みも始まっています。ただ、卵子の場合は、妊娠中にダイエット等するとDNAスイッチに悪影響があるそうです。

これまで、遺伝には逆らえない、子々孫々と祖先からの遺伝は運命として引き受けるしかないという考えがありましたが、これは人間の努力や環境の影響を含めて子孫が引き受けると、訂正する必要があります。そして、人は努力する環境にあって、適切な行動をすれば自らの才能のスイッチや病気から身を守るDNAスイッチが入るという科学的根拠があることを私たちは知る必要があります。

職業準備性ピラミッド

職業準備性ピラミッドとは、下図の通り、働く為に必要な項目がピラミッド型に配置されているものです。

就職活動をする際に、その職業でのスキルの内容、つまりパソコンができるとか計算ができるとか、設計図が読める等仕事の内容が注目されがちです。このピラミッドで言う一番上の「職業適性」の部分です。

しかし、職業適性は障害があろうがなかろうが、一番大事なことではありません。「自分探し」は大事ですが、それは職業適性だけを探すものではありません。実は、このピラミッドの土台、「健康管理・障害の理解」であったり、「日常生活管理・基本的な生活のリズム」がしっかりしていなければ、働く事だけでなく、就職活動もできません。まずはしっかりした土台があって、長く、活き活きと働ける基礎的な力が必要だと言うことです。

土台の中でも大切なのが、その土台に書かれている「~~管理」という「管理」という言葉です。例えば最下段の「健康管理・障害の理解」ですが、人は心と体が健康な時ばかりではありません。特に凸凹の能力特性を持つ方は、就業での対人ストレス等も加わり不調になることも少なくありません。不調であっても自分なりの対処方法を持ち、キーパーソンに相談をしながら働けることが大事だと思います。そのうえで、自分で心身の健康をどのように管理して長くその職場に貢献できるかを考え、安定した就労が持続できるように工夫することが大切です。

「仕事内容は会社で教えられるが、働く基礎である社会性や自己管理を会社で教えることは難しい」と少なくない経営者が言われます。もちろん、できることやできないことには人によって様々ですから、苦手なことは支援を要請したり、強みを活かしながら弱みをカバーすることはできます。ここで言いたいのは、ピラミッドの基礎部分は家庭や学校・地域生活で子ども時代から長い時間をかけて身につけて行くもので、短期間で身につくものではないということです。さらに、その基礎の基礎、働く意欲は遊びや好きなことを続ける経験や、失敗してもあきらめず励まされ支援され立ち直る経験の蓄積から育つものだと思うのです。